パラドックスはアーツか否か   作:霊藻

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シティーズ流高速まちづくり


荒野の町に

 

 

 

「ホントなんだ!オレは確かに見たぞ!青髪のリーベリが建物を消して、おまけに隕石まで落としやがったところを!!」

 

「バカいえ、そんなのが居たらとっくに有名になってらぁ」

 

「嘘じゃねぇって!!」

 

 

とあるサルカズ傭兵が、食事の席で仲間内にそう訴える。

しかし傭兵の仲間は彼の話を真剣に取り合わず、単なる妄言、もしくはアーツか何かに幻惑されたのだと結論づけた。

 

 

「ここに来る途中で巨大なクレーターを見たんだけど……」

 

「あのスゲェ音は隕石が落ちた音だったってのか?」

 

「そういや一昨日、北の空が光ってたな」

 

 

しかし、少人数の単なる妄言に終わる筈だったそれは、他の噂話と組合わさり、徐々に広まっていく。

 

 

「なんでもそいつが言うには、青いリーベリが隕石落として食い物や服が沢山ある建物を吹っ飛ばしちまったんだとよ」

 

「それって、例の隕石か?アイツらが落ちるとこ見たっていう」

 

 

噂話は、組合わさり、形を変え、炭を焼く火の様に、人から人へと伝播していく。

聞いた噂話に各々が解釈を付け足していき、その解釈がまた次の人に“真実”として伝わり、話は徐々に変質していく。

 

 

「サルカズ傭兵の目の前で、青いリーベリが食糧庫を吹っ飛ばしたと」

 

「リターニアの術師か?それともヴィクトリアの工作員?」

 

 

人は己の見たいものしか見ない。

誰が言ったか、その言葉通りに噂話は“サルカズの人々が望む話”へと形作られていった。

 

 

「やっぱり、外の奴らにロクなのは居ねぇ。奴らをカズデルに入れるべきじゃねぇんだ!」

 

「そうだそうだ!」

 

 

良くも悪くも、サルカズの望む話へと。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「よし、南に行こう!」

 

 

色々考えてみた結果として、私はそう結論を出した。

 

理由としては、何よりも先ず自分自身の生存能力不足に結実する。

物資だけは豊富に用意できるものの、それを扱う私の性能は良くて一般人程度。

近距離の戦闘能力は下の下であり……そして恐らく、無政府地域でのサバイバルにはそういった近距離の戦闘能力が求められる可能性が高い。

何をするにも準備と余裕が必要となる私みたいな奴は、最初に拠点となる街を作らなければ基盤の不足でジリ貧に追い込まれるだけだろう。

その考えの元、地図を見て都市開発に相応しい地域を探す。

 

今いる場所が「カズデル」と呼ばれている場所の北であることは、能力からだいたい想像がつく。

そうしてカズデルの北を見たところ……ここはダメだな、となった。

 

地図によれば無主地とのことだが、その周囲には多数の国が集まっている。

この場合、無主地とは言いつつ各国の交易路が交差している交通の要衝である場合が多いし、見方によっては各国のバランスの元に無主地となっている場合もある。

そんな所に独立勢力が住み着いたら、悪戯に各国を刺激することに繋がりかねない。

最悪は戦争、併合だ。

 

 

「──となるとカズデルから近く、尚且つ国家の存在が薄いところ……といえば、カズデルの南にある未踏破地域近傍くらいしか無いよね」

 

 

未踏破地域と言うくらいなのだから自然環境は過酷であると考えられる。

しかし、地球の寒帯くらいの気候や、地形が険しい程度なら能力でなんとでもなる。

とにかく、実際に一目見てみないと分からないとして、キャンピングカーのアクセルを踏み込んだ。

 

 

そうして、テラで覚醒した当初よりは大分快適な旅を経て数日。

ハンドルを回しながら情報ビューで汚染されていない、資源がある、比較的豊かな土地を探すものの、そう好都合な場所は簡単には見つからない。

 

しかも、南に行くまでの道すがらで何度も角付き人間の集団を割と良く見た。

大抵は古い武器で武装しているし、この世界の住民はみんなあんな感じなのかなぁ……

 

 

「……っと、ここら辺とか良さそうだね」

 

 

汚染地域からは十分離れているし、小さいけど鉱物資源も埋まってる。

それに、奇跡的に農業が出来そうな土地もあった。

色々回ってみたものの、この荒れた地域でここまでの好条件は中々無い。

 

 

「よし、じゃあ都市名は……南の端っこだから“サウスリム”でいいか、っと」

 

 

都市名を決定した後に、外部接続道路……引っ越しや輸出入で使う為の都市外に繋がる道から、建設予定地に向かって道路を敷く。

この外部接続、ゲーム中の高速道路とは違ってどう見ても平らなだけの荒野なのだが、ちゃんと外部に接続されている扱いらしい。

ここら辺はこの世界の流儀とかなのかな、たぶん。

 

道路を地形にあわせて適当に張り巡らせた後に、住宅地の範囲を設定する。

cities skylinesでは、住宅地や商業施設、産業施設の大半は地域を指定すると、需要に応じて勝手に建造されていく仕様だ。

ゲーム内ならば需要は内部のなんかしらの計算によって勝手に増えたり減ったりするものなのだけれど……一応“現実”だとどうなるのやら……。

 

 

「おっ、始まった」

 

 

範囲を設定した後、ドンドンと民家が建ち始めていく。

これ、他人が見たら独りでに家が建造されていく様にだいぶ驚くんじゃないかな?

そこら辺の違和感とかは、人口が増えたら能力側で解決してくれそうとは何となく感じるけども。

住宅の建造にあわせて、上下水道や電力インフラの敷設を行う。

ここで使える風力発電、なんかゲーム的な仕様が残ってるのか現実のそれと比べてやたら安定して発電できるのが不幸中の幸いである。

これで暫くは順調に発展していくだろうし、少しばかり様子を見ておこう。

 

 

「住人も徐々に越してきたね~」

 

 

ニョキニョキと生えてくる住居を尻目に街中(予定地)を散策し、今しがた都市外からやってきた車を見る。

どうやら家族ぐるみで引っ越してきたらしく、出来立ての住居に入ったワンボックスカーから出てきた子供連れの夫婦は、はしゃぐ子供に手伝わせつつ、トランクを開けて段ボールに詰められた荷物を家の中に運んでいる。

 

その様子を見ていたら、家族の一人、恐らく奥様が私の方に気付いたらしく、此方に近づいてくる。

ヤッバ、失礼だったかな?

 

 

「あら、市長さん。ごきげんよう」

 

 

心配とは裏腹に、その奥様は柔和な雰囲気で声を掛けて来た。

……というか、私が市長だって良く分かったね。これもゲーム的な都合?

 

 

「あぁ、どうも~~……えーと、サウスリムにようこそ」

 

 

────こうして会話してみる限り、普通の人間に見える。

しかし複数の住人と話していく中で、私は確実にこの家族らが“能力によって産み出されたか現れた”人達だと確信した。

それは、とある質問をすれば明白だった。

 

 

「そういえば、サウスリムに越す前はどちらに?」

 

「……ごめんなさいね、それは私には答えられないわ」

 

 

困ったような笑みを浮かべながら返答する奥様。

それ以外では何処からどう見ても、通常の人間と同じ挙動を取ることに多少の気味悪さを覚えたものの、そのうち慣れるだろうと気にしない事にした。

 

 

 

街が順調に発展していく中で、重要になってくるのが産業である。

住人の職場になると同時に、商店に商品を供給する役割も持つエリアであり、その立地や配分は発展速度に大きく影響してくる。

 

 

「目指すは自給自足っと」

 

 

産業は、原材料を輸入して加工する一般産業と、原材料自体を生産できる特化産業に分けられるが、今回は各産業のバランス良く、少しばかりの農業重視で行くことにした。

理由としてゲーム内では、都市に足りないものは都市外からの輸入によって充当するが、ここはあくまでも荒れ地広がる異世界。

輸出入が可能かは不明である故に、なるべく産業のサプライチェーンをサウスリム内で完結させたい。

最低でも、食糧不足にだけはなりたくない。

私は悠々自適な市長ライフがしたいのだ。

 

 

「それで市長、町外れに作った空き地はどうするつもりなんだい?」

 

「うーん、パン工場かレモネード工場でも建てようかなって考えてる(どうせ資金無限だし)」

 

「ワオ!それはクールだ」

 

 

古参住民の庭で、お呼ばれしたバーベキューの肉に食らいつきながら答える私は、既に住人に慣れているのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「スラム街……?こんなのあったっけ」

 

 

暫くして、街の住民は二種類存在することに気が付いた。

それは、比較的街の外れの方に、ゲームには実装されていないようなみすぼらしい住居を発見したことがきっかけだった。

その内の一つを見てみると、中には怪我をしているらしい角の生えた男と、その男を手当てしている頭に羽っぽいものがある女性が居た。

両者は、此方に気が付くと目を丸くした。

 

 

「えっと……お嬢ちゃん、どうしたの?」

 

「なんだぁ……誰か来たのか」

 

 

女性の方が、治療の手を止めてこちら出入口の方にやってくる。

おや?初見で市長だと分からないパターン?

 

 

「ふむ、そういう事もあるのかな…………あ、私はサウスリムの市長をやってる者ですけど──」

 

「っ!!」

 

 

一応名乗ってはみたものの、どう考えても市長にふさわしいナリはしてないだろうね。

と、私は自分自身の容姿を自嘲するものの、女性の様子はそれに反して驚くような、追い詰められたかのような反応だった。

 

 

「申し訳ありません、居住の許可は未だ取っていません……ですが、ここには多くの怪我人が居て、小さい子供も居るのです!どうか、どうか何卒ご容赦を…………!」

 

 

「あっ、ハイ」

 

 

すがり付くかのように懇願する女性──良く見たら医者っぽい格好だった──に気圧されて言葉に詰まる私だったが、それを紛らわすように口を開く。

 

 

「それなら居住申請してもいいんじゃないですかね(どうするかは知らないけども)……多分すぐに受理されると思いますよ」

 

 

「えっ……?」

 

 

市長にしては随分と投げ槍な回答だったとは思うものの、すこし後に人口が一気に増えて住宅需要も増加した辺り、転入は成功したのだろう。

そうして、私は何時もの質問を投げ掛けてみる。

 

 

「そういえば、ここに来る前はどちらに?」

 

「カズデルです……私はそこで医師をしていましたが、色々あって、カズデルに居られなくなったもので……」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

1085年末、カズデル

 

 

 

「……どうした?」

 

「ケルシー士爵、少しお耳に入れたいことが──」

 

 

 

 

 

 





ゲーム的な仕様による違和感は、人口が増えていく中で違和感の無い形に落ち着いていきます。
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