パラドックスはアーツか否か   作:霊藻

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準備回です。






行動準備

 

とりあえず、私の「能力」について分かったことを記載する。

 

主に試用実験を行った能力は「cities skylines」だけであり、その他のゲームに関しては人的・資源的リソース不足のため手をつけていない。

 

まず前提として、私はゲームと同じように特定の建造物や道路、インフラを設置する事ができる。

この際、本来は手持ちの資金を消費する筈なのだが、ゲーム初期設定で無限化した時と同じく、能力初使用時に無限化を選んだ為、ほぼ無制限に設置できると考えられる。

また、設置した建造物の内部構造や設備は、ゲーム的な都合を残しながらもリアル化されており、現実の同種施設と同じように利用することが可能である。

 

ゲーム内では地形の造成に使う土砂だが、こちらも資金同様に無限化されており、自身の位置を基準に一定高度内、水平方向には約10km四方までの範囲で好きに地形を隆起または陥没させることができた。

 

まだ未確認ではあるが、資金と土砂が無限化していることを鑑みると、恐らく自身の能力で採掘するのに限り鉱石や石油も同じように採掘限界量が無限化されると考えられる。

また、現状確認する方法は無いが、自然災害の発生確率も0となっているかもしれない。

もっとも、これは確証が無いので余り信頼できる結論ではないが。

 

その他にゲーム内システムも自身の能力として活用できるらしく、都市や地勢の状況を視覚情報として確認できる「情報ビュー」を使えた。

土地の汚染度や地下資源の埋蔵場所、および量を色の濃淡で判別できるのは、様々な場面で役立ちそうである。

 

それと同時に、この地域はかなり広域に渡って汚染されている場所が広がっていると判明した。

特に、時々みかける大きな黒い石の刺さっているところを中心とした範囲の汚染が深刻だった。

埋蔵資源の方も大分偏っており、農業や林業に適した土地は無く、石油も確認されず、時々鉱脈がある程度だった。

しかし、汚染源となっているあの大きな黒石に鉱脈が被さっている分布をよく見ることから、あれは石綿やウラン鉱石のような毒性が強い資源なのだと予想をつけられる。

 

 

「さてと、後は…………他のマップを選んだらどうなるんだろう?」

 

 

他マップを選択できることは、初回使用時に確認済みだ。

今回は、実際にマップ内に入るところまでやってみよう。

 

手慣れてきた実体の無い画面操作を難なくこなし、新規ゲームを選んだ私は、基本となる温帯の自然豊かなマップを選択。

都市名はデフォルトネームのままゲームを始める。

ゲームと同じように画面の中で少しのロードが挟まると同時に──

 

 

「!?」

 

 

それは、ほんの一瞬の出来事だった。

僅かな目眩と共に、あたり一面がマップと同じような青々とした草原になり、遠くには豊かな森林が現れていた。

ゲーム内俯瞰視点で上空から観察する限り、自身を中心に一辺約10kmの正方形の範囲内がゲーム内マップと同じような環境下に置かれていた。

情報ビューで確認する限り、ゲーム内で遊べる同一マップの中身と瓜二つに見える。

しかし、川の流れは10kmで寸断されているので、水域は実質的に大きな湖となっている。

 

 

「これって……テラフォーミングってやつ?」

 

 

規模の大きさに多少手が震えながら、一応としてセーブロード画面から新しく……つまり今選んだマップを消してみる。

すると、また一瞬だけ目眩がした。

 

 

「……なるほど、そういう挙動」

 

 

見渡す限りの周辺には、緑溢れる大地は既に無く、この2~3日で見飽きたテラの荒野が広がっていた。

 

 

 

 


 

 

 

 

という訳で、今後の方針なのだが……………………

 

 

このマップ上書きによる疑似テラフォーミングは、あまりにも目立ちすぎるように感じる。

 

 

「私はこの世界についてよく知らない。つまり、この能力が他者に露見した場合のリスクを正確に理解できてない以上……あまり目立つ能力使用は避けたい」

 

 

この世界に地球と同じ容姿のヒューマノイドが生息していること、それは恐らく自動車を製造・運用できるだけの文明を持っていることは、先の遭遇からも予想できる。

大型の白兵戦武器を持っていた様子から、それらを十分に扱うだけの身体能力を有することも分かるだろう。

 

そうして考えた場合、現状の不安点は「私の身体能力はおそらく普通かそれ以下」であるかもしれない点だ。

 

 

「見た目通り、と言えばいいのかな?」

 

 

身体能力が普通、つまり、無法地帯の荒野に放り込まれた現代人と考えれば、その生存に対する過酷さが分かるだろう。

おそらく、1対1でも容易に斬り捨てられるに違いない。

 

それに反するように、能力の便利さが効いてくる。

 

私の能力が露呈した場合、それを目当てにどこかの誰かが私を捕まえに来る可能性があるということだ。

そして、私の身体能力ではそれに十分対抗できない。

 

隕石も地割れも、雷雨も、あまり細かい調整が効かず、尚且つ下手に近距離に撃ち込むと容易に自滅する。

建造物の召喚や地形操作では隙が大きく、至近距離で囲まれたらどうしようもない。

 

 

「火力支援ならともかく、直接戦闘に関しては私の能力は扱い辛い……」

 

 

街を作って人を増やし、他のゲームの能力で自前の戦力を用意することも考えた。

しかし先の遭遇を考えると、街が大きくなる前に野盗などの襲撃にあって壊滅する可能性や、街の位置によっては国家またはそれに準ずる勢力の攻撃を受けるかもしれない。

また、単純に不毛の大地が多く、居住に適していない。

以上の理由から、街づくりに関しては尻込みしている状態だった。

 

 

「一先ずは、目立たず生き残れるような準備しないと」

 

 

広い平地に車を止めると、周辺を目視と俯瞰視点でざっと確認し、目撃者が居ないかを確かめる。

そうして安全を確認した後に、能力の行使を始めた。

 

作るのは、数百メートル四方の陥没穴である。

 

 

「よし、と。これで遠くからは見えない筈」

 

 

降りやすいように造成したスロープを伝って穴底に着くと、そこに基準となる道路を引き、病院と警察署、そしてショッピングモールを建造した。

 

 

「お邪魔しまーす……」

 

 

最初に警察署に入ると、署内を物色する。

カウンターの扉を片っ端から開けていき、置いてある鍵を根こそぎ持っていく。

それで、警察署内のあらゆる扉に、持っている鍵を片っ端から突っ込んで回していった。

ある意味ローラー作戦なのだが、それが功を奏して、開く扉は段々と増えていった。

事務室らしき所の机も全て開けていき、そこで見つけた鍵も持っていく。

そうした地道な解錠を繰り返して、遂に……

 

 

「これも違う、これも違う……これは、開いた!」

 

 

扉を開いた先にあったのは、棚に並べられた銃、銃、そして銃。

そう、警察署内の武器庫が狙いだったのだ。

 

 

「使い方はよく分からないけど、何となく使えそうな気がする……とりあえず持ってけるだけ持ってこう」

 

 

適当な拳銃を数丁と弾を幾つか拝借し、手押し台車に載せていく。

念のため事前に、警察署を出した場所がアメリカをモチーフにした建物が建つように指定をしていた為か、散弾銃やらライフルまで用意されている。

それらも弾と一緒に台車に載せていった。

 

そうして、一通りの銃火器を拝借した後、射撃訓練場に立った。

 

 

「最低限、使えるようにはなっておかないとね」

 

 

自分の出したものだからか、何となく使い方が理解できる。

拳銃の弾倉に弾を込めて、スライドを引き、構えて的を狙い、引き金を引く。

 

ドン!

 

おうっ……手のひら痛っ……強い反動を感じて一瞬とんでもなくビビった。

 

どれどれ、結果は…………やっぱり外れてるねぇ……

 

その後も一通り練習してみたものの、落ち着いて撃っても百発百中とはいかずに当たるか否かは半々といったところ。

ライフルや散弾銃も試したものの、同じような結果だった。

とはいえ、これはあくまでも護身用。

最低限使えるのならそれでも構わない。

 

台車を押して外に出た私は、改めて出したキャンピングカーに銃と弾を積み込んだ。

 

 

 

次は病院である。

ここでは医薬品を漁ろうと思っていたのだが、失敗した。

プロ用に正式名称しか書かれてない薬の種類なんて素人には分かりっこなかった。

なんとなく分かる気がするものの、薬を“なんとなく”で使うのは流石に気が引ける。

仕方がないので、目についた瓶を片っ端から袋に詰め込み、包帯やマスク、体温計などの医療品を積み込んでいく。

 

 

 

そうして最後に、ショッピングモールの中に入って行く。

先ずは、服装から。

 

 

「今の薄着だと心許ないし、とりあえず着替えも幾つか持っていこう」

 

 

棚にあった適当な服や下着等を、拝借したリュックサックに放り込み、ついでにサイズに合うパーカーを羽織る。

これで、夜に気温が下がってもなんとかなるだろう。

他にも、懐中電灯や電池、手袋、タオル、ライターなどサバイバルに必要そうなものを一式持ち出し、収納袋に詰め込んでいく。

 

 

「市販の医薬品なんかも必要だよね……病院のやつは間違ってたら怖いし」

 

 

また、保存の効く食品やペットボトルの水も箱単位で持ち出して、車に載せていった。

ついでにメモ帳やペン、トイレットペーパーなんかも調達しておく。

毛布や寝袋、モバイルバッテリーも持っておいて損は無いだろう。

見つけたラジオの電源をつけてみるが……今のところゲーム内音楽が再生されるだけだった。

 

 

「……なぜか急に罪悪感沸いてきたけど、ここまできたら仕方ない!」

 

 

最後に、モール内にある小さな宝飾品店に入ると、ショーケースのガラスを割って、展示してあるジュエリーやら貴金属類を漁った。

 

何も、物欲があった訳ではない。

これは換金目的の品である。

 

日用品や最低限の武器は私の能力があればノーコストで調達できるものの、それで手に入るのは、あくまでも「能力で出せる建造物の中に存在して妥当な物」に限られる。

しかし、ここは異世界である以上、現状のままでも足りると判断するのは早計に過ぎるだろう。

となれば、足りない物は此方の世界で調達することになり、その為に必要になるのは、この世界の通貨である。

 

もっとも、私の知る世界とは価値基準が違って宝石や貴金属が無価値である可能性も無くはないが、とりあえず持っておいて損は無いだろう。

 

そうして、すべての準備を終えた頃にはすっかりと日も落ち、辺りは暗くなっていた。

 

 

「最後に、全部無かったことにしないとね」

 

 

物資を積み込んだキャンピングカーを発進させながら、出した建造物を全て解体して証拠を隠滅する。

陥没させた地形も元に戻し、一帯は私が来る前の、何の変哲もない荒野に姿を戻した。

 

 

「よし……どこに行くかは、明日にでも決めようかな」

 

 

しばらく走ったところでキャンピングカーを止めると、俯瞰視点で周辺14km四方に動くものは無いと確認。出入口をガッチリと施錠し、拳銃を枕元に置いた。

そうしてようやく、車内のベッドに潜り込む。

 

 

「あぁ~……久しぶりの……」

 

 

そうして私は、睡魔に身を任せた。

 

 

 

 

 

 






原作キャラが出てこない……


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