静かな夜空に異変が訪れた日。
そして、テラの最後の日。
1099年、地表のあらゆる生命がその現象の目撃者となった。
ある時、空に一筋の光が現れる。
地上から放たれたそのエネルギー束は、暗闇を裂き、天と地を貫く柱のように直進した。
光束はテラの大気を越え、惑星全体を覆う高エネルギー大気層────阻隔層に到達。
次の瞬間、夜空が奇妙な閃光を放ち、まるで雷鳴のような振動と共に、阻隔層に直径数キロにも及ぶ巨大な穴を穿った。
やがて、阻隔層に空いたその穴に向かって何かが動き始める。
ゆっくりと、光束を放った人工物が上昇を始めた。
金属光沢を放つその構造体は巨大で、それが天高く舞い立つ様はまさしく神話のようだった。
内部では少しの緊張と、大まかな達成感のある空気が流れていた。
その指令室に立つのは、一人の女性科学者────自らの目的の為に全てを騙し、利用してきた…………偉人。
だが、彼女の目に映る次の光景は、全ての予想を打ち壊すものだった。
人工物の上昇と共に、彼女の目に飛び込んできたのは、惑星北磁極上空に静止している超大型飛行物体。
明らかに自然界のものではない。
全長数百キロ……いや、数千キロに及ぶその物体は、巨大なリングが目立つ構造で、表面には無数の光点が不気味に明滅していた。
女性科学者は、目を見張りながら呟く。
「……これが、物語にある天の裁きというものなの?」
その巨大飛行物体が動き出した。
巨大なリングが滑らかに動き、全体が変形を始める。
リング中心にある円筒状の“砲身”が地表に向けられ、内部から輝く高エネルギー誘導装置が現れると、そこから放射される眩い光が惑星の大気を白く染めた。
そして、円筒から発せられた光が一点に集中され…………阻隔層を破る為に放たれたそれの数億倍以上にもなるであろうエネルギーが、テラの地表に向けて放たれた。
数秒もせず、エネルギー波が惑星表面に激突。
圧倒的流量で放たれた高出力エネルギー束流は、瞬く間に大地を焼き焦がし、地殻とマントルを破砕し、惑星核まで貫徹する。
その範囲は数秒で北極圏全域に拡大し、赤熱した大地が裂ける音がテラ全体に響いた。
熱波は凄まじい勢いで惑星全体に広がり、あらゆる生命体が即座に焼尽。
都市は蒸気となり、海洋は沸騰し、噴出したマグマと地殻熔解物の奔流が地表を覆った。
エネルギー波の影響が惑星全体に及び、熱せられ脆弱化した地殻が破断。
対流ごと強烈な外圧を掛けられたマントル層が完全に攪拌され、やがて惑星そのものが砕け散り始める。
内核から押し上げられるようにマントルごと大地は粉々に割れ、砕けた破片の一部が宇宙空間へと放り出されて、周回軌道まで到達する。
最後に残されたのは、冷たく沈黙した宇宙空間に漂う無数の岩塊と、過剰なエネルギーを送り込まれて赤熱化し、あとは数億年かけて冷えていくだけの丸い土塊のみだった。
…………かつて「テラ」と呼ばれた星は、わずか数秒でその存在を失った。
超大型飛行物体はその破壊を見届けると、再び変形して航行形態に戻り、何事もなかったかのように軌道を離れる。
女性科学者は崩壊の最中、その壮絶な光景をただ黙って見つめていた。
軌道上まで覆う破壊のエネルギーと、惑星が破砕された際の流れ弾によって、自らの乗る“船”が大破し、崩壊していく時ですらも────声も上げず、ただ呆然と。
「サリア────」
次の瞬間、軌道上で一つの小さな船が崩壊した。
より昔に市長が本気でテラに失望してガチの意味で容赦無しになり、尚且つ怨みが数十年くらい持続した場合のIF