(今日は……)
ヒビが入ったタブレット端末を確認する。特に予定は入っていない。アイスワームを倒す算段も、まだのように見える。そうなれば、今日は何もない日となる、何も無い日は、少々困る。
『……レイヴン』
『どうしたの? エア』
『時間があるようでしたら、あなたに個人的な依頼があります』
『……いいよ、聞く』
『それでは』
カフェエリアからフィーカを購入し、人気の無い廊下でタブレット端末を操作する。
『覚えていらっしゃいますか? 先にコーラル逆流が発生し、廃棄される運びとなったエンゲブレスト坑道。その調査に行きたいと考えています』
『エンゲブレスト坑道に?』
こくりと、エアが頷く。
『当該坑道は前回の異変まで半ば捨て置かれていましたが、ルビコン開発中期から存在しており、その歴史は古い……。さまざまな時代の痕跡が残っているはず。それを調べていきたいのです』
『このルビコンの、歴史……』
フィーカを一口含む。コーラルについてはウォルターから聞いたり、様々な調査を得てからそれなりに知識というものはある。だが、ルビコンⅢという惑星のことは知らないことが多い。そういう意味では、エアの依頼を受けるのは十分に益となる。
『……私には残念ながら、あなたに報酬を支払うための資産がありません。そこで代案なのですが』
エアがブリーフィング画面を操作する。そこには何か説明するための画面が表示されていた。
『惑星封鎖機構の機体残骸を見つけたらぜひアクセスしてみてください。企業もルビコニアンも……、封鎖機構の情報を集めています。回収したデータを私の方で換金し、あなたの報酬に充てたいと思います』
『なるほど……』
情報を売るとなれば、最終的にはこちらの金銭として得ることになる。暇を持て余してしまうよりは、探索に出た方が有意義だ。
『わかった。行こう』
『はい。ウォルターには、周辺の地形確認に行ったことにしておきます』
使い捨てのカップで冷めるのが早いフィーカの残りを飲んで、近くにあったゴミ箱に捨ててガレージへと向かった。
*
エンゲブレスト坑道は共同拠点からさほど遠くない。巡回中のMTとすれ違うものの、自主的な地形確認と答えればすんなりと通してくれた。
『レイヴン。付き合ってくれて、ありがとうございます』
『いいよ。何もしないのも、困るから。それに、この
『こうして、関心を抱いてくれるだけでも幸いです』
走行していく内に、エンゲブレスト坑道が見えて来た。COMを操作してカサブランカを戦闘モードへと切り替える。
〈メインシステム、戦闘モード起動〉
『始めましょうか、レイヴン。早速ですが、データ回収を行えそうな機体残骸をいくつか検出しました。マーカー情報を送信します』
『ありがとう』
マーカーが表示される。コーラルの逆流に追われたのは、この間のことだ。だとしても、なぜだか遠い昔のように思えてしまう。より、ボロボロとなった坑道の中へと入っていく。ゆっくりと降りて進むと、恐らくは落ち着いたこの場を修復しに来たのだろうか。封鎖機構のMTが巡回していた。報告をされる前に先手でアサルトライフルとリニアライフルで巡回している二機を撃ち落とす。コーラル逆流に巻き込まれて撃墜されたままだっただろう封鎖機構の機体にアクセスを行う。
『封鎖機構の機体情報です。換金して、あなたへの報酬に充てさせてもらいます』
『じゃあ、次だね』
マーカーにこそ辿り着いてはいないものの、途中落ちている回収できるものは回収する。それがどの情報かは、エアに分析を任せることにする。
『……コーラルは情報導体特性から、機器類に干渉することがあります。先の逆流現象の影響でシステムが部分復旧している残骸もあるはず……。それを見つけていきましょう』
『一度電源が落ちた機体でも?』
『そうですね。一時、息を吹き返すと言えば良いのでしょうか』
修理用の無人機がせっせとその役割を果たす中、マーカー情報を頼りに高低差のある地形を探索していく。マーカーの一つに近付くと、火花を散らしているACの残骸が倒れ伏していた。
『BAWSの旧型……。ルビコニアンの乗っていたACのようです』
『引っ張ってみよう』
残骸にアクセスを行う。どうやら、文章データのようだ。映し出されたのは、解放戦線の師父ドルマヤンが書き残した随想録のようだ。“声”を見るようになった、彼女と言葉を交わす、彼女の立場を考えればと。何かと対話し、苦悩している様子が見られる。
『……ルビコン解放戦線の思想的指導者、ドルマヤンによる口述筆記でしょう。これは……、極めて個人的なものであるように思えます』
『声と話すようになってから、何か悩んでいるみたい』
解放戦線の実態は不明瞭な部分が多い。MTを駆る戦士たちのほとんどが自爆特攻に近い精神性で戦っている。だが、中には時折依頼を回してくる青年のように穏やかな人物もいる。そう言えば、ツィイーと呼ばれた女性はあれから元気にしているだろうか。思案にふけつつも次の場所へと進んでいく。崖上の施設跡。巡回するヘリとMTに向けて垂直プラズマミサイルをマルチロックで捉え、放っていく。プラズマのダメージエリアからの撃ち漏らしをアサルトライフルとリニアライフルで撃破する。
(もっと、上か)
アサルトブーストを噴かせて、一気に上へと登っていく。マーカー付近に残骸の反応。アクセスを行って、エアに確認を行ってもらう。
『このデータも換金できそうです。あなたへの報酬が増えるのは私としても嬉しいです。この調子で探しましょう』
『うん。確か、近くにマーカーがあったはず』
建物の裏側。回り込んで進めば、そこにはBAWS製でもなく、封鎖機構の機体でもない。ましてや、どの企業にも該当しない独特な形状のACが佇んでいた。
『これは……、旧世代のAC……?』
『旧世代?』
『……少なくとも、アイビスの火以前のものです。調べてみましょう』
動かないACに近付いてアクセスを行う。半世紀以上も前に打ち捨てられた機体。この機体には、どのような情報を持っているのか。
「……」
書かれている内容に息を呑む。焦っている様子のナガイと呼ばれる教授の記録。アイビスとは、何を示しているのだろうか。
『……タイムスタンプによると、記録されたのはアイビスの火の二日前。あの災害が発生する直前の……、予兆について言及しているものと思われます』
『これは……、すごい置き土産を貰ったかも……』
アイビスの火。このルビコンを。否、星系諸共に被害を及ぼした大災害。重度の汚染と寒冷化を引き起こした。とはいえ、そう伝えられているだけで具体的にどのようなものだったのかは分からないままだ。少なくとも、誰かが意図して起こしたものではないというものは、この記録から間違いではないのだろう。厄災を止めるべく、あるいは少しでも被害を抑えようとする人間がいた。そのような人は、確かにいたのだと。
『……次、行こう。これが最後だよね』
『……』
『エア?』
『え、ええ。次が最後です。見てみましょう』
ルビコニアンのエアからすれば、アイビスの火というものはこちらよりも身近な存在だ。思うところはあるのだろう。今日は、何も予定が無ければ彼女のサブカルチャー鑑賞に付き合った方が良さそうだ。探索を再開し、坑道の中を進んでいく。修理を行う無人機ではなく、迎撃用の無人機をアサルトライフルで射貫いていく。落ちている機体にアクセスを行っていく。
『データ内容を確認……。SG機体の設計図面です』
『そんなのもあるの?』
『ええ。この機体は、比較的無事です。引き出せるものが多いです』
エアの力量に舌を巻きつつも、最後のマーカー地点へと向かう。見張りをしていただろうMTを撃ち落とし、エレベーターの中に落ちていく。落ちた残骸にアクセスを行う。
『このデータは……、執行部隊の編制が確認できます』
『これは、企業も解放戦線も欲しがるだろうね』
データを回収し、落ちたエレベーターを戻っていく。センシングデバイス付近で調査していただろうMTに垂直プラズマミサイルを放ち、二丁の銃で撃ち落とし、撃ち漏らしをブーストキックで破壊する。周囲の安全を確認してから、最後のマーカー地点へと向かう。
『それも技研の旧世代ACと思われます』
『あなたは、何を知っているの?』
アクセスを行う。引き出されたのは、やはり技研に関わる情報だった。第一助手と呼ばれる人物の様子がおかしくなっている、研究に夢中になっているようだ。その研究というものが、Cパルスによって、人間の知覚を増幅させるというもの。その研究は、嫌と言う程身に覚えがあるものだ。
『……強化人間についての言及があります。あなたもまた、……。コーラル技術によって生み出された、存在……』
『気にしなくていいよ、エア。手術を受ける前のことは覚えていないけど、きっと、昔より今の方が良いというのは分かるもの』
『……私たちの交信も、ですか?』
『うん。エアとお話するの、楽しいよ』
強化施術によって、ほとんど機能を失った身体。それを、エアは知ってしまった。この技術が無ければ、こうしてエアと話すことは出来なかった。だが、この技術さえ無ければあのような身体にはならなかった。
この両方を並べて考えると、施術を受けたことへの感情は恐らくは嫌なもの。だが、こうして様々な人と出会い、語ることには充実感というものがある。そういう意味では、施術を受けてよかったのだと捉えている自分がいる。それを、口にすることは出来ない。口にすればきっと、ウォルターが悲しむのは目に見えていた。
『取得できる情報は、もうなさそうです。あなたがルビコンの過去やコーラルについて、何かしら思いを巡らせてくれたなら……。私としては、嬉しいです』
『こちらこそ、この探索を提案してくれてありがとう。エア。じゃあ、帰ろうか』
『……はい』
こうして、少女たちの小さな冒険は終わりを迎えたのだった。
*
「……」
周辺の地形確認に向かうと言った少女の帰りが遅い。彼女を一時的に預けている女性二人に問いかけても、まだ彼女は戻ってきていないのだと言う。彼女も自立をし始めたと喜ぶべきか、迂闊であると叱責したくなるような。そう思い悩む内に、見知った相手からの通信が入った。
〈話は付けてきたぞ、ハンドラー・ウォルター!〉
ミシガンからの通信。カーラも例の兵器については準備が出来ていると連絡を貰っている。後は、あの兵器を扱える人材がいれば……
「アーキバスは妥協したか、ミシガン」
〈向こうには強襲艦隊をくれてやった。その代わり、化物退治はベイラム主導でやる。目付け役ということだろうが、ヴェスパー上位も使っていいとのことだ〉
妥協というよりは、まんまとベイラムはアーキバスに乗せられたというべきだろうか。ミシガンの眉間の皺がより深くなっていることから、やはり彼もこの分担には思うところがあるのだろう。とは言え、アイスワームを撃退しなければこちらは進むことができない。ならば、例えアーキバスの手の平の上だと分かっていても乗るしか無かった。
「……何よりだ、ミシガン。こちらからも戦力を回そう」
〈RaDとかいう技術者集団だな。それから貴様の猟犬だが……〉
「ミシガン」
例え、兄代わりの存在であったとしても。その先の言葉を許すことは出来ない。
「621なら配慮は不要だ。あいつの仕事は、俺が保証する」
〈……相変わらずだな、ウォルター。そうして甘やかすから、
「ミシガン、621の身体は――」
〈物理的なことではない〉
ミシガンが言葉を続けていく。
〈己の猟犬と人間として見るならば、成長を見逃すな。体格でも実績でもない、精神だ。いつまでも子供だと思うなよ〉
「……お前にだけは言われたくない」
〈ウチのクソガキ共を一緒にするな! あのワルガキ共より、
「ミシガン。あいつにそれは、まだ早い。そこまでの成長はまだだ。断言する」
〈そういうことにしておいてやる。貴様の猟犬が戻り次第、ブリーフィングを始めるとしよう〉
ミシガンからの通信が途切れる。何か言いたげではあったが、あえて触れないことにした。
〈来客です、ハンドラー・ウォルター〉
COMの通信に確認を取れば、恐らくはアサインされただろう彼女にまとわりつく若造の姿が見えた。
*
〈通信が入っています〉
ガレージへカサブランカを収容しようと作業に入ったその時だった。通信に出れば、並々ならぬ雰囲気のウォルターがいた。
〈……戻りが遅いぞ。お前はすでに名の売れた傭兵だ。あまりウロウロするな〉
「……ごめんなさい」
『すみません、レイヴン……』
名の売れた傭兵。その自覚は無いものの、独立傭兵レイヴンが呑気に散歩をしているとなれば、何かしらのトラブルに巻き込まれてもおかしくない状況になる。それで何かが起きてしまってはまずい。そう考えれば、少々迂闊だったかもしれない。
〈自主的な地形確認だったのだろう? 彼女自身に収穫があればそれで良いのでは〉
「ラスティ?」
カサブランカの収容が終わる。脊椎端子が外れ、コクピットが開く。身体を乗り出せば、こちらを見上げているウォルターとラスティの姿があった。(ウォルターが一方的にではあるが)犬猿の仲である二人が並ぶのは珍しい。
「お帰り、戦友。戻ってきて早々に悪いが、ブリーフィングが始まる」
「次の作戦はこれまでとは規模が違う。俺たちもブリーフィングに参加するぞ」
こちらやラスティが駆り出される作戦。この様子を見る限り、ようやくアイスワームを倒す算段がついたのだろう。ならば、行かないという理由はない。
「……わかった」
「身支度を整えてからで構わないぞ、戦友。いくらスネイル閣下でも、レディの支度に時間がかかるくらいは分かっているだろうさ」
(信用していない……)
少々わざとらしい口調に、思わず口角が上がっていた。
*
ラスティに連れられ、ウォルターと共に今回のためのブリーフィングルームへと向かう。背丈が小さく歩幅が小さい621、脚に不調を持つが故に少々歩みが遅いウォルターを気遣ってか、ラスティが歩幅を合わせてくれた。ブリーフィングルームに入ればそこには、背丈こそは高くは無いがとても七十近いとは思えぬ体格をしている白髪の男、
金色の髪を後ろに流し神経質そうな碧眼に眼鏡をかけた青年の姿、
赤が混じった黒髪の褐色肌の長身の女性、カーラ。
気だるげな表情をした、黒髪に褐色の肌と金色の瞳を持つ青年の義体を用いているチャティ。
刈り上げをした茶髪を雑に結び、赤い双眸を片方だけ髪で隠している青年、
艶やかな黒髪をひとつにまとめた碧眼の女性、ベルタ・ウェバーの姿があった。
「ラスティ隊長、レイヴンを呼びに行くと言って少々時間がかかり過ぎです」
「自主的な地形確認に行っていたそうだ。レディの身支度には時間がかかるものだぞ、スネイル隊長」
「はあ……、まあ良いでしょう。独立傭兵レイヴン、フィクサーのハンドラー・ウォルター。あなたたちもテーブルに来なさい」
ため息をつくスネイルに誘導され、こちらもテーブルに近付く。恐らく、テーブルそのものがモニターになっているのだろうが……、背丈の低い621からすれば、少々全体を見渡しにくい。
「──失礼、戦友」
「わっ……⁉」
『レ、レイヴン! 心拍数と脈拍の上昇が凄まじいです! 大丈夫ですか⁉』
『大丈夫、じゃない……』
膝下や背中に腕が入ったかと思えば、そのままラスティに抱きかかえられる。彼の腕に座るような姿勢となり、落ちないように彼の肩に腕を回す。背の高い彼に抱きかかえて貰えれば、確かにモニターの全体を見渡すことが出来る。とはいえ、ラスティの整った顔立ちと掠れた心地の良い声がいつもより近いというのは少々困る。どうして困るのかは、分からないが。上昇する体温と心拍数に、脈拍が早くなるのが分かる。
「へえ。流石
「
「──落ち度は認めます。では、まず私から前提を説明しましょう」
少々賑やかにはなるものの、スネイルの一言から緊迫した雰囲気が戻って来る。大きい心拍の中でも、なんとか聞き取れる。
「これは両社が合意した一時停戦協定に基づく惑星封鎖機構に対する同時襲撃作戦です」
モニターに二つの戦場が展開される。一つは中央氷原、一つはベリウス地方だろうか。
「目標は敵方が保有する拠点群および強襲艦隊。そして先般起動した──」
「ここからが本題だ! 要するに、ルビコン各地で封鎖機構との総力戦が起こる」
ずいっとミシガンがスネイルの説明を遮り、一言で全てを説明した。あの調子では、前提の説明だけで数十分はかかると見たのだろう。こちらに強襲艦隊についての説明をされても困る。ここに集められた面々はその担当ではない。それだけはすぐに分かることだった。
「貴様らは貧乏くじを引いた! ここにいる面々がアサインされたのは、最大の脅威。氷原の化け物退治だ!」
「アイスワーム……」
氷床をものともせず潜っては、地上を這いずっていく鋼鉄の怪物。突然現れた怪物に、一切の手出しが出来なかった。迫りくる顔面への恐怖は拭い切れてはいない。だが、あれを倒すだめの準備がようやく整ったのだ。無意識に、手に力が入っていく。
「やってやれるかよ。俺は遠巻きに見物させてもらうぜ」
「
「てめっ……!」
「アイスワームの多重コーラル防壁を無効化する手段について、話そうじゃないか」
乗り気ではないというイグアスに構わず、前衛に定めるミシガン。シールドを構え、堅実な射撃戦を行えるイグアスならば、確かに粘り強く囮役を担える。噛み付こうとするイグアスを抑えるかのようにカーラがモニターに情報を提示する。
「あれはプライマリシールドとセカンダリシールド。二枚から成る鉄壁の守りだよ。プライマリシールドはまあまだなんとかなるが、問題は二枚目。ACの普通の兵装じゃまず太刀打ちできない。だからと言って、一枚目を割らなければ二枚目には届かないという寸法さ」
「一枚目を突破する手段はアーキバスが提供しましょう。最新兵器“スタンニードルランチャー”。これを顔部に当てれば、求められる結果が得られるはずです」
アイスワームの二枚のシールド。まずは、それを崩さなければならない。一枚目を破壊する手段は、アーキバスが提供するスタンニードルランチャーで効果が発揮されるのだろう。ふと設計者と思しき名前、ソフィア・フォークナーの文字が目に入った。
「二枚目はどうする」
一枚目を突破する方法はある。なら、二枚目はどうするのか。当然の疑問をミシガンが問う。
「夜なべして作ってた玩具がある。RaD謹製“オーバードレールキャノン”さ」
カーラが答える。画面に映し出されるレールキャノンは、あの思い出したくもない存在から取り戻したものだ。あの耐え難い時間も、このためにあったのだと思えば、苦い思い出は多少なりとも薄まった。
「バートラム旧宇宙港の待機電力を回せば威力は足りる計算だが……。問題は命中精度だね」
「そういうことであれば射手は任せてくれ。狙撃には自信がある」
あの巨大な砲塔に、更に高威力のものとなればただ撃つだけで良い代物ではない。ミスが許されないポジションへの立候補に、思わず近くの顔を見やる。視線に気づいたのか、大丈夫だと言いたげな笑みが返ってきた。
「私は現場監督として出ましょう。寄せ集めには統率が必要です」
「弾幕要員も一枚欲しい。うちからはチャティも出そう」
次々とポジションが決まっていく。第二隊長として、実質ヴェスパーを率いているスネイルならば、確かにその指揮は信用出来るものだろう。チャティもアリーナでのサーカスの構成として、弾幕を作るという意味では最適の役割だ。無言で無表情のままだが、こくりと頷くのが見えた。
「あと決まっていないのは、スタンニードルランチャーを誰が当てに行くか……」
ラスティが呟くまでもなく、周囲の視線がこちらに集まるのが見える。というよりは、ここまでポジションが決まっていく中、何も割り振られていないのは、さすがにこちらでも分かる。
「最前線で殴りに行く係なら、最初から決まっている」
ミシガンを見やれば、ニヤリと不敵な笑みを浮かべている。貴様ならやれると、老いた姿に似合わぬ鋭い光を宿す碧眼と目が合ってしまった。
「
ミシガンのいつもの締め文句。数多の勢力が一丸となって、怪物退治が始まろうとしていた。