無機質なアラートの音が響き渡る。仮眠の終了を告げる目覚ましの音だ。このウォッチポイント・アルファの探査はまだ続いている。休憩の後に、新たに次の指示を出すという算段であった。起床の後、身支度を整えて、ウォルターが作り置きしてくれただろうサンドイッチを口にする。ミネラルウォーターで流し込み、ガレージへと向かう。
「休めたか、621」
「うん」
「ならば仕事の続きだ、621。深度二の探査を行ってもらう」
ヒビが入ったタブレット端末を操作して、ブリーフィング画面を開く。先程と同じく、アーキバスからの依頼として仕事は継続するようだ。
「この区画は横にも広く、物資輸送のための線路が張り巡らされている。複雑な道中には、物陰や死角も多い。狭所での戦闘に備えておけ。……以降の深度では、広域レーダーによる情報支援はできん。621、お前の間隔に頼る形になる」
「わかった」
こくりと頷く。様々なルートを用いて輸送をしていたとなれば、確かにその通路は多くなる。そして、分岐が多く存在するということは、その分死角が発生する。封鎖機構の無人機は地形の利用も可能な思考性能も保持している。スキャンを活用して慎重に進む必要があるだろう。ブリーフィングを終え、カサブランカの最終確認を行う。整備も、問題無さそうだ。
『レイヴン、こちらからも伝えておきたいことが……』
『どうしたの?』
タブレット端末の画面が変わる。これは、施設内の監視カメラの映像なのだろうか。
『先行して突入したベイラム部隊の通信ログを拾ってきたのですが……。どうやら彼らは……、施設調査ではない任務も帯びているようです。脅威はガードメカだけではありません。人の思惑にも注意を』
「……」
調査以外の任務。考えられる可能性としては、この未知の領域で競争相手を闇討ちすることだろうか。この地形と支援が届きにくくなる状況ならば、絶好のタイミングだろう。
(気を付けないと、か)
これから、どのような事態が起きるのか。嫌な予感に満ちているとしても、先に進まなければならなかった。
*
〈メインシステム、戦闘モード起動〉
『行きましょう、レイヴン。ここからが地中探査の本番です』
『了解』
ネペンテスの残骸から探査が再開される。通路の奥は、複雑怪奇の迷路が待っている。ブーストを噴かせて隔壁へと向かう。下り坂を降りて行けば、まずは封鎖機構の無人機が飛び出してきた。迫るパルスブレードをクイックブーストで回避し、アサルトライフルとリニアライフルで撃ち落としていく。道なりのカーブとなっているトンネルを潜れば曲がった先にも一機。クイックブーストで後退してパルスブレードを避けて両手の銃で撃ち抜く。トンネルの先にも、二機の無人機が待機していた。一機をトンネル内におびき寄せてから対処し、残る一機も撃墜する。目の前の隔壁にアクセスを行おうにも、アクセスが出来ない。妨害されているというよりは、通電そのものがしていないようだった。
『……?』
『レイヴン。このエリアの図面を回収できました。この先にも線路が続いているのですが……。電源が落とされているようです。復旧する手段を探しましょう』
『……わかった』
そう言えば、この広間には脇道が存在していた。そこに何かがあるのかもしれない。正規ルートから外れ、脇道へと入る。広いエリアはよく見れば下に降りられる穴がある。リフトが降下している後なのだろう。開いた穴に降りた瞬間、物陰からMTが飛び出してきた。あれは、BAWS製品のMTだ。
『伏兵です!』
〈来たな……! 独立傭兵レイヴン!〉
〈アーキバスに付くなら……、死んでもらう……!〉
〈……ベイラムMT部隊のようだな。排除しろ、621〉
「了解」
エアが言っていたベイラムの不穏な動きとはこういうことなのだろう。やはり、支援が行き届かないこの深度調査中に闇討ちを行うことが目的だったようだ。だが、来るのならば仕方がない。アサルトライフルとリニアライフルで迫るMTを処理し、パルスブレードで斬り捨てる。闇討ちを仕掛けようとしたMT部隊の四機をすぐに片付けていく。
〈アーキバスめ……〉
最後の一機から、恨み言を吐かれる。あちらも仕事ならば、こちらも仕事だ。ある程度感情の機微が戻ってきたせいか多少の罪悪感こそはあるものの、すぐに割り切ることが出来た。傭兵という仕事に慣れてきた証拠なのだろう。
(でも、これが……)
知らぬ他人だから割り切れたのであって、見知った人物ならどうなってしまうのだろうか。かぶりを振って、辺りを探索する。
『制御盤を発見。これで通電を復旧できます』
『お願い』
アクセスを行えば、エアが操作を行っていく。バチリと制御盤に電気が走り辺りが明るくなっていく。しばらくすれば、隣の隔壁が開いた。
『リフトも起動しました。上階に戻りましょう。これで隔壁も開くはず。アクセスしてみてください』
『わかった』
どうやら、リフトも起動してくれたらしい。リフトを使って上階へと戻る。先程の通電していなかった隔壁の側に出てくる。隔壁にアクセスを行えば、ゆっくりと開いていく。先へと進めば、封鎖機構の無人機の残骸が転がるトンネルへと出る。
『この先は熱交換室です。先行したベイラム部隊の通信ログはこの付近で途切れています。用心を』
残骸があるということは、無人機を撃破した誰かがいる。そして、通信ログが途絶えているということは、ここでベイラムの先行部隊が全滅したか。誰かが待ち伏せているか。いずれにせよ、この隔壁を開かなければ分からない。隔壁にアクセスを行っていく。開いた先は熱交換室という名前だけあり、温度が高い一室となっている。その奥に、一機の姿があった。
〈待ってたぜ……、野良犬……!〉
『あれは……、ACヘッドブリンガー。
「イグアス……⁉」
どうして彼が。否、彼もまたこの深度探査に参加している一人だ。出会うことは不思議ではない。それが、敵として邂逅したのだ。先行してプラズマミサイルを放つも一度打ち上げる工程を挟む垂直ミサイルは閉所では天井で霧散する。アサルトライフルとリニアライフル、パルスブレードで応戦するしかない。よく見ればヘッドブリンガーのアセンブリが変わっている。腕パーツを換装してシールドの代わりに肩装備が施されている。リニアライフルとマシンガンの雨がこちらへと向けられる。
〈てめえを殺して、俺は地上に戻る……。物騒な穴倉生活にはもうウンザリなんでな……〉
放たれる四連ミサイルがこちらを狙っていく。障害物のある地形は動きにくい。それでも、彼は堅実にこちらを狙っている。
〈野良犬が死ねば……、気分良く帰れるだろうよ!〉
イグアスの殺意は本物だ。地形を利用して、滞空を織り交ぜた戦術でこちらを撃ち抜いていく。戦況判断も、中距離を維持した戦い方も、我流ではなく分析と考察がされた指導を受けているのだろう。ならば、こちらは今まで積み重ねてきた経験で食らいつくしかない。彼は、間違いなく強いのだから。
中距離での撃ち合いを行いつつも、アサルトブーストでヘッドブリンガーの懐に飛び込んでは、その胴体を蹴り込んでいく。詰めた距離を逃すことなくリニアライフルをパルスブレードに切り替えて斬りつけていく。
〈クッ……、また耳鳴りかよ……! クソッタレの……、ヤブ医者が……!〉
苦しむ声と共に、リペアキットが排出されるのが見えた。中距離の撃ち合いはここまでだ。このままインファイトに持ち込む。マシンガンによるACS負荷の蓄積が見えるが、必要な損害として割り切る。そうでなければ、彼に負ける。ブレードの排熱が終わり、ブーストキックで壁際に蹴り込み、パルスブレードを振るう。だが、直前に放った四連ミサイルが旋回し、こちらのACS負荷を限界に向かわせる。リペアキットを使い、クイックブーストですぐに距離を離す。肩の兵装は自動追従型のレーザーオービットのようだ。アラートがリニアライフルのチャージショットを警告し、クイックブーストで避けていく。
「強い。でも……」
押し負けるつもりはない。中距離の撃ち合いこそに戻るが、こちらの銃撃によるダメージの蓄積は確かにある。ミサイルとレーザーをクイックブーストで避け、狭い地形故のどうしても縮まる距離のタイミングを伺う。縮まった刹那をブーストキックで蹴り込み、パルスブレードを振るう。
〈クソッ! 腕を上げてやがる……!〉
ACS負荷限界を見逃さない。アサルトライフルとリニアライフルで直撃状態の内に、多くのダメージを与えていく。
〈野良犬が! 調子に乗りやがって……! 邪魔なんだよ、てめえは!〉
「っ……!」
吠えるイグアスに思わず気圧される。少しでもこのプレッシャーに負ければ、一瞬で状況をひっくり返される。多重ダムの時から、こちらのことは目障りに見えていたのだろう。彼らが果たせなかった壁越えを果たし、アイスワームにおいても白星はこちらが取ったようなものだ。こちらが実績を積み重ねるということは、彼から実績を奪うことになる。この極限状態も相まって、その気迫は本物だった。
「しまっ……!」
リニアライフルの受け、機体が止まる。こちらにヘッドブリンガーが近づいて姿勢が低くなる。アサルトアーマーを使用する構えだ、無理矢理クイックブーストを噴かせて辛うじて直撃を回避する。半分にまで減ったAPをリペアキットを使って回復させる。ヘッドブリンガーの限界が近い。取った距離をアサルトブーストで詰め寄り、パルスブレードを振るうも二撃目が外される。距離を取るヘッドブリンガーを逃がさぬように、再度アサルトブーストで距離を詰めて壁際に向けて蹴り飛ばした。その一撃が、決定打となった。
〈認めねえ……、認めねえぞ……! “次”こそは、てめえを――!〉
壁に叩きつけられたヘッドブリンガーが爆炎を上げる。元々、この探査によって機体そのものに無理をさせていたのだろう。脱出が出来た様子は無かった。
『……
〈621、
「……了解」
補給シェルパの座標を送られる。信号を発信させれば、補給シェルパが手配される。リペアキットを補充し、アサルトライフルとリニアライフルを弾丸が補充されたものと入れ替える。隔壁に向かう前に、沈黙したヘッドブリンガーを一瞥する。
「イグアス……」
この
「……あなたのこと、嫌いじゃなかった」
やかましく失礼だと思うことはあっても、彼の実力は本物だった。ウェポンハンガーを交えた近・中距離の戦い方こそはラスティからインスピレーションを得たものだが、中距離における堅実な射撃戦は、彼の戦い方を見たからこそ構成に組み込めたものだ。口にしたところでやかましい返事をされるだけで言い出せなかったが、実戦を知っている先達者として、好敵手として悪い感情は抱いていなかった。ぽつりと呟いた後、隔壁にアクセスして奥へと進んでいった。
*
トンネルを進んでいけば、開けた空間が見える。だが、銃撃戦を行っているMTの姿がある。こちらではなく、開けた空間に向けて弾丸を垂れ流している。次の瞬間、弾丸が放たれた先から四脚のような多脚戦車がMTたちを踏みつぶして着地した。
〈防衛プログラム、フェーズ二.〇。侵入者を検出。脅威レベル7〉
「っ⁉」
既にこちらを捉えていたのか。レーザー砲を向けられる。幸いにも射角のおかげか直撃を避けることは出来た。多脚戦車はそのまま奥へと跳躍して行った。
『今のは一体……』
『わからない。でも……』
『レイヴン、狙われています!』
エアも困惑している。どちらにせよ、無機質なアナウンスが流れた以上は、あれもまた封鎖機構の無人機の一機なのだろう。あれが暴れているとなっては、こちらも探査どころではない。これ以上妨害される前に、破壊する必要がある。獣のように、突き出た通路を足場に跳躍していった多脚戦車を追いかけていく。向こうもこちらを殺す気なのだろう。ミサイルと先程のレーザー砲が向けられている。ならば尚更、あれを破壊する必要があった。
『……おそらくは、この深度の防衛兵器。情報を集めてみます』
『お願い』
こちらも高低差と凹凸のある地形を伝ってあの多脚戦車へと近付いていく。ミサイルやレーザー砲を掠めることはあっても、直撃は回避できた。もう少しであの戦車と距離を詰められるというところで、戦車は奥の通路へと跳躍していった。
『レイヴン、閉所ではあのレーザー砲が脅威です。注意を』
『わかった』
トンネルの奥へと進む。案の定、多脚戦車は遮蔽物の無い通路を陣取り、レーザー砲を向けている。カーブや隔壁の壁を使ってなんとか直撃こそは避けながら進んでいく。
『防衛プログラム、フェーズ二.五。侵入者の重要区画接近を確認』
アナウンスと共に隔壁が閉鎖される。アナウンス通りならば、あの戦車を破壊するのと同時により重要な場所へと近付けるということだ。アクセスを試みるが、エアが首を横に振る。
『……図面によると終点はこの先です。制御室を探しましょう。システムに侵入し、隔壁を開きます』
『お願い』
通路を引き返す。この開けた空間ならば、必ずどこかに侵入口があるはずだ。問題はどこかとなってしまうが。
『この周辺であることに間違いはありません。レイヴン、換気ダクトを探しましょう。地下施設である以上、どこかに必ずあるはずです』
『わかった』
鉄橋付近で周囲を見渡す。降りることが出来そうな足場を発見し、そこを伝って降りていく。
『コーラルの集まろうとする特性……。私もきっと例外ではないのでしょう。先に進みたい気持ちが……、少しだけ逸るのです』
『エア……』
彼女との旅も、もうすぐ終わる。コーラルに辿り着いたその時、彼女はどうなるのだろうか。思考を振り払いながら、崖を降りていく。峡谷という自然環境の中に混じる人工物が見えた。
『換気ダクトを確認。制御室へと通じているようです』
「よし……」
ぽっかりと開いたダクトの中へと入っていく。通路の先の縦に伸びた空間へと出る。上空から、ポトポトと小型の無人機が落下してくる。修理用のものではない。背中の装備から電撃を放っている。放電エリアの滞在を避けて、放電を行う無人機をアサルトライフルとリニアライフルで迎撃していく。安全を確保してから、垂直カタパルトで上空へと跳躍する。その先には、建物内に入れそうなダクトがある。小型の無人機を撃ち落とし、ダクト内に侵入する。
『レイヴン、ここから制御室に入れそうです。アクセスポイントを探しましょう』
『わかった』
開いたところから廊下へと降りていく。制御室と思しき小部屋に入る。暗くてよくは見えないが、稼働してない。あるいは待機中の無人機がぶら下がっている。スキャンを行えば、ターゲットを認識した。
「今のうちに……」
アクセスを行った瞬間に、囲まれるのは危険だ。スキャンでターゲットを認識している隙にパルスブレードを振るって破壊する。ブーストキックとパルスブレードで待機中の無人機を残らず破壊していった。スキャンを行い、敵性反応が無いことを確認する。
『制御盤はあちらですね』
『ん……』
アクセスポイントにアクセスを行う。エアが操作を行っていく。この光景も後数度としか見られないのだろうか。周囲から赤い警報が鳴り響く。
『隔壁およびリフトを強制稼働させました。侵入は検知されたようですが、これで先へと進めるはず』
『それは仕方ない』
元より、封鎖機構の無人機達からすればこちらは不法侵入者だ。そして、あの兵器を破壊しなければ探査もままならないだろう。リフトに乗り込み、起動させていく。
〈621、順調に進んでいるようだな〉
「ウォルター……」
〈ひとり手探りとは思えん。嗅覚でも備わったか……?〉
「それは……。なんとなく、だよ」
隣にいるエアのおかげだ。だが、エアのことは621しか知覚が出来ない。エアはウォルターを認識出来ているが、ウォルターはエアを認識できないのだ。彼女の手助けがあって、ここまで来ているのだと。ウォルターに語りたくともままならない。このまま、彼女と別れることになってしまったら、隣人のことを理解して貰えぬままの別離は、とても、寂しいと思う。隔壁を開けば、広間に出る。補給シェルパの信号を送って弾薬を補充する。
『先ほどの防衛兵器が待ち構えているはず……。レイヴン、十分に注意を』
隔壁にアクセスを行い、重い扉が開き始めていく。そこは、洞窟の環境をそのままに建物を増築したかのような地形だ。横には狭く、奥行きが広く、天井が高い。天井からつるされたオブジェクトから爆炎が起き、多脚戦車が着地した。
〈封鎖杭区への侵入者を検出。防衛プログラム、フェーズ三.〇〉
無機質なアナウンスが響く。そして、何かしらの機構が作動したのか。徐々に多脚戦車の姿が変わっていく。
〈強制執行モードに形態移行〉
多脚の戦車が変形し、徐々にそれは二足歩行へと姿が変わる。不法侵入者を抹殺する、執行者が姿を露わにした。
〈対象を排除します〉
『来ます、レイヴン!』
アラートが鳴り響く。クイックブーストを噴かせてレーザー砲の直撃を回避した。
『敵機の解析が完了。“エンフォーサー”、惑星封鎖機構の開発した試作無人兵器です』
アサルトライフルとリニアライフルで応戦していく。この天井の高さならば、垂直プラズマミサイルも使える。戦車形態にもあったミサイルに加えて、パルスシールドも展開されている。あのレーザー砲は射撃だけでなく、刺突する近接武器にも使い道があるようだ。否、本来はレーザーパイルとして運用されるものをレーザー砲としても運用していたのだ。この試作機が、封鎖機構のLCやHC、エクドロモイの基礎となったのだと。今なお、脅威を持つ守護者として稼働し続けていることに息を呑む。
『設計要件はウォッチポイント重要区画の防衛、および侵入者の確実な排除……。この先には封鎖機構が秘匿しておきたかった何かがある。ということです』
『秘匿したいもの……』
考察は後だ。まずは、目の前の守護者にして執行者たるエンフォーサーを破壊する。天井のある空間ならば、相手と同じ位置取りでいる理由はない。ジャンプをして滞空しながら、垂直プラズマミサイルを放ち、アサルトライフルとリニアライフルでダメージを蓄積させる。中距離の位置は、レーザーパイルの射程外だ。攻撃が振り終わったのと同時に、エンフォーサーが体勢を崩す。パルスブレードに切り替えて、その巨体に斬撃を与える。
エネルギー充填のために地上をブーストで滑っていく。距離を取ったエンフォーサーがビーム兵器を構えて突進してくる。レーザーパイルを撃ちながらの薙ぎ払い、上段から下段へと振り下ろしを二撃、最後には刺突による一撃。距離を保たなければACS負荷による直撃状態で大ダメージを受けるものだ。体勢を崩すその時まで、冷静に垂直プラズマミサイルを交えた銃撃戦を続けていく。展開されるパルスシールドは厄介だが、パルスガンとして出力を変えた時にはシールドの役目を失う。中距離を維持して銃撃戦を行い、ACS負荷限界を狙う、堅実な戦いを求められる。ACS負荷限界で体勢を崩したエンフォーサーにアサルトブーストで距離を詰めてパルスブレードを振るう。
〈AP、残り五〇%〉
『レイヴン、回避に集中を!』
「っ……!」
滞空している間にレーザー砲の直撃を受ける。リペアキットを使用してAPを回復させる。集中を切らした方が負ける。目の前の執行者は容赦なぞしない。
〈フェーズ三.五。パターンE。出力リミッター解除。各部アクチュエータ、駆動コスト及び上限値再設定。侵入者を排除します〉
「動きが、変わった……⁉」
エンフォーサーもブーストを噴かせて滞空を始めていく。高度こそはカサブランカの方がアドバンテージは取れるが、より苛烈なミサイルとパルスガンの雨がこちらへと向かう。着地をしたエンフォーサーのレーザーパイルにエネルギーが溜まるのが見える、跳躍したエンフォーサーとすれ違うように飛ぶ。そのままエンフォーサーは地面へとレーザーパイルを叩きつける。円形にレーザーの波形が走るのが見えた。アサルトライフルとリニアライフルが跳弾しない距離を維持するも、レーザーパイルの素早い刺突からの地面への叩きつけ。扇状に走るレーザーにACS負荷限界を迎える。
「っ……!」
『この地下空間の探査……。やり遂げられるのは、あなただけです。ウォルターも……、私もそう信じます』
パルスアーマーを展開して薙ぎ払いの一撃を耐える。リペアキットを使ってAPを回復させる。こちらも、あの兵器に負けるつもりはない。銃撃戦を続け、ACS負荷限界を迎えるのを待つ。攻撃が苛烈になるということは、相手も追い詰められている。エンフォーサーが膝をつく。パルスブレードに切り替えて、鋼鉄の巨人に二撃を与える。
〈脅威レベル7……、8……。機密封鎖に対する……、危険因子と……、判定〉
エンフォーサーの動きにも慣れて来た。リペアキットも残っている。多少の被弾を覚悟に、あの巨人に向かうしかない。苛烈なミサイルとパルスガンがAPを削っていく。最後のリペアキットを使って廃棄する。
『レイヴン、ACS負荷限界まで後少しです!』
『それなら……!』
巨人に向けて、刃を突き立てる時だ。アサルトブーストで距離を詰め、ブーストキックで体勢を崩し、パルスブレードで斬り割くが、まだ足りない。無理矢理後退したエンフォーサーを追い詰めるように再度アサルトブーストを噴かせる。ブーストキックで蹴った先は壁際。エンフォーサーが再度距離を取るも阻まれる。パルスブレードを振るい、一撃は届かない。だが、二撃目が直撃した。エンフォーサーから爆炎が吹き上げる。巻き込まれないように距離を取った。
『敵機の完全停止を確認』
爆炎を上げながら、鋼鉄の巨人はゆっくりと倒れ伏していく。これで、この探査にも一区切りがついただろう。ふうと緊張していたものが吐いた息と共に出て行く。
『……次の深度については、ウォルターにも情報があるはず。ひとまず休息を取りましょう、レイヴン』
『そうする……』
ここまでクリアリングした情報と共に、回収のための信号を輸送ヘリへと送り出した。