パラドックスはアーツか否か   作:霊藻

3 / 42




初めまして。
先に投稿されていた皆様方に触発されて書き始めてみました。
よろしくお願いします。






本編
NEW GAME


 

 

 

 

 

 

 

ふと気がついたら、荒野に居た。

 

 

唐突すぎてビックリした。

何の前触れもなく、いきなり土と砂くらいしか見えないような所に放り出されれば誰だってそうなるだろう。

おかしい、自分は確かに今の今まで……

 

 

………あれ、何処に居たんだっけ?

 

というか、自分は誰だ。名前は、どこに住んでいた?

 

何も思い出せない……記憶喪失?

 

 

呆然としながら辺りを見渡す。

視界に映る全てがおおよそ茶色の礫砂漠の如き大地、少しばかり生えてるヨレヨレの草。

たぶんオーストラリア。

遠くにはクソでかいトゲトゲしい石みたいな何かが突き刺さってるように見える。

もしかするとオーストラリアではない?

聞こえてくるのは風の音と、それによって巻き上げられる砂の流れだけ。

人の出すような喧騒は何一つ無い。

つまり、今現在自分は遭難しているということになる。絶景の砂漠のど真ん中で。

 

 

「………これ、詰んだ?」

 

 

思わず呟きが漏れた時、それなりにファンシーな可愛い声が聞こえた。

 

 

「えっ、これ自分の声?このアニメチックなの?」

 

 

驚きのあまり、視線を下げて自らの身体を見ようとするが……体が無かった。

いや、無いというよりかは、小さい?

ふわふわ浮いている感覚がある、まるで幽霊みたいに。

 

 

「自分、人間ですらなかった…?」

 

 

いよいよ以て訳の分からなさが極限に達してきた頃になり、取り敢えず考えるのを後回しにして動き出すことにした。

救難信号を発信してたとも思えない以上、このまま留まっててものたれ死ぬだけである。

 

しかし、体が無いなりに動くことが出来たのは良いが、飛んでるにしては中々に遅い。

推定時速数キロ未満、おおよそ人の歩く速度と同じくらいでしかない。

こんな速度じゃ助かる見込みが限りなく薄い、どうせ飛んでるんだからもっとビューーンと高速滑空できないものだろうか。

そのように自身の体に文句をつけていると、ふと前方に気になる物を発見した。

 

 

「あれはもしかして、車!」

 

 

自動車。

気がついてから初めて見つけた文明の産物。

見るも過酷な自然だらけのこの地において、そういう物を見つけたこと自体が少しラッキー。

何よりも此処が“前人未到の地”ではないと実感させてくれる。

 

急いでフヨフヨと自動車の元に飛んでいく。

やっぱりというか、その車は既に放棄されているようで、持ち主の存在は確認できない。

車自体も、放棄されてからそれなりの年月が経っているのか、所々ボロボロになっている。

しかし、中にまだ何か使える物が残っているかも知れない。

早速ドアを開けて……

 

 

「手もないのにどうやって開けるってんですか!」

 

 

思わず空を仰ぎ見る。

折角よさそうな物を見つけたのに、触れることすら出来ないなんて!!

 

 

「何とかならないか、何とか……」

 

 

とはいえ、折角の出会いを諦めきれないので、念力か何か便利能力で何かいい感じに開けられないかを試してみる。

試すと言っても、端から見れば廃車を凝視して唸っているだけなのだが。

 

 

「むむむむ~~……開け、ドアよ……!」

 

 

当然ながら、何一つ動かない。

眉間にシワを寄せている浮遊物体が居るだけだ。

風の音が虚しく響く。

 

 

「何とか、何とかならないか!例えば人間形態になれるとかでも───」

 

 

その時、ポンと一瞬、自らの回りを薄い白煙が覆った。

と同時に、足裏にしっかりとした地面の感触を感じ取った。

 

 

「!?」

 

 

慌てて視線を下に落とす。

そこには、自らの身体があった。

 

 

「わ、ワァ……」

 

 

手足もちゃんと存在する。

着ているのは薄い白のワンピース……全体的に華奢な体つきだが、しっかりとした肉付きはあり、胸部にも大きいとも小さいとも言えないがしっかりと主張するソレが搭載されていた。

 

 

「自分女だったんです……?」

 

 

ふと、車には大抵付いているだろうサイドミラーの存在を思い出し、車に顔を寄せて自分の顔を確認する。

 

 

「悪くない、というかむしろ良い。少なくとも上の中以上」

 

 

自分の体への評価にしてはあまりにも適当だが、鏡に映るそれは確かに美少女と言っても過言ではないだろうソレだった。

整った顔立ちで、透き通るように綺麗な青い髪。全体的にロングストレートだが、何故か頭頂付近だけ寝癖がついている。

オマケに、両側頭部にはツーサイドアップのような形で、鳥の羽根らしきものになっていた。

 

 

「……これ元はどんなんだったんだろ」

 

 

何の気なしに、自分の身体に「戻れ」と念じてみた。

一回成功したからか、スイッチングするような感覚でさっきまでの浮遊物体に戻すことに成功。

白煙がどこからともなく現れて、改めて元に戻ったその姿は…………わりかし心当たりのある、青い玉に申し訳程度の羽と嘴が着いた一頭身の鳥のマスコットだった。

 

 

「────チャーパー君じゃん!!じゃあ人間形態のアレって擬人化なの!?」

 

 

チャーパーくん。

北欧のゲーム会社パラドックスインタラクティブの都市開発運営ゲーム「cities skylines」

その作中にメッセージウィンドウの役割として出てくる架空SNSのマスコットキャラクター。

 

それはそうとして、何故チャーパー?

何故シティーズスカイライン??

たぶんこれもう所謂異世界転生ってやつだろうけど、何か必然性があってこういう姿になってるとかあるの???

 

 

「……車の中見よ」

 

 

疑問はいろいろ浮かんでくるものの、いまここで考えても答えなぞ出なさそうなので、取り敢えず車内の物色に移る。

 

 

「うーん、いくらかの小さい工具と空箱くらいしか無い」

 

 

しかし、当然といってはあまりにも無情だが、車内には特に役立ちそうなものは残っていなかった。

ドライバーやペンチは何かに使えるかも知れないが、少なくとも今私が役立てられそうなビジョンは浮かんでこない。

 

 

「仕方ない、他探すか……」

 

 

食べられるものか、水があれば良かったけれども……と落胆しながら、私は再び広大な地平線の広がる過酷な荒野に、取り戻したばかりの頼りない脚を踏み出した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

太陽の運行、時間経過。

おそらく、もう2日は歩いた。

 

 

ここまで飲まず食わずの歩き通し、しかし依然として文明の姿は無い。

万力のように体力を締めあげてくる渇きと飢餓感に苛まれ、もはや頭は働かない。

ボーッとした意識の中で、視界すら霞んでくる。

頭上にある太陽は憎たらしい程に相変わらず身体を焼いてきて、私に緩慢な死を与えようとしている。

 

 

「………っ…」

 

 

フラフラした足取りの為か、ほんの小さな石ころを踏んづけてしまっただけで、バランスを崩して転倒する。

砂まみれになり、仰向けに転がって見えるものは、晴れているのか薄曇りなのかもよくわからない、妙に圧迫感だけ感じるただただ広いだけの空。

 

 

「あー……もう無理……」

 

 

足が動かないし、その気力も無い。

リアルな死が近づいているのを実感するものの、飢えと渇きで放散する頭では妙に現実感が無い。

自分の名前すらわからないのに、自分が死ぬことを実感するとは……

 

 

「もう……いいや……」

 

 

そんな訳で私は考える事を放棄した。

 

もう疲れたのだ。

 

何もわからないまま死んでしまうのは癪だが仕方ないと割り切ろう。

どうせこの砂漠を抜け出すなんて事は徒歩では到底不可能だったのだし。

 

「どうせ異世界なら……チート能力でも使えたらよかったなぁ……」

 

……そんな風に諦めていた私の視界に飛び込んでくるものが一つ。

それは薄く視界に広がる何かの影だった。

思わず、力を込めて震える手をそこに伸ばす。

 

 

 

意識を向けるにつれて次第にハッキリ見えてきたその像には、特徴的な青いロゴが浮かんでいた。

 

 

『cities:skylines』

 

 

 

 










「次どこ行こう?」

  • 移動都市
  • 寂れた村
  • 無主地(都市開発場所)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。