パラドックスはアーツか否か   作:霊藻

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皇帝の利刃って強いんですよね。
まぁ、強いからどうという訳ではないのですが。




皇帝の利刃3分クッキング-ウルサス軍を添えて-

敵4個軍24万の所定地域への誘引に成功

作戦第一段階 「火入」 完了

 

 

ほの暗い陽光が砂塵の大地を照らしている。

遠くまで連なる陣形の中、リターニア、ヴァッサー領選帝候の艦隊は悠然と進軍を続けていた。

整然と並ぶ艦の高塔はまるで神殿の列柱のようであり、各所に配置されたアーツ増幅装置がかすかに光を帯びている。

歩兵や戦車も、統制の取れた動きでその下を進み、まるで儀礼のような荘厳さを帯びていた。

天災の残滓と、PARADOの潰えた防衛線。

その全てを踏み越え、艦隊は確かな勝利の風をその帆に受けていた。

 

──それは、何の前触れもなく訪れた。

閃光。

 

艦隊のちょうど中央、ひときわ巨大な旗艦が悠然と地を踏んで進むその真上の空間で、太陽すら霞むような強烈な閃光が炸裂した。

 

 

「ルーシの鉄床」作戦 第二段階 「鉄槌」 発動

 

PARADO戦略軍 戦術核攻撃実行

核弾頭搭載型巡航ミサイルが選帝候領艦隊および前線支援中のウルサス艦隊に着弾

 

 

「……どこだ!?どこが攻撃されている!東か、西か!?いや、北もやられたのか!?なぜこんなに──!」

 

接収した街を利用したウルサス軍前線基地の一つ、そこの司令部は、完全に熱を帯びた混乱の坩堝と化していた。

司令棟の中央、各部隊との連絡を一手に担う作戦室では、端末の警報が同時多発的に鳴り響き、各地の通信士たちが怒号とともに報告を叫んでいた。

 

「第七歩兵団、交戦中──支援要請!」

「敵、北東高地に攻撃中!現地部隊応答なし!」

「第六補給線が沈黙、護衛部隊壊滅した模様ッ!」

 

「──全面が攻撃されつつあるぞ!何故こんな短時間で……!」

 

現地司令官は、焦げたような声を絞り出しながら、指揮卓に貼りついた電子地図に目を這わせていた。

赤く点滅する地点が、まるで潰瘍のように、どんどん広がっていく。

 

「くそっ……どこから敵が湧いてくる!?他基地は何を──」

 

彼が怒鳴りかけたその時、窓から見える外が一瞬、白く明滅した。

 

「──ッ!」

 

反応する間もなく、爆発がやってきた。

天井を破砕しながら膨張した爆炎が司令部を呑み込む。

鋼鉄とコンクリートの防壁は紙のように破られ、通信機器は一瞬で沈黙、床ごと作戦卓が吹き飛ぶ。

司令官も、参謀も、通信士も、誰一人として次の命令を出すことはなかった。

残されたのは、爆風に巻き上げられた煙と火の海、そして統制を失った兵たちが逃げ惑う姿だけだ。

 

 

 

 

とあるウルサス軍前衛陣地。

そこに、強烈なジェット推進の咆哮が真上から突き刺さるように降ってきた。

警報が鳴る間もなく、頭上の空を、低空で侵入した戦闘攻撃機の編隊が疾走していく。

その瞬間、空気が爆ぜた。

 

「っ……!伏せろッ!!」

 

咄嗟に叫んだ中隊長の声が届くよりも先に、陣地中央部の弾薬テントが一撃で吹き飛ぶ。

炎が舞い上がり、空が赤く染まる。

 

続けざまに、別方向から迫る戦術爆撃機の編隊が大きな弧を描いて上空へと侵入。

甲高い滑空音が一瞬響き、次の瞬間には連続する炸裂が塹壕と遮蔽壕を次々と焼き払い、無防備な地上物をまとめて粉砕する。

 

「クソッ、術師は何をしてる……!」

 

誰かが叫んだが、応えはない。

隊のアーツ術師は、先の攻撃ですでに焼き払われていた。

 

そこから数十キロ後方……補給ルート沿いの谷間を進んでいたトラックの車列──食料・弾薬・燃料を満載した30両以上の車輌部隊に対し、唐突に爆弾が落とされた。

最初に爆発したのは液化源石を運搬していた燃料車だった。

地面を這うように火が広がり、次の瞬間には点火した導爆線の如く、連鎖的に炎上していった。

高く噴き上がる火柱、松明となる兵士。転がるドラム缶。破裂音と悲鳴が幾重にも重なる。

 

「誰か……っ!救援要請を……!」

 

前線部隊はすでにまともな指揮も統制も成立していなかった。

分断された各部隊は状況もわからず右往左往し、残された兵は錯乱し、武器を持ったまま呆然と立ち尽くす。

 

最早それは、統率の取れた軍隊ではない。

言うとすれば、ただの壊乱したウルサス人の群れ、だろう。

 

 

航空軍団 全領域へ同時打撃を開始

戦闘攻撃機1500機、爆撃機1000機、巡航ミサイル約800発による前線、兵站、後方拠点への一斉攻撃

 

 

闇に沈んだ戦場。

爆撃の音も遠のき、耳鳴りと風の音だけが支配していた。

その沈黙の中で、ウルサス軍の一小隊、行軍中だった数十名の歩兵部隊が顔を上げる。

時折飛来した爆撃機によって掘り返された地面と、冷え切った空気だけがそこにあった。

 

「……あれ、なんだ?」

 

眼前……薄暗く広がる敵陣方向の地平線が、仄かに明るく光っていた。

街の灯りでも、大規模な火災でもない。

瞬いては消える、何かのリズムを刻むような、橙色の閃光。

それがまばらにではなく、地平線一帯から、無数に。

 

「ちょっと待て……あれは、まさか……!」

 

次の瞬間────爆音が一帯を引き裂いた。

振動が大地を這い、頭上から降り注いだのは、砲弾の雨と衝撃波。

爆発、爆発、爆発………着弾音が止む暇もなく連続し、周囲が文字通り消し飛んでいく。

 

「ぐッ、伏せろォッ!!」

 

隊長が叫ぶ間もなく、一切合切を叩き潰すような爆風が周囲を飲み込み、数名の兵士が粉々に吹き飛んだ。

鉄片が肉を裂き、炎が皮膚を焼き、ただそこにいたというだけで、人が一瞬で無に帰る。

生き残った数名は、どうにか地面の窪地に身を投げ出すように潜り込んだ。

 

「な、なんなんだよ……! こ、こんなに撃ってくるなんて、輪無しども、オレたちのことを本隊か何かと勘違いしてるんじゃねぇのか……!?」

 

肩を震わせながら若い兵士が叫ぶ。

仲間は返事をしない。

生きているのか、死んでいるのか、それすらわからない。

 

幸なのか不幸なのか、これは勘違いなどでは無かった。

 

この苛烈な砲撃は、ここだけで行われている訳ではない。

規模の大小を問わず、数十人の小隊にも、数百人の中隊にも。

……もしくは無人の街にも。

東西千キロ超に及ぶ戦域の、あらゆる前線総てに、同等の砲撃が加えられていた。

それは何処かを狙った集中砲火ではない……場に存在する全ての目標を標的とした火力投射だった。

 

 

PARADO砲兵 攻撃開始

航空軍団の作戦開始と同時刻に前線展開中の全砲兵戦力が投入される

 

 

黒い靄が戦場を這っていた。

それは風に流されず、炎にも焼かれず、まるで意思を持って地表を舐め回しているかのようだった。

あらゆる生命を毒し、気を狂わせるその霧の中心を、ひとりの影が駆けている。

 

皇帝の利刃、その名を冠する者の一人。

黒衣を纏い、マスクで素顔を隠したその戦士は、まるで獣のように強靭な脚力を使って地を駆け、跳び、滑り、敵の肉を裂き、鉄を砕いた。

 

突進してきたPARADO軍の歩兵部隊が、靄に足を取られて一瞬動きを鈍らせた隙を逃さず、男はすれ違いざまに手にした刃を三閃。

簡素な装備に包まれた兵士たちが、何が起こったのかも分からぬまま地に崩れ落ちる。

そのまま人間とは思えぬ動きで地を跳ね、PARADO軍の戦車に飛び乗ると、装甲の隙間へと剣……それと共に“崩壊”を突き刺し、暴走させて爆発四散させる。

 

「全く…キリが無い、な……」

 

血と油の混じった煙の中で、男が毒づくように吐き捨てた。

自分の周囲には、すでに数十の屍が転がっていた。

それでも前線の様子は変わらない。

押し寄せる敵の波は止まず、むしろ勢いを増している。

空にはジェットの唸り声……どこか遠くでは、火柱が数本、同時に天へ昇っていた。

 

鉄と血と泥に染まった戦場を睨みながら、利刃の男は息を吐く。

確かに、一人で敵を何十人と屠った……だが、それでもまだ敵の数は減っているようには見えない。

 

そんな彼の背後に、もう一人の利刃が現れる。黒い靄の中からにじみ出るように姿を現し、剣を収めながら報告した。

 

「報せがある。味方の陣が、突破された。」

「反撃か……どこの陣だ?」

 

振り返りもせずに訊ねる利刃。

返ってきたのは、只一言。

 

「──────ここ以外の、全てだ。」

 

 

 

PARADO総軍第一梯団 前進開始

投入戦力:2個軍(40個自動車化歩兵師団)及び8個航空団

歩兵43万2000人,野砲3800門,戦車6600輌,作戦機800機

 

 

黒鉄の洪水が、地鳴りと共に迫る。

地平線から押し寄せるのは、数百を超える戦車の群れ。

深緑に塗られた車輌の真上を近接航空支援機が徘徊し、輸送トラックに分乗した自動車化歩兵が列を成して前進してくる。

戦車の砲塔が回り、次の瞬間、閃光と爆音が響いた。

 

「う、うわあああッ!」

 

爆風に吹き飛ばされるウルサス兵。

機関銃の掃射が塹壕の縁をなぞるように走り、走り出した兵士たちの背中に赤い花が咲く。

恐慌が連鎖し、ウルサス兵たちは統制を失って散り散りに逃げ出した。

 

その中で、一人だけ、まだ立っている影があった。

重装の盾兵。

 

体格の良いその兵士は、巨大な盾を構えて膝をつき、敵戦車の砲撃に耐えようとしていた。

弾着で地面が揺れ、熱風が身体を焼く。

機関銃の銃弾が盾の表面を穿つたびに、金属音が空気を震わす。

 

「これ以上進ませてなるものか……!」

 

震える腕で盾を支え、仲間が撤退する隙を一秒でも長く稼ごうとしていた。

装備には多数の擦過傷、装甲の間からは出血している。

それでも彼は、盾を下ろさない。

だが────

 

戦車の履帯が、無慈悲にもその身体を引き倒していった。

叫びも、音も、爆炎と砲声に掻き消され、彼の姿は泥と血に塗れた大地の中に沈んでいった。

その上を何事もないように戦車が次々と通過し、前進し続ける。

この瞬間も、背後では追加の戦車部隊と随伴歩兵が投入され、“鉄の波”は続く。

 

 

ウルサス軍正面 崩壊

PARADO軍第一梯団 全線でウルサス軍正面戦力を破壊し、複数の破口を形成

 

【挿絵表示】

 

最前線に存在したウルサス軍は小規模残存戦力として各個分断される

 

【挿絵表示】

 

 

 

霧は薄れつつあった。

もはや黒い靄を纏って場を支配するには心許なく、数百メートル先に潜む敵の戦車軍団も、かすかに見えるようになっていた。

 

だが、彼ら……皇帝の利刃達はまだ動かなかった。

周囲には、壊滅状態のウルサス軍歩兵大隊の残党が点在している。

戦車は半分が焼け焦げ、歩兵は散り散りになって窪地や廃墟に伏せているか、次の攻撃を恐れて動けずにいる。

 

「……完全に囲まれてるな」

 

短く、老練な男が呟いた。

戦歴だけで言えば彼が最古参で、他の利刃たちもその一言に黙って耳を傾ける。

 

「だが……攻勢に出てる敵の横腹に回り込めば、多少は動揺を与えられるかもしれん」

「横腹を……この人数で?」

「二十人だ、必要十分だろう。奇襲さえ決まれば、敵は乱れる」

 

そして、全員が頷いた。

言葉はなかった。命令もいらない。手短に装備を整え、包囲の向こうへと駆け出していった………その後だった。

 

走る利刃達の背後。

半ば衝撃波のような、空気が捩れるような音が空から降ってきた。

振り返るよりも先に、背中が熱風に押された。

地面が震え、空が白く染まる。

振り返った先の遥か後方……自分たちの出発点だった拠点のあたりに、不自然な爆炎が、巨大な柱となって立ち上っていた。

そして次の瞬間、衝撃は爆風となって地平を襲う。

 

「……今のは……」

「“天災”ではない、あれは……何だ……?」

 

誰もが動きを止めていた。

経験の深い利刃でさえ、今見たものを理解する言葉を持たなかった。

音はもう無い。

ただ、火の柱が静かに空を染めるのを、彼らはしばらく見つめていた。

風が吹き、焼けた地平の向こうから焦げた土と鉄の匂いが、潮のように押し寄せてくる。

 

静寂が支配する中で、誰かが呟いた。

 

「……狂っている」

 

 

PARADO戦略軍 第二次戦術核攻撃

ウルサス及びリターニア軍の“特殊ユニット”等で攻撃困難とされた地域に対して核攻撃を実行

 

 

荒野の真ん中に点在する、きれいなコンクリート造りの建物群。

代表がお手軽に作り出したこの街は、今やウルサス軍の後方駐屯地として雑然と再利用されていた。

街を囲う柵の一部は取り払われ、通りには装甲車と何かしらのタンク、野戦病院、雑多な兵站資材がひしめいていた。

ショッピングモールだった建物の中、即席の指揮所では、数人の将校が集まり会議を開いていた。

 

「……前線が完全に崩れたとの報告も来ている」

「第12軍からの連絡も不通になった。救援を送るべきだ」

「しかし、我々は予備戦力だ。無闇に動いて消耗しては、後が持たん」

 

将校たちの顔には疲労と苛立ちが滲んでいた。朝から立て続けに届いた戦況報告は、どれも混乱と崩壊の一語に尽きた。

 

「せめて偵察部隊を……」

 

その時だった。

耳の奥を撫でるような、低く重たい轟音。会議の空気が凍りついた。

一人の副官が窓の外に顔を向けた。

 

「……音が……上からだ」

 

誰かが叫ぶ前に、建物の外、通りにいた兵士たちの動きが止まった。

全員が、空を見上げていた。

空を横切る漆黒の影。

まるで地を覆う蝗害のように、何十、何百もの巨大な機影が悠然と並び、通過していく。

 

「……あれは、飛行装置か……?」

「一体何のために……」

 

次の瞬間、空が落ちた。

無数の爆弾が、空から落ちてきた。

規則正しく、正確に、容赦なく。

 

建物が吹き飛び、瓦礫が舞い上がる。

火球が蛇のように地表を舐め、薙ぎ払い、哀れな兵士達は階級の如何によらず皆等しくバラバラの屑と成り果てる。

迫り来る炎の壁に対して何かしら出来る者はおらず、街は1日で地図から消えることになった。

 

 

 

砂埃を踏みしめて進む、敗走中のウルサス兵の一団。

肩を貸し合い、血に塗れた顔を見せる者もいれば、ただ黙々と歩き続ける者もいた。

以前は大隊規模の兵力だった彼らも、今や十数名にまで減っている。

 

「……見えた……町だ……」

 

誰かが、かすれた声で呟いた。

荒野の向こう、かつて駐屯地として機能していたはずの街。

だが、彼らがそこに見たのは、灰と残火と、黒い煙に包まれた瓦礫だった。

整然と並んでいたはずの建物はことごとく倒壊し、焦げた車両が通りに転がっている。爆発でねじ曲がった鉄骨、崩れた野戦病院の屋根、燃え上がる倉庫。

無意識に歩を速めた若い兵士が、膝から崩れ落ちた。

 

「……全部、やられてる……」

 

声に力はない。

その時だった。

 

「上空に機影!」

 

見上げた先に、複数の影が迫っていた。

PARADO軍の攻撃機だ……それも、単機ではない。三機、四機、影が次々と空を埋めていく。

 

「散開っ!」

 

その叫びを引き裂くように、地面が爆ぜた。

爆風が土塊をめくり上げ、敗残兵の列を吹き飛ばす。

直撃を受けた者は肉塊となって四散し、爆風で吹き飛ばされた者が瓦礫に叩きつけられる。

すぐさま、攻撃機から機関砲の連射が地を薙ぎ払った。

 

「伏せろっ、伏せ──!」

 

指揮を取ろうとした兵士が、火花と共に体を裂かれて倒れる。残された者たちは本能のままに走った。街の影へ、倒れた建物の裏へ、崩れた土手の陰へ。

だが逃げ場はなかった。

機関砲の音が途切れることはなく、爆撃の残響が周囲に重く響き続ける。

焼け焦げた街の中、たった今たどり着いたはずの「安全圏」は、すでにただの墓場となっていた。

 

 

第一梯団 順次侵攻停止

包囲した敵部隊への対応、核攻撃による放射性降下物、部隊の保有する燃料、弾薬、食料等物資の消耗、指揮統制率の低下に伴って部隊の突進衝力が減衰、やがて停止する

 

 

「前線を作って、攻撃線を引いて、スタート。いつも通りだね」

 

 

【挿絵表示】

 

PARADO総軍第二梯団 前進開始

投入戦力:4個軍(30個機甲師団,20個装甲砲兵師団)及び8個航空団

歩兵44万4000人,野砲5100門,戦車9400輌,装甲車8400輌,自走砲4400輌,作戦機800機

 






パラドゲープレイヤーが個々の兵器の性能にあまり頓着しない理由、解って頂けましたか?
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