カサブランカのコクピットの中が揺れる。輸送ヘリは、アイスワームが根城にしているだろう作戦エリアへと向かっている。天候は降雪。風も出ているせいか、より輸送ヘリを揺らす要因となっていた。
〈……時間だ。621、準備は良いか?〉
「……大丈夫」
緊張しないと言えば嘘になる。だが、やれると信じてくれる人がいるのだ。それが、アイスワームに植え付けられた恐怖心や、この作戦におけるプレッシャーを跳ね除けてくれる。
『作戦の要はあなたです、レイヴン。私も、出来る限りのサポートをします』
『ありがとう、エア』
エアも、ウォルターも、彼も。こちらなら成し遂げると信じてくれている。君ならやれると、彼の言葉を反芻させる。武装の最終チェックを行う。気付けば、カサブランカのアセンブルも大いに変わっている。RaD製の頭部パーツはそのままに、コアと脚部はログハント報酬で配布されたオールマインド製のもの。腕はアーキバス製だ。アサルトライフルとリニアライフルは問題ない。スタンニードルランチャーも異常は見当たらない。顔部にしか攻撃が通らないこと、あの大きな怪物相手には有効打になり得ると、もう一羽のカラスが抱いていたパイルバンカーも異常は見られなかった。
〈これだけの勢力が一堂に会する作戦はそうそうない。……行ってこい、621〉
『行きましょう、レイヴン』
「……うん。行こう、カサブランカ」
輸送ヘリから投下される。昼だと言うのに、分厚い雲が日を遮っている。現場には既にイグアスのヘッドブリンガー、スネイルのオープンフェイス、チャティのサーカスの姿があった。
〈メインシステム、戦闘モード起動〉
〈ミッション開始だ。本作戦の総指揮はミシガンが執る〉
こちらの降下と同時に、三機が前へと飛び出していく。続くように、こちらもブーストを噴かせていく。遠くから、怪物が頭を飛び出し、氷床に潜る姿が見える。
〈これより、ベイラムとアーキバスの合意に基づき、混成AC部隊による作戦行動を開始する。始めるぞ! 命知らずども!〉
アラートと共に、アイスワームが氷床から飛び出してくる。四機は各々のポジショニングを意識して散会を始める。
〈寄せ集め各位、統率を欠かないように〉
〈なんだこいつは、舐めてんのか……? チッ、イラつく野郎しかいねえ〉
怪物の注意を引き付けるように、ヘッドブリンガーがパルスシールドを展開しつつ、リニアライフルでアイスワームに攻撃を与える。それを補佐するように、オープンフェイスのレーザーショットキャノン、サーカスのミサイルたちが巨体へと降り注いでいく。
〈まずは厄介な防壁を引き剥がす。
『狙うべきは頭部です。体側は強固な物理装甲でも覆われています』
「……了解」
今回の作戦用に、外付けのターゲットスコープがカサブランカに取り付けられている。スコープを調整し、映る映像に集中する。照準の補佐や誤差修正はエアがしてくれる。カサブランカを走行させつつも、深呼吸をする。
〈こちら
「……、任せて」
信じて待っている人がいる。抱き始めた緊張が解れていく。アラートに飛び出してくるアイスワームと、距離を取っていく。
〈ビジター、うちのボスから伝言を預かっている。“滅多にない作戦、楽しんできな”だそうだ〉
「カーラらしい、ね……!」
アイスワームと共に飛んでくるコーラルミサイルの数発を受けるが、軽傷で収めることが出来た。作戦開始から数十秒。なんとなく、三機の動きやアイスワームの動きに慣れて来た。レーダーは、アイスワームをしっかりと捉えている。鳴り響くアラートに視界を向ける。ほんの数メートルの隣に怪物の巨体が氷床から飛び出し、クイックブーストで距離を離す。アイスワームが首をもたげたタイミングに合わせて、肩部武装の発射トリガーを引く。一秒のタイムラグ。右肩に背負った武装は見事にアイスワームの顔部に直撃した。
「当たった……!」
『目標、プライマリシールド消失!』
飛び交うコーラルミサイルをクイックブーストで避ける。最初の一打は問題なく与えることが出来た。後は、彼を信じて待つのみ。
〈シールド消失を確認。レールキャノン発射シーケンスに入る〉
淡々とした声が続く。ふと、視界の端に光る物が見える。地平線の彼方。まるで、夜明けのような光だ。
〈EMLモジュール接続、エネルギータービン解放。出力八〇%――〉
怪物は氷床の下。怪物がいつ飛び出してくるかは分からない。怪物を誘き出すためにも、動き続けるしかない。
〈照準補正良し、九〇、九五――〉
〈そっちに行ったぞ! 野良犬!〉
イグアスの怒号、鳴り響くアラート。見上げれば、怪物が氷床から飛び出し、こちらに突進しようと視線を向けていた。
〈外しはしない〉
だが、怪物の背後から貫く一射。血飛沫のようにコーラルが飛び散っていく。脱力したかのように怪物が氷床へと倒れ込んだ。
『セカンダリシールド消失!』
〈
「……了解!」
アイスワームの顔部に向けてアサルトブーストを噴かせて近付いていく。リニアライフルをパイルバンカーへと切り替え、アサルトブーストの慣性に乗ったままパイルバンカーを装備した左腕を大きく引く。撃鉄を起こし、炸薬を共に鉄杭をアイスワームの顔部に叩き込んだ。パイルバンカーの一撃が効いたのか、瞬時に怪物の頭が跳ね上がりコーラルの誘爆が起きる。
〈あのキザ野郎、決めやがった……〉
〈当然です。この程度はやってもらわなくては〉
のたうち回りこそはするものの、すぐに怪物は氷床へと潜っていく。再び頭を出したその時。浮遊機雷のようなものが展開されていくのが見えた。
〈ビジター、目標が子機を展開した。対処する〉
「わかった」
三機の火線が展開された子機へと向かう。こちらも、手近に存在する子機はアサルトライフルとリニアライフルで撃ち落としていく。
〈
〈いま終わったところだ、ミシガン総長〉
〈抜かりはないようだな。ナンバーに空きがあれば勧誘しているところだ!〉
〈ベイラムの“歩く地獄”にそう言われるとはな。光栄だが遠慮しておこう〉
『レイヴン、レールキャノンの準備が完了したようです。顔部に狙いを定めていきましょう』
『うん』
ラスティの準備が整ったならば、スタンニードルランチャーを当てに行く方向にシフトする。鳴り響くアラート、想定より近い場所にアイスワームが出現した。
「しまっ――、っ⁉」
巨体が落ちる前に、横から強い衝撃。吹き飛ばされたカサブランカは巨体に巻き込まれることは無かった。衝撃が来た方向を確認すれば、叩き潰すために振り下ろされた巨体によって、限界を迎えたヘッドブリンガーの姿があった。
〈クソッ! 機体が……、どうして俺が先に落ちる……!〉
『ヘッドブリンガー、中破。活動限界です!』
「イグアス……⁉」
対応出来なかったこちらを突き飛ばすことで庇ってくれたのだろう。残るのは、重量二脚のオープンフェイスと軽量タンクのサーカスだ。防御力とAPに優れている両機は、まだ持つようだ。
〈情けない。ベイラムのレッドガンはその程度ですか〉
〈アーキバスのヴェスパーは評論家でも務まるようだな。
言われるまでもない。こちらの不手際で、イグアスには余計な手間をかけさせた。鳴り響くアラートに視界を向ければ、遠くから飛び出すアイスワーム。だが、着地からの旋回にこちらの真正面に向かってくる。距離は保たれ、位置も問題ない。スタンニードルランチャーのトリガーを引き、電撃を纏った弾丸が顔部に直撃した。
『プライマリシールド、消失しました!』
〈シールド消失確認。レールキャノン発射準備〉
「っ!」
距離は離せたものの、振り回す尻尾の直撃を受け、コーラルミサイルが迫る。クイックブーストで無理矢理脱してリペアキットでAPを回復させる。
〈エネルギータービン、出力八〇%――〉
レールキャノンのシーケンスが淡々と進んでいく。再び、地平線に光が灯っていく。
〈出力九五……、一〇〇――〉
鳴り響くアラート。怪物の頭が飛び出した。
〈巻き込まれるなよ……!〉
冷徹な声音でも、気遣いが混ざる言葉と共に怪物が貫かれた。
『セカンダリシールド消失!』
〈戦友、追撃を頼む〉
「任せて」
ウェポンハンガーでリニアライフルをパイルバンカーに切り替え、地に伏せた怪物の顔部にもう一度鉄杭を叩きこんでいく。パイルバンカーの一撃は、再びコーラルの誘爆を起こしていく。怪物が藻掻くように頭を上げる。そして、アイスワームの表面が、赤い光を帯び始めていく。
「アイスワームが、光って……」
〈待て、様子がおかしい。離れろ、621!〉
「っ!」
すぐにアイスワームから距離を取る。アイスワームを中心に、稲妻のような赤い閃光が広がっていく。
〈これは……⁉ まだ機能を隠していたのか⁉〉
『コーラルが……、暴走している……!?』
〈これは……、悠長にやっている余裕はなさそうだな……〉
まるで、生物のようだと、621の思考に過ぎっていく。追い詰められ、死を直感した怪物が、コーラルが死から逃れるためにがむしゃらになっているのだ。
〈レールキャノンの出力を限界まで引き上げよう。被害が広がる前に決着を付ける。次が最後の一発だと思ってくれ〉
「ラスティ……」
〈なに、問題ないさ。君はスタンニードルランチャーを当てることに集中してくれ〉
「……わかった」
最後の一射に賭ける。がむしゃらになっている怪物が相手では、オープンフェイスもサーカスも、カサブランカも持たない。そのためにも、こちらがスタンニードルランチャーを当てねばならない。コーラルミサイルの嵐を、クイックブーストでジグザグに動いて回避していく。
〈……機体損傷拡大。長くは持たないと思ってくれ、ビジター〉
サーカスの限界が近い。のたうち回る怪物と共に注がれるミサイルの雨はじわじわとAPを削り取っていく。リペアキットの数は残り一つ。のたうち回る怪物の頭が空に向かい、再び閃光を放つ。
〈機体は限界か……。止むを得ん、撤退する!〉
(でも……!)
閃光の直撃に、オープンフェイスが離脱する。だが、その閃光は確実に動きが止まる瞬間だ。ブーストを噴かせて上昇し、スタンニードルランチャーを撃ちこむ。当たりこそはしたようだが、プライマリシールドは削り切れていない。
『……まだです。プライマリシールドも、耐久が上がっている……!』
〈焦るなよ……、戦友……!〉
なんとか一呼吸をつける。ここで焦ってこちらが撃墜されては意味がない。こちらの手に、エアの幻影が手を添えてくれる。感覚は無くとも、そう見えるだけでも違う。落ち着いて、次の機会を待つ。
〈
「……、了解!」
ミシガンの叱咤に、気が引き締まる。一度でダメならば、もう一度当てればいい。作業工程が増えただけだ。それだけでも、どこか焦っていたものが完全に消え失せた。次のアラートが鳴り響く。怪物の顔部を捉えるべく、ブーストで上昇する。注意を引き付けるかのように並走していたサーカスがアイスワームの前に躍り出る。サーカスに向けて、閃光と共にアイスワームが身体を叩き伏せた。
〈……すまない、ビジター。手伝えるはここまでだ〉
「大丈夫、ありがとう。チャティ」
彼の献身が、アイスワームを捉えさせてくれた。上空から地に這うアイスワームに向けてスタンニードルランチャーを放つ。赤い閃光に混じり、電撃が顔部を走っていく。
『プライマリシールド消失!』
〈よくやってくれた、戦友〉
「私だけじゃない。みんなが、いてくれた」
〈……、そうだな〉
アイスワームが氷床に潜るのを確認してから着地する。後は、こちらが繋げたものを彼が成し遂げるだけ。
〈EMLモジュール全点接続。エネルギータービン全開。出力八〇……、九〇――〉
地平線の彼方。夜を明けようと、光が灯る。
〈緊急弁閉鎖、リミッター解除……!〉
先程までと違い、光はより強力なものとなる。これから、太陽が昇ると言わんがばかりに輝いている。
〈一〇〇……、一一〇……、一一五……。レールキャノン、最大出力〉
アラートが鳴り、怪物が氷床から飛び出す。
「――、ラスティ‼」
〈これで決める……!〉
煩わしいとターゲットスコープを払いのけ、腹の底から思わず吠えた。このような経験も、そうしたいという衝動に駆られたのは初めてだった。寸分違わず、氷原を駆けずり回る怪物の後頭部に目掛けて、夜明けと共に一条の流星が撃ち抜いた。
『目標、コーラルシールド完全消失!』
〈あとは任せたぞ、戦友!〉
「――!」
アサルトブーストを噴かせて、怪物の顔部に向かって飛び込んでいく。パイルバンカーに切り替えた装備した左腕を大きく引く。撃鉄を起こし、炸薬を共に鉄杭をアイスワームの顔部に叩き込む。だが、まだ足りない。パイルバンカーのクールタイム中に、スタンニードルランチャーを含めて持てる武装を叩きこんでいく。
『⁉ コーラル反応が増幅しています! 急いで!』
「うああああああ!」
パイルバンカーの再装填が終わる。リニアライフルをパイルバンカーに切り替え、もう一度左腕を大きく引く。昂り続ける何かに、幼い身体は吠え続ける。撃鉄を起こし、炸薬を共に鉄杭は怪物の顔部を確かに貫いていった。
〈やったか……⁉〉
〈爆発するぞ! 離れろ!〉
「っ……!」
クイックブーストを噴かせて後退する。鉄杭を打ち込まれた怪物が曇天へと伸びていく。そして、コーラルの赤い大きな爆発を起こした。
〈マジかよ……。野良犬野郎が、決めやがった……〉
「これで、やっと……」
ぽつぽつと、イグアスやスネイル、チャティからの応答が混じって来る。彼らも無事に脱出は出来たようだ。爆発が収まったアイスワームは力なく氷原へと倒れ伏す。
〈……終わったようだな。爆発の余波は汚染を伴う。作戦領域から――〉
「っ……!」
ウォルターの声すら遮る強い耳鳴り。死んでいくモノたちの悲鳴のような、静かながらも鋭い音に思わず頭を抱える。
『……。コーラルが……、また失われていく……』
『エア……?』
息を呑み、愕然とするエア。アイスワームの体側の亀裂から、赤い光が空へと登り、漂い始めていく。
『――レイヴン』
『……なに?』
『私は、偶然とはいえあなたの秘密を知ってしまいました。だから……、あなたに伝えておきたいことがあります』
傍らに立つエアの幻影がふわりと前へと出てくる。コクピットを通り抜け、カメラ越しでも彼女の姿を見ることは出来た。静かに登っていく赤い光を背に、彼女はこちらに振り向いた。
『コーラルは――。彼らは……、私の同胞なのです』
『どういう、こと……?』
エアの言葉を素直に飲み込めない。コーラルが同胞ということはどういうことなのだろうか。コーラルは物質というよりは生命寄りの存在であることは聞かされている。だとしても、彼らにあるのは群知能であって、エアのような人間と変わらない知的生命体ほどのものではないはずだ。
『コーラルの織りなす潮流。幾重に重なった音が、歌となるように。私は……、そこに生じたひとつの波形……。実体を持たぬ、ルビコニアン』
「……」
幾重に重なった音。コーラルの一つ一つが、群知能を持ち得るというのであれば。情報伝達物質としての性質をも持ったそれは、いつしかネットワークを形成し、人間と同等の知能を持った存在への変質を可能とする。ということなのだろうか。人間の脳は数百億の神経細胞の集合体であり、それらを繋ぐシナプスが形成されることで互いに電気信号を送り合う一種のネットワークであるとは、聞いたことがある。エアもまた、同じだと言うのだろうか。
『これまで長い間……、誰にも知覚されることは無かった。ただ、同胞たちの揺り籠の中で微睡む私を、レイヴン。あなただけが――』
「エア――」
輸送ヘリのプロペラの轟音と、照らされるライトが視界を覆い尽くす。気付けば、コーラルの赤い光は消えていた。
〈621、戻って休め。これから忙しくなる。よくやった〉
「ウォルター……」
ウォルターの優しい声音と共に、ゆっくりとカサブランカは収容されていった。
*
輸送ヘリから、両企業の共同ベースのガレージへとカサブランカが収容される。そこには先に、ヘッドブリンガー、オープンフェイス、サーカスが収容されているのが見える。スティールヘイズの姿は無いが、足元をカメラで確認すればレールキャノン側にいた人員も戻ってきているのが確認できた。すぐに彼らの下に行きたいというそわそわしたモノを落ち着かせ、脊椎端子が外れるのを待つ。ゆっくりとコクピットが開き、通れそうな隙間から身体を乗り出した。
「そら、我らが可憐なお姫様のご帰還だよ!」
こちらが降りたことに、いの一番に気付いただろうカーラが声を上げる。タラップにいるこちらに全員の視線が集まる。さすがに、それには気圧されてしまう。咄嗟にしゃがんで身を隠してしまった。
「
ミシガンの隣で、やっていられないとばかりの雰囲気を漂わせるイグアスとスネイルの姿が見えるが、二人とも、ミシガンに物理的に抑えられていた。急いでタラップから降りていく。
「お疲れ様、戦友」
「ラスティも、お疲れ様。カッコよかった」
「お褒めに預かり、光栄だ」
輪の中に入ろうとすれば、少し疲労は見えるものの、ラスティが出迎えてくれた。先程の戦いについて、素直に称賛する。
「来たな
「はっ! 皆さん! 一列に並んで!」
状況が読み込めない。オオサワと呼ばれるレッドガン隊員と思しき黒髪に眼鏡をかけた男性が箱型の道具を持っている。
『調べました。あのレッドガン隊員が持っているのは、数世紀前のカメラのようです。ほとんどアンティークに近い物ですが、使えるのでしょうか?』
「
ミシガンに言われるままに(イグアスとスネイルは渋々だが)、次第に今回の作戦参加者が並び、固まっていく。
「……、ウォルターは?」
「ハンドラーは……、あちらのようだな」
ラスティに言われた方向を向けば、少し離れたところでウォルターがこちらの様子を見ているのが見える。列から離れ、ウォルターの元へと向かう。
「……ウォルター」
「俺はいい。お前は行ってこい」
「……ダメ。ウォルターも、一緒」
じっと、少女と老人が互いの目を見合う。意固地になっている二人の背後から大声が響き渡る。
「ウォルター! 意地を張ってないで貴様も来い!」
「ビジターのオペレーターだろう⁉ あんたも来ないでどうするんだい!」
「……」
ウォルターからため息が零れる。あの二人を前にしては、ウォルターも敵わないらしい。列に合流するように杖をつきながらゆっくりと歩いてくる。ウォルターの衣服の袖を引っ張って、こちらの近くに来るようにした。列の中央に立たされ、その左右に今回の作戦に参加したパイロットやスタッフたちが並んでいく。右隣にはウォルター、左隣にはラスティだ。こちらに合わせてか、ラスティは膝を付いていた。
「僭越ながら、このオオサワが記念撮影を撮らせていただきます! 皆さん、こちらを向いて! それでは、三、二、一――」
カシャリと、どこか古めかしいシャッター音が鳴る。数枚ほど撮ります! と、数回、シャッター音が鳴り響いた。
「終わりました! データは後で送らせていただきます!」
「まだ遠足は終わりではないぞ貴様ら! 二時間後に、うちの炊事兵のメシを食わせてやる! 身体を休めつつ、腹を空かせて待っておれ!」
ミシガンの号令に、一旦は解散の運びとなる。だが、一休みした後も続くようだ。
「……行くぞ」
「わかった」
「また後でな、戦友」
「うん」
ウォルターに促され、彼の後についていく。後ろから聞こえた声に、こくりと頷いてウォルターの後を着いていった。
その後の打ち上げという食事会では、ウォルター、カーラ、ミシガンの三名が古い付き合いの友人かのようなやり取りを行っていたり。スネイルが苦虫を噛み潰したような雰囲気でアラカワの料理を認めたり。アラカワに偏食をするなと叱られるイグアス。健啖家であると発覚するラスティと、様々な人物のありのままの姿が見ることが出来たような気がした。