星巡る空の彼方で   作:合体魔人トム・ブラソン

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EP000 夜明け

『貴方を、愛してます』

 

 

この世界で最初に聞いた言葉は、温かくて柔らかなものだった。

若い女性の声で、泣きながらそして大事な何かを得たようなそんな声だった気がする。

 

彼女の涙交じりの笑顔が朧げに浮かび上がっては消えていく。

不確かで曖昧なその記憶を掴もうと必死に手を伸ばした私は、先ほどまであった温かさが記憶と共に去っていき、地獄のような寒さと薄汚い笑い声の来訪によって叩き起こされた。

 

 

現実が戻ってきた瞬間、私の周りに広がる光景は恐ろしいものだった。

積み上げられた死体の山の中で目を覚ました私は、焦げ臭い匂いが鼻を突き刺し、何かが燃え盛る音が遠くから聞こえてきた。訳も分からないまま危険を直感的に察知し、私は慌てて死体の山から這い出し始めた。

 

身体は重く、冷たく、痛みが走る。

思うように力は入らないが、生き延びるために動かねばならないと心が叫んでいた。

這い出す途中、血に塗れた手が幾度も滑り、何度も倒れそうになったが、必死で耐えた。

地面に足をつけた瞬間、ようやくふらつきながらも自分の体重を支えることができた。

 

何故ここにいる。何故この身体は幼いのか。何故何故何故...

疑問符で一杯の頭と寒さに震える身体を抱きしめながら周囲を見渡すと、煙が立ち上り、建物の残骸や炎に包まれた景色が広がっていた。

所々人らしい影を見たが、誰もかれもが武器を手に持ち瓦礫の山を探っていた。

周りには敵しかいない。そう本能が訴えかけ彼らにばれないようにと瓦礫の山を越え、何とか安全な場所を求めて動き続けた。

 

その時、遠くから怒号にも似た叫び声が聞こえてきた。

もしや見つかったのかと恐怖を感じ姿を隠したが、彼らの声が遠くへ行くのを感じ心から安堵した。

だがその安堵も束の間で、顔を出し彼らが向かった方へ視線を向けるとそこには何かを抱えながら走る髪の長い人影だった。

 

その姿を見た瞬間、自分の身体は動いていた。

あまりにも無謀。あまりにも無計画。

結果など火を見るまでもない。

 

自分の今の姿は記憶の中にあるものとは程遠く、相手は武器を持った男たちばかり。

先ほどまで生き残りたいと思っていたのに、今ではあの人影を、あの生存者を救いたいと心から思っている。勝てるとは思っていない。生き残れるとは思っていない。

 

 

だが、自分の心がそうしなければならないと叫んでいた。

 

 

揺れる視界。掠れる声。震える身体。

先ほどから心が燃えるように熱くそして早く鼓動を打ち続けているせいで頭が回らない。鼓動はまるで早く解放しろと、俺たち(・・・)の名を叫べと声を上げている。

 

瓦礫の山を越え、燃え盛る炎を避けながら、追跡者たちの後を追って走った。

足はもつれ、息は切れたが、諦めるわけにはいかなかった。

目の前で人が危険に晒されるのを、見過ごすことなどできなかった。

 

追跡者たちは疲れ果てコケてしまった女性を囲み、げすいた笑みを浮かべていた。

敵の数は八人。数名は異形の姿をしていてほとんどが手に銃や刃物、鈍器など様々なものを手にしている。

 

 

女性がこちらに気が付き、大きく目を見開いた。

 

 

依然敵はこちらに気が付いていない。

好機は今、ヤるなら今だ!と叫ぶ彼の名を告げ顕現させる。

 

 

――『アヌビス神』

 

 

自分の身体から霧が溢れ、そして霧が手元に集まり刀となって現れた。

両手でしっかりと握り刀から流れてくる意志に身を任せ、敵の合間を縫うように走り抜けた。

そして、女性の前に現れると敵は何をされたのか分からない表情を浮かべたまま、首を落とされ絶命した。

 

一瞬の戦闘が終わると刀から発せられた強い意志は引いていき、忘れていた疲労と痛み、寒さがやってきた。刀を杖にし女性の方へ眼を向けると、彼女はどうやら種族不明ではあるが動物型の異形だった。

衣服はボロボロだが、その服飾と形状から記憶と照合しメイドの服だと分かり、手には赤子が抱きかかえられていた。

 

彼女は怯えた目をしてこちらを見ていたが、伝わるか分からない拙い言葉で話しかけともに脱出を提案した。彼女は一瞬迷っていたが、連れて行ってほしいとお願いされた。

 

その言葉に喜んだが、彼女と赤子を一緒に脱出する方法はなにかないかと考える。

するとまた新しい声が脳に響き、声の主の提案を受け入れる。

 

 

――『スケアリー・モンスターズ』

 

 

彼の名を告げると、手にしていた刀は霧となり体へ入り込み変わっていく。

感覚と共に視点が移り変わっていき、女性の僅かな悲鳴が聞こえた。

完全に変化していない状態で彼女に私の背に乗って案内してと告げ、完全に恐竜へとなった。

 

彼女は怯えながらも、背を低くした私に跨り行きたい方向へ案内してくれた。

恐竜になったからだろう。体の痛みや疲れはかなり楽になり、彼女に負担を感じさせないよう意識しながら走り続けた。

 

道中悲鳴や声が聞こえたが、これ以上は救えない。

彼女もそれを感じ取ったようで、何かを言おうとして押し黙る。

 

ただ静かに走り続け、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

 

▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

「名前を教えてくれ」と、銃を突きつけた女性の厳しい声が現実に引き戻す。

 

彼はゆっくりと瞼を上げ、相手の目を見据えながら答えた。

 

「…名前はない。ただ、キャラバンと呼ばれていた」

 

「なるほど、ではキャラバン」

 

女性は依然銃を突きつけたまま警戒して続けました。

 

「どうやってここまで来たのか、話してもらおうか。」

 

男は深呼吸をして、言葉を紡ぐ。

あのメイドと赤子を救い、安全な場所まで送り届けたがどこも彼女たちを受け入れてもらえず、一緒に旅をした。

何度も危険な目に遭いながらも、自分の運命を信じて進んできた。

 

「遠い遠い場所から来たんです。」

 

キャラバンは静かに語り始めた。

 

「彼女たちの為、裏稼業を生業としている連中に手を貸し何でもやった。密輸も、盗みも、この手を血に染めたことだってある。そして、金を荒稼ぎしこの国へやってきました」

 

彼女は眉をひそめる。

 

「それで、何をどうしたらこんな事をやらかすんだ?ご丁寧にうち(・・)に連絡を入れてまでな」

 

彼女は周りを見ると、黒服を纏った男たちと可笑しな格好をした男達、ヒーローが数名が倒れていた。

彼らの背後には箱があり、その中身はいずれも違法なものばかりであった。

 

「そりゃあもちろん、あなた方公安(・・)と取引をしたくてこのような手段を取りました。」

 

キャラバンの目は決意に満ちていた。

 

「取引をしましょう。私達(・・)が求めるのは身の安全と居住地の保証です。対価として私の全てを差し出します。」

 

「へぇ、その小さな体でいったい何が出来るの?」

 

「諜報、暗殺、潜入、工作、捜査、エトセトラ。公安の暗部として必要な力もある。現にこの現場とバックの組織の情報をリークし、現場を制圧した実績もある。それ以外の事も経歴書としてそっちに色々送ったつもりだけど」

 

女性はしばらく無言で彼を見つめ、そして静かに息をつきました。

 

「…はぁ、元々君の身柄を確保しろと命令を受けている。ここだけじゃなくて、うちに対しても色々やらかしてるみたいだしね」

 

「だからついてきなさい。不審な真似をしたらその場で消す。…頼むから、私に子供の命は奪わせないでよ」

 

そう言って狙撃銃に変化させた腕を元に戻し、彼の手を取り起こさせる。

 

「ありがとう、僕のヒーロー」

 

彼女の手を取りにかっと笑いながら起き上がった彼の言葉に彼女はドキッとしたが、顔には出さず淡々と何処かに依頼し彼を連れて歩いていく。後に続く少年の歩幅を気にしながら。




・『アヌビス神』
本体:キャラバン・サライ

特性:完全に独立した"自立型スタンド"。明確に意思を持ち、戦闘における記憶力と学習能力が非常に高く、一度見た技術や戦術をすぐに学習、以降の戦闘で利用し戦闘を重ねるたびに強くなる。また切れ味抜群で、物体を透過して特定のものだけを切り裂くことが出来る。

弱点:操っている者がいないと行動できないし、操っている者の身体能力に依存している。また、本来は刀を破壊されると再生できないが、本作では一定時間で再生されるようになっている。


・『スケアリー・モンスターズ』
本体:ディエゴ・ブランドー(元:フェルディナンド博士)

特性:自身と他者を恐竜化させる"近距離パワー型スタンド"。熊を素手で引き裂く程の怪力、至近距離で放たれた銃弾を視認して回避できる程の動体視力と敏捷性、人間の匂いを嗅ぎ分ける程の嗅覚といった能力を得る。また、恐竜化に伴いサイズはある程度融通はきく。

弱点:中・遠距離の攻撃手段を持たず、動体視力と引き換えに静止した物を視認する事ができなくなる


・『???』
本体:???(仮:キャラバン)

特性:スタンドとスタンドの能力を模倣する"能力顕現型スタンド"。常に霧状で本体に纏わりつき、生命エネルギーを代替にスタンドを顕現させ、能力を行使することが出来る。寿命の半分を犠牲にたった一度だけ死をなかったことにできる。

弱点:スタンド自体攻撃手段がなく、生命エネルギーを失うと瀕死状態となり気絶する。また、新たなスタンドを開放するには彼らが提示する試練を乗り越えなくてはならず、スタンドと能力もオリジナルと比べいくらか劣る。
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