パラドックスはアーツか否か   作:霊藻

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パラドゲー民は地図上の線が前進したり後退したりする映像だけで興奮する変態しかいない。





幕間

 

 

 

 

 

────メチャクチャ緊張した…

 

 

 

ここはカズデル、その中心地。

しかしまぁ、中心地というには多少荒れて…………いや、荒廃しすぎてない?

200年前に事実上滅亡して、それから傭兵派遣業が事実上の主要産業になってて、国の根幹がガッタガタになってるって話は聞いてたけども。

 

こりゃあ想定以上だなぁ…………。

それならそれで、ウチの産業で一枚噛むことができるからいいけど。

 

 

ところで、何故サウスリム市長であるこの私がカズデルに居るかというと、端的に言えば、お偉いさんにお呼ばれしたからである。

 

相手は誰か?

 

聞いて驚け、テレジアテレシスのテレテレ元首兄妹に王庭とかいう族長連合。

雰囲気がもう魔王城のラスボスだよ。

 

なんか、そこで方針会議みたいなことするからとか。

で、最近カズデルと仲の良いウチが外部オブザーバー的な感じで呼ばれたってワケ。雰囲気だけでチビりそうだったよ。

 

 

 

焦りに焦りまくって

 

『将来の戦争はより高度化するし、戦場だけでなく後方の国民や、国の持てる資産全てを投入して戦う国家総力戦になる。テラの現国家群は国家総力戦概念の前では政治経済の体制が非効率に過ぎる為、付け入る隙はそこにある。また総力戦に際しては国家の戦力から産業といった持てる全てを投入する以上、国民すべてが高い教養や能力を持つべきであり、その意味ではテレジア殿下の教育重視や弱者救済的方針は国家国民の平均値を向上させるとして総力戦概念で見れば非常に有益たりえる。仮想敵国においても彼らは自国内ですら纏まりが無く、200年前の事態は例外的である。むしろ全てを相手にするのでなく、傭兵集団としてのフットワークの軽さを生かして連合軍を互いに協力させている人物、勢力間に立ち折衝を担う“組織の力点”を重点的に狙い機能不全からの各個撃破を目指すべきである。また、戦場で相対する前に有利な盤面を築くことも重要であり、傭兵として世界各地にコネを持つサルカズはそれを利用して政治バランスを微妙に変動させ自らに有利な状況を作ることも不可能ではない。結局のところ各国のお偉いさんに“戦うより共存する方が損しない”と思わせるような仕組みを作ることが肝要である。ぶっちゃけ過去を取り戻すより未来を取り寄せる方が楽よ楽。具体的には手始めに国際金融業でもやってみたら?(要約)』

 

みたいな感じの事を頭真っ白になりながらスピーチしちゃった。

 

もしかしたら生け贄にされるかと思ったよ……。

 

そんなこんなでやっと解放されて、今は片隅の屋上になってる所で缶コーヒーを一服して解放感に浸っています。

あ、これウチで作ってるコーヒーじゃん。民間にも出回るようになったんだね。

……っと?背後から扉の開く音が。

 

 

 

「先程の演説、中々に興味深いものであるな」

 

 

てっ、ててて……てれ、て、テレシス閣下!?!?!?!?!??!?!!!

 

 


 

 

 

やっと解放されたと思ったら、テレシス閣下と1on1、誰かタスケテ。

 

で、何々?

テレジア殿下の理想をどう思うかって?

そりゃあ、聡明で慈愛溢れる殿下の深慮、この私、誠に驚き痛み入る────

 

公式の場じゃないから遠慮はいらない、本心を話せって?

 

アッ、ハイ

 

まぁ良いんじゃないですか?

戦争やってるよりかは平穏な方が色々生きやすいですし。

だいぶ気の長い理想な事は否めませんがね。

個人的には好きですよ、テレジア殿下の考え方。

 

時期尚早だと思うかって?

……と言われましても。まぁ、この手の話は大体、何時の時代だろうとそれなりに時間掛かりますし、早い内に始めてても良いんじゃないですかね。

理想が成るとしたら具体的には……300年ほどかけてテラの社会が熟成して、総仕上げにテラの全てを巻き込む規模の大戦争を二回くらいやった後になりますかね。

あ、あくまでも私の勝手な戯言ですよ。

 

というより、閣下もそれは分かった上なのでは?

気の長い計画に人を着いて来させるには、ある種のカリスマが必要ですからね。

テレジア殿下はまさしくそれに相応しいと、外から見てる分にはそう思います。

で、殿下が人々を引っ張っていく中、閣下が魁として足元の、より現実的な問題に対処する……みたいな感じだと思ってましたが…?

 

 

何故サウスリムがカズデルに肩入れするか?

そりゃあ……怒らないでくださいね……それは、カズデルが小さいからですよ。

もし我々の作る財貨を小遣い程度にしか思わない他の強国相手じゃ簡単に飲み込まれてハイ、おしまい。

ウチは弱小ですから。

それなら、カズデルの方がまだ相対的な力量差が無く、お互いにwin-winの関係が築けるってモノです。

我々は貪欲な他国を気にせず経済活動ができ、貴殿方は物質的に安定する。

……だから敢えてウチは軍備や軍需関係にあんまり手をつけてないんですよ。

それは、バベルを通して貴殿方カズデルの領分なんですから。

無闇矢鱈にそういうのを侵すのはバランスが崩れたり、それで互いに疑念が生じたり……録な事がありません。

要するに政治的メッセージですよ。

『こっちは筋を通すからお互い共益関係で居ましょうね~』って。

 

大分ぶっちゃけましたが、まぁ、この行為自体も政治的メッセージってやつですね。

二心は無いから信用して~って。

 

サルカズは信用できないか、って?

サルカズというか……サルカズに限らず人間ってのは大体疑り深い生き物ですし。

それを前提に考えてるだけです。

つ・ま・り、カズデルがどこぞの他国に落とされたらサウスリムもおしまい。

 

運命共同体ってヤツですね。

 

私自身の目的?

うーん、そうですね。端的に言うと、テラの外ですかね。

こんな狭いテラでうだうだやってるから暗いことばかり考えてしまうんですよ。

皆で仲良く、未踏破地域に踏み込みましょう。北の氷原を制圧し、南の熱帯を冒険し、須くの海を往き、やがてはテラが一丸となって星々の海に漕ぎ出す。

──どうです?楽しそうでしょ?

 

 

 

 


 

 

 

 

「──という訳で、やっぱり人間、未踏破地域に進むべきだと思うんですよ」

 

 

食事の席、サウスリムから輸出された食材が豊富に使われている料理をほぼ完食した私は、向かいの席に座る淡緑のクールビューティー猫、ケルシー女史に話す。

 

 

「……確かに、テラの歴史において未踏の地に踏み出すことは、大帝国の繁栄の礎として幾度と無く行われてきた。ウルサスは北の不毛地帯を踏破し国土を増やす事で富を蓄え、今日の強国を築き上げた。ナイツモラはその偉大な征服事業の一端として南の外地を踏み越え、今日ではサルゴンにあえて足を踏み入れようとする人外の脅威は完全になくなったとされる。だがしかし、我々はそれよりもまず対処するべき喫緊の課題を抱えている」

 

 

このケルシー女史の話、内容こそ理解しやすいが、その内容が大抵全部盛りで解釈するのにやたら時間が必要な面白い話し方をする。

テラの学者先生はみんなこんなんなの?

 

 

「でもケルシー先生、エントロピーが極大に達するように、狭いテラの中で人類の業の縮小再生産を続けてちゃ、いずれ緩やかに滅び去るだけですよ。今のテラ社会には対処するべき喫緊の課題があるとは思いますが、そもそも社会が存続していく上で問題が起こるのは必然的であって、次から次に出てくる課題ばかりに目を奪われて機会を喪うのは勿体無いじゃないですか」

 

 

「確かに君の言う通り、目の前の課題を無軌道に解決するだけではテラの抱える根本的な問題は改善しないだろう。医療においても対処療法だけでは限界があることは知っての通りであり、いずれ、より先に進むための行動は必要となるだろう。しかし、それはテラの環境において脆弱な存在である我々にとっては自滅と表裏一体であり、容易に選択するべきではないと考える」

 

 

「そう、それ!我々は弱者なんですよ。弱者が順当な戦略を立てても強者に順当に圧されるしかないのは歴史を鑑みれば容易に想像がつきます。故に我々は情勢に流されるだけではなく機先を制して大胆に動き、状況の主導権を握り続けるくらいの気概を持つべきなんだと、私はそう思います。というかここのガッタガタな経済建て直すには公共事業なんかで多少強引に経済ぶん回すくらいしないとどうにもこうにも……まぁ私も足許を疎かにして打ってでるのは拙いとは思うので、こちら、経済的観点から鑑みた拡張余裕度を纏めた即興の資料を…ケルシー先生?」

 

 

「聞いている……」

 

 

 

 

「────市長、ケルシー先生をあまり困らせないでくださいね」

 

「サマラ…!」

 

 

私が資料を取り出してケルシー女史に押し付けようとしていた時、後ろから声が掛かる。

そこに居たのは、地球でいう中学生くらいの容姿の黒髪サルカズ、名前はサマラ……私の助手である。

 

 

「それと、カズデルでの貿易船建造関係の仕事も残ってますから、あまりのんびりしちゃダメですよ」

 

「えぇ~まだ余裕あるから少しくらい……」

 

「アーセルさんとカナリーさんの結婚式もあるんですよ。徹夜で仕事明けのフラフラな状態で参加したらそれこそ失礼にあたります」

 

「ウッ……」

 

 

元々は、街中で生活苦から私の財布をスろうとしたところを、護衛にいたアーセルさんに取り押さえられた孤児。

なんとなく言葉の端々に知性を感じたので気紛れに引き取って助手に仕立て上げてみたんだけど、するとまぁ優秀。

社会学習の為にバベルに派遣してみたりとかもあったんだけど、なんとケルシー女史に師事してしまったらしく……引き取った頃の可愛い姿はもう無く、辣腕助手としてスケジュールで私をしばき回している。

 

あぁ、アーセルさんは元独立傭兵のサルカズで、街外れにスラム作ってた人。

この前の野盗撃退でも率先して戦って、今は移住してきたサルカズ達の纏め役。

カナリーさんはスラムでアーセルさんを治療してたリーベリの方で、バベルに雇用されてるらしい。

あれから仲良くなって、先日ついにゴールインしたとか。

目出度いね。

 

 

「それに、殿下の目の前で情けない真似は止してください」

 

 

えっ、殿下?

 

ふと振り返ってみると、そこには…

 

 

「…………」

 

 

…ニコニコ顔の女王様が……

 

てっ、ててて……てれ、て、テレジア殿下!?!?!?!?!??!?!!!

 

 

 


 

 

 

 

 

青いリーベリの市長が、小さなサルカズの助手に連行されていく様子を、二人は眺めている。

 

 

「今の様子、初めの頃の警戒感が嘘みたい」

 

「それは……必要なプロセスだったんだ」

 

「そうね。ふふっ、ケルシー。貴女が楽しそうで何よりだわ」

 

「………………否定はしない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ケルシー構文にはケルシー構文をぶつけんだよ!

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