適応能力ダブル持ち(なお宝の持ち腐れな模様)   作:マコ×OR

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第5話

 

 

 

 あの後。自分の言葉が何かの琴線に触れたのかいずくくんは再び泣いてしまった。せっかく泣き止んだと思ったのに…

 

 未だ瞳に大粒の涙を浮かべているものの、前より少しはマシな顔になったので、気分転換に一緒にネコと戯れてから別れた。なんでみんな、初めて会ったばかりのいずくくんにあんなに懐くんだ…

 

 …まあそれは別の話。今まさに一人の男が、思い描いた理想の自分に向かって行こうとしているのだ。ならば彼よりも数倍長く生きているモノとして手を貸してやらねばなるまい。

 

 それに、あんな泣き虫な子供を少しぐらい自分が手助けしたところで、物語の本筋には影響しないだろう。

 

 

「しっかしまさかあんなに首を突っ込んじゃうとは。我ながら驚きっす」

「それに、機械。うーん……なんか良いのでもあるっすかねー…」

 

 

 そう呟いて、いずくくんがどんなヒーローになるのか少し考えてみる。

 

 ヒーローについてネットサーフィンをしているときに一応、サポートアイテムとやらを用いて戦うヒーローがいることも確認している。

 

 だが、流石にエンデヴァー並みの火力を持った火炎放射器を装備しているヒーローはいなかった。もしかしたらこの世界の技術的には可能なアイテムなのかもしれないが。

 

 ヒーローたちは職業柄、大抵市街地で戦うことになるので、あんまり強力なサポートアイテムを持たせると一般人まで巻き込むことになり危険なのだろう。

 

 それも踏まえて考えると、某蜘蛛男のように手首のあたりから強力な糸を射出するとか、パワードスーツを装備して怪力になるとか?ぐらいが安牌なのかと思う。

 

 …その程度の装備でヒーローになれるなら、センスの良い無個性の人間が既に、一人か二人ぐらいなってそうなものだが…

 

 一人で考えていてもわからないので、久しぶりにネットカフェに泊まることにした。

 

 

 

 

 

 

「……あれ?実はこの世界ってかなりお労しいことになってるんすか…?」

 

 

 言わずもがな、ORTも魔虚羅も睡眠など必要としない存在である。その恵まれた肉体のスペックをフル活用して徹夜でネットサーフィンをする。

 

 ……もったいないなどと言わないでほしい。サポートアイテムの情報などを収集するためなのだ。

 

 だがある程度調べたところで少し行き詰ったので、息抜きに別の物を調べてみることにした。

 

 前に来た時にはオールマイトまとめ記事だとか、過去のオールマイトが関わっていた事件の動画などしか見ていなかったため、この世界の仕組みなどという、いわゆる一般常識にはほとんど触れていなかったのだ。ここに来るまでの道中で、大まかな部分は現代日本と変わらないと調べるまでもなく理解できていたからである。

 

 だが今理解した。もしすぐに情報収集を行える状況にあるなら、一般常識を真っ先に調べたほうがいい。考えてみれば当然のことだが…

 

 どうやらこの世界において、個性を持つ人間と無個性の人間の割合は約8:2のようだ。いずく君は2の方か。

 

 個性を持つ人間の体内には個性因子というものがあり、それが3から4歳ぐらいのころに発現することによって個性に目覚めるという。

 

 そして、個性を持つ人間の中でも序列があるようだ。ここらへんは何だか流行りのラノベみたいだなと感じる。

 

 ヒエラルキーの上層に位置するのは強くて使い方も分かりやすい、所謂当たり個性……身体強化とか火炎放射。そういった派手で何よりカッコイイものは最上位に君臨するらしい。オールマイトがその最たる例だろう。

 

 では下層に位置する人間とはどのようなものかと言えば、主に異形型の個性がそれにあたる。

 

 人と異なる外見。肉体の一部、場合によっては全身が一般的な人間のそれと大きく異なる形状の人々は、田舎を代表とする個性登場以前の、昔の風習が残る場所では差別の対象となるらしい。

 

 異形型差別の中には行き過ぎたものもあり、新しく生まれた子が『そう』だと、『それ』は忌み子とされ、酷い時には生贄にされたという…

 

 今も一部の集落では、そのような事件が発生することがあるらしい。

 

 …クソ。興味本位で見るべきではなかった。

 

 まあ、個性が初めて現出してからまだ一世紀も経っていないんだ。自分と違う姿かたちの存在を受け入れる用意ができている人など、社会全体から見ればまだまだ少数派だろう。

 

 そうなるとむしろ、ヘタな異形個性を得るよりも無個性のほうが良いのかもしれないな。異形型個性を持つ人は、場合によっては優れた身体能力を持つらしいが、まあそれも大した差はないだろうし。

 

 

(ふーむ。じゃあ少なくともこの分類で行くと自分は異形型っすか。まあそもそも自分のこれって個性なのかって問題はあるっすけど。)

 

 

 そう。実は、先ほど訪れた都市伝説まとめサイトに『小指の関節が一つ多い人は無個性で旧人類!』と書かれていて、まあ確からしい言い分だったので一度は納得しかけたのだ。

 

 だが、よくよく考えてみれば自分にそのルールは適応されるのだろうか?

 

 神様由来のこの肉体を構成するのは、人類が普遍的イメージとして持つ赤い血の通ったあの肉ではない。というより、どちらかと言えばORTを由来とする蒼い肉……もっと言えば魔虚羅由来の呪力でも構成されている。分類としては人というよりむしろ地球外生命体に近い。

 

 だが自分は確かに一般人類な母親の胎内から産まれている。なら自分はいったい……いや、この話は止めておこう。

 

 

 「しっかし個性差別などというものがあるとは……この日本、思ったより治安が悪いっすね。明るくコミカルなヒーローに比べ、世界観はかなりダークだし。良くも悪くもリアルっす…」

 

 

 ……待てよ、そうだな。いい案を思いついたぞ。

 いずくくんがどんなヒーローになるか、今ようやく足がかりができた。

 

 

 

 

 

 

 

「はえー……自分でトレーニングメニュー考えたんっすか?まだ幼稚園通ってるぐらいの年なのによくやるっすねー…」

 

「うん!もうお母さんにも言ってあるよ!今日からやるんだ!」

 

「ほー…でもこれ……うーん…」

 

 

 昨日のリベンジと称していつもより多めにツナ缶を献上したのだが…

 

 いずくくんにはその程度の賄賂では靡いてくれない魅力があるようで、そこら辺から採ってきた猫じゃらしを持っているだけなのに、もう三匹も寄ってきている。小児特有の体温の高さが、ネコにとって心地よいからだろうか?

 

 ともかく。いずくくんなりに一生懸命考えたのだろう。子供用スケッチブックに拙い文字で書かれたトレーニングメニューを自慢げに見せてくれた。上から順に次の通りだ。

 

 

・うで立てふせ 100000かい

・上体おこし 100000かい

・ランニング 100km

erc,etc…

 

 

「ワ、ワンパンマン…?」

 

「ワンパンマン……アンパンマン?」

 

「あー何でもないっす。あといずく君」

 

「はい!」

 

「もう一回自分と一緒に組み直そうっす。いずく君まだ4歳ぐらいっすよね?さすがにコレは今のいずくくんには厳しいっすよ…」

「あんまり厳しいトレーニングを小さい頃からやっちゃうと体壊しちゃうっすよー。そしたらヒーローになる前にお陀仏っす。まずは基礎作りから。15歳になるまであと10年ぐらいあるんすから、焦らなくてもいいんすよ」

 

「えー…」

 

「えーじゃないっす」

 

 

 とりあえず桁は下げさせた。あと、何故こんなにハチャメチャな桁数なのか試しに聞いてみると、どうやらオールマイトのトレーニング内容と同じにしたらしい。マジかよオールマイト。

 

 

 

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