パラドックスはアーツか否か   作:霊藻

22 / 42
漁村の決着

 

はーい、どうも。

皆様おなじみ市長です。

 

しかしまぁ……海の中にあんなのが居ましたとは、まさしく青天の霹靂でしたね。

 

一応、軍には例の漁村に侵入した奴らを殲滅した後、村を焦土化して橋頭堡化を阻止。

国境自体を後退させて、海岸線から離れたところに内陸部への侵攻に備えた防衛ラインを構築するように指示を出してます。

そして、この命令は私の「能力」を通さずに行ったものです。

 

そもそもパラドゲーでは、基本的にプレイヤーが戦略以下の事柄を操作することは出来ません。

最低でも“師団級戦力”が“どこに行く”くらい大雑把な指示が出せるのみです。

経済システムを重視したVic3だと、そもそも陸軍は手動操作できず、可能なのは“どの方面にどの程度戦力を送るか”のみです。

 

このように、能力では部隊がどこに行くかは決められても、その部隊が現地で何をするかは完全にお任せなのです。

 

とはいえ、それはゲーム内の話。

 

軍隊にちゃんとした実体がある此処では、能力を介さず正式な命令書か、口頭による直接指示を出せば結構細かい命令も下せるみたいなんですよ。今みたいに。

 

 

しかし、これ……「どこまでゲーム的都合が優先されて、どこが現実的挙動を示すか」が依然として不明確なんですよね。

 

恐魚でしたっけ?あの海の。

話を聞く限り能力全開で“駆除”は可能だと思います…………が、駆除した際の付随被害が予想できません。

バベルの面々が悲しむかもしれない以上、海は安全になりましたがテラは居住不能惑星になりました~~では本末転倒です。

 

故に、今はケルシー先生が多分考えてるであろうプラン的なのに従って冷静に事を進めて──────と、何やら外が騒がしいですね。

 

あ、サマラ。

どうしたの?そんな血相変えて………暴動?

 

 

 

 


 

 

 

ケルシー達救出チームは、漁村に残された生存者達を救い出し、急ごしらえの防御陣を敷いて遅滞戦闘を行っていた。

しかし、村を破壊し尽くす勢いで暴れ回るシーボーンの巨体を目の当たりにし、その圧倒的な破壊力に焦燥感が募っていく。

 

 

「くっ……! 通常の攻撃では傷一つ負わない……!」

 

 

脇で攻撃を加えていたオペレーターの一人が、必死に源石術を投射しながら叫ぶ。

しかし、源石術の破壊力はシーボーンの体表を僅かに抉るだけに留まった。

対して、シーボーンの巨体は鋭い腕を振り回し、周囲の建物を一瞬で瓦礫の山に変えていく。

 

 

「撤退を優先しろ!」

 

 

ケルシーが指示を飛ばす。

彼女の意識は生存者たちを村外に連れていくオペレーターたちの動きを追う。

しかし、その間にもシーボーンの動きは次第に活発さを増し、まるで村全体を餌場とするかのように周囲を蹂躙し始めていた。

 

 

「間に合うか……?」

 

 

彼女は通信機を握りしめ、再度通信を求めるべきか一瞬だけ逡巡した。

その時だった。

 

 

 

村の外から、空を裂くような轟音が響き渡った。

 

 

「……来たか」

 

 

ケルシーが顔を上げると、遠方に幾つもの閃光が見えた。

次の瞬間、村を取り囲む薄闇が、まばゆい火柱によって切り裂かれる。

 

続けざまに飛来する榴弾がシーボーンの周囲に着弾し、地面を激しく揺るがした。

爆風が砂煙を巻き上げ、爆発による光と音が辺りを圧倒する。

恐魚たちはその炸裂の威力に一瞬動きを止めたが、シーボーンだけは揺れる巨体をさらに高くいきり立たせ、雷鳴のような咆哮を上げた。

 

 

「村外から砲撃……援軍?」

 

 

オペレーターの一人が呟く。

ケルシーは、煙と火花の向こうで立ち上がるシーボーンを睨みつけた。

その異常な耐久力によるものか、サウスリムの榴弾砲による集中砲火ですら、シーボーンの巨体を倒すには至っていない。

しかし、確かにその動きには僅かな鈍さが見られた。

 

 

「次斉射、来るぞ!」

 

 

村外から飛来する砲撃は途切れることなく続き、1分間に数十発もの砲弾がシーボーンの周囲に雨のように降り注ぐ。

その内の大半が命中し、その度にシーボーンの表面の肉片が裂け、奇怪な体液が噴き出していた。

村外の砲撃だけではこの巨体を倒すのは難しい。

しかし、その隙に生存者たちを避難させる時間が稼げるかもしれない。

 

 

「総員、砲撃によってシーボーンの注意が逸れている間に、村人たちの避難を最優先で進めろ」

 

 

通信機越しに冷徹な指示を出しながら、ケルシーは再びシーボーンに目を向けた。

 

 

 

 

薄闇の中、村の外に展開した機甲師団の自走砲大隊は、その巨体のために視認性が高いシーボーンを明確な目標として捕捉していた。

対抗射撃を考慮せずとも良い為に、思い切り前線に接近して隊列を組んだ50輌の自走榴弾砲。

それらは長大な155mm砲をシーボーンへと向け、絶え間ない砲声を戦場に轟かせていた。

 

 

「目標、村内部の大型目標! 距離3500メートル、砲撃開始!」

 

 

砲兵隊の指揮官が無線で命令を下すと同時に、一斉に砲口が火を噴いた。

直接照準で撃ち出された榴弾は勢いよく飛翔し、爆音と共に砲弾が濁った空を引き裂いていく。

その弾道の先で、漁村の教会跡に立ち塞がるシーボーンの周囲に次々と爆炎が花開いた。

音速で飛び出した砲弾がシーボーンの巨体に命中すると、鋼鉄を引き裂くような衝撃音が響く。

教会を覆っていた瓦礫と砂塵が吹き飛び、巨体を囲む地面をクレーターが穿つ。

シーボーンの表面を覆う分厚い装甲のような肉片が裂け、そこから奇妙な液体が噴き出しているのが、照準器越しに捉えられた。

 

 

「命中! だが、まだ動きが鈍る程度か……!」

 

 

指揮官が眉をひそめる。

その巨体は砲弾の嵐を受けながらも、いまだ倒れる気配を見せない。

むしろ、頭部を高くもたげ、どこからともなく聞こえるような低い咆哮を上げていた。

 

砲身の角度がわずかに調整される。

再び火薬の爆発音が戦場を揺るがせ、砲弾が次々と放たれた。

 

村へと飛来する砲弾は、シーボーンの巨体を直撃するものもあれば、その周囲を抉るものもあった。

そのたびに爆風と破片が四方八方へ飛び散り、地面は掻き回されていく。

 

 

「続けろ! あの巨体を沈黙させるまで叩き込め!」

 

 

指揮官が叫ぶ中、砲兵たちの訓練された動きは寸分の乱れもなく機械のように正確だった。

砲弾が素早く装填され、発射のたびに振動が砲身を伝う。

各車両の砲手たちは緊張した表情で目標を注視しながら、指揮官の指示を待たずに次の発射準備を整えていた。

 

 

 

 

 

大砲の轟音が響き渡る戦場。

膨大な砲撃を浴びても、シーボーンの巨体はいまだに崩れ落ちる気配を見せなかった。

ケルシー率いる救出チームは、村内の生存者を脱出させつつも、この異形の巨体が振りまく影響に苦しんでいた。

 

 

「各個に援護しながら後退!」

 

 

ケルシーは冷静さを保ちながらも、鋭い声で指示を飛ばしていた。

隊員たちはそれぞれの役割を果たしながら、シーボーンの恐るべき存在感に抗い続けている。

だが、攻撃のすべてがその巨体の分厚い肉塊に吸収され、効果が見えない状況に全員が焦燥感を覚え始めていた。

 

 

その時…………ケルシーの無線機に聞き慣れた声が響いた。

 

 

「こちらドクター。状況を把握した、あの巨体の弱点について伝えたい」

 

 

ドクターの冷静な声が、戦場の喧騒を背景に響き渡った。

 

 

「弱点だと?」

 

 

ケルシーは眉をひそめ、すぐに無線越しに問い返す。

 

 

「そうだ。どんな生物であろうと、この世に存在する物体は自らを支えるに足る“構造強度”が必要だ。あの巨体を維持するのなら尚更だろう。そして、生物の重要部品は構造強度の最も高い場所に存在すると考えるのが妥当だ。外観と推定した構成物質から算出した結果を送る。おそらくそこが、主要な神経や器官が集中している場所だ」

 

 

ドクターの声は明確で、確信とも言える断定的な口調だった。

 

 

「Scout、できそうか?」

 

 

無線を通して呼びかけると、すぐにScoutの冷静な声が返ってきた。

 

 

「了解した。やってみる」

 

 

村の瓦礫に身を潜めていたScoutは、その鋭い目でシーボーンを観察する。

ドクターの指示通りか、彼のスコープ越しにかすかに異常な脈動を見つけた。

その場所が巨大な肉塊に覆われているとはいえ、砲撃によって各部位が歪み、隙間が出来ている状態だったからか、狙撃するには十分だ。

 

 

「……見えた」

 

 

Scoutが息を止め、トリガーを引く音が静かに響いた。

放たれた矢が空を切り裂き、肉の隙間の奥に潜む目標へとまっすぐに飛び込む。

 

 

矢が命中すると、シーボーンの巨体が大きく揺れた。

 

 

耳をつんざくような咆哮とともに、仰け反ったシーボーンの中心部に隠されていた肉塊が裂け、内部から奇妙に光る器官が露出した。

体液が噴き出し、シーボーンが痛みに身をよじらせる。

 

 

「シーボーンの弱点が露出した! 今だ!」

 

 

ケルシーが即座に通信を飛ばす。

無線は同時に野戦指揮所へと接続され、ドクターも指揮を補佐した。

 

 

「露出した部位に攻撃を!」

「全隊、あの巨体の露出した体内に火力を集中させろ!」

 

 

ドクターと山下将軍の声が指揮官たちに響き渡る。

 

戦場の外縁では、陸上巡洋艦がその巨体をゆっくりと動かし、シーボーンへと砲口を向けていた。

9門の203mm砲が3基の三連装砲塔の形で艦上に並び、その長大な

巡洋艦の装甲は複数層の鋼鉄で構成され、同クラスの艦艇のいかなる砲撃にも耐えうる設計となっている。

周囲を警戒する車両の隊列が、その巨大な戦力をさらに際立たせていた。

 

 

「撃ち方始め!」

 

 

陸上巡洋艦の砲口が火を噴き、弾頭重量が100kgを超える巨大な203mm砲弾が轟音とともに放たれる。

砲弾はシーボーンの弱点部に正確に命中し、都市防衛砲並みの爆風が巨体を襲った。

 

同時に上空では、低空で待機していた攻撃機がターゲットを確認し、次々と目標に向かって降下していく。

その直後、無誘導爆弾を連続で投下し、薄暗い空を爆発の光で染め上げた。

攻撃機は1機につき3トンの爆弾を搭載しており、一斉に投下すれば単純計算で榴弾砲の砲弾数十発分に等しい。

要するに、それが編隊単位で襲ってきた場合に起こることは想像に容易いだろう。

 

シーボーンの巨体が大きくのけぞり、その周囲で地響きのような音が鳴り響いた。

弱点を狙った集中攻撃の効果は明白で、シーボーンの動きが次第に鈍っていく。

 

 

「続けろ! そのまま押しきれ!」

 

 

指揮官の声が響き渡る中、戦場全体が一つとなって総攻撃を続ける。

ケルシーは遠くで繰り広げられる攻撃を見つめながら、冷静な表情を崩さなかった。

そして、遂に────

 

────シーボーンの咆哮が途絶えた。

巨体が崩れるように地面へと沈み込んでいく。

無数の砲撃、集中された火力の波状攻撃に、ついにその異形は耐え切れなくなった。

周囲の地面が震え、土砂と体液が噴き出しながら、シーボーンの生命が尽きたのを誰もが理解した。

 

 

「……目標の沈黙を確認」

 

 

ケルシーは無線機を握り、短くそう告げた。

戦場にいたすべての兵士がその一言を聞いていた。

戦車の車長も、歩兵の指揮官も、砲兵隊の観測手も、疲弊した身体を奮い立たせたオペレーターたちも。全員が数瞬だけ、静寂の中でその勝利を味わった。

 

だが、それは長くは続かない。

周囲の状況は依然として予断を許さない状態だった。

シーボーンの支配を受けていた恐魚たちが、尚も村の周囲や沿岸部に潜んでいたのだ。

 

 

「戦車大隊、突入! 機械化歩兵は側面支援に回れ! 沿岸部を完全に封鎖する!」

 

 

山下将軍の冷静かつ明確な指令が全周波で響いた。

待機していた戦車大隊計100輌が動き出し、エンジンが重低音を響かせながら村の残骸へと突入していく。

先頭車両の主砲が村内の建物から飛び出してきた恐魚を撃ち抜き、その直後、後続の戦車からも次々と砲撃が放たれる。

砲弾が残された恐魚たちを吹き飛ばし、同時に村の狭い路地を瓦礫の山へと変えていく。

 

戦車に続くのは機械化歩兵大隊だ。

これは、戦車隊への随伴の為に装甲兵員輸送車が支給された歩兵部隊である。

 

装甲車から降りた兵士たちは、突撃銃を構えながら戦車の側面を固めて進む。

戦車の砲撃を掻い潜って接近してくる恐魚には、歩兵たちが正確な射撃を浴びせて対処していた。

耐性を得た恐魚には携行式の対戦車兵器が撃ち込まれ、爆発の衝撃で怯んだところに戦車が更なる砲撃を加えて粉砕するという連携が繰り返された。

 

 

「航空隊は村内の孤立した敵集団を攻撃。恐魚を海に戻すな」

 

 

各編隊に向けて指令が飛び、すぐに攻撃機の集団が低空飛行で村の上空へと進入した。

機銃掃射が廃墟の中を跳ね回り、残った恐魚たちを正確に狙い撃つ。

続いて爆弾が次々と投下され、轟音と爆炎が村落を包み込む。

浜辺にたどり着こうとした恐魚たちの群れが、爆撃の嵐に呑み込まれていった。

 

更に、陸上巡洋艦の巨体が村外からゆっくりと移動し、砲口を村の各所へ向けた。

大口径艦砲が放つ砲弾が空を切り裂き、村を炎と瓦礫の海に変えていく。

シーボーンを失った恐魚たちはもはや統率を失い、逃げ惑うばかりだったが、それすらも砲弾と爆撃によって次々と灰塵に帰していった。

 

 

ケルシーは瓦礫の中でチームを纏めながら、無線越しに戦況を確認していた。

その冷静な瞳が、燃え盛る村を見据える。

荒廃した光景に心を痛めるそぶりも見せず、ただその戦果を確かめるように場を睨んでいた。

やがて、無線に向けて命令を告げる。

 

 

「オペレーター総員、生存者を護衛しつつ撤収準備に入れ。後は軍に任せよう」

 

 

村は焦土と化し、海の脅威は取り除かれた。

しかしケルシーの表情は険しいままだった。

心の奥底には、今回の事件が単なる脅威の一側面に過ぎないという確信があったからだ。

燃え盛る村の炎が、次なる脅威を予見するかのように空を赤く染め上げていた。

 

 

 

 

 

 

戦場の炎が次第に弱まり、煙の臭いが夜風に乗って漂っている。

焦土と化した村の外れ、瓦礫の上に立つケルシーは周囲の状況を見渡しながら、静かに一息ついた。

彼女の隣にはドクターが立ち、同じように戦場を見つめていた。

 

 

「全体として……最悪の結果は免れた、と言える」

 

 

ケルシーが静かに口を開いた。

ドクターは、わずかに眉を動かして応える。

 

 

「……我々の戦力の消耗は無し、村人も可能な限り救助できた。それだけでも十分だと言えるだろう」

 

「だが、これで終わりだとは思えない」

 

 

声に感情の揺らぎはないが、ケルシーの瞳はどこか遠い場所を見ているようだった。

ドクターは微かに苦笑を浮かべ、肩をすくめる。

 

 

「まったく、手間のかかる相手だ」

 

 

戦場からは次第に兵士たちの声が聞こえてくる。

無線が飛び交い、生存者の確認や次の準備が進んでいる。

どこかで誰かが安堵の声を上げたかと思えば、また誰かが負傷者の手当てを急ぐ声が響く。

 

 

「ともかく、今は少し休むべきだ」

 

 

ドクターがそう言い、瓦礫に腰を下ろそうとした瞬間、遠くから砂埃を上げて走るジープが目に入った。

スピードを緩めることなくこちらへ向かってくるその様子に、二人は一瞬で緊張感を取り戻す。

ジープが停まり、中から砂にまみれた伝令が降り立った。

息を切らしながらも、あわてて報告を始める。

 

 

「サウスリム本市で庁舎が襲撃されました! 秘書の死亡が確認され、市長は一命は取り留めたものの…………現在、意識不明の重体だそうです!」

 

 

 






自走砲は“M53 155mm自走砲”相当になります。
陸上巡洋艦「ティグリス」は、おおよそボルチモア級重巡洋艦の上部構造をロドス艦みたいな足周りの上に搭載した感じのものを想像してください。


とりあえず市長に追加する能力とは…?
どちらにしろ内容によってバランス調整しますしすぐに環境崩壊とかにはならないと思いますが。
詳しい希望とか提案があったら日記の方にでも↓

市長に追加する能力

  • MOD
  • コンソールコマンド
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。