にゃん恋✝無双   作:島クジラ

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緑エリア
拾って始まる猫無双


 

 

にゃ〜ん。

 

 

「はいはい、御飯の時間ですよー」

 

 

 田舎の一軒家。

 

 山の中に木製で作られた大きな家。

 

 それ以外になんの特徴もない普通の住宅。

 

 住んでいるのは黒髪短髪のどこにでもいるような一人の男性。

 

 ただ、一つ変わっているとするなら…。

 

 

「今日は【桃香達】から先にご飯だよー」

 

 

 何十匹といる猫の家、という点かな?

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

幸季 Side

 

 

 猫山幸季、16歳。

 

 趣味は映画鑑賞と料理。

 

 とまぁ、どこにでも居るような人間です。

 

 ただ、最近の悩みとしては…。

 

 

「にゃーん」

 

「……………………」

 

 

 近所に捨てられている猫が多いこと、くらいなもの。

 

 いや、動物虐待とかそういうのよりはマシだけど、まず捨てるなら飼うなよ……。

 

 

「はぁ…うちに来るか?」

 

「にゃん!」

 

 

 そう言って、【桃色】の【猫】を持ち上げたことから、俺の今の生活は始まった。

 

 

 現在に至るまでに、一体何匹の猫を連れて帰ったか分かりはしないが、少なくとも猫カフェよりは居るはず。

 それこそ、一匹一匹の個性が強すぎて、【3個】のエリアを作ったくらいだ。仲が悪すぎるとは言わないが、どうも性格が合わないみたいで、時折、エリアごとに争っている。

 

 ちなみにこの間は、ご飯をかけて争っていた。

 

 

「ふにゃ〜ん」

 

「はいはい、おいで」

 

 

 今日の飯の順番は、緑エリアから。

 基本的に甘えん坊が多いのが特徴で、俺の膝の上がお気に入りだったり、遊び盛りだったりする。

 

 群れの長、というのもおかしな話ではあるが、桃色の毛の猫【桃香】がここのエリアの主。基本的にのほほ〜んとしており、のんびりやさん。運動も食事も普通だが、どこか他の子よりも癒やしのオーラを放ってる。

 

「桃香は膝の上が好きだなぁ…て、こら【鈴々】!無理矢理登ってくるなって…!」

 

「にゃにゃ!?」

 

「落ちちゃう…ってもう遅いか…」

 

 

 仕方ないと思いつつ、桃香よりも少し小柄な【赤毛】の猫を持ち上げる。

 

 

「慌てなくても俺は逃げないぞ?」

 

「にゃ!」

 

 

 特に怪我もなく、膝の上でゴロゴロと転がる鈴々は、彼女らの中で一番の運動量を誇っている。この間なんか、天井の木の柱まで登って降りられなくなっていたのを覚えているくらいだ。

 元気すぎるのも問題かな?

 

「にゃんにゃん!!」

 

「にゃにゃ!?…にゃー」

 

「あちゃ〜…【愛紗】が来ちゃったかぁ」

 

 

 凛、という表現が似合う姿の黒猫。

 桃香と鈴々のお目付け役をしてくれている愛紗。

 

 大きさは桃香とさほど変わらず、冷静で真面目な感じ。ただ、運動は鈴々と同じ程動ける。鈴々の無茶や、桃香ののほほんとした空気には彼女が一番バランスを保っている気がする。

 

 のだが……。

 

 

「にゃにゃん、にゃにゃにゃ!!にゃー!!」

 

「ふにゃ……」

 

 

 まさに風紀委員長。

 圧倒的なオーラが波動のように伝わってくる。

 

 なにかと、だらしない子や、騒ぎの中心にいる子を叱っているのは目にしている姿を見かける。

 頼りになるが、少しやりすぎ感は否めない。

 

 

「はいはい、そこまで」

 

「にゃ!?」

 

 

 鈴々が涙目になってきたので抱きしめて止めてやる。

 

 愛紗もなんだかんだ二人が大好きなのだから心配なのだろうが、それで仲が拗れては元も子もない。

 それに……。

 

 

「愛紗も膝に乗りたかったんだろう?」

 

「にゃん!?」

 

「はいはい、照れない照れない」

 

 

 俺のことも、少しは気に入ってくれている。

 ご飯が遅れれば大丈夫かと、心配そうに見に来るし、他の猫との仲介にもなってくれてる。頑張り屋さんだが、寂しいがり屋さんでもある。少し甘える、という行動が苦手なのだ。

 

 だから、こうして強制的に甘えられる状況を作るのがコツ。

 

 何事も、息抜きは大事だ。特に愛紗はね。

 

 

「「にゃふぅ……」」

 

「にゃ…にゃにゃ?」

 

 

 桃香と鈴々にニヨニヨされながらも、膝から降りることのない愛紗を撫でつつ、今日もまた、騒がしいお昼は過ぎていく…。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 お昼も過ぎ、日向ぼっこでもと窓際に集まりだす猫たち。

 

 場所の取り合いもすることなく、平等にやり合っているあたり、平和だなぁと思う。

 

 

「にゃ…」「……にゃん」

 

「うん?」

 

 

 小さく、しかしはっきりと声に出して呼んできた方向を見る。

 

 

「【朱里】、【雛里】。どうした?」

 

 

 金と銀の二匹の小猫。

 桃香の所では、一番賢いのではないだろうかと思えるほど、知的な遊び方をする二人組。仲が良いようで、ご飯もお風呂も常に一緒だったりする。

 

 自己主張があまりないので他の猫がいるとあまりよっては来ないが、こうして、皆が離れている間に寄ってくる。何とも、考えた立ち回りだ。

 

 

「にゃん」「にゃにゃにゃぁ…」

 

「相変わらずだな。遠慮せず、乗っておいで?」

 

 

 朱里の方はぎこちなくだが膝に乗り、雛里は照れて動けないので抱き上げて膝に乗せる。

 大きさは同じだが、鈴々とは正反対の性格な二人に笑みが溢れる。元気な子もいいが、ゆっくりと甘えに来る子もかわいい。

 

「にゃんにゃ」

 

「ん?また本か?朱里。猫だけど、本を読むの好きだねぇ」

 

「…にゃわわ」

 

 

 にゃわわ?

 

 

「雛里も好きだったよね?」

 

「……にゃわわ…」

 

 

 ………にゃわわ、とは?

 

 

「うーん?なんか変な本でも読ませたっけなぁ……(ボソッ)」

 

「「っ!?……にゃ」」

 

 

 すごく怪しい動きをしたな、今。

 まぁ、人間ならぬ猫にも、隠し事の1つや2つあるだろうし、あんまり詮索はしないでおくか……。

 危険ならやめさせるが。

 

 体に怪我があるわけでもないから、様子見だな。

 

 

「よし、じゃあ読んでいくぞ」

 

「「にゃん♪」」

 

 

 それにしても、猫が歴史本を読むなんて世界中を探してもうちの家だけじゃないだろうか?

 時折、人間を相手にしているような気分になるなぁ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「にゃんにゃにゃ!」

 

「ダメ」

 

「にゃにゃんにゃ!!」

 

「ダメなものはダメ」

 

「にゃ~…」

 

「ケチも何もありません」

 

 

 俺氏、とうとう猫語を理解する。

 

 という冗談を考えつつ、青みのかかった毛の猫から壺を取り上げて棚の奥にしまう。

 軽く20以上同じやり取りをすれば、彼女の言いたいことは分かるもの。

 

 

「【星】?君は塩分の多いものは食べちゃダメなんだから、もうこれは諦めて?」

 

「にゃ」

 

「嫌ってお前…」

 

「にゃんにゃ。にゃにゃ」

 

「めちゃめちゃ不服そう……」

 

 

 眉間にしわが寄ってるのがわかるな。

 

 

「なんでよりにもよってメンマの壺なんかに興味を持ってしまったのか……」

 

「にゃーん(キランッ)」

 

「あ、いいです。長くなるやつだねそれ」

 

「にゃにゃにゃー!?(ガーン!)」

 

 

 なんだその、なんですとー!?みたいな顔は。

 だって、星のメンマって言葉が聞こえてからの絡み、なんだかめんどくさそうだもん。この間、愛紗がすごく疲れたような顔してたし。

 星の話が始まると周りの猫たち逃げていくし。

 

 多分、周りの子達も俺と同じ気持ちなのだろう。

 

 

「これあげるから、我慢してね」

 

「にゃう…」

 

「絶対諦めてないな、その顔」

 

 

 棚からチュールを取り出して星にあげる。

 不服そうにしながらも、チュールを口に入れると嬉しそうにペロペロとし始める。

 

 だが……。

 

 

「君、わざとやってるな?」

 

「にゃう〜ん」

 

「知りませんな〜、みたいな返答しよって」

 

 

 チュールをわざとこぼす様な食べ方をしては、俺をからかうような仕草を見せてくる。おそらく、誘惑の類いかな?

 

 うちの猫たちは外にいる野良のオス猫達に大人気だ。毎日のように求愛をしにくる彼らなのだが、そもそも家からは出さないようにしているし、彼女達も彼らを相手になどしていない。たまに威嚇や噛みつこうとする子もいるくらいなので、彼らも不憫である。

 そんな彼らから誘惑するような仕草でも学んだのだろうか?

 しかし、残念俺は人間である。

 

 

「はいはい、掃除の手間が増えるから零さないでねー」

 

「にゃにゃ!?」

 

「口を吹きましょうねー」

 

 

 赤ん坊のように抱き上げて、そのまま口を拭き、残ったチュールを最後まで食べさせる。

 赤子扱いは嫌なのか、先程よりも眉間にシワが寄っている。

 しかし、嫌とも言えずにされるがままだった。

 

 

「そういうのはオス猫たちにしようねー」

 

「にゃんにゃん……」

 

 

 不覚、とでも言いたげに星はゆっくりキッチンを出ていった。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 午後15時頃。

 

 太陽の光を浴びながら庭でまったりと日光浴。

 季節は春、寒くもなく暑くもない、丁度いい気温。ずっとこの気温がいいなぁ……。

 

 猫たちも日光浴や庭の中で遊び回ったりと、好きに過ごしている。

 こういう時、オス猫立ちも無断で庭に入ってきたりするのだが、彼女たちが強すぎる(物理)ため、庭というか敷地には入ってこない。

 

 何も知らない新人オス猫は、それを知らずにボコボコにされる事がある。なんとも不憫だ。

 

 

「にゃー!!」

 

「にゃー!!」

 

「ぐおはっ!!?」

 

 

 鳩尾にクリティカルヒットしたぁ……!!?

 

 いきなりの衝撃に木製のデッキから地面に転がり落ちた。

 

 息ができない…!!

 

 

「にゃにゃ!!?にゃんにゃん!!」

 

「にゃーん!?」

 

「げほっ…ふぅー…ふぅー…落ち着いてきた……」

 

 

 生きた心地がしなかったが……。

 

 痛みを感じながらも、目の前で心配そうに叫ぶ茶色の猫達に目を向ける。

 

 

「【翠】、【蒲公英】。頼むから、声を掛けるとかで頼む……」

 

「「にゃー……」」

 

「おそらく蒲公英なんだろうけど……」

 

 

 たまにイタズラの域を超えるから傷だが、本人はとてもいい子なので強くは言わないでいる。それが問題につながっている気がするが……。

 体が重いが、これ以上心配させると愛沙辺りが怒りに来る。

 

 痛みに耐えながら、彼女達の頭を撫でる。

 

 

「俺は逃げないから、遊びたいなら言ってね?」

 

「にゃーん」

 

「にゃんにゃーん」

 

 

 俯いて返事をしているあたり、反省はしているので許す!

 

 

「さ、なにしよっか」

 

「にゃんにゃん!」

 

 

 なんか、すごい器用にボールを持ってきたな。

 たぶん、さっきまでボールで蹴り合いでもしてたんだろうなぁ。というか、こんだけ爪の跡ついてるのによく割れないな、このボール。

 

 今度プレゼントで、新しいのを買ってもいいかもしれない。

 

 でも、緑エリアの子にやさしくし過ぎると他の陣地の子達が拗ねるから、考えて買わないとな。

 

 

「さて、そんじゃとってこーい!」

 

「にゃー!!」

 

「にゃんにゃー、にゃにゃ」

 

 

 飛びついていく翠と、呆れながらも楽しそうに追いかける蒲公英。周りの猫たちも、そんな光景につられてボール遊びをし始めた。

 

 少しハプニングがありつつも、穏やかなお昼だった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 日が落ちて暗くなり、晩御飯の時間に近づいてきた。

 

 我が家では、猫と一緒にご飯を食べることを習慣づけているので、時間になると3つの陣地関係なく集まってくる。今目の前で、愛紗に絡んでいる【金色の猫】はよその陣地の主だ。

 愛紗は困っているようだが、まぁじゃれ合いだと思って放っておこう。

 

 あ、桃香が参戦した。

 

 これは長引きそうだなぁ、彼女達のご飯に冷めるもなにも無いのだが、このまま行くとおそらく食べるのは30分位先になるだろう。

 

 

「にゃーん」

 

「ん?あぁ、【紫苑】か。ご飯はもう出来てるから、向こうで待ってて」

 

「にゃんにゃー」

 

 

 なんというか、お上品だな。

 

 歩いていく後ろ姿といい、座る時の仕草といい。

 なんというか、妖艶な感じがするな。猫相手に何言ってるのか分からないが……。

 

 ソファで座って待つ姿は、何故か魅力的に思える。そら、オス猫からモテますわ。

 

 といっても……。

 

 

「流石に、子猫を置いて他のオス猫と遊ぶことはしないよなぁ…」

 

 

 視界の端で、眠くて船を漕いでいる子猫【璃々】を見て納得する。

 

 紫苑は、うちの家猫で唯一の母猫だ。

 だからか知らないが、オス猫の求愛に対しては見向きもしない。その割には俺に体を擦り付けたりするが……。

 人間はノーカウントかな?

 

 よく親子2人で居る所を見るから、ほとんど一緒にいるのだろうが、子猫の璃々は鈴々や他の小さな猫たちと遊んでいる所を見るので、鈴々もお姉ちゃん気分なのかも。

 たくさんのお姉ちゃんに囲まれて、璃々は幸せ……。

 

 

「いや、蒲公英の真似とかし始めると怖いなぁ……」

 

 

 その時は、紫苑の方が怒るとは思うけど。

 紫苑の不機嫌なオーラは、人間の俺でさえも背筋がピンッ!となってしまうくらい圧力あったなぁ。

 

 一番怒らせてはならない猫の一匹だ。

 

 

「にゃにゃんにゃー」

 

「ん?【桔梗】どうした?」

 

「にゃんにゃ」

 

「ミルク?んー、ミルクはあまり用意してないけど、そんなに飲みたいのか?」

 

「にゃ!」

 

「そうか。なら、少し多めにしておくか」

 

 

 銀色の毛並みを持つ猫、桔梗。

 大きさは紫苑と同じくらいで、恐らく歳も同じ。

 

 桃香達のグループの中では、一番の大呑。

 ミルクのほとんどは彼女の中に消えていくといっても過言ではない。

 飲ませすぎは良くないから調整はしているものの、不安になるくらいには飲んでいるのを見る。

 

 

「【焔耶】はいいのか?あいつ、また桃香の方に行ってるけど……」

 

「にゃにぃ……?」

 

 

 桃香の方に視線を送れば、黒に金色のメッシュのような毛並みの猫が割り込んでいる。

 

 あの子は桔梗がよく世話を焼いている焔耶。

 野良猫時代に指導のようなものをしていた所を発見したから、おそらく弟子みたいな物なんだろうなぁ、と推測はしてる。

 

 うちの家に来てからは何故か桃香に引っ付いて動くことが多く、トラブルのときには桃香の横に絶対いるのだ。

 

 

「喧嘩腰なのがたまに傷、なのかなぁ」

 

「にゃんにゃーん」

 

「まぁ、桃香も嫌がってる訳じゃないし、本気でやり合ってる喧嘩でもないからいいか」

 

「にゃん」

 

 

 触らぬ神に祟りなし。

 いくら飼い主とはいえ、喧嘩を止めることはしない。野良猫に対する程の怒髪天ならともかく、彼女らはそこまで大きく喧嘩をすることもないしな。

 

 無理に止めて、こっちが引っ掻かれることもあるし、見ているのが一番。

 

 引っ掻いた場合、桔梗が焔耶をボコボコにするので、それも可能なら避けたい。桔梗は容赦ないのだ。

 

 

「いやー、今日も平和だったねぇ」

 

 

 なお、この後俺の横で寝る権利をかけて3つの陣営が夜中に争い、寝たのは朝日が昇る頃だったとだけ言っておく。

 

 俺は夜行性じゃないのよ……。

 

 

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