適応能力ダブル持ち(なお宝の持ち腐れな模様)   作:マコ×OR

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三日坊主にドロップキックっす。


第4話

 

 

 

 職員さんに眉を顰められるギリギリのところまで事務所前で粘っていたら、なんだか思わぬ収穫があった。

 

 一般通過オールマイト事務所職員さんからものすごい覇気を感じたのだ。あの時新たに適応して得たスカウターモドキのようなもので改めて見てみても、輝かんばかりの戦闘力だった。

 

 なので思わずヒーローになるのを勧めてしまったが、迷惑ではなかっただろうか。思い返していると今更何を偉そうに言ってるんだという羞恥心がふつふつと湧いてくる。

 

 ……まあ正直、あの人がヒーローになってもならなくても、今後の流れには大して影響なんて無いのだろうけど。

 

 その後はなんとなく雷門とか上野動物園などを巡り、普通に何日か東京観光をして帰った。幸運なことに、あるいは、戦っているヒーローの姿を見ることができなかったため残念なことに、特に事件などは起こらなかった。

 

 

 

 

 

 

(異世界の東京も元と大して変わらなかったっすね…)

 

 

 帰りの電車でそんなことを考えながら揺られていたのだが、途中で揺れがうざったくなったため、空いている席を探しに後ろの車両に移動した。

 

 

「すぴー……すぴー…」

 

「まったく出久ったら……はしゃぎすぎて疲れちゃったのね…」

 

 

 またいた。

 

 寝てる。え、なんでまた…

 …もしかしていずくくんって、この世界の自分とは出身地がかなり近めなのだろうか?行く先々どころか帰りの電車でも出くわすとは。

 

 ドアを開けたばかりだったので、何食わぬ顔でドアを閉め直し、前の車両に戻った。戻ってきた車両にいた人になんだか変なものを見るような目を向けられたが仕方ない。このままじゃ自分ストーカーになっちまうよ。え、今でも十分そう?だまらっしゃい。

 

 改札を出ると前世では久しく忘れていた感覚、この時期にしては冷たい風が吹いていた。

 

 

「ふう。なんとか戻ってこれたっすねー…」

 

「ボクがもどって来たー!」

 

 

 ……出口の方向も同じなの?

 

 

「はえー、この時代はまだLuLuCa*1とか無いんすねー」

 

「そろそろかな……ねえお母さーん、ボタン押していいー?」

 

 

 ……あ、停留所も同じなんすか。

 

 あの流れのままあそこで一緒に降りたら、さすがにもう言い逃れできないぐらいのストーカーっぷりになってしまうので、ワザワザ次のバス停で降りてから一つ前まで戻ってくるという謎の悪あがきをしてからもとの場所へ戻ってきた。

 

 ここまでやればもう家にも帰ってるだろうし逃げ切れる―――

 

 

「……あれ?あ!あの時のお兄さん!こんにちわ!」

 

「ッスゥーーー。あ、どうも…」

 

 

 …どうやらこの親子、持っている荷物から察するに、家に帰る前にスーパーへ行って食料品を買っていたらしい。なるほどね!旅行帰りだもんね!冷蔵庫を空にしてから行くだろうしそりゃそうか!はい、自分はストーカーです。いかがでしたか?

 

 

「あはははは…」

 

「い、いきなりわらい出した。だいじょうぶ?」

 

「いやあ、なんというかその…違うんすよホントに。住んでるところがこっちなんすよ。ストーカーじゃないんすよ…警察だけは勘弁してくださいっす…」

 

「ちょ、お兄さん!?おにいさーん!!」

 

 

 その場の空気に耐え切れなくなった自分は、いずく君達に背を向け、ねぐらにしている山の方へ逃げ出した。

 

 正直、いずくくんのお母さんには事務所の前で遭遇した時から、ちょっとおかしい人を見る目で見られている気がしたのだが、今回の遭遇で完全に不審者を見るような目で見られてしまった。もう自分はダメかもしれない。

 

 その日の夕暮れは腹が立つぐらいきれいだった。

 

 

 

 

 

 びくびくしながら隠れているといつの間にか三日ぐらい時間が経っていたので、そろそろほとぼりが冷めたころかと思い町に降りてみる。

 

 あの場で感じた周囲からのゴミを見るような眼は、きっと自分の思い込みだったのだろう。住んでいる町は普段通りの様子だった。

 

 ほっと息を撫でおろし、ツナ缶を買った後、日課となっている暇つぶしのために公園に行った。最近見つけた隠れスポットなのだが、あの公園には大きめの木が生えており、近くに団地があることも影響してか、よくネコが集まってくる。

 

 彼らにツナ缶を献上するかわりにネコ吸いをするのが最近のマイブームなのである。

 

 一週間ぐらい期間が開いちゃったからそろそろ忘れられているかもしれないけれど……そんなことは無いと信じたい。

 

 実は、野良猫を始めとする野生動物はどうやら、自分の中にあるORTと魔虚羅の気配に敏感なようで、めちゃめちゃ避けられるかヘソ天されるかの二択なのだ。野生の感が鋭いのだろうか?

 

 ヘソ天は吸えるだけまだマシだが、めちゃめちゃ避けられる方は精神衛生上よろしくない。あの子たちと信頼関係を築き上げるのには非常に苦労した。あとオマケに高レベルの気配遮断も獲得した。まったく適応様々である。

 

 公園の入り口が見えてくるにつれて自分の期待度もうなぎ上りだ。思わず音の壁を超えるぐらいの速度で走ってしまう。

 

 

「ふんふんふーん♪今日はにゃん吉たちいてくれるっすかね~……」

 

「……っ、うぅ゛っ゛、ぐずっ゛……」

 

 

 いる。

 

 しかもなんだか訳アリな雰囲気を醸し出しながらブランコに揺られている。

 

 いや、正直覚悟はしていた。だが本当にいるとは思っていなかった。これまで遭遇した時は常にオールマイト関連グッズを身に着けて笑顔を浮かべていたのに、今はそれが幻だったかのように涙をボロボロ流している。

 

 どうしようかなー、もう帰ろうかなーなんて思いながら入り口前でぼっ立ちしているといずくくんに気付かれてしまった。しまった、あんな速さで走るんじゃなかった。

 

 

「…あ゛、ずびっ゛。お兄さん゛、まだ会ったね゛」

 

「あー……はい。どもっすいずくくん。どしたんすか?そんなに泣いちゃって……あ、ツナ缶食べるっすか?お箸は無いっすけど」

 

「い゛らない゛でず」

 

「そっすか…」

 

 

 ここまで頻繁に顔を合わせてしまった自分の運の尽きだとめて、空いていた隣のブランコに座る。肉体年齢15歳ぐらいの自分の身体に、小児用のブランコはあまり心地よくフィットしてくれなかった。

 

 さて、なんども息を詰まらせながら話してくれるいずくくんの話を聞いていくと、どうやら旅行の後に行った個性検査の結果、自分が無個性であることが判明してしまったようなのだ。

 

 そして、それが原因で、仲の良い友達たち(どうやらかっちゃんと言うらしい)にも殴られたりするようになってしまった、と…

 

 

(え、それフツーにイジメじゃないっすかヤダー……やっぱり面倒臭そうなことになっちゃったっす…)

 

 

 正直いじめの解決方法とか、警察とか親に相談するとかいじめっ子をぶん殴るかぐらいしか思いつかない。

 

 極端な話ではあるが、たとえどこからともなく現れたヴィランがそのいじめっ子たちをぶっ殺したとしても、それでも根本的な解決にはならない。環境が変わった後、そこでも今のようにイジメられるだけだろう。

 

 

「うーん。いずくくんはどうしたいんっすか?」

 

「う゛ぅ゛……わがん゛な゛い゛」

 

「そっすねー…。あ、イイ案思いついたっすよ」

 

「―――ッ゛!ほ、ホントですか!?」

 

「うん。筋トレすればいいんすよ」

 

「……へ?」

 

 

 この問題の根本はいずくくんがクソ弱い点だ。正直な話、殴ったら十中八九ヤバいことになりそうな強面のヤンキーにケンカを売ろうとするやつはいない。それに、大人に相談するのも、気に入らないヤツを消してしまうのも、結局は対症療法に過ぎない。

 

 だから、最終的にはいずくくんがそのいじめっ子より強くなる以外に問題を解決することはできないだろう。

 

 そんなことをかみ砕いて説明すると、いずく君はうつむいてしまった。

 

 

「でも、いくら筋トレしても、個性がないし…」

 

「うーん……いずくくんはそう言うっすけど、正直個性って無くてもあんまり変わらないっすよ?」

 

「へ?」

 

「じゃあっすね、ちょっと聞いてみたいんすけど、個性ってだいたいいつごろからあるんすか?」

 

「え、えーと、えーと、けっこうむかしから…」

 

「そうっすよね。結構昔からあるっすよね。じゃあっすよ?個性のある人たちが個性を使ってばちぼこにバトルしてるとしたら、個性が無かったころの人たちってみーんなバトルしてなかったんすか?

 

「え?いや、それは…」

 

してるんすよ(・・・・・・)。たぶん。いやゼッタイ。じゃあっすよ?そいつらって何を使ってバトルしてたんすかね?」

 

「えーっと……カタナとか、ピストルとか?」

 

「そうっすね。石っすよね」「違うと思う!!」

 

「そしたら…」

 

「いやいやまってまってまって!なんかちがう!なんかちがう!」

 

 

 どうしたんだろう。ここからがイイところなのに。

 

 

「ざっと500年ぐらい昔の人間たちって、おたがい石を投げつけあってバチバチにやりあってたんす。さるかに合戦とか知らないっすか?あれマジ(実話)っすよ」

 

「そ、そうなの!?」

 

「そすそす。じゃあっすよ?いずくくんから見て、今キミをいじめている子たちって、頭にこう、クソ重い石とかぶつけられても生きてそうなぐらいしぶとそうっすか?」

 

「いや…」

 

「じゃあ楽勝っす。次にケンカする時はデカくて強そうな石を大量に用意して投げつけてやりゃいいんす。雪合戦ならぬ石合戦ってやつっすね」

 

「ええー…」

 

 

 自分が言い終わると、なんだかいずくくんが自分を見る目が心なしか冷めているような気がする。おかしいな、対応を間違えたか……彼のお母さんからだけでなく、いずくくんからまでもヤベーヤツを見る目で見られるのはさすがにキツイ。なんとか挽回しなければ。

 

 

「あ、泣き止んだみたいっすね。よかったっすよー」

 

「え?あ、ホントだ…」

 

「まあ、さすがに今のはぶっ飛んだ話だったっすけど。別にいずく君だって個性持ってるヒーローと同じことはできるっす」

 

「…え!?」

 

「例えば、この前何かの雑誌で見たんすけど、エンデヴァーってヒーローいるっすよね?あれって規模は違えど、やってることほとんど火炎放射器みたいなもんじゃないっすか」

「つまりいずくくんが火炎放射器を付ければ実質ミニエンデヴァーっす」

 

「へ!?い、いや!それでも火力がぜんぜん!」

 

「そりゃ火力は違うっす。ならもっと強いのを装備すればいいんすよ。山一つ丸焼きにできるぐらいつよつよな火炎放射器を手に入れたら、エンデヴァーよりも強い最強のいずくくんになれるっす」

「……結局、個性って持ってる人によるんすよ。君の友達のかっちゃんくんは強い個性持ってるらしいっすけど、それ使ってやってるのがただのいじめじゃないっすか。メチャ強い個性持っててもやってることがうんちっす」

「この世界のほとんどの人は、自分もかっちゃんくんも、機械で同じことができるぐらいの個性しか持ってないんす。だから、個性がないからってなんすか。手札が一個減るだけじゃないっすか。ならいずくくんは二個機械を持ちゃいいんすよ。そしたらそいつらよりも最強じゃないっすか」

 

「……でも、でも…」

 

 

 ―――ああ、なんとなく分かったぞ。いずくくんが欲しいものが。きっとそうだ。ああ、そうか…

 

 

 

 

「大丈夫っす。キミはきっといいヒーローになれるっすよ」

 

 

 

 

 ちょっとだけ背中を押してくれる誰かだったのか。

 

 

 

*1
静岡県の交通系ICカード。運用開始は2006年らしいっすよ

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