「……?」
聞き覚えの無い音に目が覚めた。すると、こちらを挟むように横たわっていた女性たちも起き始めた。状況が、上手く思い出せない。黒髪の女性が、アラートのように鳴り響くものを止めた。
「床で寝るというのも、中々……」
「ふわぁ……。きしょうじかんー」
先程まで就寝していた女性達。第四部隊のオペレーター及び副隊長を勤めている艶やかな黒髪に碧眼の女性、ベルタ・ウェバー。同じく第四部隊のオペレーターを勤めている亜麻色の髪を持つ紫色の瞳を持つ女性、モニカ・ブランだ。多少眠気が残る様子でありながら、女性達はすぐに起き上がって身支度を始めていく。
「あー。おはよー、レイヴンちゃん。うるさくてごめんねえ。これは、会社勤めの宿命なの……!」
(どうして……?)
『おはようございます、レイヴン。ああ、この状況は昨夜のことです』
エアが状況を説明してくれる。ベルタとモニカの部屋に案内されたものの、そこは二人部屋。小柄な621であるとしても、どちらかの寝具を間借りするというのは些かどうだろうかと悩んだ時だった。
『そこでモニカが、折角だから三人一緒に床で寝てみようー、お布団もあるしー。ということで、三人で雑魚寝をしていたのですよ』
『なるほど……』
エアに状況を説明される合間にも、女性達の身支度は進んでいく。洗顔や歯磨きを済ませ、髪を整えていく。メイクを施したかと思えば、ワイシャツにタイトスカートを纏っていく。その仕草は、手慣れていて素早いものだった。
「レイヴンちゃん、起きる? まだ寝てるー?」
「……起きる」
「おっけー。じゃあ、一緒に朝ごはんにいこー」
洗面台やら櫛を借りて、こちらも身支度を整えていく。こちらの身支度が整ったのを確認してから、女性陣に連れられていく。
「ベルさーん、今日はなんでしたっけー」
「今日は対惑星封鎖機構哨戒よ」
「ふぁーい」
仕事内容を確認しながら歩く二人になんとか着いていく。他にすれ違う面々は、アーキバス所属のスーツ姿がいれば、ベイラム所属のオーバーオール姿もある。聞こえてくる会話も、惑星封鎖機構に対するものやアイスワームの観察部隊もいるようだった。中には制服を纏わない数人もいる。
「珍しいよねー。いつもいがみ合ってる相手が、一緒にいるって」
モニカに話しかけられ、思わず頷いて返した。アイスワームという脅威が現れ、両社の協力が締結した。あの怪物を倒すまでの一時の共闘だ。となれば、他のヴェスパー隊長やレッドガン隊員もいるということだろうか。
「……ラスティ隊長を探しているのでしたら、モーニングは諦めた方が良いですよ。あの方、休憩ぐらいしか食堂では見かけないので」
「……? 他のヴェスパーや、レッドガンもいるのかなって」
「思ったより隊長、懐かれてない?」
「……?」
女性二人の言葉に疑問符ばかりが浮かぶ。彼のことは、心から信頼しているがそれだけだ。周囲には、自分と彼の間柄はどのように見られているのだろうか。
「まあ、いいや。レイヴンちゃんはご飯、何が好き? ホーキンスさんが妥協しちゃいけないところだからって、ご飯も結構融通利かせてくれているんだー」
「……あまり、食事は……」
「フィーカやトーストのシンプルなものもあります。後は、人工動物性乳製品も」
「折角だから、新しい美味しい物や好きなものも見つけちゃおー」
「……」
なんやかんやで二人に連れられるまま、紹介されたモーニングを済ませるのだった。
*
朝食を済ませた後は、二人は勤務時間に入るから退勤後に。と別れることとなった。そうなれば、こちらも仕事の時間だ。輸送ヘリに戻ることにする。この体制になっても、自分はヘリに残ると言っていたウォルターが出迎えてくれた。
「カーラの仕事か? 621」
「うん」
ヒビが入ったタブレット端末を操作して、こちらはいつでも動ける旨をカーラに伝える。しばらく待てば、彼女から通信による返事が来た。
〈おはよう、ビジター。早速だが本題に入ろう〉
出て来たカーラ雰囲気が、いつものどこか余裕気に楽しんでいる様子の雰囲気ではなかった。
〈あんたが絡まれた技研の遺産……、アイスワームについてだ。封鎖機構だけなら、企業が手を組めばなんとかなるかもしれないが。あの化物は規格外だ。数で当たってどうにかなる代物じゃない〉
「……知ってる」
それは、身をもって味わったことだ。少なくとも、ACの装備では太刀打ちできない。
〈厄介なのは、そうだね。常時展開されているリアクティブシールド……。コーラルの指向性を応用したものだろう。通常兵器では太刀打ちできないと思っていい〉
「カサブランカも、スティールヘイズも、武器は通らなかった」
あの巨体は見えているだけでも堅牢な護りをしている、その上でコーラルを応用した防御壁もあるとするのなら、ACではどうにもできないのかもしれない。そして、疑問が確信となる。
「……カーラ」
〈なんだい? ビジター〉
「カーラって、もしかして──」
口にしようとした瞬間、カーラが唇の前に人差し指を立てる仕草をした。
〈男が気になるイイ女の魅力の一つを教えてやる。“ミステリアスであること”さ〉
「ミステリアス……?」
〈言えない秘密を持ってるだけでも違うということさね。さて、本題に戻ろうかビジター〉
なんだか上手くはぐらかされてしまったような。ウォルターも、特に言及をしなかった。
〈私が……、シールドをこじ開ける得物を作る。その手伝いも兼ねて仕事を頼みたい〉
カーラが、あの怪物の防御壁を打破する兵器を作る。企業から決定打が出てこないならば、彼女に頼る他はない。彼女の技術力は、本物だ。
〈場所はグリッド〇一二。開発初期に作られた崩壊寸前の区画だが、そこに私らを裏切りRaDを抜けた救いようのないクズが隠れ住んでる〉
『カーラがそこまで言うとは、相当なヒトですね……』
吐き捨てるかのような冷徹な口調に、思わず621もエアも息を呑んだ。
〈クズの名は、“オーネスト・ブルートゥ”。ACミルクトゥースはうちで組んでやった機体だ。欠点は乗り手がクズなところだね。奴はRaDから金と技術と……。私がこっそり組んでた秘密道具を持ち逃げした。その秘密道具が……、アイスワームのシールドをこじ開けるのに必要なのさ〉
「オーネスト、ブルートゥ……」
『アリーナ情報にありました。先日、あなたがBランク帯を制覇した際の最後の相手です。油断ならない人物像のようです』
確かに、その人物のデータとは戦ったことがある。アリーナでの情報では、重度の虚言癖を備えた人格破綻者であると記されていた。カーラの口ぶりからして、それは事実で尚且つ危険な人物であるという証拠だった。
〈ウォルター、企業の連中に私らRaDが手を貸す話を通しておいてくれるかい? あんたが交渉している間に、ちょいっとばかしこの子を借りる〉
「わかった。通しておこう」
〈そういう訳だ、ビジター。なに、ウォルター程ではないが案内くらいならするさ〉
「わかった」
あの怪物を倒すための一手、そのために動く。それぞれの、違う戦場で。
*
〈準備はいいかい? ビジター〉
輸送ヘリの中、カーラが問いかけてくる。秘密兵器回収のため、彼女自身が同行を申し出たのだ。もうすぐで、グリッド〇一二に到着する。
〈ブルートゥを消すんだ。そうすれば、みんなが得をする〉
「……わかった」
金銭どころか技術力まで奪われたのだ。彼女の怒りというものは計り知れない。このような事態で無ければ、関わりたく無かったのだろう。だが、奪われた秘密兵器が必要となってしまった。直接ACなりスパナで殴りこみたいだろう彼女のためにも、この仕事はやらなければならない。
〈メインシステム、戦闘モード起動〉
〈始めるよ、ビジター。案内は私に任せな〉
輸送ヘリから投下される。グリッド〇一二。開発初期のグリッドとなれば、老朽化が起きていてもおかしくない。横転してそのまま時が止まっているかのような異様な光景に、ぞわりとしたものが脊椎端子付近に起きた。まずは、カーラが示してくれたマーカーへと向かう。
〈ようこそ、ビジター! このような僻地まで来てくださるとは……、感激だ〉
「広域放送……⁉ 誰……」
〈……ブルートゥ、あんたが盗んだものを返してもらいに来た〉
たおやかに語る男性の声。広域放送を行っているこの人物が、オーネスト・ブルートゥなのだろう。
〈おや……? カーラのご友人でしたか。素敵だ……、ならば私にとっても友人同然です。新しいご友人……、楽しい時を過ごしましょう〉
「……?」
〈……放っておきな、ビジター。最奥を目指すんだ〉
『レイヴン! 封鎖機構の浮遊機雷が……!』
「っ!」
ブースト移動なり、アサルトライフルでこちらに迫って来る浮遊機雷を対処する。たおやかな口調に反し、分かりにくいトラップが張り巡らせている。油断ならない。
(やりにくい……)
何もかもが、ちぐはぐであるような。今までになかったタイプに動揺は隠せない。グリッドを伝いながら奥へと進む。配置されたトイボックスをパルスブレードの二撃で払う。
〈当然のようにうちの機体を使ってやがる、気に入らないね〉
次のマーカー地点へと向かう。妙にだだっ広い空間に嫌な予感がする。細長い赤い線が張り巡らされている。スキャンを使って、進路上の未起動のMTをアサルトライフルで破壊していく。
『レーザーセンサーに触れないよう注意を。敵機の起動制御と紐付いているようです』
〈遠くから新しい友人が訪ねてくる……。素敵だ……、本当に心が躍ります。ねえ? 異界から飛び降りて来た、小さくて可愛らしいアリス?〉
「っ……⁉」
纏わりつくような、すぐ傍で囁くような声音に全身に悪寒が走った。近場に鎮座し、銃撃を向けてくるトイボックスに銃撃戦で対応し、ACS負荷限界で動きが止まったところをブーストキックで蹴り壊した。
『レイヴン……。私も何か、寒気がしました』
「……、気持ち悪い……」
とりあえず、今は進むしかない。早く終わらせたいという逸る気持ちを抑え、トラップを破壊しながら降りていく。この状況が、アーカイヴにあった白兎を追いかけた際に木の洞に落ちて、異世界をさ迷う少女の物語を彷彿とさせることに吐き気がする。周囲のトラップを破壊して、仲介のマーカー地点へと辿り着く。
〈お待ちしていますよ、ご友人。私は貴女と上手に踊れるでしょうか? 心配だ……。けれどそれよりずっと楽しみです〉
「もう、喋らないで……」
この声が、ふとCOMの声にも似ていると気付いてしまってから、より嫌悪感が増していく。垂直プラズマミサイルをマルチロックで捉えて、MT達に向けて放つ。四脚のロケット弾をクイックブーストで回避していく。撃ち漏らしを、アサルトライフルとリニアライフルで迎撃していく。
残ったのは、四脚MTだ。旋回しながらアサルトライフルとリニアライフル、垂直プラズマミサイルでダメージを与えていく。リニアライフルを切り替えて、パルスブレードを振るう。発射される寸前の砲弾をクイックブーストで避ける。アサルトライフルとリニアライフルの射撃を続け、ACS負荷限界を迎えたMTをブーストキックで蹴り飛ばす。再度パルスブレードに切り替えて二撃。ウェポンハンガーでリニアライフルを構えなおし、二丁の弾丸でMTを破壊することが出来た。
〈スロー、スロー。クイック、クイック、スロー。スロー、スロー。クイック、クイック、スロー。待ち遠しいですね、ミルクトゥース〉
『……様子のおかしい人です』
「早く帰りたい……」
とにかく、先に進むしかない。様子のおかしい気色悪い人をなんとかしなければ、帰ることは出来ない。ウォルターやラスティに会いたいと切に願ったのはこれで二度目だ。二人の安心する声が聞きたい。
『シールドを展開している機体がいます。内側から攻めましょう』
〈可愛い我が子がスクラップになっていくのは見るに堪えないね。せめて景気良くやっちまってくれ。今後の製品開発に生かさせてもらうさ〉
「わかった」
向かってくる浮遊機雷を撃ち落とし、パルスのシールドの中に滑り込む。鎮座するMTをアサルトライフルとリニアライフルで撃ち抜いていく。
〈そこから屋内に入れる。ブルートゥの奴も近いはずだよ〉
『トラップには一層注意してください。閉所では危険性が高まります』
「了解」
鋼材が崩れ落ちた隙間から屋内へと入っていく。途中からゆっくりと歩いて先を確認する。案の定、レーザーセンサーが張り巡らされていた。スキャンでターゲットを捉え、アサルトライフルとリニアライフルで迎撃する。鉄筋に乗り移ってから、一機ずつトラップを解体する。
〈友人ならば、もてなしたい。香り高い紅茶に、ミルクとシュガー。真っ赤な果実のタルト──。少女をお出迎えするのです。喜んでもらえたなら……、素敵だ……〉
こちらの正体を知っているとばかりに言葉を並べていくブルートゥ。止まらぬ怖気に手元が狂うのを抑えながら、トラップの解体を行い、進んでいく。
〈ビジター・そこから飛び降りたら終点だよ〉
最後のトラップを破壊して、カーラが知らせてくれる。
〈ブルートゥは掛け値なしのクズだ。気を抜くんじゃないよ〉
「……わかった」
より深い階層に向けて、カサブランカは飛び降りて行った。
*
『ここは……、何かの格納庫だった場所でしょうか?』
ブーストを噴かせて降り立てば、そこはひっくり返ったかのような格納庫だった。とても巨大な砲塔が見える。あれが、カーラの秘密道具なのだろうか。
『撃破目標のACが付近にいるはず……』
「……」
あまりにも、静か過ぎる。警戒しながら、ゆっくりと砲塔へと近付いていく。その時だった。
〈新しいご友人! さあ楽しみましょう!〉
振り向けば、迫りくる炎。クイックブーストで距離を取る。あれが、ACミルクトゥース。排除すべきブルートゥだ。アサルトライフルとリニアライフルで牽制射撃を行う。
〈ブルートゥ!〉
〈カーラ……。貴女はいつも私に新しい出会いをくれる、素敵だ……。シンデレラでありながら、道を示す魔法使いのようだ……〉
〈黙らせてやりな、ビジター!〉
火炎放射が視界を遮る。こればかりはFCSやターゲットアシスト機能に頼るしかない。牽制射撃は、構えたチェーンソーで防いでいるようだった。鳴り響くアラートから放たれる五連バズーカと距離を取って回避する。着地を見計らって垂直プラズマミサイルを打ち上げる。
〈ジェネレータの甘美な調べ……。ミルクトゥースも喜んでいます〉
〈あのACもうちで組んでやった機体だ。侮るんじゃないよ、ビジター〉
〈AP、残り五〇%〉
「っ⁉」
いつの間にそこまで削られていたのか。リペアキットを使ってAPを回復させる。火炎放射の合間にアラートにも引っかからないミサイルが放たれていたようだ。火炎放射を避けようと、クイックブーストや対空をしなざるを得ない。垂直プラズマミサイルが着弾して、ダメージエリアでACS負荷限界にようやく迎えさせられる。パルスブレードに切り替えて振るうも、二撃目は避けられた。
〈ミルクトゥースも……、レールキャノンも啼いている……。親元を離れ……、カーラを恋しがっていたのでしょう。不憫だ……〉
〈……かける言葉もないよ〉
持ち逃げした人間の言うこととは思えない。人格破綻者とは、正にその通りなのだろう。リニアライフルを構え直し、アサルトライフルとリニアライフル、垂直プラズマミサイルでACS負荷限界を狙う。着弾したプラズマミサイルで相手の動きが止まる。アサルトブーストを噴かせて。パルスブレードに切り替えて振るったその瞬間だった。
〈──ですが〉
「っ⁉」
ミルクトゥースの中心からパルス爆発が起きる。アサルトアーマーを仕込んでいたらしい。こちらがACS負荷限界を迎える。止まったこちらに向けてチェーンソーを振りかざす。無理矢理クイックブーストを噴かせて、掠りこそはしたもののなんとかチェーンソーの連続攻撃から抜けきった。
〈スキンシップのハグをしてくれる新しいご友人が来てくれたのですよ、ミルクトゥース。さあ、アリスと共に踊りましょう! スロー、スロー。クイック、クイック、スロー。スロー、スロー。クイック、クイック、スロー!〉
常々口にしていく言葉。その言葉の通りに、こちらは何度もクイックブーストを噴かせて、回避行動を取っている。文字通り踊らされていることに、嫌な汗が出てくる。
〈素敵なステップです……、ご友人〉
『……レイヴン。私はなんだか混乱してきました。静かにさせてもらえると助かります』
「本当に……!」
もう少しで、ACS負荷限界を迎えさせられる。垂直プラズマミサイルのダメージエリアが相手の動きを止める。パルスブレードに切り替えて振るうも、距離を見誤って二撃共に当たらなかった。精神的動揺が、大きく出ている。アラートで示された拡散バズーカを回避し、再度両手の二丁による射撃戦を再開させていく。減っていたAPをリペアキットを使って回復する。
〈左手武器、残弾五〇%〉
〈ふふ。恥ずかしがり屋の可愛らしい乙女なのですね、アリス。素敵だ……。貴女のような少女には、王子様が良く似合う〉
「……、黙って!」
アサルトブーストを噴かせて、ブーストキックを狙うも体当たりですれ違うだけ。だが、パルスブレードに切り替えて振り向きざまにミルクトゥースへと向かう。迎え撃つかのような拡散バズーカを受けながらも、パルスブレードは止まることなくミルクトゥースに二撃を与える。これが、決定打になった。
〈新しいご友人……、可愛らしいアリス。贈り物を、くれるのですね……。素敵だ──〉
最後の最後まで、纏わりつくような雰囲気の男だった。なんだか、どっと疲れてしまった。
『……敵AC、機能停止しました』
〈死んだみたいだね、良かったよ〉
エアもカーラもどこかしらと疲労を、精々したとばかりの声音だった。
〈さてビジター、吊られてる秘密道具を回収するとしよう。化物退治には、欠かせない代物さ〉
ようやく、気が狂いそうになる仕事に終わりが告げられた。
*
レールキャノンの回収はRaDの技術者が行うそうだ。こちらは一足早く帰還することになった。カーラにはとんぼ返りさせてしまったが、これぐらいは容易いとのことだった。帰投するや否や、ガレージのベンチに思わず寝転んだ。とにかく今は、身体を休めたい。
『非常に、手強い相手でしたね……』
『もう思い出したくない……』
『私も同じです、レイヴン』
誰もいないガレージ。人目が無いことを良い事に、ベンチの上でだらけるように寝転がる。今回は身体だけではない。精神的にも疲れてしまった。
〈新着メッセージ、一件〉
COMの通知に思わず身構える。やはりどこか、声が似ている気がする。気のせいだと思いたい。通知を確認すると、チャティからだった。
〈RaDのチャティ・スティックだ。お前のおかげでブルートゥは死んだ。ボスは工房にこもってレールキャノンをいじり倒しているが、あれほど気分の良さそうなボスは見たことがない〉
どうやら、カーラの方は順調に回収が出来たようだった。そこから、レールキャノンをアイスワームとの対決に向けて調整してくれているのだろう。怪物退治に一歩進んだ。
〈ああ、ボスが言っていた。折角の機会だ、十分に甘えておけ。とのことだ。用件はそれだけだ、じゃあな〉
「……」
甘えておけ、どういうことなのだろうか。疑問符が浮かぶが、今は何も考えたく無かった。
『……レイヴン、メッセージがあります。メールのようですね』
他にも、メッセージがあったらしい。確認をすると、モニカからのものだった。メールの内容は、仕事に一区切りがついたらカフェエリアでお茶をしようというものだった。
『リフレッシュにはちょうど良さそうですね、レイヴン』
『……うん』
仕事が終わった旨を伝えて、パイロットスーツから普段の衣服に着替えるべく疲れている身体を起こした。