適応能力ダブル持ち(なお宝の持ち腐れな模様) 作:マコ×OR
転生した。
今どきは珍しくないことなのかもしれないが、自分は、転生を、した。
至極オーソドックスなタイプの転生だった。白い空間、目の前に神様、彼と好きな能力をいくつかあげるよ、などといくつかやりとりをして。そして、転生。
最初に目を覚ましたときの記憶を覚えている赤子は、そう多くはいないはずだ。だが自分は、幸か不幸かハッキリと覚えている。生暖かい液体の中に浮かぶ自分は、数十年間使い続けた肉体に比べあまりに小さく、醜かった。
もちろん産まれたばかりの赤子の写真を見て可愛いと言う人もいただろう。だが自分には、あの瞬間が、どうもグロテスクなものに見えて仕方なかった。当然、そんなことをあえて自分から声を大にして言うつもりもないし、そのようなことを言わないだけの倫理観を持ち合わせているつもりだった。
故に、そんなことを考えてしまった事自体が、真っ赤になるほど擦っても拭えない最初の罪なのだ。
蒼く輝く子の背中で方陣が廻る。
どうやらこの世界は何かの漫画の世界らしい。自分にはその漫画の知識はないが、自分を転生させたあの神様はそのように言っていた。転生の対価としてその世界の素となった漫画に関する知識を貰う、と。
十分に発達した医療があるし、公用語も日本語。どうやら剣と魔法のファンタジー世界ではなく、自分が前世で暮らしていた日本と大して変わらない世界だ。
ただ唯一違うのは、この世界にはヒーローという職業があるということ。
どうやら人々の持つ超能力―――『個性』というらしい、を私欲のまま乱用する悪人である『ヴィラン』に対抗するため産まれた職業のようだ。たしかに、聞けば聞くほどなんだか漫画っぽい設定だと感じてくる。
(その定義だと自分、クソ畜生のド悪党ヴィランじゃないっすか…)
高架下で草をむしりながら考える。そこら辺からとってきた得体のしれない雑草だが、何分産まれてすぐだから腹が減る。今は何でもいいから口に入れたい。
「いただきます……」
「…っ、苦い、っすね。これ食べちゃいけないやつだったかもしんないっす」
川の水で洗っただけの草は、噛めば噛むほど苦みが出てきて、とてもじゃないが人間が食べるものではないと感じた。一応飲み込むが、すぐに後悔する。もしかしたら腹を下してしまうかもしれない。
「あ……魚とかいるんすかね」
こんなものを食べるぐらいなら、これを火種にして魚でも焼いたほうがいい。常人なら始めから思いつくであろう事に今更気づき、とりあえず川の中に飛び込んだ。やはり自分は変わらない。でも、それでもとにかく生きなければ。
死ぬのはいやだから。
幾ばくかの月日が流れた。
戸籍を持たない身ではあるが、なんとか生きていくために金を得なければならない。ひとまず、昼間は山の奥で身を潜め、夜にこっそりと街に出て、町中で暴れている『ヴィラン』らしき人々から少しばかり金を盗る。
盗るのならば財布を丸ごと奪えばいいのに、とは正直心のなかで思っている。一円でも一万円でも盗んでいるのには変わりない。
それでもわざわざ財布に最低千円くらいは残しておくのは、罪の意識を少しでも軽くしたいからだ。スリの対象に、町中で暴れて標識やら電柱やらを蹴り上げているゴロツキだけを選ぶのも、そのためだ。
「いちにーさ、えー……十七。今日は結構イケたっすね」
「……正直こんなスゴい能力をこんなみみっちい事に使うのは気が引けるんすけどね」
盗品をポケットに収めると、ねぐらに戻るため来た道を引き返す。
正直、本気で現状を変えたいのなら裁判所に行って戸籍登録をする必要がある。その後は生活保護とかを取ることになるのだろうか…?
だがどちらにせよ今行くのは怖い。もしかしたら警察やらヒーローやらが、自分を追いかけてる最中かもしれない。
一度死んでもやはり自分は小心者だった。前に進もうと足を踏み出すと、ありもしない仮想の恐怖を勝手に生み出しそれを目に入れ、それを恐れ、結局立ち止まったままでいる。小心者の典型例みたいな存在だ。
現生人類を好きな回数滅ぼしてもお釣りが来るぐらいの能力を与えられてなお、自分の中から恐れは消えなかった。
ガコンッ、と、後頭部付近に浮かぶ方陣が音を立てて回る。
「うおっ、あー、マジでビビるんすけどこれ。急に廻るし……ホント何に適応してるんすかね」
自分の後を付いて回るようにしてふわふわと浮かぶこの白いオブジェこそ、与えられた能力の一つ。
『
保有する能力は『あらゆる事象への適応』。この
自分にはもう一つの能力がある。
『O・R・T』。ワン・ラディアンス・シング。輝ける唯一の存在と名付けられたそれは、自分が大好きな作品に出てくるチートキャラ……いや、モンスターだ。
Fateという作品に登場するこの地球外生命体は、目覚めると世界が終わるタイプの存在で、やはりこちらも(他に物騒な能力はいくつも持っているが)主となる能力は『あらゆる事象への適応』。
敵となる存在を一から十まで解析し、取り込んで、自分のものにする。恒星級のエネルギー源を体内に有し、行く先々を自らの故郷でもある水晶渓谷に創り変える…
どちらも、現代日本ではあまりにオーバースペックだ。『魔虚羅』の能力だけならまだいいのかもしれないが、『ORT』の方は完全にアウトだ。転生先が日本ならもっと別のものを選んだのに…
自分がジェノサイド好き好きマンならこれでも楽しめたのかもしれないが、生憎そうではないため、今も震えが止まらない。今の状況はそう、例えるなら、一等の宝くじを当ててしまったせいで、周りの全てが肩パッドのモヒカンに見えているようなものだ。
この世界には超能力を持った人間がたくさんいるものの、そのどれもが常識の範疇にある。すれ違う人々を見てもそうだ。やれ首が伸びたりだの、やれトカゲに変身してみたりだの、火を吹いてみたりだの。それだけだ。断じてこんな核爆弾みたいな能力を持った存在はいない。いや、探せばいるにはいるんだろうが。
ポスターを見て思わずため息をついてしまう。
『ヴィランを見かけたら助けを呼ぼう!』
その小学生向け防犯ポスターに映る筋骨隆々とした壮年の男性ヒーロー、ヒーロー名は『オールマイト』。調べて見る限り、現在日本で一番強いヒーローは間違いなく彼だ。彼なのだが…
(この人絶対何かの理由をつけて退場させられるっすよねー…)
前提として、今自分のいる世界は何かの作品がベースになっている。
そんな物語の世界に何でもできる機械仕掛けの神的な存在がいるのなら、十中八九何らかの事件が起きて、無理矢理退場させられることだろう。
そしてそんな物騒な事件が起こる世界で、ただでさえ全人類が『個性』なんていうものを持っているんだ。ジャンルはこんなの……絶対戦闘モノだろう。
ここはいったいどんな物語の世界なのだろうか。そうだな。『最強ヒーローはそろそろ引退したい!後任を任せられる優秀な弟子たちに囲まれていちゃラブハーレム』……いや違う。絶対違う。
うん。これ以上はダメだ。自分が好んで読んでいたジャンルがバレてしまう。というか自分はなにしたり顔でこんなことを考えているんだ。
……とにかくだ。数週間ほどウダウダしていたが、ようやく目標が見えてきた。
(オールマイトがずっと『正義の象徴』やれるようにする。この人にずーっと最強のご都合主義キャラクターをやってもらう、っすかね。多分それが一番丸く収まる方法だと思うんすけど…)
ヨシ。とりあえずはオールマイトを探すところから始めよう。
コレ書いといてあれですけど、自分ヒロアカ読んだこと無いっす…
なので多分このあといろいろうまく行ってハッピーエンドっすね…
もし続きとか必要でしたら何か書くっす…