適応能力ダブル持ち(なお宝の持ち腐れな模様)   作:マコ×OR

3 / 14
なんかうまく続いてるっすね


第3話

 

 

 

 新幹線を降りて改札を出たところにあるベンチで卵サンドイッチと格闘すること数十分、魔虚羅の助けもあり、胃の中に入れたものがノータイムで直接栄養になるように適応することができた。おかげで微々たる量ではあるものの、食事からもエネルギーを得ることができるようになった。

 

 ちなみに、ここでいう微々たる量とは正しく文字通りの意味だ。太陽炉が生み出すエネルギーとこの卵サンドから得られるエネルギー、どちらがより多いかは火を見るよりも明らかだろう。

 

 

「けふっ……しばらくはご飯食べなくてもいいっすね…」

 

 

 腹ごしらえを済ませたので、試しに一回リア凸でもしてみようと思い、六本木ヒルズにある事務所に向かう。

 

 オールマイトはどうやら事件の有無に関わらず、朝昼晩の防犯パトロールを日課にしているようで、つまり今ここに集まっている人々はパトロール帰りのオールマイトを見たい人々なのだろう。

 

 連休中だからというのもあるがすごい賑わいだ。きっと一度でもいいから伝説のNo.1ヒーローを見てみたいという野次馬根性の連中が大量にいるんだろう。

 

 というか、こんなにうるさくて中にいる人たちは仕事ができるのだろうか?

 

 

「わあーーー!!っこ、ここがあのオールマイトの事務所!スゴイ、なんかもうオールマイトの波動を感じる…!」

 

「あれ、キミオールマイトのファンかい?ごめんねー。今ちょっと緊急通報が入ってねー。オールマイトはいないんだよー」

 

「ガーン!?」

 

 

 No.1ヒーローの事務所ともなるともはや観光地化して、休日でなくとも常にこんなに混んでるのかもしれないとか妄想していると、喧騒の中になんだか聞き覚えのある声があった。

 

 声のする方をよく見てみると……いずく君だったか?人混みにもみくちゃにされながらも、小柄な体躯を活かして最前列から事務所を眺めているオールマイトファンボがいるようだ。新幹線で見た時よりも身につけているグッズが多い。あと母親にオールマイトのフィギュアも買ってもらったようだ。よかったね。

 

 

(しかしこの感じだとオールマイトは出てこなそうっすね……こういうのってやっぱり自分から探していくのがいいんすかね?)

 

 

 せっかく一万円ぐらいかけて東京まで来たのに無駄足になりそうで困ってしまう。

 

 この世界に生まれてからずっと考えていた、この世界での自分の役割。漠然と思い浮かんだのは、オールマイトがずっと『正義の象徴』として君臨し続けられるようにする事だった。

 

 だがそれではオールマイトがずっと忙しくて辛そうなので、最近はちょっと方針転換するべきなのではと思っている。

 

 考えてみれば、ほとんど人外な自分と違ってオールマイトは人間だ。年を取ればよぼよぼになっていつかヒーロー事務所の看板も下ろすことになるだろう。

 

 そんな30年後ぐらいの未来に、定年を迎えたじーさんに日本の治安維持を任せるのはちょっと酷じゃないか?しかもそれは全ての原作ストーリー上の障壁を乗り越えたあとの話、後日談のことだ。

 

 というか、オールマイトが老後を過ごしているそこはそもそも後日談なのか?

 

 ……あれ、ひょっとしたら自分はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない。

 

 

『時は20XX年、伝説のヒーロー『オールマイト』は90ぐらいでその生を終えた。彼は死の間際に遺言を残す!』

『私の後継者は、○○だ……後の事は彼に任せるよ…』

『これはオールマイトに日本の未来を託された、彼の一番弟子である○○の物語!』

 

 

 みたいな感じの物語なら、今ってそもそも原作になんて掠りもしてない時期だし、そう考えるともはや自分が何をやっても無意味なのでは…?

 

 

(……え、これ自分何をやればいいんすか?原作知識無いと全く動けないっすよマジで!?)

 

 

 なんだかもう面倒くさくなってしまった。ここまできたら、下手にいじって状況を悪化させるよりも、何もかも全部忘れてテキトーに生きるのが一周回って最適解なのではとさえ思ってしまう。

 

 ここ最近の自分は、勝手にやらなきゃと思い立って勝手に失望してから回って、とんでもなく自分勝手なことをして時間を無駄にしている気がする。

 

 

(……なんか急に冷めちゃったっすね。もう田舎に戻って猫まみれスローライフでもするっすか…)

 

 

 職員さんの言葉を聞いて徐々に散らばっていく人込みにまぎれて駅に戻ろうとしたとき、背中から駄々をこねる声が聞こえた。どうやら件のいずく君が事務所前でオールマイトが来るのを待っていたいと何とか母親に頼み込んでいるようだ。

 

 

「ねーえーおかあさん!おねがい!一生のおねがいだから!」

 

 

「お願い出久、もう止めときましょ?これ以上いたらここで働いてる人にも迷惑よ…」

 

 

「うー…でも…」

 

 

 そこで涙目になって俯いている子どものことがどうにも放っておけなかったので、少しだけでしゃばって声をかけることにした。

 

 

「……あ、もしかしていずくくんっすか?」

 

 

「え…―――あっ!ポスターくれたお兄さん!しんかんせんの!お兄さんもオールマイトに会いに来たの?」

 

 

「そっすよー。まあ運悪く留守だったみたいで……これ以上いたらオールマイトにも迷惑かけちゃうかもしれないっすから、ちょっと悲しいけど今回は諦めるっすよ…」

「…あ、いずくくんはどうするっすか?」

 

 

「うん……あのね、ボクね、もう少しでコセイのケンサがあるの…」

 

 

「はえー、個性の検査!そりゃあ大ごとっすね……いずくくんが将来どんなヒーローになるかを決める一大イベントじゃないっすか」

 

 

「うん……あのね、だからね、キミならきっとスゴいヒーローになれるよ、って言ってほしかったの…」

 

 

「―――あー、そっすねえ……そりゃ会いたいっすよねえ……あ、じゃあいずく君。あと五分ぐらい待ってみるのはどうっすか?職員さんもきっと、入口から離れたとこでなら五分ぐらい見逃してくれるっすよ」

 

 

「―――うん!そうしてみる!おかあさんもそれならいい…?」

 

 

「えッ!?う、うん。それならいいけど……あの、何度もホントスミマセン…」

 

 

「あはは、イイんすよ。それに自分もなんだかんだ言って諦めきれなかったっすからねー」

 

 

 ……当然だが、五分経ってもオールマイトが現れることはなかった。それは彼についているファンの多さから考えれば、至極当たり前のことだった。

 きっとオールマイトだってこういう時のために裏口の一つや二つぐらい用意していることだろう。

 

 まだ心残りはあるようだが、五分前より少し大人になったいずく君が、見ないふりをしてくれていた入口に立つ職員さんにお辞儀をして帰っていく。

 

 それに遠くから手を振っていると、なんだか少しスラッとした体型で金髪ロン毛の、趣味で週二のジム通いしてそうな感じのオジサンが声をかけていた。それと同時に、背中の方陣が音を立てて回った。

 

 オールマイトの事務所ともなると、職員さんもオールマイトに当てられて筋トレするようになるんだろうか?

 

 

「あ、ちょっと!そこの少年!」

 

 

「えっ。あ、ハイ!」

 

 

「その、だね……私はー、そこのオールマイトさんの事務所で働いている職員なんだけどね?もし少年が、なにかこう、オールマイトさんに伝えたいメッセージみたいなのがあったら、私が代わりに伝えておいてあげるよ?」

 

 

「―――え!い、イイんですか!?」

 

 

「おうとも!ただしコッソリだよ?」

 

 

「それじゃあね、えっとね、えっとね……」

「…『がんばってね』って、あと、ボクもいつかぜったいヒーローになるからねって、つたえてください!」

 

 

「……わかったよ。きっとオールマイトさんに伝えておくさ。さ、もう帰りなさいね」

 

 

「うん!おじさん、ありがとうございます!またね!」

 

 

「オジサンッ⁉……うん。またね、少年」

 

 

 遠目からそのやり取りを微笑ましく見ていると、そのロン毛オジサンが自分の方にも近づいてきた。

 

 

「あのー……うん。さっきの少年を説得してくれてありがとう、少年」

 

 

「エ、あ、いやいや、ちょっ、ホントイイんすよマジで。アハハ…」

 

 

「もしよかったらキミもほら、何かオールマイトさんに伝えたいこととかあったら代わりに聞いとくよ?ホラホラ、カモン!」

 

 

「あ、じゃあその。いやこれはなんかちょっと違うっすけど……職員さん。たぶんっすけど、アンタは自分で思ってるよりメチャクチャ強いっすから、案外ヒーロー目指してみたらいけるかもっすよ」

 

 

「……え?あ、アッハッハ!いやいや、私はその…」

 

 

「この感じだと……なんか、そうっすね、形態変化とかじゃないっすかね?一回病院とかで検査してもらったらさ、今からでも全然ヒーローになれるっすよ!マジで!」

 

 

「あっうん……なんかその、ありがとね…」

 

 

「それじゃあ自分はこれで!失礼するっすー」

 

 

 




「…あれ?なんであの少年私の個性当ててるの!?怖!!」OMG‼
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。