ギャルゲーじゃないので嫌だけどバグ妹(まい)にせがまれたのでVRMMOをやる事になった。   作:猿野ただすみ

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防御特化と初ゲーム。

ケーマ達がイズの店でアポロと遭遇していた頃。中央の広場にログインした二人の少女。ひとりは高原歩美、もうひとりは鮎川天理だ。

 

「え、えと、まずは確認。高原さんはなんて名前にしたの?」

「私はそのままアユミにしたけど?」

「え? えっと、桂馬くんの様子を窺うんなら、念の為に別の名前にした方がよかったんじゃ…」

「あ」

 

アユミ、痛恨のミスである。いや、そもそもだ。歩美…もといアユミのアバターは、銀髪に小麦色の肌というメルクリウスの見た目と似たもの。名前を変えていても、ケーマに見つかれば一発でバレるだろうものだった。

 

「ま、まあ、過ぎたことは気にしたってしょうがない。それで天理はどんな名前にしたのよ」

「私はディアナを英語読みにしてダイアナだよ」

 

すでに一度ログインをして造ったアバターなので、そこまで凝った名前ではない。ケーマだったら、この名前だけでも怪しむ可能性がある程度のものだ。まあ、それでも歩美のアユミよりかはマシだろう。ただし見た目は弄っていないので、見つかれば確実にバレるのだが。

 

「それじゃあ次に、高…じゃなくてアユミさんの武器だけど」

「それは、メルと相談してこれにした」

 

そう言ってアユミは拳を突き出す。

 

「え…あ、グローブ?」

「そう。武器を持って戦うのは向かないって言われたから、素手攻撃用のグローブにしたの。まあ、初期装備…って言うの? それだから、指抜きの革手袋だけど」

 

そう言うが、それだけでも格闘家みたいな風格が、何故かアユミから漂ってくる。

 

「あとステータスはAGI(スピード)に多めに振って、次にSTR(攻撃力)。残りをVIT(防御力)INT(賢さ)へ半分づつ振り分けた」

 

つまりアユミはスピード重視の超近接アタッカーで、DEX(器用さ)は最初から捨てているという構図だ。因みにステータスの略称は、あらかじめ天理から教わっている。覚えているのはメルクリウスの方だが。

 

「それで天…じゃなくてダイアナはどんな、……もなにも、それを見たら一目瞭然か」

「うん。私の武器は、この弓矢だよ。ディアナが弓が得意だから、教わりながら使ってみようかなって。ステータスはSTRとDEXを多めにして、残りをVITとAGI、INTに振り分けたよ」

 

ダイアナの場合は遠距離攻撃の関係で、DEXにも多めに振っているのだ。因みに、職業補正で素人でもある程度攻撃が当てられる仕様になっているが、専門的な知識や技能があれば、それがゲーム内でも反映される。ケーマが言っていたプレイヤースキルというやつである。

 

「ふうん。私の接近戦とダイアナの遠距離攻撃か。ゲームはよく知らないけど、バランスはいい…んだと思う」

 

何かどこかで聞いた気がする、程度の朧気な知識でアユミは言った。実際、近接戦に対し遠方から援護射撃をするのは、セオリーどおりと言える。ただし、弓攻撃は魔法よりも連射が出来ないため、それを補うスキルを入手するまでは些か不便である、という欠点はあるが。

 

「まあ、いいや。それでこれからどうするか、だけど。桂木達を捜すのとレベル上げするの、どっちがいいと思う?」

「ふぇ? え、ええと、桂馬くん達を見守るって事は、街の外まで着いていくって事だよね? それならある程度レベルを上げて、あと、戦い方にも慣れておいた方がいいんじゃないかな?」

「そ、そっか。ゲーム内で死ぬと、始めた場所まで戻されるんだっけ?」

「うん。あと、デスペナルティで所持金が減ったりとか、色々あるみたい」

 

ダイアナの補足を聞いて唸るアユミ。

 

「……わかった。今日はレベル上げに専念して、桂木達の事は明日からにする!」

 

猪突猛進タイプのアユミとしては、苦渋の決断であった。

 

 

 

 

 

そして初心者向きの狩り場へとやって来た二人。

 

「ていやっ!」

「えいっ」

 

アユミは殴り、ダイアナは矢を当て、モンスター達を倒していく。

 

「なんだ、結構簡単じゃない」

 

そう言ってアユミは、森の奥へズンズンと進んでいく。

 

「あ、アユミさん、待って…。油断すると…」

 

慌てて追いかけるダイアナが注意を促す。が、しかし。

 

キシャアアア

グエッ! グエッ!

 

時既に遅し。変な鳴き声を発する、ムカデの様な虫やイモムシの様な虫、蜂や蛾に囲まれてしまった。ざっと見、総数は20匹を超えている。

いくらAGIに多めに振っているとはいえ、アユミはあくまでゲーム初心者。集団による攻撃を躱すには、技術が足りないのだ。

 

「マズ…」

「と、とにかく、何とか切り抜けないと」

 

そう言って弓矢を構えるダイアナ。

……正直に言えば、二人とも女神と入れ替われば、この窮地からは簡単に抜け出すことが出来るのだ。だが二人は、その選択肢はとらない。何故なら二人とも、そんなズルは嫌いだから。

モンスター達が一斉に襲いかかってきた。ダイアナが矢を放ち、手前のフォレストグインビー(はち)に命中して消滅する。そこへアユミが突っ込んでいき、後ろにいたキャタピラー(イモムシ)を殴りつけ、これも消滅。更にその隣りにいたムカデも殴りつけるが、外皮が硬く一撃では倒せない。そこへ、ダイアナの二射目が放たれムカデに命中、残りのHPを削りきり消滅した。

しかし。

 

「ダイアナ、危ないっ!」

「え? あうっ!?」

 

ダイアナは、後ろから襲ってきたフォレストグインビーに刺されてしまった。幸い毒は受けなかったものの、まだHPが少ない故に半分近くを削られてしまう。

 

「ダイア…うっ!」

 

そしてダイアナに注意が行ったアユミも、ムカデから攻撃を受けた。腕への攻撃で半分以上を削られている。もし体へ直撃を受けていたら、恐らく一撃死だったに違いない。

 

(マズい! どうする? ゲームだから、死んだって問題ないけど…。でも、だからって諦めたくない!)

 

アユミはそう考えていたが、状況は最悪、侭ならない状態だ。

それでも二人は反撃を試み、数体のモンスターを倒しはするものの焼け石に水、既に詰む寸前であった。

 

「ファイアーボール!」

 

突然聞こえた声。それと共に火球が飛来し、モンスター数匹が消し飛んだ。

 

「「え?」」

「どうも。ピンチだから手助けしたけど、余計なお世話だったかな?」

 

そう言って現れたのは、長い金髪をサイドテールにした、赤い瞳の少女。

 

「う、ううん、助か…ていっ! 助かったよ。出来たら倒すの、手伝って…とうっ! 手伝ってくれない?」

 

合間々々でモンスターを殴りながら、アユミはお礼とお願いをする。

 

「んー、いいよー。実を言うと、今日はパーティーが揃わなかったから暇つぶしに、たまたま見かけたあなた達を観察してたんだよねー」

「う…」

 

自分がやろうとしてたことを他人からやられて、アユミは短く呻いてしまった。

 

「それじゃあ適当に間引くから、あなた達も頑張ってね」

「う、うん、お願い!」

 

こうしてアユミは達は改めて、敵の殲滅を試みるのだった。

 

 

 

 

 

およそ5分ほどの後、アユミ達は何とか敵の全てを倒し終えた。

 

「はあぁ、何とか倒せたー」

「はははー、お疲れさま」

 

お疲れ気味のアユミを、少女が労う。

 

「あ、助かったよ。ええと…」

「ああ、私はフレデリカだよ」

 

言い淀むアユミを見て、少女、フレデリカが名前を名乗る。

 

「フレデリカさん、ありがと。私は高…じゃなくてアユミ。それでこっちの子が…」

「あ、えと、ダイアナです…」

 

お礼を言ってから自己紹介を返す二人。

 

「アユミちゃんとダイアナちゃんか。うん、よろしくー」

 

気の抜けた感じで言う彼女だが、的確な援護をしてくれたことから、初心者ではないのが覗える。実際、アユミ達は知らぬ事だが、フレデリカは上級プレイヤーのひとりであり、かなりの実力者であった。

 

「ハァ、それにしても、まさかあんな数の敵に囲まれるとは思わなかったよ」

 

アユミがため息を吐きながら言う。

 

「まあ、ここら辺はモンスターとのエンカウント率が高い場所だから。もっとも、あれだけの数に囲まれるのは滅多に無いけどね」

「そ、そうなんだ」

「だけどそれ以前に、ダイアナちゃんが止めてたのにズンズン進んで行ったのは、やっぱりいただけないんじゃないかなー?」

「うう…」

 

フレデリカからのダメ出しに、二の句が継げなくなる。

 

「あと、ダイアナちゃんも」

「ふぇっ!?」

「もっとしっかりハッキリ言わないと、アユミちゃんみたいな性格は止まらないよ? 私のパーティーにもひとりいるから、よくわかるんだよ」

 

ただしその誰かは、脳筋ではない。あくまで性格の問題である。

 

「……うん」

「……ああ、うん。頑張ってー」

 

ダイアナの返事で、何となく察するフレデリカだった。

 

(……でも、天理をNWOに誘ったのは正解だったかも)

 

そう。実はアユミ(歩美)、ディアナの悩みを聞いて性格改善に役立つのではと、ゲームの立ち上げを手伝ってもらうのを口実に、そのままズルズルとパーティー組んで一緒にプレイするところまで持ってきたのである。しかも、どうやら途中で歩美の意図に気づいたらしいディアナも、上手くアシストに加わっていたりする。

頭は桂馬並みに良いはずなのに、流されやすい性格の天理は、結局最後まで気づかずに現状を迎えているが。まあ、天理もダイアナとして楽しんではいるので、結果オーライだろう。

 

「……さてっと。それじゃあ、私はそろそろ戻ろうかなー」

「えっ、手伝ってくれないの?」

「さすがに、連続で大量の敵に囲まれる事なんて無いんじゃない? それに、レベルだって上がってるだろうし、私がいなくてもなんとかなるでしょ」

 

フレデリカに言われ、二人は慌ててステータス画面を開く。すると確かに、アユミはレベル5に、一度プレイしているダイアナは6に上がっていた。

 

「……フレデリカさん。戻る前に、お願いしたいことがあるんだけど」

「んー? 何かなー?」

「ステータスの振り分け、アドバイスしてくれないかな? 私もて…ダイアナも、NWOどころか、ゲームそのものが初心者なんだよね」

 

アユミは少し恥ずかしそうに言った。

 

「なるほどねー。初心者とは思ってたけど、ゲーム初心者だったんだ」

 

納得したと頷くフレデリカ。

 

「それじゃあアドバイス。回復アイテムはちゃんと買い揃えること。その上で、ひとりは回復魔法を覚えていた方がいいよ。余裕があれば初級の攻撃魔法も。敵が強くなると効果は薄くなるけど、牽制には使えるからね。

それ以外のステータス振り分けは、さすがにアドバイスは出来ないかな。戦い方は人それぞれだし、それに、自分で自分のアバターを育てる楽しみを奪っちゃ可哀想だかんねー」

「自分で、育てる…」

 

呟くように言って考え込むアユミ。ダイアナも同様だ。見かねたフレデリカは、更に話を続けた。

 

「それじゃあ育成のヒント。まずは自分がどういうキャラクターを創って、どう成長させたいかを考えてみて。そうすれば必然的に、どのスキルにステータスを振るかは決まってくると思うよ」

「なるほど。ありがとう、フレデリカさん」

「あ…、ありがとう、ございます…」

 

お礼を言う二人に、フレデリカは手をひらひらさせながら応えた。

 

「別にいいってー。あ、そうだ。これもなんかの縁だし、フレンド登録しとく?」

「え、いいの?」

「お、お願いします」

 

誘われた二人は、お礼を言ってフレンド登録を済ませる。

 

「……これでよし、っと。うん、それじゃあ私はこれで。アユミちゃんもダイアナちゃんも、頑張ってねー」

 

フレデリカはそう言い残しながら、ログアウトしていった。

 

「……私達は、もう少しレベル上げをしていこうか」

「うん」

 

そして再び、モンスターを退治していくアユミとダイアナだった。




因みに。戦闘後のアユミとフレデリカの掛け合いの最中。

天理(アユミさんとフレデリカさん、声似てるなぁ)

ディアナ(天理、今は関係な…本当に似ていますね?)

などと、ダイアナ(天理)の心の中で別の掛け合いがなされてました。
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