適応能力ダブル持ち(なお宝の持ち腐れな模様) 作:マコ×OR
あれから一日かけて、携帯電話やらネカフェなんかを駆使してオールマイト事務所の場所を特定した。
場所はかなり遠……いや近い。自分が今いるのは静岡県の市街地付近なので、だいたい新幹線で1時間強ほど。もちろん走ればもっと早く着くだろうが、爆速で道を走っている蒼く輝く浮浪者なんていたらちょっとしたニュースになりそうで怖い。
(しっかし便利な世の中っすよねーホント……新幹線ってやっぱりすごいっすよ)
車窓から景色を眺めながらそんなことを思う。
というか、この世界は全体的に技術力が高い。まだ21世紀にも入ってないのにもうスマホの雛形みたいなものが世に出回り始めている。町中で使っている者もちらほら見かけるほどだ。さすがに田舎では見かけなかったが。
今使っているノートパソコンも、人差し指と同じぐらいの薄さなのに高性能だ。さすがに2020年代のパソコンには遠く及ばないが、それでもいい勝負をしていそうな動きだ。
そうそう、あと十年もすればリニア新幹線が開通する予定なのだとか。なんかもうスゴイな。
後先考えずお昼ごはんも用意してしまったためどうにかして消費しなければならないのだが、大して食欲も湧かない。そもそもある程度成長してしまった今、生命維持のために食事を摂る必要はないのだ。
今の自分はガワこそ人間の姿なものの、中身は到底人とは言えない。超弩級の太陽炉に、本来この世界に存在しない呪力という概念でも動く肉体。今は収めているものの、やろうと思えば退魔の剣だって出せる。ウルヴァリンみたいに。
ちなみに本家の魔虚羅がウルヴァリンのように、手の甲から退魔の剣を出すのかは不明だ。もしかしたら腕に巻いているタイプかもしれない。
初めのころこそ出したり引っ込めたりしていると、皮の部分がこすれて痛かったのだが、痛いなーと思った瞬間方陣が廻り適応した。
それと同時に自分の中にあるORTの部分が、退魔の剣が出てくるあたりの皮膚を地球外生命体たる自身のモノにより近い材質に変えてしまった。つまり、硬く、柔らかく、鋭く、冷たく、温かいものに。
それにびっくりして固まっていると、今度は全身の皮膚を同じように、それまで持っていた性質をより強調するように改造し始めた。慌てて止めようとしたのだが、ここで止めるといつかジークフリートとかアキレスみたいなことになってしまいそうだったので、一段落したところで止めた。
……もしも君の知り合いに近々転生する予定がある人がいるなら伝えておいてほしい。転生特典を好きな数選べるなら、ORTと魔虚羅の能力を一緒にもらうのは止めておくのが良い。
でないと少しの傷にも適応が起こり、適応合戦が始まってしまう。その知り合いも、傷を一日放っておいただけで人間をやめたくはないだろう。無難に黄金律EXとかにしといたほうがいい。
現在は魔虚羅の適応を前に出してORTの適応は控えめにしている。
(しっかし……自分で欲しいって言っておいてアレっすけど、つくづく戦闘向きの能力っすよねコレ。でも自分人殴るのとか怖いし……でもそうも言ってられないんすよねー…)
(……なにか、自分にもできることぐらいありそうなモンですけども)
このまま自分が何もしなくともきっと、この世界はハッピーエンドを迎える、ハズだ。
このように楽観的な考えを持つのは、バトルモノの漫画というのがよほど捻ったりしない限り、正義がかならず勝つと相場が決まっているものだからだ。
だが、いくら正義の主人公だからといって、人を殴れば自分の拳も痛いだろう。グローブをしていても。それに自分なら、目の前でボコボコにされている血まみれな人を見かけたりしたら、その日は寝られないぐらいドキドキする。そんな面倒なことは始めから起こらない方がいいのだ。
……こんなことを言うとジャンプ系漫画を全否定することになってしまう。というかこの考え方は、どちらかといえば
でも正直関わりたくは無い。原作知識なんていう最強のモノがない以上、この世界は自分にとって現実の延長のようなもの。未来のことなんて分かるべくもない。
自己防衛?日本脱出?……まあそれも一つの手段だ。ORT&魔虚羅の力をもってすれば、バイリンガルどころかマルチリンガルも容易いものだろう。
だが、もしも。最悪の場合だが、もしもこの世界の主人公サマがとんでもなくお辛い境遇に置かれているような。最近流行りの『曇らせ』系ラノベやら二次創作とかの世界だったとして。普通の人間が、著者という神の名の下に、常人には耐えられないような過酷な運命や、絶望的な試練を与えられるのは、傍から見ていていい気分であるとは言えない。
……とりあえずは関係のありそうなところを片っ端から探っていくのがいいだろう。
本日何度目かのため息をつきながら目線を落とすと、手元のポスターに目が行く。イイ笑顔で写っているオールマイトがいた。ホントこのヒーローはどんな場所で見てもずっと笑顔だな。
(というか、オールマイトってどういう立ち位置なんすかね?)
そう。自分も人並みには漫画も読むしアニメだって観ていた。その経験から今後のために、こういうタイプの人物が作中でどんな役を担っているのかを推測してみたのだ。
まずは、単に度がつくほどの善人つよつよヒーローで、物語の本筋には殆ど関わらないパターン。
これは、ジョジョ6部に登場する、時の加速する世界なのにさらっと締め切りに間に合わせくる天才漫画家、岸部露伴。
機動戦士ガンダムの主人公かつ、作中トップクラスの能力を持つアムロ・レイをも凌ぐ撃墜数を誇るにも関わらず、アニメでは登場しない謎のキャラクター、テネス・A・ユングのようなイメージだ。
次はガンガン物語に関わってくるパターン。それは主人公の師匠ポジションなのか、むしろ同僚枠なのか?いっそのこと若返り&TSコンボをキメて主人公とネチョネチョ絡むとか。そういったパターン……なんなら実は裏で黒いこと……は、さすがにないと思う。
軽くネットで調べてみても、オールマイトには一切暗いウワサがない。ネットの情報を馬鹿正直に信じるのはやめたほうが良いとは言われるが、これに関しては大丈夫だと思う……たぶん。
いやマジで止めてほしい。『みんな大好き最強ヒーロー、実はヴィランでした!いかがでしたか?』なんて現実でやられたら台パンものだ。
新幹線の車両が滑らかに走る中、考え事に集中していると、急に通路の側から声が聞こえた。そちらの方に目をやるとすごく小さい……おそらく3歳くらいの男の子がこちらを見ていた。
「あーっ!見て見て母さん!あの人オールマイトのポスター持ってる!スゴイ!あれね!静岡限定ポスターなんだよ!」
「ちょ!?こら出久!う、うちの子が本当スミマセン…」
「アッ。あはは、いいんすよーホント。いや全然……あ、ねえ緑髪の子」
「いずくです!」
「ああいずくくんね。いずくくんはこれが欲しいっすか?」
そう言うと、自ら首を千切らんばかりに縦に振りまくる。さながらヘドバンだ。
『~~~♪まもなく、終点、東京です。中央線―――』
「あ、自分もそろそろ降りないと。ほら、これあげるっすから。大事にするんすよー」
「わあ…っ!ありがとうお兄さん!たいせつにします!」
「その、ありがとうございます…」
「いいんすよホント……いずくくんね、お母さんのこと心配させないようにしてあげるんすよー。んじゃあサヨナラっす」
「うん!またね!!」
……あれ、これっていつの話なんすかね?