ゾイドIf √ZERO   作:フィーネ可愛い

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第5話

 何はともあれカナタはジェノザウラーを取り戻さなければ始まらないし、どうにもプレイアのほうもはぐれてしまった人がいるらしい。

 先ずはプレイアがはぐれたという人と合流することになった。

 ミサイルによる被害があってそちらに人員を割かれているからか、容易く脱出に成功。

 巡回も疎らで無事に事前に取り決めていたおいたという合流地点へと向かっていた。

 市街地や都市部から外れ、湖の近く、鬱蒼と木々の生い茂るその地帯は迷い易いが、成る程隠れるのにうってつけの場所ではある。

 草木をかき分けながら進むと、少し開けた場所があり、そこに一体のゾイドがいた。

 黒い胴体と赤い四肢。消音システムや熱放射を極限まで抑えた独特な構造を持つガイロス帝国製小型ゾイド、ヘルキャットだ。

 強力なステルス性と光学迷彩を持つこのゾイドでプレイア達はルーデウスから逃げてきた、とのことだった。

 こちらに気付いたのかヘルキャットのコクピットハッチが開く。同時にヘルキャットの胴体から何かが飛び出してきた。

 “それ”は勢いよくカナタとプレイアの方へと突っ込んでくる。

 

 

「何だ!?」

「大丈夫」

 

 身構えるカナタと対照的にプレイアは落ち着いたもの。前に出て両腕を広げた。

 “それ”はヘルキャットよりも更に小さい、成人よりも僅かに大きい程度のサイズの赤い狼型ゾイドだった。そいつはプレイアの目の前で止まると嬉しそうに顔をプレイアへと擦り付ける。

 プレイアはくすぐったそうに小さな笑みを浮かべて抱きしめるように首や背中の辺りを撫で、話し掛けていた。

 

「よしよし……()()()、いい子で待ってた?」

「ヴォゥ!」

 

「……野生体、いや、違う。もしかして、」

 

 ライズという名前らしい、その小型ゾイドに。その独特の雰囲気に。ゾイドの胴体、正確にはゾイドコアから飛び出してくるという光景に、カナタは見覚えがあった。

 驚きに目を瞪る。師匠(せんせい)達以外でソレを連れている人間に初めて出会った。

 

 

()()()()()()……?」

 

「……なんで、すぐにそれに思い至るのかって感じだけど」

 

 声は後ろから掛けられた。どうやらヘルキャットから降りたパイロットはわざわざ回り込んで来たらしい。

 そちらへと顔を向けると女性が立っていた。

 身長自体は成長期真っ只中のカナタと同程度と、軍人としては少しだけ背が低い。ガイロス帝国の軍服を着こなし長い金髪を頭の後ろ手で一つに結んでいる。

 手には拳銃が握られ、銃口はカナタへと突き付けられていた。その姿に一分の隙もない。

 カナタは大人しく両手を上げた。

 彼女はゆっくりとカナタとプレイアの間へ、遮るような位置に移動する。

 

 

「……バン・フライハイトが居るんだ。オーガノイドの知名度だって、な?」

「……そう、で?貴方、何者?」

 

「アインセル、銃をおろして」

 

 静かなにらみ合いは割って入ったプレイアの声で遮られた。

 少しして根負けしたようにアインセルと呼ばれた女軍人は銃口を下げた。

 

 

「……わかった。でもプレイア?

 何故無関係な人を連れてきたの?」

「……利害の一致?」

「???」

 

 

_______________________________

 

 

 

 

 

 

「ヴァゥ?ヴォフ?」

「ライズ、しー」

 

 “アイツ誰ー?”といわんばかりにカナタに近付こうとするライズをプレイアが引き留める。

 そんなやりとりを他所にして、

 

 

「ウソ、あのジェノザウラーに乗ってたの貴方なの!?」

「そうだよ。ていうか見てたの?」

「壊れたアイアンコングと一緒に街に入ってくるのを見ただけよ!……ああ、もうっ。なんであんなヤツのことを簡単に信じちゃうのよ、警備隊は!」

 

 自己紹介もそこそこにカナタは今まであったことを話していた。

 先程プレイアに話したのもあって、簡潔に纏められたことが少しだけ嬉しいのは内緒だ。カナタは会話が苦手ではないが別に得意というわけでもなかった。

 アインセルはといえば苛立たしげだ。あわよくば労せずして事態の解決に至っていた可能性が現れ、自分の知らない所で立ち消えたのだから当然ではある。

 

 

「しかし意外だな。ジェノザウラーに乗ってること自体、信じてもらえないと思ってた」

「別に全部を信じたわけじゃないわよ。嘘をつくにしても、もっとマシな嘘をつくはずってだけ」

 

 ふぅ、とアインセルが気を静めるように息をついた。

 

「それで?ゾイドを取り返してルーデウスに仕返しがしたいって?」

「うん、プレイアの分も含めて」

「………猫の手も借りたいくらいだし、頼りにさせてもらうわよ?」

 

 カナタはニヤリと笑って答える。

 

「任せとけ」

 

 

 話は纏まった。先ずはジェノザウラーを取り戻す。

 幸いにして場所はわかっている、というかカナタが居なくてはジェノザウラーをそこから動かすことは出来ないはずだ。

 C&D(クラウド&デュパル)ゾイド整備場。

 カナタは街に戻った際、再びダンにゾイドを預けていた。

 

 

 

 

________________________________

 

 

 

 

 

 ヘルキャットはそのステルス性と光学迷彩を存分に発揮し誰に気付かれる事もなく走っていた。

 時刻は深夜。合流後少しだけ仮眠を(カナタは外で、プレイアとアインセルはヘルキャットの中で)取った三人は行動を開始した。

 比較的小柄な女性一人と十代半ばの子供が二人、そんなに入ればヘルキャットのコクピットはぎゅうぎゅうだ。

 操縦桿を握るアインセルと、その膝の上に横抱きみたいな形で収まるプレイア、さらにシートの後ろに体を丸めてなんとか収まるカナタ。無理矢理な三人乗り。

 カナタの体勢が若干キツい。

 

「ま、まだ?足痺れてんだけど」

「もう少し」

「あとちょっと、頑張んなさい」

 

 上からカナタ、プレイア、アインセル。

 そんなやりとりを何度か繰り返しながら走るヘルキャットだが、普通よりも遥かに速かった。

 理由は単純、()()()()

 ライズは()()()()()()と呼ばれるタイプのゾイドであり、その力は他のゾイドと合体することで合体したゾイドを強化するというものだ。

 ライズは今、ヘルキャットと合体しており、その力は長時間の光学迷彩使用、高速移動中のステルス性の維持に機体の走行速度の高速化と多方面に生かされていた。

 やがて目的地に着いたのかアインセルがヘルキャットを停止させる。

 整備場として改装されたキラーホエールの口、というか開いて閉まらなくなった搬入口の直ぐ近くだった。

 電気はほとんど落ちていて、僅かな光が漏れ出ているのみ。

 

 周囲を確認した後、コクピットハッチを開く。

 さっさとカナタが出る。ヘルキャットの首もとの部分に立って小さく伸びをした。

 

「あー……体が伸ばせるって素晴らしい」

「大げさ」

 

 言いながらプレイアがコクピットから出てくる。ライズもまた合体を解除して彼女に寄り添った。

 それを見ながらアインセルは不安そうに、

 

「ホントに大丈夫なの?

 ゾイドを取り戻して、そのまま街を出て、明日の夜明けに基地を襲撃、貴方が暴れてる隙に私が潜入、仲間を解放して一気に制圧、なんて。こんな雑な作戦で」

「綿密に決めるよりそれぐらい大雑把な方がアドリブが利くだろうさ。それより、ホントにアイツら逃げ出してないんだろうな?」

「それは大丈夫。私とプレイアが逃げ出すとき、仲間達も暴れて輸送用ゾイドは粗方破壊しといたから。どんなに急いでもあと二日は逃げられないはずよ」

 

 ……つまりそれ以降は逃げられる、と。タイムリミットは近いらしい。

 

「……それじゃプレイアのこと、お願いね。

 プレイア!また後で」

「ギャヴ」

「了解了解。指一本触れさせない、ってね」

「…うん。ライズもアインセルも、後で」

 

 そういってアインセルはハッチを閉め、ヘルキャットは音もなく離れていく。先に街の外へと向かったのだ。

 上手くいけば明日のというかもう今日の昼頃に合流し、そこで休息を取って夕方に出発する予定だ。

 

 

 

 さて、なにはともあれジェノザウラーの奪取である。

 普通なら侵入やらなんやらに時間や神経を使うところだが、今回は違う。特に隠れたりするでもなくカナタはスタスタと搬入口へ入っていく。プレイアとライズもそれに続いた。

 しばらく歩くと奥まった場所に黒い外装と紫のフレームを持つゾイド、カナタの乗機ジェノザウラーが見えてきた。

 そして、その足許に立っている筋骨隆々の巨漢、ダンだ。

 既視感を覚える状況はどうやらダンがカナタの脱走を知り、待っていた事で発生したものだった。

 

 

「よう脱獄犯。深夜にデートたぁ、いい気なモンだ」

「………ダンさん、分かって言ってるでしょ?」

 

「……()()()?」

 

「まぁな。オマエさんがミサイルを撃ち落とすのを見てたのが何人かいる。

 そいつら連れて抗議に行こうと思ってたんだが、逃げ出すってことは急ぎか?」

「ええ、ちょっと。―――ルーデウスって野郎が逃げ出すらしいんで仕返しに」

「そうか。ジェノザウラーのチェックはしてある。勝手に持ってけ―――俺はオマエさん達にやられてノびた事にする」

 

 じゃあな、とそれだけ言うとダンは近くの壁に背中を預けるようにしてどっかりと座り込み、腕を組んで目を閉じた。

 どうやらミサイルから街を守った人間に対する仕打ちに街の人間として思うところがあったらしい。

 脱走犯のゾイドの近くにダン一人ということは、まぁ無理矢理追い返したか何かなのだろう。

 迷惑をかけてしまったな、と思う。

 

「ダンさん……ありがとうございました。お世話になりました」

 

 お礼と共に僅か数日の短い付き合いの多大なる恩人に感謝の言と共に頭を下げた。

 しばらくしてから顔を上げ、佇む虐殺竜へとプレイアを伴い向かっていく。

 ジェノザウラーが反応してハッチを開き、前後2人乗り用のシートを降ろした。カナタが回収したときから“そう”だったので気にもせず荷物置き場程度にしか使ってこなかったが、同乗者の居る今は都合がいい。

 プレイアを後後部シートに、自分は前に乗り込んでコクピットへと収まる。そのままシステムを立ち上げると起動を待つ間にシートベルトを確りと締めた。

 そうしている内に後部シートから声がかかった。

 

 

「……カナタ」

「何?ベルトの締め方わかんない?」

「それは大丈夫。……あのね、“デート”って、何?」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」

「だから、デートって何?会ったときも言ったけど、わたし」

「…あ、ああ~……そっか記憶が曖昧だって……え、そんなとこも?」

「うん。わかんない。

 教えて?デートって何?夜の、って言ってたけど何をするの?」

 

 コテン、と首を傾げ頭に疑問符を浮かべながら質問を投げるプレイア。

 同年代の女の子(かなり可愛い)に夜のデートの意味を聞かれるとか十代半ばの少年にはある意味、拷問だ。

 

 

「……あとで、アインセルさんに聞いてみな」

「……うん、わかった」

 

 答えづらい質問だと察したのか素直に引き下がるプレイア。なんともいえない微妙な空気がコクピットの中に流れる。

 少しでも切り換えるべくカナタはジェノザウラーを発進させた。

 

 

 再度合流した際プレイアからの「夜のデートって何をするの?」の問いにうまいこと誤魔化せず、「アダルトな事よ」と口走ったアインセルは度々そのときの事を思い出して顔を覆いたくなるのだが……それは別の話。

 

 

 

 

_______________________________

 

 

 

 

 

 

 そして翌日。未だ夜の明けきらない早朝。

 荒野の中に建てられたガイロス帝国軍基地に、カナタとジェノザウラーは正面から強襲を仕掛けた。

 

 ジェノザウラーには光学迷彩やら隠密性を上げる装備なんぞは備わっておらず、当たり前に基地のレーダーによって既に捕捉され接近に気付かれている。なのでカナタが基地にある程度近付く頃にはゾイド部隊は展開を完了していた。

 一番多いのは昆虫型歩兵戦闘車ゾイド、モルガが約20体ほど。芋虫に似た見た目で装甲の厚さは大型ゾイドと比較しても遜色ない。何体かは120mmグライドキャノンからなるキャノリーユニットを装備し、砲戦能力を高めている。

 次いで多いのはレッドホーンが10体前後。『動く要塞』とも呼ばれる重装備重装甲のスティラコサウルス型ゾイドで、それもビームガトリングガンとビームランチャーを装備したレッドホーンGC(ガトリングカスタム)と呼ばれる仕様である。

 他にも髙機動強襲用トラ型ゾイド、通常機から『アサルトユニット』へ換装したセイバータイガーAT(アサルトタイプ)が5体。

 更には偵察用であろう髙機動飛行ゾイドのレドラー3体がこちらの隙を伺うように空を舞っている。機とみれば尻尾のレーザーブレードを展開して襲い掛かってくることは想像に難くない。

 

 たかが1体のゾイドを相手に結構な数だが、

 

 

「プレイア。かなり荒っぽくなるけど大丈夫か?シートベルトは?」

「うん、大丈夫。がんばって」

「じゃ、しっかり掴まってろよ」

 

 ()()()()()()

 後部に座る少女に声をかけ、確認してからカナタは速度を上げた。

 加速しながら突っ込んでくる虐殺竜に対し、単独で来るような愚か者は数の暴力で轢き潰せと云わんばかりに隊伍を組んでのミサイルが、弾丸が、レーザーが、ビームが、雨霰と掃射される。

 しかしジェノザウラーはそれら雨粒を一つも掠めることすらなく、すり抜けるように躱しつつ背負った二挺のロングレンジパルスレーザーライフルを連射して一気に四体のモルガを行動不能に追い込んだ。更に額部のビームガンを連射、二体のレッドホーンGCの主兵装であるビームガトリングガンとビームランチャーを破壊する。

 それに動揺することなく組まれた隊伍から主兵装を失ったレッドホーンが、続けて5体のセイバータイガーATが飛び出しジェノザウラーへと突撃。遅れて無事なモルガとレッドホーンGCが均等に広がるように展開していく。

 重装甲のレッドホーンによる突撃を髙機動髙火力のセイバータイガーATでサポートしつつ時間を稼ぎその間に残りは包囲陣形を完成させる、単純だが効果的な戦術。

 隊伍を組んだ射撃が無駄と判断すれば即座に次の戦術へと切り換えるスムーズさは敵ながら見事としか言い様がない。

 しかし、

 

 

「俺が以外が相手なら良かったと思うぜ」

 

 カナタは獰猛に笑ってジェノザウラーを急停止。跳躍と同時に脚部スラスターを全力で吹かして急上昇。一気に高度を上げる。

 そのまま、地上部隊の動きを隠れ蓑に急襲を仕掛けようとしていたレドラーの内1体をビームガンで翼を撃ち抜き、もう1体はワイヤーキラークローを射出してもぎ取る。

 残る1体がレーザーブレードを展開しジェノザウラーよりも更に高空から落ちるように攻撃を仕掛けてくるが、カナタはタイミングを合わせ、スラスターとバーニアを巧みに操り前転のような形で尻尾(スマッシュテイル)を叩き付けた。

 三者三様に墜落していくレドラーを横目に体勢を整えると空中からレーザーとビームの雨を降らせ、多くのゾイドを行動不能にしながら、ジェノザウラーもまた地上へと墜ちていく。

 着地の際についでとばかりにセイバータイガーATを硬質な脚部(ハイパーストライククロー)で抉るように踏みつけて沈黙させ、威嚇するように虐殺竜が咆哮する。

 

 辺りを見渡すと未だ動けているのは、単純に的が小さかったモルガが10体、流石の重装甲と云うべきかギリギリの状態ながらもレッドホーンGCが4体、持ち前の髙機動で動けなくなるようなダメージだけは避けたセイバータイガーATが3体。

 会敵時には40体近かった部隊は半壊状態、動揺し怖じ気付くように後退りするゾイドたちにカナタとしては追撃を加えたいところだったが、同乗するプレイアの存在が待ったを掛ける。

 

 

「ごめん荒っぽすぎたか」

「……なん、とか、だいじょぶ」

 

 ジェノザウラーの激し過ぎる動きに伴う慣性や衝撃に襲われた少女は息も絶え絶えだ。

 ゾイド乗りでもない普通の娘に無理をさせてしまったな、と反省するカナタ。

 

 そんなやりとりを続けていると残ったゾイドのコクピットハッチが開きパイロット達が両手を挙げて出てくる。

 明らかな降伏。

 未だやりようはあるだろうに、何故と思うが疑問は遠方、彼らが出撃してきた基地から複数の黒煙が上がっているのを見てその疑問は氷解した。

 

 

「向こうも終わったみたいだな」

 

 どうやら拘束されていたGF(ガーディアンフォース)の解放に成功したらしい。

 帰還する基地が制圧されてはどうしようもない。捕まるよりマシ、と逃げ出すものが居ないのはジェノザウラーがいる状況では逃げきれないと判断してのことか。

 ともかく、戦闘は終わった。

 ふう、と息を吐いてカナタが身体からある程度力を抜く。

 降伏したパイロットたちに1ヵ所に集まるよう指示を出すべく外部スピーカーのスイッチへ手を伸ばして、

 

 ()()

 直感に従いジェノザウラーを全力で飛び退かせた。

 一拍遅れて空中で爆発音。直後、幾本もの()が降り注いだ。それらは広範囲へ広がって次々に降り注ぎ、地面に、或いは動かなくなっていたゾイドたちに突き刺さる。

 ()()()()()()()()()。空中で炸裂し、地面へと槍状の物体を広範囲へばらまくように降らせる対高速ゾイド用武装。

 警戒が弛んだタイミングで撃ち込まれたこともあってカナタの技量とジェノザウラーの性能を持ってしても完全に避けきれなかった。

 虐殺竜の槍が右肩を掠め装甲が砕かれた。背部のロングレンジパルスレーザーライフルが貫かれる。

 くそ、と悪態をつきながらカナタは武装を切り離し(パージ)、ジェノザウラーを加速させる。一拍遅れて起きた爆発には目もくれず攻撃範囲の外へ離脱した。

 

 相手が油断した隙を狙う、というのは普通のことだ。カナタ自身もやる。しかし、

 

 

「ふざけるなよチクショウ……!」

 

 だからといって罷り間違っても敵味方入り乱れる状況で、況してや降伏しゾイドを降りた者が多数いる状況で使う武装ではなかった。

 憤るカナタはしかしその怒りを理性でもって抑える。

 

「っ、ぅう……」

「っ! ごめん、もう少しだけ我慢してくれ!」

 

 当然だが、ゾイドの操縦や戦闘に慣れ切ったカナタと慣れていないプレイアとでは限界値が違う。カナタもそれを想定して全力を出してはいなかったが、それでも高く見積り過ぎている。

 先の戦闘での負荷の蓄積とスプレッドミサイルの範囲から逃れるために行った突然の高速機動の負担とで同乗者の少女は限界を迎えつつあった。

 本当なら早く安全な場所で降ろして休ませてあげたいところだが、敵は待ってはくれない。

 いったい何処に隠れていたのか5体のゾイドが迫ってきていた。

 

 先行するのはガイロス帝国軍のチーター型ゾイド、ライトニングサイクスが2体。数年前に生産が再開され、高い整備性と量産性を兼ね備えた優秀な高速戦闘用ゾイドだがその速すぎる速度から扱えるパイロットが少なかったことと相まって未だ配備数が限られた珍しいゾイドだ。

 少し遅れてアイアンコングが3体。1体は通常型。

 もう1体は両肩に砲塔を備え、腕の外側に丸鋸にも似た装備を追加した特殊仕様。

 残る1体は背部をスプレッドミサイルに換装している。未だ撃ってこないことからスプレッドミサイルは弾切れなのだろうか。

 

 

「ちぃっ!」

 

 カナタは舌打ちしつつジェノザウラーのビームガンを連射し牽制を試みる。

 しかし高速戦闘を旨とするライトニングサイクスには当たらず、瞬く間に挟み込まれた。

 遅れて特殊仕様のアイアンコングが正面で止まる。その50メートルほど後方で残る二体がこちらを警戒するのが見て取れた。

 

 

『……まさかその程度のダメージとはな』

「……!」

「その声、ルーデウスか!」

 

 正面アイアンコングから外部スピーカーを通して聞こえてきた声に聞き覚えがあった。間違いない、ルーデウスだ。

 カナタもう外部スピーカーのスイッチを入れて応答する。

 

 

「『ルーデウス中佐!もうやめろ!基地も制圧された…今ここで俺を倒そうが、アンタに活路は無い!』」

『活路とは自らの手で切り開くもの、覚悟の上だとも。

 だが、そうか。お前はやはり陽動だったか。()()()()()

「……何?」

 

 カナタはルーデウスの行動を単なる悪足掻きであると考えていたが、しかし。

 ()()()()()()()()()()()()

 疑問はルーデウスからの返答でほどけた。

 

 

『つい先程、非常に心強い増援が来てくれてな。今頃基地を奪い返してくれているだろうよ……さて、カナタ・キャバリエ!

 荷電粒子砲を撃つ隙なぞ与えん。その傷ついたジェノザウラーではお前に勝ち目はない。

 活路はないぞ、降伏するなら今の内だが?』

 

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