マシュマロでも食べる?   作:コサメ

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バレンタインデーということで、一席お付き合い願いたいと思います



マシュマロでも、食べる?

 二者択一。二兎追う者は一兎も得ず。一方を取れば一方を捨てる。まさに、修羅場。

 

『アキナ、これあげる。お返しは今度でいいから//////』

 

『アキナちゃん。これ私の気持ち。受け取って♡//////』

 

 バレンタインデー。登校時、二人から別々のタイミングで渡されたチョコレート。

 友達と思っていた二人から受け取った。受け取ってしまった。どうも湯地(ゆち)アキナです。柚鳥ナツ推しのブルアカ先生ニワカ転生者です。放課後スイーツ部に所属しています。ナツと共に過ごせるのが天国のようだったのに、今は地獄にいる気分です。前世で貰ったチョコの枚数はゼロです。今世が初めてです。嬉しいね。じゃない

 

 そう、貰った。二人から。

 いやいや世間では友チョコなるものがあるだろ? と仰る方。判っていない。そんな生易しいものではないのだ。あの時の表情とプレゼントの内容。隠れた意味を持つ贈り物。

 

 杏山カズサから受け取ったのは、チョコ味のマカロン。

 マカロンはフランス代表のお菓子。サクッモチッとした食感。中に溶けたチョコやジャムを挟んで焼いて上品。可愛らしい見た目に、丁寧に作り上げた一級品。コルムリー修道院で初めて考案されたと言われる。

 お菓子言葉は、『あなたは特別な人』。つまり、そういうこと。

 

 栗村アイリから受け取ったのは、チョココーティングのマロングラッセ。マロングラッセもヨーロッパのお菓子。砂糖シロップで煮詰めた糖度30度の美味。歴史は古く、アレキサンダー大王の時代まで遡るとかなんとか。

 お菓子言葉は、『永遠の愛』。つまり、そういうこと。

 

 これが勘違いならハッピーエンドだが、そんなことはないだろう。『放課後()()()()部』と名を冠しているのだ。スイーツ、お菓子についてはそれなりの知識があるはず。知らなくても意味くらい調べようとするだろう。よって、意味を知った上で渡しているのだ。二人とも。

 悲しいことにこれが現実だ。

 

 どうしてこうなった。頭の中を整理する。

 

 ナツがいるトリニティ総合学園に転校。放課後スイーツ部設立時にナツと一緒に入部。キャスパリーグさんと放課後スイーツ団を結成したり謝肉祭を通じて仲良くなったり楽しく毎日を過ごす。その他なんやかんやあって、なんやかんやして、今回の事件。

 はい、わからん。原因不明。対策不可能。ナツ吸いしたい。

 

「おや? アキナ、どうしたの? 悩み事?」

 

 推しの声 見上げてみれば 推しの顔  アキナ心の俳句

 ナツが来た。私は、かはぁあああああ、と力が漲る感覚を味わった。脳内麻薬ドバドバ。今日も一日頑張れる!

 

「今゛日゛も゛や゛っ゛ぱ゛り゛推゛し゛が゛可゛愛゛い゛」

「それ毎日言ってるよね? 飽きないの?」

 

 桃色。右サードテールに結った長髪。赤い虹彩に白い瞳孔。肌も白く頬も仄かに赤く可愛らしい。トリニティの制服を着こなし、太ももとスカートの絶対領域がなんともたまらん。

 ナツが荷物と銃とライオットシールドを下ろし、前の椅子に腰掛ける。私の前の席。ナツとは同じクラスの前後席だ。やったね!

 やったね! とは言ったが、教師を脅して、また管理システムにハッキングして無理やりデータを書き換えたため実現できている奇跡だ。ありがたや。これもナツ大明神にかんしゃぁ。

 ナツが横向きでこちらを見て、箱牛乳をチュウチュウ吸っている。あ、あ、あ、脳が! 脳が! ドーパミンがぁああああああ

 

「で、それ何?」

 

 ナツが机の上にある2つの箱を指す。私は一気に現実へと引き戻された。

 

「こっちはカズサから。こっちはアイリから」

「ほうほう。バレンタインデーの贈り物かぁ。流石、放課後スイーツ部。イベントを欠かさないねぇ」

「問題はそこじゃない」

 

 ん? 首を傾げるナツ。キュンとする。眠そうな目で見られるの、堪りませんなぁ。可愛い。お持ち帰りしたい。しかし、そんなことしたらナツに嫌われるかもしれないので自重。心のシャッター。脳内フォルダへ。

 ナツが合点したように頷く。

 

「なるほどね……何が入ってたの?」

「カズサからは、チョコ味のマカロン」

「カズサらしいね。いつもマカロン食べてるイメージだし、意味もストレート。まぁキャンディーほど甘くはないけど、ジャムみたいに甘酸っぱいね」

「アイリからは、チョココーティングのマロングラッセ」

「これはまた珍しい。少し重いところがある気がするけど、アイリならチョコミントのように爽やかに受け取れるね。栗村の栗とかけているのもロマンティック」

「ナツぅ…………………………私、どうすればいいんだろ…………?」

「どっちとも付き合っちゃえば?」

「ナツ以外の娘とお付き合いは致しません!」

「別に私とも付き合ってる訳じゃないよね?」

「こんなに愛を叫んでいるのに! ナツには届かない! もっと過激に激烈にするべきか?」

 

 あーはいはい、と何でもないようにナツが牛乳を飲む。可愛いよぉ。いや、ここは真面目なシーンだ。我慢我慢。

 ナツがストローから唇を外す。ストローになりたい。

 

「アキナは、どうしたいの?」

「ナツとお付き合いしたい!」

「いや、そっちじゃなくて、カズサとアイリの件」

 

 そうだよねぇ、と私は机に突っ伏す。

 

「とりあえず、前提として、二人は友達。これはOK?」

「プラス放課後スイーツ部の仲間でもある」

「そう。恋人として考えられない、ってのが正直な話。ナツは別だけど」

「じゃあ、そう伝えれば? 二人に」

「でも…………二人を傷つけそうで……怖い」

「傷つけるのが怖い、か……そこで悩むのも青春。ロマンだ」

 

 青春してるねぇ、とナツは、にひ、と笑う。私は恥ずかしさを誤魔化すため質問する。

 

「ナツ、そもそも勘違いだった、という可能性はあるのかな?」

「……いや、ないね。我々は放課後スイーツ部。スイーツに関しては人一倍敏感なはず」

「だよね~」

 

 ナツの言葉に改めてガクリと来る。判っていたこととはいえ、突き付けられると異様な諦観が訪れる。ナツは不思議な感じで微笑んでいる。

 

「それじゃ、クッキーでも渡したら? サクサクしてて美味しいし、意味も丁度良い」

「確かに、クッキーの意味は『友達でいましょう』だが、サクサクとした食感からライトな関係でいましょうね、って感じがしてドライなイメージ」

 

 ナツが流石に面倒臭そうな顔をした。変顔をする。可愛い。

 

「じゃあ、何も渡さなければいいんじゃない? 変に勘ぐることもないし、いいでしょ?」

「いや、返事はしないと。それはそれで冷たい印象」

「めんどくさいなぁ」

 

 ナツが溜息を吐く。その息を吸う。元気になる。ナツが黒板側を向く。呆れている感じがする。でも仕方がないだろう。ナツが可愛いのが悪い。

 

「まぁ、何も渡さないのはロマンがないね。オススメはしないよ」

「そ、そう言えば、ナツは何を渡すの? バレンタイン」

 

 緊張して訊く。

 

「ほほぅ、気になるかい?」

「気になる!」

 

 ナツがドヤ顔で振り返る。その時、右サイドテールが揺れ、甘酸っぱい香りと牛乳の匂いが鼻腔を擽る。ああ、ナツだ。ナツを感じる。ナツの匂いだぁあああああ!

 

「本当は放課後のお楽しみってしたかったんだけど、悩めるアキナのために私がお教えしよう」

「ははぁ! ありがたやぁ!」

 

 これだよ、とナツが通学鞄から取り出す。手渡されたのは、桃色の袋に赤いリボンでラッピングされた可愛らしいプレゼント。中身は────

 

「マシュマロ?」

「いぐざくとりー」

 

 おどろ木ももの木さんしょの木。よもやよもやである。ウゾダ……ウゾダドンドコドーン!

 

「え、え、え、……ナツって私のこと、嫌いなの?」

 

 マシュマロの意味は、『嫌い』。確かにうざったく絡む私は疎ましく思われても仕方ないのかもしれない。それでもこんなはっきりと直接言われたら涙が出る。

 

「アキナ、泣いてるの? 飴ちゃんでもあげようか?」

「原因、ナツだけどね! それはそうと飴は欲しい!」

 

 ノンノンノンと指を振りながら私に飴を渡すナツ。私は受け取り首を傾げた。

 

「勉強不足だよ、アキナくん」

「? 勉強不足?」

 

 そう、と牛乳を置くナツ。牛乳からタプンと音。私は飴を口に入れる。コロリと歯に当たる。

 

「確かにマシュマロには『嫌い』という意味もある。しかぁし、それは現代になって付けられた新しい解釈」

「新しい解釈?」

 

 うん、とナツは頷く。チラホラと生徒が教室に溢れて来た。そろそろ教師もやってくるかもしれない。面倒臭いことに授業が始まる予感。

 

「マシュマロはふわふわで口の中に入れるとすぐに溶けて消える。儚い。そこから『消えて欲しい』という意味になって『嫌い』となった」

「うん。調べた感じそんな所だったね」

「けれど、本来の意味は別にあるのだよ」

「本来の意味?」

 

 するとチャイムが鳴った。教師が入って来て生徒達が慌てて席へ向かう。朝のホームルームの始まりだ。ナツも体だけ前に戻して言う。

 

「続きはお昼休みに。勉強も青春の1ページだからね。一緒にロマンを感じよう」

 

 にひっ、と笑って前を向いた。私は再度ナツに見惚れた。

 

 

 

 お昼。机を向かい合わせにしてナツと食事をする。私はドーナツ、ナツはブルーベリーパイ。膝を突き合わせて顔を拝めるのは本当に大好き。ご尊顔が目の前に。

 咳払いで意識を戻す。

 

「で? マシュマロの本来の意味って?」

「その前にホワイトデーの歴史を語ろう」

「まだ、バレンタインデーなんだけども」

 

 まぁまぁ牛乳でも飲んで、と未開封の牛乳を渡される。私はありがたく受け取る。備え付けのストローを刺してチュウチュウ吸う。同じ種類のストローに口を付けているから実質間接キス。

 

「……今、悍ましいモノを感じたんだけど、気のせいかな?」

「気のせいだよ☆」

 

 まぁいいや、とナツは続ける。

 

「ホワイトデーの起源には諸説ある」

 

 やっぱりそうだよね、と思う。前世でも諸説あったのだ。日本独自のイベントがキヴォトスで行われている時点である程度予測できた。

 

「その中でホワイトデーの前身、マシュマロデーというのがあった、という説がある」

「マシュマロデ―?」

「そう。とある老舗菓子店が始めたイベント。少女雑誌に掲載された記事で『バレンタイデーのお返しがないのは不公平だ』という文言を見つけてね。そっから自社の主力商品であったマシュマロの名を冠したマシュマロデーなるものを作って、返礼品としての購買意欲を募った」

「なるほどね。結局企業努力ってやつなんだね」

 

 そこで、ん? 首を傾げる。

 

「ホワイトデーの起源はわかったけど、マシュマロの意味は?」

「まぁ、待ち給え。焦ることもないだろう。まだ時間はある」

 

 そう言って牛乳を美味しそうに飲むナツ。まぁナツの話は好きなのでいくらでも待てる。そういうプレイだと思えば一瞬だ。

 

「…………今ゾッとしたんだけど、変なこと考えなかった?」

「いや、ナツは相変わらず可愛いなって、思ってたよ」

「…………いつも通り、か」

 

 首を傾げてからブルーベリーパイを頬張るナツ。もぐもぐと頬を膨らませている姿がリスっぽくて可愛い。

 

「時にアキナくん。私のプレゼントは食べてくれたかな?」

「いや、もったいなくて食べてないよ。神棚にでも上げようかと思ってるくらい」

「……」

「そう黙って見つめられると、照れちゃうね」

 

 ナツが溜息。心を落ち着かせるように牛乳を飲む。が、すでに空だったのか、残りの液体を頑張って吸う音がする。新しい牛乳パックを取り出す。

 

「とりあえず、食べてみてよ。感想聞かせて。手作りなんだ」

「手作り! 感想! はい! 只今食べさせて頂きます!!」

 

 袋を机の中から取り出し、可愛らしいリボンを解く。乾いた、粉っぽい、甘い香りが広がる。ナツっぽい。マシュマロも色とりどりで目を楽しませる。

 その内の一つを摘み、取り出して眺める。薄ピンクのマシュマロ。普通は白を想起するが、食紅を使えば色を付けられる。細かな所にナツの性格が出ている。

 少し力を入れる。ふわふわ手触り。表面は粉砂糖でサラサラ。匂いを嗅ぐ。いちごフレーバー。甘酸っぱいジャムの香り。そうして一通り楽しんだ後、歯でもって半分ほど齧る。

 

「ん!? んんっ!!」

 

 たらり、と中の液体が垂れる。ブラウンの色合いが薄ピンクにアクセントとなり、色彩も良し。甘いガワに苦甘いチョコレートの組み合わせも良し。何より口の中でマシュマロとチョコレートが溶け合い至福のとき。つまり、美味しい!!

 

「どう、かな? 味見はしたから不味くはないと思うけど……」

 

 ちょっぴり気恥ずかしそうに訊くナツ。百点満点だよ!!

 

「ナツが可愛い♡」

「私はお菓子の感想を求めたんだけど……」

 

 ナツは呆れている。だが、私の顔を見てだいたい納得したのか、誤魔化し笑顔。でも、ちゃんと言葉にしないといけないよね。

 

「美味しかったよ! ナツ! 生きててよかった、って思えるくらい!!」

「そこまではないよ。……でもありがと。本当は帰ってから食べてもらおうと思ってたんだけどね。少なくとも私がいない所で」

「あぁ~、ごめんね。ロマンじゃないからでしょ?」

「まぁ、そこは今はいい。で、具体的にどこがよかった?」

「マシュマロの中に、チョコが入ってた所かな? やっぱりバレンタインデーにはチョコだよねぇ~」

「そう、そこ。まさにそこなんだ」

 

 ピシリ、と指差すナツ。私はつい指先を追って、手元のマシュマロを見る。チョコがたらりとはみ出ている。

 

「先程の話に戻るけど、とある老舗菓子店はマシュマロの中にチョコレートを入れて販売したんだ。コンセプトは『君から貰ったチョコレートを僕の優しさ(マシュマロ)で包んでお返しするよ』」

「じゃあ、マシュマロの意味は、『優しさ』?」

「そう安直に捉えてはいけない。焦らないで考えてみて。元々は少女雑誌から始まった。お返しがないというのは不公平という話だった。つまり?」

「えっと、なんだろ?」

「お返しをするのは礼儀でしょ?」

「えっと。うん、そうだね。そうだわ」

「そこに優しさを加えて。『贈り合う気持ち(優しさ)を大切にしたい』という意味が、マシュマロには隠れていたんだよ」

「な、なるほど……」

 

 話をしている内にナツが目の前までやって来ていた。キスできそうな距離。吐息が互いの肌にかかる。理性が止まりそう。甘い香りにくらっとする。自分の吐息、臭くないだろうか? 心配になってきた……

 

「じゃ、じゃあ、マシュマロの意味はホワイトデー限定なの? ホワイトデーが起源ならそういうことになるでしょ?」

 

 そう訊くとナツが椅子に座って腕を組む。離れてくれたことにホッとする反面、残念な気持ちになる。もっと近くでナツを味わいたかった。

 

「そこは厳密にならなくてもいいんじゃないかな? 大事なのは意味じゃなくて、ロマンだから( ー`дー´)キリッ」

「流石! ナツ! 天才! ロマンの追求者!」

「ふふふ、もっと褒め給え」

「よっ! キヴォトス一! スイーツの探求者!」

「まぁた、やってるよ。この二人」

 

 聞き知った声で振り向く。教室の後ろ扉に伊原木ヨシミが体を預けて立っていた。

 よっ、と声かけしてそのまま隣の席に座る。コンビニチェーン『エンジェル24』のビニール袋を私達の机の間に置き、はい、と言った。

 ヨシミは隣の教室。近いこともあり、時々こちらに来ることがある。カズサとアイリは遠くの教室。階が違う。トリニティはマンモス校なだけあり、クラス数も多い。当然同じ学年でも教室が遠くなることが多い。

 

「これ、何?」

「バレンタインデーよ。二人分あるから」

 

 勧められてビニール袋の中身を取り出すと、二箱のチョコクッキー。それも市販品で一番安いやつ。

 

「ヨシミはヨシミらしいね」

「どういう意味よ?」

「ヨシミはいいの? ドライな関係で?」

 

 一瞬、何言ってんだこいつ、みたいな顔をされたがすぐに合点がいったのか、ああ、と呟く。

 

「あれね。ホワイトデーの贈り物の意味ね。別にそれ気にして選んでないから。美味しければいいでしょ? そもそも今はバレンタインデーでしょ」

 

 え、と思う。それでいいのか放課後スイーツ部。ナツを見ると肩を竦めていた。

 

「ヨシミはガサツだからね。良い意味でそういった意味に無頓着なんだろ」

「なによぉ!? バカにしてんの?」

「いや、良い意味で。どこかの誰かさんのように意味に執着するよりはマシだよ」

「えへっ」

 

 ナツに叱られた。ダメージとともに嬉しさが込み上げて来る。もっと叱って! ナツは相変わらず呆れた顔。ヨシミは首を傾げている。私は今までの流れを説明する。

 

「実は、カクカクシカジカで」

「なるほど、マルマルウマウマなのね、ってわかるかぁ!」

 

 ノリツッコミしてくれるの楽しい。やっぱりヨシミは友だちがいがある。

 

「いやね、カズサとアイリからプレゼントを貰ってね」

「プレゼントってバレンタインデーの?」

「うん。カズサからはチョコのマカロン。アイリからはチョココーティングのマロングラッセ」

「それがどうしたのよ?」

「だって、意味考えてみ? マカロンは『特別な人』。マロングラッセは『永遠の愛』」

「…………ナツ、どういうことよ?」

「どうもこうも、こういった意味だよ、ヨシミ」

「?」

 

 私が首を傾げる。ヨシミが吹き出しそうになる。が、途中で耐えて口を塞ぐ。私の頭の中ははてなで一杯になった。

 

「え、え、え? ヨシミ大丈夫? どこか悪いの?」

「い、いえ、なんでも、ブフゥッゴホッゴホッ…………なんでもないわよ?」

 

 なんでもないこともないだろう。明らかにさっきと様子が違う。なんか震えている。時々口角も上がる。ますます意味がわからない。

 

「とりあえず、話進めるけど、何を贈り物にしたらいいのかなって。クッキーはサクサクとしたドライな感じを受けるから嫌だし、マシュマロの意味はさっきナツから解説サれたけどやっぱり『嫌い』って捉える人もいるから却下。他に何かないかな?」

「そそこまでクックック……悩むのなら、ホワイトチョコにしたら? 意味はたしか『今までの関係を維持しましょう』だった気がするわよ? ふふふ」

「それだぁ!  今すぐ売店で買ってくる!」

 

 私は駆け出した。ナツは手を振ってくれた。ヨシミは笑い出した。

 

 

 

 放課後。今日は部活動はない。本来ならバレンタインデーというスイーツの一大イベントが本日だが、カズサとアイリが用事で放課後はいない。そのため、部活は休み。

 私用で休み。つまり、放課後渡すタイミングがギリギリしかないということだ。私はまだ渡していないから、今すぐ渡さないといけない。今日中に決着をつけないと、後々で尾を引く。良くない。早めに解決するべきだ。特に恋愛ごとは。

 私は廊下を走らない程度の速度で急ぐ。正義実現委員会が睨みを利かせている中、走る勇気はない。なぜかナツとヨシミも付いて来る。

 

「二人とも! ここからは修羅場だよ! 覚悟はできてる?」

 

 カズサとアイリは同じクラス。渡すとすると、同時しかあり得ない。自ずと修羅場が形成されるだろう。

 

「ま、まぁ、頑張んクックックッなさいね」

「ふぁいとー」

 

 ナツはいつも通り。ヨシミは何かを堪えている。私はキリッとして、姿勢を正して教室に入る。カズサとアイリは…………まだいた! ちょうど帰ろうとしていた所だった。

 

「アイリ! カズサ!」

 

 私は二人に近付く。二人は首を傾げる。

 

「あれ? アキナちゃん? どうしたの?」

「アキナ、慌ててどうしたのよ?」

「これ! 二人に! バレンタインデー!」

 

 渡す。ホワイトチョコの絵柄が描かれたパッケージ。市販品だ。

 

「お、サンキュー」

「ありがとう、アキナちゃん」

「う、うん…………それと」

「「?」」

 

 息を吐く。そして、息を吸う。

 

「ふ、ふたりの気持ちは嬉しい。すごく嬉しい。けど、私は二人の友達でいたいんだ! だから、二人の気持ちには応えられない。ごめん!!」

「「…………」」

 

 アイリとカズサは顔を見合わせた。そして、また私を見て、首を傾げた。

 

「「どういうこと?」」

「………………へぁ?」

 

 私は慌てた。

 

「いやだって、マカロンでしょ?」

「渡したわね」

「マロングラッセでしょ?」

「うん。美味しかった?」

「美味しかったけど────」

 

 そこでアイリは後ろの二人に気付いたのか手を振った。

 

「ナツちゃん! ヨシミちゃん! 朝渡したマロングラッセ、美味しかった?」

「え」

 

 ヨシミが馬鹿笑いした。私が意味が理解できんていなかった。全く理解を拒否していた。

 

「え、え、え、だ、だって、マロングラッセの意味って」

「意味? ああ、そうだよ。永遠の愛でしょ? うん♡ スイーツ部のみんなが大好きだから、一応選んだんだ。私の名前から取っているんだ~」

 

 気まずい。カズサを見る。カズサは首を傾げる。

 

「じゃ、じゃあ、カズサ。付き合っちゃう?」

「は? 何でよ?」

「いや、だって、マカロンの意味は────」

「あ、カズサちゃんのマカロンも美味しかったよね。サクッモチッてしてて、チョコの味がふんわり」

「え」

 

 汗がダラダラと流れる。つまり、えっと、どういうこと??

 

「ナツちゃんとヨシミちゃんには同時に渡せたけど、アキナちゃんはなかなか会えなくてなんとか渡せたから良かったよ」

「そうね。アキナ、いつもは簡単に見つかるのに、こういった時に見つからないのなんでよ?」

「え、え、え」

「って、もうこんな時間。みんなに渡し終えたから、私達は先に帰るわね」

「じゃあね、みんな。また明日~」

 

 そうしてアイリとカズサは教室から出た。見えなくなった。私は膝を付いた。

 つまり、私の勘違い、だったということですね。はいわかりました。ただのキモヲタ転生者の儚い妄想だった訳ですね。はいわかりました。純粋な友チョコ美味しかったです。はいわかりました。

 

 仕方ないでしょうーが!? バレンタインデーとか無縁の行事だったんだから!?

 

 BGMにヨシミの笑い声。馬鹿笑いして苦しんで悶えていた。そのまま往ね! ナツが私の肩に手を置いた。私は救いを求めて顔を上げた。

 

「マシュマロ、食べる?」

 

 




閲覧、ありがとうございます
この短編集は、書きたい時に書きますので、その時はまたよろしくお願い致します

本話は、この短編集で一番最初に思いついた作品です
そのため稚拙な点が散見されます。ご了承下さい

バレンタインデーの話なので、バレンタインデーまで待って投稿しました
それまでなんか書きたいな、って思ったので、いくつか投稿していますが、これが最初です
ナツの愛をもっと叫びたい。原作を忠実にしたいが、ナツ愛が暴走してエミュレートできていない箇所があるのが自分の落ち度
許して下さい。何でもはしません(なんでもするとは言っていない)

そんなことより、4周年おめでとう!
ナツの3Dかんしゃぁ
セイアとの絡みも良き

次の更新は、だいぶ先になります



というか、持病が悪化したので、しばらくお休みします
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