ワタリガラスにカサブランカの花束を   作:櫻木ゆすら

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初見時はエクドロモイにボコボコにされてラスティへのヘイトがちょっと溜まった懐かしい思い出。


燃料基地襲撃

「……」

「……」

『……』

 食事スペースには並々ならぬ雰囲気が漂っていた。杖をついた白髪の老人はその眉間に深く皺を刻み、銀色の髪の少女は無表情ではあるがどこか困惑している表情で、少女しか知覚できない黒髪の女性はどこか不服そうで。三者三様に、少女の使う画面にヒビの入ったタブレット端末を眺めている。

「……コール。かけるけど……、良い……?」

「問題ない、621。ただのブリーフィングなのだろう? 素振りと瞑想で心は落ち着かせている」

 621の問いにウォルターは答える。その割には警戒しているような、殺意に似たような気配は収まっていないが……

『エアも、大丈夫?』

『大丈夫です、レイヴン。次の休息は共にサブカルチャー鑑賞を行うという約束を守っていただければ』

 エアからも返答を貰う。621はあまり興味を示せなかったサブカルチャー類はエアの興味を大いに持たせるものだったらしい。映像や音楽と直接的な情報を得られるものが好みのようだった。

「それじゃあ――」

 彼には既に、今日中には連絡できそうだと前もって連絡はしている。621が端末を操作して、この二人が並々ならぬ雰囲気を漂わせている原因となっている人物にコールをかけた。

〈やあ、戦友――。と、ハンドラー・ウォルター氏か〉

「ブリーフィングなのだろう。俺はコイツのオペレートも務めている。内容を把握するのは当たり前だが?」

『何といいますか。馴れ馴れしく図々しいのでは……?』

 コールをかければ、件の人物――。V.Ⅳ(ヴェスパー・フォー)のラスティが応答する。開幕の挨拶から、ウォルターとエアは殺意に似た感情が抑えられずにいた。

「ちょっと……」

〈いや。構わないさ、戦友。改めてアーキバス系列、シュナイダーから君に依頼がある〉

 険悪な対応にも関わらず、ラスティは自分の雰囲気を崩さずに話を進めて行く。

〈早速だが、説明に入ろう。惑星封鎖機構のルビコンにおける補給拠点。ヨルゲン燃料基地を叩いてもらいたい。目標は、最奥にあるエネルギー精製プラント。これを潰せば……、そうだなあ。連中の制圧艦隊の足止めくらいにはなるだろう〉

 映像が映し出されていく。氷床のせいか地形としてはかなり高低差があるようだ。険悪な雰囲気だったウォルターとエアも、仕事となれば切り替われるらしい。じっと映像や付属の情報に目を通していく。

〈当該基地は、つい先日まではベイラムのコーラル調査拠点だった。それが封鎖機構の艦隊襲来で……。一夜にしてこのとおりだ〉

「……ACは、無いんだ」

〈ん? ああ、君は確かG13(ガンズ・サーティーン)としてベイラム。というよりはレッドガンかな? 彼らと面識があるのだったな。確かに、ACが撃破されたという情報は入ってきていない。彼らは無事である可能性が高い〉

 残骸となったBAWS製MTの残骸。ACらしきものがないところから、レッドガンの面々は無事ということなのだろう。友好関係は深い訳ではないが、知人である彼らが無事というだけで少しだけ肩の荷が降りる。

〈今回は基地に点在する燃料貯蔵タンクにも、破壊報酬を設定させてもらった。連中を叩くと金になる。そう宣伝してくれるとありがたい〉

「宣伝……?」

〈壁越えの傭兵たる君が、企業から発行される対封鎖機構の依頼を受け、報酬を得た。そうなれば、他の独立傭兵も稼ぎに来るだろう? あの壁越えの傭兵がやったのだとね〉

「……なるほど」

 封鎖機構が相手では、MTもヴェスパーの数も足りない。だから、金銭を見せることで独立傭兵という外部戦力を利用したいというところだろうか。独立傭兵も、封鎖機構の執行対象とされている。ならば、アーキバスは封鎖機構撃退のために、独立傭兵は金のために互いにメリットになるように動いた方が良い。そのための、広告塔になることがこの依頼の本懐なのだろう。

『計算してみましたが……。確かに、こちらに入る報酬は中々のものです。資源に乏しい現在において、受ける価値はあるかと』

「……ウォルター」

 少女が隣の老人を見上げる。眉間に深い皺が刻まれているが、少女と目が合った後はため息をついた。

「……受託する分は、俺は構わん。ただし――」

 ぽん。と、ウォルターの手が621の頭に置いた。

「コイツは、お前たちの都合の良いマスコットではない」

〈――ああ。それは重々承知している。彼女は、壁越えを果たした実力者。私の、かけがえのない戦友だ〉

 画面越しではあるが、両者の視線から火花が出ているような。そんな光景が621には見えてしまった。

「……仕事。やるから準備する」

〈ああ。頼むぞ、戦友〉

 雰囲気に耐えられず、621はそそくさとその場から離れていった。

 

 

〈メインシステム、戦闘モード起動〉

 ヨルゲン燃料基地の手前地点に投下される。既に目の前には、数体のガードメカが配置されているのが見える。

〈ミッション開始だ。封鎖機構の駐屯部隊を排除しつつ、エネルギー精製プラントを目指せ〉

「了解」

 アサルトライフルとリニアライフルがガードメカを撃破していく。燃料基地へと向えば、ウォッチポイント・デルタでも見かけたMTの数機が点在している。

〈コード15、所属不明機体と会敵した〉

〈企業の雇用戦力と推定。AC単機〉

〈排除執行する〉

 レーザーやミサイルの雨を滞空してかわしながら、一機、一機と撃ち落としていく。周囲の殲滅を確認してから奥へと進む。

『レイヴン、左側を。道中の燃料貯蔵タンクにも、追加報酬が設定されています。見つけ次第、破壊すると良いでしょう』

『ラスティが言っていたやつだね。わかった』

 まずは、安全確保が優先だ。金目の物に目を眩む内に撃墜されては笑い話にもならない。MTとミサイルポッドを二丁の銃弾で撃墜する。

(弾丸も、ブレードも、使う程じゃない)

 二基で一組となっている燃料貯蔵タンク。ACの前では脆いオブジェクトだ。アサルトブーストを噴かせ、ブーストキックで蹴り上げて破壊する。

『燃料貯蔵タンクの破壊を確認。せっかくです、引き続き追加報酬を稼ぎましょう』

『わかった』

 推測した通り、燃料貯蔵タンクを破壊する分はカサブランカのブーストキックで事足りる。封鎖機構の戦力は銃弾とミサイル、ブレードで対応し、燃料貯蔵タンクはブーストキックで破壊する。これを、繰り返すだけだ。

〈コード5、所属不明AC〉

〈排除執行を開始する〉

『MTの比ではない性能です、注意を』

 舞い降りて来たのは、LC機体だ。恐らくはヒアルマー採掘場に現れたのと同じ規格のものだろう。だが、一体一ならば問題ない。ミサイルの雨に晒されるも、アサルトライフルとリニアライフルを撃ち続け、ACS負荷限界を狙う。パルスブレードに切り替えるが、滞空しているLC機体には届かなかった。リペアキットを一つ使い、体勢を立て直す。垂直プラズマミサイルを織り交ぜ、避けられる近接を使わず射撃戦で押し切る。

〈コード78を……、送信……〉

(ちょっと、被弾し過ぎたな……)

 APが半分近く。気を抜けば、狩られる。カサブランカを反転させ、マーカーが示された進行方向へと向かう。

〈見えるか、621。ドーム屋根が目標のプラントだ〉

「あれが……」

 高台に到達し、視界が開ける。その奥には、球体のようになっているドーム屋根の施設。眼下には、高低差のある地形。大きく割れた氷を鋼材で補強するかのように通路が出来ている。

〈マーカー情報を更新する。目指して進め〉

「了解」

 高台から飛び降り、鉄橋へと着地する。ガードメカ数機をマルチロックで捉え、垂直ミサイルを放つ。

〈コード5、所属不明AC!〉

〈狙いはプラントか。排除執行、これ以上やらせるな〉

 ガードメカのミサイルが飛び交う。そして、鉄橋の奥にはガトリング砲台が待ち構えている。降り注がれる弾丸の雨を遮蔽物に隠れてやり過ごす。

〈その機体構成……。独立傭兵だな〉

〈解析はシステムが行う。迎撃しろ〉

 マルチロックで捉えて垂直プラズマミサイルを放ち、遮蔽物に隠れる。二体狙ったが、撃破できたのは一体のようだった。ガトリング砲台を垂直プラズマミサイルで捕捉するも、生き残っていたMTのレーザーを喰らう。

〈AP、残り五〇%〉

 ガトリング砲台の足元に着地し、無傷だったMTを切り替えたパルスブレードで斬り捨てる。二つ目のリペアキットを使う。上からガトリング砲台の音。狙いはズレていたらしい。鉄橋を潜り抜け、砲台の背後に回って二丁の弾丸で撃墜する。浮遊するレーザー砲台からの攻撃。アサルトライフルとリニアライフルで撃ち落としていく。

〈コード15!〉

〈前衛は何をしている……? 対処するぞ〉

(思ったより、数が多い)

 一つの拠点に、これだけの数のガードメカ、MT、果てはLC機体まで配備されている。氷の崖下にも配備されているのだ。それだけ重要な場所なのか、あるいは、潤沢な兵装と人材があると言ったところか。

『レイヴン、大丈夫ですか?』

『大丈夫』

 疲労はあるが、やれない訳ではない。一呼吸をつけて、侵攻を再開する。ふと、視点を切り替えれば、輸送ヘリに対して何かしらの作業を行っているMT数機が見えた。

〈企業が残した情報を収集しろ。解析はシステムが……〉

〈待て、コード15!〉

〈報告にあったACか。排除する〉

『これらにも、報酬が設定されています。撃破しましょう』

『アーキバスも、躍起になってる……』

 MTをアサルトライフルとリニアライフルで撃破し、垂直プラズマミサイルをマルチロックでばら撒いていく。着弾して炸裂するプラズマが輸送ヘリを含めて一掃していく。

『レイヴン、右手に四基。崖下に燃料貯蔵タンクがあるそうです』

『わかった。ありがとう、エア』

 掃討が終わった後に、右側へと進み四基の燃料貯蔵タンクを蹴り壊す。その後、崖下へと降りていく。燃料貯蔵タンクは容赦なく蹴り飛ばして破壊していく。次は、周辺のMTやガードメカの掃討だ。

〈コード5、目標を確認〉

『狙われています。回避を、レイヴン!』

『狙撃……!』

 動き続けることで、一条の光を回避していく。垂直プラズマミサイルをマルチロックでばら撒き、地上の機体たちを一掃する。生き残りを射撃戦で仕留め、狙撃機体へと距離を詰めていく。近場の狙撃機体をアサルトライフルとリニアライフルで押し切る。

「次……!」

 残る地上兵力に向けて、マルチロックで捕捉。垂直プラズマミサイルを放ち、着弾を待つ。マルチロックから外れたガードメカを撃ち落とせば、残るは狙撃機体のみ。レーザーをかわし、アサルトライフルとリニアライフルの弾丸を叩きつけた。

『レイヴン、この一帯が最後のようです』

『ちょっと脚が疲れて来た……』

 燃料貯蔵タンクが六基。今回だけで、どれだけあれを蹴り飛ばしたか。ブーストキックで六基全てを蹴り壊した。

『全ての貯蔵タンクを破壊。それなりの金額になりそうです』

『やっと、終わった……』

『あとは本命のプラントを。もうひと踏ん張りですよ』

 疲労を労わる言葉に、なんとか気力を持ち直していく。浮遊砲台を撃ち落とし、プラント前に辿り着く。

〈621、補給シェルパを送る。一息つけ。エネルギー精製プラントは逃げはしない〉

「了解、ウォルター」

 疲労はウォルターにも届いていたようだった。補給シェルパで補給を行い、荒くなっていた呼吸を整える。

『行けそうですか、レイヴン』

『……大丈夫』

『これが終わったら、V.Ⅳ(ヴェスパー・フォー)へ文句の一つでも言ってやりましょう』

『……そうだね』

 大変だったと、一言文句を言うくらいは許してくれるだろうか。終わった後のことを原動力に、エネルギー精製プラント基地内へと侵入する。

〈目標のプラントを確認した。621、仕掛けるぞ〉

「了解」

 言われるまでもない。垂直プラズマミサイルをマルチロックでばら撒き、広範囲で殲滅を開始する。

〈コード5! 敵ACを捕捉した〉

〈システムに増援を要請。コード78〉

『増援……?』

『レイヴン、何かしらの信号が送られたのが確認されました。急ぎましょう』

 辺りは一掃した。あとは、エネルギー精製プラントのみ。垂直カタパルトで高く飛び、アサルトブーストで彼我の距離を詰める。切り替えたパルスブレードで、エネルギー精製プラントを破壊した。

〈目標の破壊を確認。621、仕事は終わり――〉

『レイヴン、遠方上空に機体反応。高速で接近しています!』

『っ……!』

 エアが指し示した方向を見る。そこには、高速で接近する、二つの光が見えた。

〈コード23、現着〉

〈ウォッチポイントからの報告どおりだな〉

 二つの光が着地する。今まで見たことがない、独特な形状の機体だった。

〈識別名、“レイヴン”。リスト上位、優先排除対象だ〉

『レイヴン、来ます!』

 そして、各々の得物を構えて二機が飛び掛かってきた。

〈この識別反応……、封鎖機構の特務機体か! 撒ける相手ではない。排除しろ、621!〉

「了解……!」

 まずは、距離を詰めて来た片方を狙う。アサルトライフルとリニアライフルの射撃戦で様子を伺う。

〈……特務機体“エクドロモイ”。特定目標の排除を任務とする高機動機だ。パイロットの練度も並みではない。まずは片方を潰せ、連携を阻止するんだ621〉

「了解」

 レーザーを伸ばした機体と距離を保っていく。この距離で扱わないということは、あのレーザーは近距離兵装なのだろう。このまま距離を保ちながら、ACS負荷限界に合わせて垂直プラズマミサイルを撃ち込んでいく。

〈“レイヴン”……、またしても余計なことを〉

〈傭兵ひとりがここまでやるとは、想定外です〉

〈今度こそ消しておく必要がある、システムはそう判断した〉

「っ!」

 もう一機の援護射撃によって、近距離兵装持ちとの距離を詰められる。レーザーが大きく出力され、そのまま真上へと突き上げるような挙動。クイックブーストで辛うじてその攻撃を避けることが出来た。

『……レイヴン、 封鎖機構とあなたには何か因縁が……?』

『何回か、相手をしたことがあるだけ。でも……』

 最初にこのルビコンに降り立った際のヘリコプター、次はエアと出会ったウォッチポイント・デルタ。強襲艦とLC機体に今回の襲撃。幾度か封鎖機構とはやりあってはいるが、それにしては恨みを買い過ぎている気がする。というよりは、“621”ではなく“レイヴン”に彼らは強い執着があるようだった。

(でも、関係ない)

 来るというのであれば、迎撃するだけだ。パイルバンカーのようにレーザーを突き上げたクールダウン中のエクドロモイの巣直ミサイルを放ち、地上からアサルトライフルとリニアライフルの銃弾を撃ち込む。跳弾されない距離はACS負荷限界へ追い込み、落下してきたプラズマミサイルで撃破されていく。

〈やはり……。ただの独立傭兵……、では……〉

〈コード31C。少尉が撃破されました。……了解、続行します〉

『特務機体、一機撃破』

〈まだだ。集中しろ、621〉

「了解」

 僚機が落とされても尚、残るエクドロモイは引く様子が無い。ならば、このまま撃破するのみ。先程のレーザーパイルを所持していた機体と異なり、プラズマライフルを構えている。これならば、近接戦闘に持ち込んだ方が有利だ。高機動になんとか食らいつき、パルスブレードの一振りを当てる。射撃戦とプラズマミサイルを織り交ぜ、止まったところを蹴り飛ばしていく。ACS負荷限界を迎えたエクドロモイに持てる銃弾を叩きこんでいく。

〈エクドロモイに……、付いてくる……、だと……〉

 最後の通信が、爆発と雑音と共に途切れた。

『特務機体、二機とも撃破しました。周囲に敵影はありません』

 エアの言葉に、ようやく一息がつける。今回の仕事は、かなり多忙さを感じた。

〈……アーキバスめ。この展開も織り込み済みか。……連中にとっては体のいい宣材だ〉

『追加報酬も十分に入りそうです。他の傭兵たちも、あなたに続いてアーキバスの依頼を受けはじめるでしょう』

「今日は、疲れた……」

 回収ポイントまで移動し、ヘリが来るまでそっと瞳を閉じて休むことにした。

 

 

〈通信が入っています〉

 回収中に寝落ちていたところをエアに起こされ、なんとかカサブランカから降りて身なりを整える。カサブランカの調整をしようとしたところでCOMから通知が入る。エアと顔を見合わせた後、通信に応答することにした。

〈アーキバスグループ傭兵起用担当。V.Ⅷ(ヴェスパー・エイト)、ペイターです。こうしてお話するのは初めてですね、レイヴン〉

「うん。はじめ、まして……?」

〈……本当に幼い少女が出てくるとは。ラスティ隊長の性癖を疑いますね〉

「……?」

 ペイターの音声はブリーフィングでよく聞いている。だが、こうして言葉を交わすというのは初めてだった。既知の相手から初めましてと言われる感覚に、少しだけむず痒い感覚がする。

〈とりあえず。燃料基地襲撃作戦の完遂、お見事でした。第四隊長からも言伝を預かっています。お聞きください〉

 こほんと軽く咳払い。そして、言葉が紡がれる。

〈“流石だな……、戦友。君ならやってくれると思っていた”とのことです〉

「おお……」

 思わずぱちぱちと拍手する621。喋り方や雰囲気というものが、ラスティにかなり似ていた。これは、とても似ていることに対する称賛の拍手だ。

「すごい。似てた」

〈ちょっとした席を賑わせるための隠し芸ですね。引き続き、アーキバスグループをよろしくお願いします〉

 締めの挨拶と共に、ペイターからの通信が途切れた。

『ではレイヴン、カサブランカの調整が終わり次第。御願いしますね?』

『パーツキャプターリリウム、だっけ』

『はい! いわゆる、魔法を扱う少女を題材としたファンタジー作品です!』

 楽しそうに作品の概要を話していくエアの話を聞きながら、カサブランカの調整に入った。

 

 

 アーキバスのとある駐屯地。オペレータールームにとあるメールの着信音が入った。

「んー? 第四部隊(ウチ)宛てのメッセージ……? ってうわあ……」

 第四部隊のオペレーターの一人、亜麻色の髪を一つに結んだ紫色の瞳を持つ女性が悪いものを見たかのような声を出した。

「モニカ?」

「あ、ベルさーん。隊長宛てに苦情長文メールが来てますー」

「どういうこと……?」

 亜麻色の髪の女性。モニカ・ブランの悲鳴に対し、ベルタは受け取ったメールの内容を確認する。これは、ハンドラー・ウォルターと呼ばれる独立傭兵レイヴンのフィクサーとなっている男性からのものだ。内容は燃料基地襲撃作戦について。説明されていない特務機体の襲撃を受けたことから、徐々にレイヴンへの個人的な接触を避けるようにという、まるで娘に手を出そうとする男に対して警戒する父親のような文面であった。

「……、どうしますかあ?」

「――隊長に転送を。これは、隊長自身の問題です。私たちが関与する必要も義理もありません」

「ですよねえ……。レイヴン、ちゃん? とハンドラーさんって、親子なんですかねえ?」

「さあ。とはいえ、こういうメールを送り付けるくらいの間柄、と見ても問題ないでしょう」

 娘に近付くなというメールを送られるとは、一体あの若い隊長は何をしでかしたのか。自由な年下の上司に対して、ベルタは頭を抱えるしか無かった。

 

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