ワタリガラスにカサブランカの花束を   作:櫻木ゆすら

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文章量が少ないなと思ったので、2ミッション分。グリッド135の不明機体、撃破報酬が出てると知って少しやり取りを追加しました。


移設型砲台破壊/グリッド一三五掃討

 最後に残る一機にパルスブレードを振るう。対象のシールドが破壊され、貫通したパルスの刃によって機体にダメージを与える。だが、当たったところが浅かったのか、MTは稼働し続けている。攻撃される前にマシンガンを撃ち込み、部屋に機体が爆発する音が響き渡る。

 それと同時に、閉鎖空間の風景が崩壊する。初等傭兵教育プログラムの終了の合図だ。

(一応、オールマインドの基準でも問題ない。のかな)

 傭兵支援システムオールマインド。少なくともこのルビコンⅢにおける全ての独立傭兵、企業所属傭兵の情報を握っている存在だ。AC乗りであれば、ほとんどの情報を所持していると言っても過言ではない。今の自分には権限が無いが、登録されたAC乗りとの仮想戦闘も行えるらしい。

〈訓練は終わったか? 621〉

「終わった」

 ウォルターからの通信に答える。送信されたプログラムが終わると同時に機体が通常モードに移行する。コクピットから出れば、タラップにウォルターが立っていた。コクピットから降り、彼の元へと向かう。

「621、仕事だ」

 そうウォルターが告げると共にタブレット型の端末を渡される。これは、個人用としても621が愛用しているものだ。これからの連絡は全て、幼い義手では少し大きい端末によって行われるのだろう。

「ルビコン進駐を行った星外企業勢力のひとつ、ベイラムグループから公示が出ている」

 端末を操作して確認をすれば、ブリーフィング内容が送られている。再生ボタンに触れれば内容が始まった。

〈独立傭兵の諸君! ベイラム同名企業、大豊による依頼を公示する〉

 再生されたのは比較的若い男性の声。が、少々大きい声量に面食らった。

〈ルビコン解放戦線が汚染市街にBAWS製の移設型砲台を配備した〉

 映し出されたのは、先日ライセンスを取得するために立ち寄ったあの市街だった。

〈あの市街自体に価値はないが、コーラル調査領域を拡大するには押さえる必要がある〉

 企業たちも不法侵入者だ。ルビコンにおいて、自身の拠点を築き上げることから始めなければならない。それも、集団で活動できる最低限は確保しないといけない。ほとんど兵器たる己と、依頼の斡旋やサポートを行うウォルターとたった二人だけで活動していることの身軽さに少しだけありがたさを感じる。

〈野心ある諸君! 解放戦線の砲台を全て破壊せよ。我々はMT撃破に対しても追加報酬を用意した。可能な限り敵方の戦力を削いでもらおう〉

 砲台撃破に加えた報酬の上乗せ。本来ならば自分たちで片付けるところを見事に独立傭兵に丸投げしている。その方が、コストもリスクも抑えられるのが企業側の考えだろう。こちらとしては、仕事ならばやるだけだ。

〈これは諸君らにとって手堅く実績を作る好機だ。奮闘を期待する!〉

 こうして、少々耳に優しくないブリーフィングが終わった。

「不特定多数に向けた、ばらまき依頼だ。肩慣らしには悪くない」

「……そうだね」

 求められている内容はそう難しいものではない。初等傭兵教育プログラムのおかげで、準備運動も出来ている。

「行けるな? 621」

「行ける」

「ならば、準備を進めておけ。受諾の返事は俺がやる」

 実際に返事をするのもウォルターの仕事だ。ウォルターが拾ってきた仕事を確認し、受けるか否かの判断を行う。自分という個性は相手には秘匿されたまま。兵器としての自分にはあまり関係のないことだ。621は、再度機体へと搭乗した。

 

 

〈メインシステム、戦闘モード起動〉

 輸送ヘリから降下される。作戦領域に着地したと共にCOMの機械的な音声が響く。

〈ミッション開始だ。ルビコン解放戦線の移設型砲台を全て破壊しろ〉

「了解」

 ウォルターから改めて概要を説明される。マーカー情報は提示されている。この箇所に設置されている移設型砲台及びMTを撃破するのが今回の仕事だ。

「……行こう、カサブランカ」

 鈍色だった機体は白と黒の二色に染まり、ライトカラーも青に変更されている。そして、この機体にも名前が付けられた。カサブランカ、ユリと呼ばれている花。その種類の中の一種の名前らしい。この義体と元の肉体共に髪色が白であることからこの名前が付けられたのだろうか。

 ブーストを吹かせて前進する。進んでいけば哨戒しているだろうヘリが見えた。マルチロックしたミサイルで四機を同時に撃ち落とす。

〈企業の傭兵が来たぞ!〉

〈もう情報が漏れたのか⁉ 耳聡い奴らめ……!〉

 解放戦線のMTから銃弾が飛んでくる。敵性距離から離れたライフルのダメージは微々たるものだ。構うことなくパルスブレードで斬り捨て、もう一機をこちらもライフルで撃ち落とす。前線を片付けた後、最寄りのマーカー地点へと向かう。

〈見えたな。あれが目標の砲台だ〉

 ターゲットは三基。護衛のMTが数機だ。

〈正面は装甲で守られている。背後に回れ〉

「了解」

 MTをミサイルで排除しつつ、市街の建物を盾にする。アラートが鳴り響いた先はACでも数発受ければ無事では済まない爆発が見えた。

〈戦闘配備につけ! 迎撃するぞ!〉

〈相手は単機だ! 臆することはない!〉

 それでも、砲台とMTではACの前では敵ではない。哨戒ヘリもミサイルで撃ち落とし、砲台の背後に回る。パルスブレードを振るえば、すぐに砲台は落ちる。次弾を発射しようとした隣の砲台も、背後に回ってしまえばただの置物だ。これも廃熱が終わったブレードで斬りつけた。

(これで、ここは終わり)

 ブレードのクールタイムを稼ぐように、大回りをして砲台の背後に回る。砲台も自由に小回りが利かない。弾薬費を節約するためにも、ブレードを振って処分した。

〈ここは片付いた。次の地点に向かえ、621〉

「了解」

 進路上にいるMTを排除しつつも次の地点へと向かう。解放戦線の彼らには悪いが、元手が少ない現状はなるべく稼いでおきたい。無理のない範囲で殲滅する。

〈敵は量産型MTだ。必要に応じて排除しろ〉

 次の地点のターゲットが示される。護衛MTを撃破し、すぐさま建物の陰に隠れた。

〈敵襲! 砲台を狙われているぞ!〉

〈迎撃しろ!〉

 高台に設置された砲台。射角の問題で真下に近い方が安全だ。ブレードで破壊しては砲台の死角に滑り込むを繰り返す。

〈最後の地点に向かえ。順調に片付いてきている〉

「了解」

 再度マーカーが示される。MTを排除しながら確認し、MTの沈黙を確認してから次の場所へと向かう。

〈来たな……! 企業の狗め……!〉

〈守りを固めろ! 砲台を死守するぞ!〉

 キャノン装備のMTが弾丸を放っている。ACの機動力であれば問題なく回避が出来る。次弾が発射される前にライフルで撃ち抜けばそこまでだった。

「……?」

 ふと画面を確認してクイックブーストを吹かせる。先ほどまでいた場所に砲台の弾丸が飛んできた。画面を再度確認すればどうやら砲台の射程距離圏内まで近づいていたらしい。

〈この一帯にある砲台を破壊すれば、仕事は終わりだ〉

「了解」

 アラートも仕事をしてくれる。狙われていると分かれば、建物を盾にして砲台へと近付いていく。

〈撃て! 包囲しろ!〉

〈薄汚れた侵略者に、我々の結束を見せてやれ! “灰かぶりて、我らあり”!〉

 なにかしらの、スローガンのようなものだろうか。少し言葉が耳に残るものの、動きを止めるようなことはしない。砲台の一基、一基をライフルやブレードで破壊していく。護衛のMTにはミサイルを放つ。

〈目標砲台の全基破壊を確認した〉

 最後の一基をブレードで斬り伏せれば、ウォルターから目標達成の報告が知らされる。

〈621、仕事は終わりだ。帰投しろ〉

「わかった」

 目標が達成されれば、用はない。すぐさま帰投するために作戦領域から離れて行った。

 

 

〈新着メッセージ、一件〉

 帰投し、カサブランカを通常モードに移行させる。コクピットから降り、端末を確認するとCOMから連絡が入っていた。

〈傭兵支援システム、オールマインドよりお知らせします〉

 それは、オールマインドからの連絡だった。画面に映し出されているのは、先日に現れたホログラムの女性だ。

〈登録番号、Rb23。識別名、レイヴン。貴方の傭兵活動再開が確認されました。パーツショップの利用権限を復旧します。そして、新たなトレーニング項目の追加のお知らせです。振るってご参加ください〉

 にこやかな表情ではあるが、淡々と事務的に語る女性。語り終えたと同時に、ぺこりと挨拶をしてメッセージの再生が終わった。

(パーツショップ……)

 カサブランカを見上げる。オールマインドから告げられた内容が本当ならば、やっとパーツ購入の権限が解放されたということだ。

(だったら、まず買うものは……)

 機動力に制限をかけさせているジェネレーター。まずはここから買い直そう。端末でパーツショップのラインナップを確認しながら、輸送ヘリの中を少し駆け足でウォルターを探しに行った。

 

 

〈こちらが、今回のトレーニング褒賞となります。これからも、傭兵支援システムオールマインドをよろしくお願いします〉

 黒髪の女性のホログラムがぺこりと挨拶をして姿が消える。オールマインドともこうしてやり取りをするのも段々慣れてきた。ホログラムにもパターンがあるらしく、短く切りそろえられた黒髪の女性の他にも、黒髪に緑のインナーカラーが混じったもの、インナーカラーの色が異なったり、果てには長い金髪のタイプもいるようだった。

(とはいえ……)

 褒賞として渡されたのはベイラム製リニアライフルだ。実弾兵装を得意とするあの企業の商品は信頼できるが、弾代がネックになる。もう少し、資金を貯めたり、他に戦い方を探ってから使った方が良さそうだ。今の武装の動きに慣れてきたものの、しっくり来るものがない。

「621、仕事だ。星外企業勢力のひとつ、アーキバスグループから公示が出ている」

 考え込んでいるところにウォルターが声をかけてくる。新しい仕事を取ってきたようだった。端末に送られたブリーフィングを確認する。

〈独立傭兵各位。これは当社系列企業、シュナイダーからの依頼です〉

 流れてきた音声は落ち着いた青年の声だった。大きい声量に少し身構えていたところに、落ち着いた声が流れたことにほっとしてしまった。

〈作戦地点はベリウス南部、グリッド一三五。目標は当社と競合関係になるベイラム系列企業、大豊(ダーフォン)のMT部隊殲滅です〉

(グリッド、一三五……)

 思わず顔を上げてウォルターの表情を見る。こくりと頷く動作に、初めてルビコンⅢに降り立った地点であると理解した。

〈当社はグリッド一三五を、汚染市街の調査採掘における橋頭保と位置付けています〉

 調査の足掛かりを求めているのは、どの企業も同じということなのだろう。そこが、初めて降り立った地であるのは全くの偶然ではあるだろうが。

〈コーラル調査における優勢を確保するには、独立傭兵各位の協力が不可欠。アーキバスグループは、その奮闘に期待しています。ブリーフィングは以上です、よろしくお願いします〉

 ブリーフィングが終了する。内容もそう難しいものではない。他に仕事が無いならば行くしかない。

「身分は手に入れた。次は実績作りだ。行くぞ、621」

 こくりと頷き、カサブランカの出撃準備を始めた。

 

 

〈メインシステム、戦闘モード起動〉

 輸送ヘリから降下される。侵入口はあのカタパルトが設置してあった開けた場所だ。目標がいるのは内部。密航した時とは逆の順路だ。

〈ミッション開始だ。大豊(ダーフォン)のMT部隊を殲滅しろ〉

「了解」

 内部に向かって通路を進んでいく。降ろされた隔壁にアクセスし、隔壁を上げる。目視圏内にヘリが四機。マルチロックで捕捉し、ミサイルを放つ。

〈敵襲! ACが一機!〉

 ヘリが撃ち落とされると同時に、MTが戦闘態勢に入る。

〈おそらくアーキバスグループの雇用戦力だ〉

〈独立傭兵か……。ヴェスパーでないなら、やりようがある〉

〈迎え撃つぞ!〉

 MTがこちらに銃口を向けてくる。数発の弾丸を受けるが、パルスブレードによる急接近からの連撃でMTを落とす。ジェネレーターを買い替えた効果は出てきている。先ほどの依頼より、断然に動きやすい。

〈敵は量産型MTだ。排除しろ、621〉

「了解」

 ライフルでガードメカを破壊していく。グリッド内部の吊るされた柱にもMTがいる。放たれるミサイルを避けながらMTをライフルで撃破する。

〈このAC乗り、なかなかやる……!〉

〈攻撃を集中しろ!〉

 複数の敵はミサイルで、単騎にはライフルやブレードで対処する。ACはこの自由性を機動力が持ち味の機体だ。だが、それ故に判断を誤れば死は免れない。拾ってきたライセンスを考えると、依頼を達成できること自体が珍しいのだろうか。

〈独立傭兵が、ここまでやるのか……?〉

〈アーキバスめ、当たりを引いたか……!〉

 正規に訓練や学習を得た企業からすれば、独立傭兵は教養がないという認識なのだろうか。そういう意味では、戦いのノウハウや操縦基礎を教えてくれたウォルターには感謝しかない。

〈目標、残りわずかだ〉

 レーダーに映る機影も減ってきている。このまま残るMTを撃破していけばミッションはすぐ終わるだろう。ブーストを噴かせ、宙を舞いながらライフルでMTを撃破していく。

〈……待て、621。新たな敵影を確認した。増援のようだな、排除しろ〉

「了解」

 レーダーの機影が増えていく。とはいえ、この増援にACは含まれていないらしい。弾やAPには余力がある。増援も問題無く相手を出来るだろう。現れた追加の増援、ミサイルを抱えたヘリ二機とMT二機。片方のヘリをミサイルで撃ち落とし、残る片方をライフルで撃ち落とす。盾持ちMTをブレードで斬り捨てれば、残る一機へと向かう。放たれるライフルの弾は跳弾し、ダメージはほとんど無い。ブレードの排熱が終わったことを確認し、再度ブレードを振るった。

〈ミシガン総長に……、報告……を……〉

 そう言い残したまま、MTは撃破された。

「敵MT部隊の殲滅を確認した。仕事は終わりだ。帰投しろ、621」

 ミッション完了の合図。だが、この地に降り立ってから考えていたことがある。これは、言っていいことではないとは分かってはいるが、つい言葉が出て来た。

「……ウォルター、帰投までに時間はある?」

〈時間はあるが、どうした?〉

「最初に降りたところ……、ちょっと行ってみたい」

 自分でも疑問を抱く。ふと、最初に降り立った場所を見に行きたくなったのだ。ミッションは終わっている、帰投までに時間があるならば、一目見たいと考えてしまったのだ。

〈……分かった、行ってこい。ただし、戦闘モードは維持しておけ〉

「分かった」

 ウォルターから了解を得た。カサブランカを最初に降り立った地点まで向かわせる。ほんの少し高い場所にある隙間、そこからこの広間に降り立ったのだ。ブーストを噴かせ、隙間に機体を進めていく。そのまま通路沿いに進んでいけば、広い隙間に出る。のだが……

「っ……」

 思わず息を呑んだ。そこに広がっていたのは、無残に破壊された機体。それが数機。そこかしこに転がり、炎を上げている状態だった。機体の身体だと言うのに、寒さの感覚が走る。

〈621、敵影だ!〉

 ウォルターの警告に後方にクイックブーストを噴かせる。ドスンと、MTやACにしては少し軽めの、それでも人間と比べたら大型とも言える質量が落下し、着地する音が響いた。そして、耳障りな音が入って来る。なにかしらの、暗号通信なのだろうか。

〈なんだ、この機体は……。迷彩か……⁉〉

 視覚情報では全く捉えることが出来なかった。だが、相手は近くにいる。ターゲットアシストでロックすればまだ追えた。

〈対処しろ、621〉

「……、了解」

 電気鞭のようなものが相手から放たれる。逃げ場の無い閉所では脅威だ。ロックが外れない距離を保ちながらライフルでダメージを与えていく。

(早い、けど……!)

 ブーストを噴かせ、高機動に動いていく所属不明機体。だが、左右が狭いこの通路ではその機動力は殺されている。ライフルの攻撃によるスタッガーを確認し、パルスブレードを振るった。

〈……不明機体の撃破を確認。ミッションは完了しているが、作戦エリア内だ。アーキバスに追加報酬を打診しておく〉

 ウォルターの言葉に、力んでいたものが抜けていく。これが、不気味、恐怖をいう感情だったのだろうか。

〈今日はよく休め、621〉

 今日は良く休め。ウォルターが事ある度にかけてくれる言葉だが、聞きなれたウォルターの言葉と声に、安堵を感じた。

 

 

「所属不明機撃破に対する追加報酬の打診、ですか」

「はっ。例の機体についても戦闘ログが送信されています。いかが致しましょう、第二隊長殿」

 アーキバス・コーポレーションが擁立する強化人間部隊ヴェスパー。ルビコンⅢにて増設された基地。そのオフィスの一室にて、二人の男が会話する。一人は、オフィスデスク前で背筋を伸ばして立っている赤みがかった柔らかな髪を持つ若き青年――。傭兵企業担当を務める、第八隊長のペイターだ。デスクに座る男は、美しい金色の髪をオールバックに上げ、切れ長の碧眼の上に眼鏡をかけ、気難しい表情をしている。彼こそ、ヴェスパー部隊にて実質的に率いている第二隊長のスネイルだ。

 ペイターから上げられた報告書が書かれたと、送られた戦闘ログを確認する。大豊(ダーフォン)のMT部隊殲滅の際に、所属不明機と戦闘が発生したとのこと。こちらが指定した作戦エリア内で起きた、指定外機の戦闘に追加報酬が欲しいとのことだ。

(だが、こちらのデータベースで把握していない機体であるのも事実か……)

 たかが独立傭兵如きに色を付けるか。だが、ベイラムでもましてやアーキバスでもない。それどころか、封鎖機構の機体かどうかも分からない所属不明機が存在している。その情報は、無視できないものであることも事実だ。思考を巡らせながら、スネイルが眼鏡のブリッジを中指で上げる。彼の自覚していない癖だ。

「まあ、良いでしょう。今回は浅ましい営業努力に付き合いましょう。第七隊長に回しなさい」

「はっ。了解致しました、第二隊長殿」

 返却された端末を小脇に抱え、ぺこりと挨拶をした後にペイターはオフィスから去って行った。

 

 

「スウィンバーン隊長に先程の報告書は渡した。あの仲介人に追加報酬が出る連絡を――」

「相変わらず仕事熱心だな、第八隊長殿?」

 端末と睨めっこするペイターを覗き込むような動作で話しかける人物が一人。ペイターが見上げれば、そこには青みがかった灰色の髪と橙色の瞳を持つ男性――。ヴェスパー部隊第四隊長のラスティの姿があった。

「第四隊長殿。いえ、少々手間が増えただけです」

「確か、公示で出していたグリッド一三五の掃討だったか。独立傭兵が受けたのだろう?」

「はい。そこで、こちらが指定した作戦エリア内に大豊(ダーフォン)のものではない所属不明機が現れたとのこと。報酬の上乗せを打診されたところです」

「随分とちゃっかりしている独立傭兵がいたものだ。いや、独立傭兵だからかな」

 ペイターの話をラスティは面白気に聞いている。ペイター本人も、なぜかラスティの前では口が軽くなっていた。

「傭兵本人、というよりは傭兵の仲介人がしっかりしていると言った感じですかね」

「なるほど。少なくとも二人組か。その傭兵と仲介人の名前は?」

「はい。レイヴンを名乗る傭兵とハンドラー・ウォルターと名乗る仲介人です」

 その名を口にした瞬間、ラスティの切れ長の瞳がふと細く伏せられた。

「レイヴン、か……。邪魔したな、ペイターくん。君も仕事が出来る子だ。程々にするように」

「はっ。スネイル閣下の二の舞は自分もごめんです」

「その方がいい」

 低く冷たい雰囲気は一変し、いつものラスティに戻る。軽く手を振って彼は立ち去っていった。

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