適応能力ダブル持ち(なお宝の持ち腐れな模様)   作:マコ×OR

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不定期更新のタグ、付けといたっす
毎日投稿してる人マジで尊敬するっす…


第8話

 

 

 

 ねぐらにしている洞窟の中で、いくつかの道具を眺めていた。

 

 あの子たちに戦うための技術を教えるためには、まず自分が強くならねばならない。そのためとりあえずこの二日間は武者修行と称して、ここから遠く離れた地域でヴィランと関わりまくり、いわゆる『ヴィジランテ*1』のような活動をしていた。

 

 ヴィランの持つ様々な個性をこの身で受け、適応させる。中には攻撃をせず逃げ出そうとする者もいたので、そういった者にはむしろこちら側から金を払い、攻撃をしてもらった(・・・・・・)。こういった暴力的なお願いをヒーローに頼むことなどできないと考えたからだ。

 

 そういった臆病な者たちにはこっそり金を握らせて、自分のことを口コミでもっと広めてもらう。次の日にはこの『拷問バイト』希望のヴィランが50人ぐらい来た。

 

 流石に路地裏じゃ狭すぎるので場所を、たまたま近くにあった廃工場に移し、そこで攻撃してもらう。棒立ちしている自分に殴る、蹴る、斬る、撃つ、焼く、毒・酸をかける、重い何かを落として潰す、etc,etc...

 

 とにかく彼らが考え付く限りの暴力を振るってもらい、適応を進めた。彼らの繰り出すどんな攻撃も自分に痛みを与えなかったが、それでも根気強く続けた。

 

 首を狙って振るわれた日本刀が折れるようになったところで待ったをかけると、彼らもすでに体力の限界だったようで、一人残らず息も絶え絶えの様子だった。

 

 それでも化け物を見るような目で見られたのは心外……いや、気持ちは分からないでもないが、あまり気分のいいものではなかった。

 

 ちなみに、その時は持ち合わせがなかったので、その後全員まとめてやさしくボコってから、近場のヒーロー事務所前に置いておいた。自分はいろいろなものに適応できてうれしい、彼らも臨時収入が手に入ってうれしい。まさに理想の関係だろう。

 

 街中で遭遇するようなチンピラヴィランへの適応を済ませた自分が次に目を付けたのは過酷な環境。すなわち、深海と南極、火山だ。

 

 これらの環境は生命の存在を許さない。一般的な人類を裸一貫でここに放り込んでみたらどうなるかなど明白だろう。

 

 まずは一番楽そうな深海から行く事にした。世界で一番深い海はフィリピン沖のマリアナ海溝にある、チャレンジャー海淵だ。約11,000mの深海。本来なら底に落ちていくまでに一日はかかりそうだったが、無理やり適応を進めるため半日で済ませた。

 

 方陣が廻った後、幼い頃思いを馳せていた深海の世界に興味が湧き、辺りを散策してみた。まあ暗視能力を手に入れた自分が見ても地平の果てまで何もなかったため、古代文明の遺物とかはなさそうだ。

 

 ふと足元に違和感を感じ、少しだけ砂を掘ってみると、水圧で押しつぶされ硬くなったカップ麺の容器が足裏に当たっていた。こんな所にまでゴミがあるのかと思い、何だか一気に冷めてしまった……きっと二度と行かないだろう。

 

 そのまま一日かけて海中を進み、たどり着いた南極で数時間ほどバカンスをした。遠くの方にペンギンがいたが、こちらには近寄ってくれなかった。彼らもORT魔虚羅が嫌いらしい。方陣が廻った頃にはとうに寒さも感じなくなっていた。

 

 そして冒頭に戻る。今自分の前にあるのは中にガソリンがなみなみ注がれたドラム缶が数十個とライター。ヤの付く自営業の方々から拝借したものに加え、さらに自分で買い足した分もある。

 

 これを使って、適応と同時に、自分に戸籍がない問題も解消しようと考えているのだ。

 

 エラ呼吸、水圧、無酸素、寒さには適応した。残るは()。当初の予定では手っ取り早く火山経由でマントルまで小旅行でもしようかと思っていたのだが、現状の適応度合いだと痛いかもしれないので、ひとまずガソリンから始めようというワケだ。

 

 だがガソリンを燃やせば近隣住民の間で異臭騒ぎが起きるだろう。注目は免れない。そもそもここに来るまでに、大量のガソリンを一度に購入して移動しているのだから、怪しまれるのは必然だ。

 

 なら、ヒーローや警察に通報される前に事件を起こしてやればいい。自分で自分の殺人事件を起こす。『不審な老人』が何を思ったか身元不明の『子供』を焼き殺すために、洞窟の中に大量のガソリンをぶちまけて燃やした、という筋書きの、動機不明の殺人だ。

 

 こうすれば警察に保護されるついでに、戸籍関係のごたごたもむこう側でやってもらえる。

 

 一石二鳥だ。これで問題ない。問題ないが、やはり、怖い。理性ではわかっていても本能が受け入れてくれない。暗く深い深海も、究極の冷寒にも適応した。それでも炎は怖ろしい。これほど怖いものが他にあるか?

 

 だが、こうすれば自分の過去だってうやむやにできる。問題ない。安心しろ。恐れることはない、これが最善だ。きっとすべて上手くいく。

 

 

 

 

 『―――えー、速報です。先ほど午後六時ごろ、折寺市西部の奈部山、頂上付近にて、大規模な火災が発生しましたー。現在も絶え間なく爆発が続いていると―――不審物を持った―――近隣住民からの通報があり、警察とヒーローが協力して避難誘導を行っていたとのことで―――この火災による死傷者は今のところ確認されておらず、警察は事件の―――』

 

 

 

*1
プロヒーローの資格を持たず、ヒーロー活動を無認可で勝手に行う人々のこと




そういえばこの作品ランキングに載ってたんすよ!243位っす!最高っす!いやービックリビックリっすねー
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