独自設定回……考察回になるのかな……?
「──ある程度はできましたが、これならセミオートバリスタの方がまだ使いやすいです」
「ダメかぁ……」
突然だが、このテラにも「銃火器」は存在する。
しかしその銃は、私がよく知る地球のそれとは全く違うモノだ。
地球の銃は火薬の力を使って弾を飛ばす武器であり、引き金を引けば誰でも使える。
しかしここテラの銃といえば、何かしらの魔術的な回路が施された銃弾にアーツを流して生まれた力で加速投射する代物だという。
そのアーツ操作には精密さが要求され、そもそもアーツ適性がある人でないと使用不能。
特に拳銃以上の銃火器を使えるのは、そのアーツ操作に長けた「サンクタ」とかいう天使みたいな種族に限られるらしい。
だが、同時にテラには「源石火薬」なるものが存在する。
源石を使った爆発物で、こちらの世界でも武器兵器として使われているらしい。
…………なら源石火薬で銃弾撃ち出せばいいんじゃないの?
そう考えた私は、サルカズのやってる工房に話を持っていってみた。
上手く行けばわざわざスペースと時間を割いて軍需工場(Hoi、Vic)を建造せずに、安い銃火器を作れるかもしれない。
と、言ってみたら工房の人が大分変な人を見る目になっていた。
「弾を大型にしたりしてみましたが今度は利便性に欠けますし、これを戦場で使うのはオススメできません」
その結果として、目の前にはいくつもの破壊された試作品と的、そして、ようやく200メートル程度“飛ばせる”だけの完成品が鎮座していた。
「なんでそうなったの…………」
サルカズの人からレポートを受け取り、目を通す。
それによると、初期試作品の殆どが射程距離10メートル程度と散々な結果だった。
その次になると、そもそも発射どころか試作品の破損が相次いでいた。
その次に源石と他の安定化材料を混ぜて、尚且つ銃弾自体を大型化させて、ようやく目の前のコレになったとの事らしい。
そこまで見て、私の中には「あぁ、源石火薬って爆薬なのね」という感想だけが残った。
地球において、火薬は大きく二種類に分けられる。
それは……
・銃弾や砲弾を加速させるために使う“火薬(狭義)”
・爆発力で目標を破壊する“爆薬”
……の二種類である。
このうち火薬というものは、実は、爆発で弾を飛ばしている訳ではない。
完全に間違いでもないのだが、正しくは「火薬が燃焼する際に発生する大量のガス」の力によって弾を加速しているのだ。
その為、実のところ銃に使われる火薬は、単に爆発力が高ければ良いというものでは無かったりする。
爆発力が高すぎると、弾が銃口から飛び出す前に銃内部の圧力が高くなりすぎて、銃本体が破壊されてしまうのだ。
特に、現代地球で使われている火薬である「無煙火薬」は、ニトロセルロースという極めて速く燃焼しつつも即効で高圧力にはならない材料を主成分として、他の添加剤や、火薬粒の形状などを工夫することで燃焼速度を調整し、効率的に弾を加速しつつ銃へのダメージは最小限となるよう設計されている。
「燃焼速度が比較的速く調整されている拳銃用火薬」を、「比較的遅い燃焼速度の火薬を使うライフル弾」に詰めて撃ってみたら、銃が破損してしまったという話もある位に、火薬の“程よい爆発”というのは銃にとっては重要なのだ。
対して爆薬は、その威力で目標を破壊する為に、とんでもない爆発力を持っているのが殆どである。
その為、爆薬を薬莢に詰めて撃ってみたら多分、銃口から弾が飛び出る前に銃本体が爆轟によって破砕されることとなるだろう。
地球において、高性能爆薬を火薬として使う銃が存在しない理由である。
そういった観点から今回の結果を見れば、自ずと理由が見えてくる。
まず、最初の10メートルも飛ばなかったものは恐らく、銃本体を破壊しない程度の少量の源石火薬を用いた結果、そもそも弾を飛ばす力が足りずに短射程となってしまったのだろう。
もしくは、源石火薬は燃焼しても大してガスが発生しない可能性もある。
次の試作品の破損は、最初の試作品の結果を受けて火薬量を増やした結果、その爆発力によって銃本体が破壊されてしまったという訳だ。
それで、その次の他材料との混合だが、これは地球でも爆発力調整の為に行われている手法である。
ここでは“アケトン材料”とかいう多分アセトンかケトンみたいな成分を混ぜたらしいが……それでも“程よい爆発力”を得るのは難しかったらしく、最後には大口径化した。
実は、これも地球の銃火器の変遷に当て嵌められる。
地球において現在の無煙火薬が主流になる前は、広く「黒色火薬」が銃の発射薬として使われていた。
火縄銃とかでお馴染みのソレである。
しかし、この黒色火薬……燃焼の様子から考えた場合、どちらかというと爆薬に近い性質を持っている。
つまり発射薬は、黒色火薬(爆薬)→無煙火薬(火薬)という歴史を辿っているのである。
この進化の時代には、他にも興味深い変化が発生している。
それは……銃の小口径化である。
黒色火薬を使う銃の口径はおおよそ11~20ミリにも達していたが、これが無煙火薬を使うようになると一気に7~8ミリまで小口径化している。
これには工作精度なんかの要因も多分に含まれているが……おそらくテラにおいては、
銃本体を破壊しない程度の少量の源石爆薬でも何とか威力と射程を維持したい
↓
弾本体を重くして運動エネルギーを稼ぐ
という方法しか取れなかったのだと思われる。
確かに、黒色火薬マスケット銃も飛ばすだけなら200メートル位は飛ぶらしいし。
軽い弾は、それだけ空気抵抗の影響で即座にエネルギーを失うからね。
そういう訳で、私の源石銃計画は失敗に終わったのだった。
単なる思いつきです。