適応能力ダブル持ち(なお宝の持ち腐れな模様)   作:マコ×OR

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そろそろ原作未読(二次創作の知識のみ)だと想像できない領域に来ちゃったっす…


第6話

 

 

 

「はーい腕立て伏せいくっすよー。はいいーち。にー。さーん。しー…」

 

ふん゛っ゙ぬぬぬぬぬ…っ!」

 

 

 トレーニングを始めてからはや一ヶ月、別にちゃんとした資格を持っているわけでもないエセトレーナーな人外とヒーロー志望の4歳児、両者の奇妙な関係は、なんだかんだ続いていた。

 

 あれからまた適当に情報収集をして、トレーニングプランを作成した。

 

 若いうちは、日常生活では用いない道具を使用したトレーニングをするのが良いと聞いたので、基礎的な運動の後に一緒にボール投げなどをやっている。

 

 他になにか珍しいものと言えば……公園にある遊具、ジャングルジムを素早く上り下りしたりするヤツだろうか?とにかく自分の身体がどの様に動くのかを理解する必要があるそうだ。まあ偉そうに言っているが、所詮はネットの記事の受け売り。それでも体を動かすことは素人目にも、健康にいいことだろう。

 

 今のいずくくんは正真正銘のオタク君だ。彼がヒーローオタクなのはまあ別にいい。問題は将来動けないオタクになってしまうかもしれないことだ。

 

 小児期は運動センスに限らず、さまざま動作を習得するスピードが最も早い時期とされる。そんな時期を部屋にこもってヒーローグッズを愛でる時間に充ててしまうのはもったいない。

 

 本当はなんか、こう、親が習い事を1つぐらい習わせてあげるのがいいらしいが、まあそれは……いずくくんの家庭の事情だから…

 

 あ、習い事が多すぎるのもそれはそれで問題らしい。あんまり子供を拘束しすぎるのも考え物だな。

 

 

「にじゅうきゅー。さーん、じゅう!終わりっす!」

 

「ぷはっ、はっ、はっ、はっ、はあっ!」

 

「はい、これ水筒っす。終わったらちゃんと柔軟するんすよー」

 

「はいっ!はぁ。はぁ。ふぅー…」

 

 

 最近は心なしか、うっすら筋肉がついてきたらしい。お風呂場で見たらなんかちょっと腹筋が割れてる気がする!とは本人の談。本当かなと思いつつも、普段の生活に加えて筋トレしてるんだったらそりゃ筋肉がついてもおかしくないのかな、とは思う。

 

 確かに最近のいずくくんは、始めたころと比べてかなり素早く筋トレを終わらせられるようになっている。なので最近は、回数を減らす代わりに一回一回の動作をゆっくりとさせている。

 

 だが……子供の筋トレ方法ってこれで本当に正しいのだろうか?明らかにヤバい量の汗を流しているいずくくんを見ると、ちょっとやりすぎなんじゃないかと不安になってくる。

 

 合間合間に休憩をはさみつつ、一時間半ぐらいのトレーニングを終わらせると、正しく疲労困憊といった様子で地面に大の字になった。その息を吸い込みまくって膨れた腹の上にいつの間にか猫が居座っているため、苦しそうだ。

 

 

「んあーにゃん吉!また浮気っすか!浮気っすね!?なんで皆していずくくんにだけ懐くんすか!」

 

「うぁー…わかんない…くるしい…」

 

 

 この後、お昼前に解散してご飯を食べ、午後には件のいじめっ子のかっちゃんくんと遊び、帰ったら晩御飯を食べてお風呂に入り、ヒーロー研究ノートを少し書いたら10時間ぐらいぐっすり眠る。

 

 ……少しばかり郷愁を覚える至極健康的な生活だが、これは子供の生活スケジュールなのか?これだけ見せられたら修行僧か何かと勘違いしそうだ。

 

 そういえば、ある時ふと気になり、なんでいじめっ子と付き合ってるのか?いじめられているのに一緒に遊ぶのか?と聞いてみたら、「かっちゃんは友達ですよ?」と心底不思議なものを見る目で見られた。

 

 子供って案外大人より心が広いのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 適当にやっているだけだからお辞儀なんていらないと毎度言っているのに、なぜか毎回律義にお辞儀をして帰っていくいずくくんを見送って、ベンチに腰掛ける。

 

 いずくくんがいる間はどうあがいても勝てないので、彼が帰ってから出すことにしたポケットの中にあるツナ缶を…

 

 …まただ。最近、といってもつい数日前から、トレーニング中に視線を感じるようになったのだ。

 

 明らかに野生動物のモノではない気配がするので、誰か物好きな人がこっそり隠れて覗いているのだろう。

 

 とはいえ見られっぱなしも癪に障る。一回や二回ならまあいいが、それ以上となると不審者の可能性も……いや広義で見れば自分も十分不審者だが!それでも!一応確認しておく必要があるだろう。

 

 一度公園を出るフリをして……音を立てずゆっくり音速で背後に回る。草むらから覗いていたのは小さな子供だった。

 

 クリーム色の髪を両サイドで、少々乱雑なお団子型にまとめている。髪型や服装的に、どうやらいずくくんと同じ年代の女児のようだ。ひとまずヤバ目の不審者じゃなくてよかったと息をつく。

 

 

「はぁ…♡いずく君、今日も頑張ってましたね…♡ああスゴイです。昨日よりも1.6秒早く登れてます…♡ほんとカァイイなぁ…♡」

 

(えっえっえっ)

 

 

 ヤバ目の不審者だった。

 あまりの動揺に思わず方陣も適応を始めてしまう。

 

 ガこコンッ

 

 

「っ!誰ですか?」

 

 

(やばいやばいやばいっす。ちょ、え、これどうすれば…)

 

 

 外見は幼い少女のそれなのに、何だか腹の内にとんでもないモノを秘めているような気がして思わず隠れてしまった。あの少女はどうやら自分を見失ってくれたようで、辺りをきょろきょろ見回している。

 

 気が付くと身体が透明になっている。適応のおかげか……危なかった。土壇場で間に

 

 

「あ、ここです」

 

「てう◎△$♪×¥ぁ●&%#?!」

 

「アハハ!壊れかけのテレビみたいですね!カァイイです!」

 

 

 ……とりあえず攻撃の意思はなさそうだったので一言二言言葉を交わしてみると、自分の知る同年代の子供が持ちえない大人びた風格を持つ子だった。

 

 しかしその風格の根源はあまり健全なものとは言えないように感じる。会話の節々から漏れ出す違和感こそが、その正体なのだろう。

 

 『大人らしい子供』という矛盾した存在を成り立たせるためには、何かしら無茶をする必要がある。だが、今の自分がその暗部に踏み込むべきではない。ギャルゲー的に言えば自分はまだ出会ったばかりの好感度ゼロ状態。最大値を10とするなら、最低でも好感度4は欲しいところだ。

 

 なので数分後、いずくくんのトレーニングを応援する係ができた。

 

 

 

 

 

 次の日、変わらず時間通りに公園へやってきたいずくくん。いつも通りに大きな声であいさつをしてくれたのだが、途中で固まってしまった。

 

 どうやらかなり驚いている様だ。つるんでいる同年代の子たちはほとんど男、そんなオタクの卵みたいな子供に女の子はちょっと刺激が強かったらしい。

 

 

「あ、あの、お兄さん。そちらの女の子は…?」

 

「……うん。そりゃ急に現れたら驚くっすよね。とがちゃーん?自己紹介いけるっすか?」

 

「ハイハイ!私渡我被身子です!トガって呼んでね!それでね、いずく君がトレーニングしてる姿見させてほしいんだ!それから―――」

 

「ちょ、は、早、多いよ!?」

 

「まあまあ二人とも落ち着くっす。それにいずくくん、見方を変えればこれもヒーロー訓練の一環っすよ」

 

「え?」

 

「いつかヒーローになった時、誰かに見られながら戦わなきゃいけない時だってきっと来るっす。そういう時に恥ずかしくて緊張しちゃったらどうするんすか!」

 

「あ、た、たしかにそうかも…」

 

「それにいいんすかー?いずくくん。待ちに待ったファン第一号っすよ?しかも近い年のコっす。かっこいいトコ見せてやりたくないんすかー?」

 

 

 その日のいずくくんはものすごく張り切って、とてもゆっくりとトレーニングをしていた。こんなにちょろくていいのだろうか…

 

 

 

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