マシュマロでも食べる? 作:コサメ
この世に〝完璧〟なものはない。しかし、スイーツには、〈完璧〉がある。
それこそが、パフェ、だ。
パフェ。フランス語〝parfait〟から。『完璧/完全』。
背の高いグラスに、アイスクリーム主体のデザート。フルーツとチョコレートソースやバタークリームやシリアルやナッツやゼリーや焼き菓子などを詰め込み、夢一杯の甘味。層状になったグラスの彩りもさることながら、表層はバラエティに富むボリューム。そのダンジョンとでも呼べるデザートをどう攻略するか、悩ましいものがある。
ところで、あなた達はパフェをどう食べるだろうか?
グラスの足を押さえて、細長いスプーンで掬う。抱えて口にかっ込む。上の層から食べる。層を掘って下のシリアル層から食べる。ぐちゃぐちゃにしてアイスクリームとシリアルとゼリー全ての具材を混ぜて食べる。色々あるだろう。
私? 私は当然────
「ナツぅ、はい、あ~ん」
「あー」
パクぅ。もぐもぐもぐもぐ。ごっくん。……あぁ、可愛い。
「今゛日゛も゛や゛っ゛ぱ゛り゛推゛し゛が゛可゛愛゛い゛」
そう、ナツを膝に抱えて、ナツに食べさせる。それが一番私にとってパフェを食べている瞬間だ。細長いスプーンで口に運ぶ。ナツが雛鳥みたいに口を開けて素直に食べる。フルーツパフェ。
可愛い。まさしく、この組み合わせ、完璧ぃ~
「はいはい、定期定期」
ヨシミがうげぇとした顔で、いちごパフェをぱくつく。苦々しい顔が甘々しい顔になる。が、私と私の膝に乗ったナツを見て、溜息。
「アキナ、ナツ。いちゃつくのはいいけど、他所でやってくれる? 正直見てて恥ずい」
「あぁ、出っちゃってるかぁ〜。私とナツの愛の波動。ね、ナツぅ」
ん? とこちらを振り向いて、自分のパフェを食べているナツ。プリンが載ったキャラメルパフェ。リスみたいにほっぺを膨らませて、もぐもぐしている。可愛い。
「というか、ナツは気にならないわけ? 汗かいてるでしょ?」
カズサがチョコレートパフェを口に入れる前に言う。パフェの上にマカロン。
ゆっくりと飲み込んで、スプーンを置くナツ。みんなバンド服。
「汗をかいたままパフェを食べる。なんとロックじゃないか」
「あっそ」
現在、スタジオの一部屋を借りている。そこのテーブルでコンビニパフェを休憩がてら食べているのだ。最近のコンビニのパフェはバリエーション豊富。ボリューミー。放課後スイーツ部にとっては最高の相棒。エンジェル24。普段はケーキに手を伸ばすが、今回はパフェを買ってきたのだ。
カズサが呆れてパフェを食べる。うぅん〜おいひぃ、と歓喜の呟き。ヨシミが、アイリに向く。
「アイリも何か言ってあげなさいよ」
「え?」
アイリがつついていたチョコミントパフェから顔を上げる。
「えっと…………ごめんね。何の話だっけ?」
「「「「……」」」」
全員が顔を見合わせる。最近のアイリはどこか心あらずな雰囲気を纏っている。深窓の令嬢。トリニティのお嬢様って感じ。いや、実際にトリニティの生徒なのだが。
「えっと、アイリ大丈夫?」
「え? な、何が?」
カズサがアイリの横顔を見ながら心配そうに尋ねる。アイリは何でそんな質問されたのかわからないという風に首を傾げている。ヨシミが続ける。
「いつもはナツとアキナのじゃれ合いに微妙な顔しているのに、今日は難しい顔してるわね。疲れたの? ……もしかしてこいつらのせい? 練習後にこいつらのコント聞かされたらそうなるわね」
「ちょっと! ヨシミ! 私のせいかもしれないけど、ナツのせいではないよ!」
「まさしく、ロック」
「こいつら……」
「あ、あはははは……」
アイリが微妙な顔をした。いつも通りのアイリに戻っている。
「私のことは心配しなくても大丈夫だよ。……それより、アキナちゃんは自分の分食べないの?」
やはりアイリがおかしい。いつものことなのに、そんな質問。
「私はナツの笑顔でお腹いっぱいなんだ」
「それはいいけど、アキナ? ナツが太るわよ?」
ヨシミが呆れたように言う。私が自分の分をナツにあげようとすると、ナツが口を閉ざす。冷や汗をかいている。
「ま、まぁ、これくらいで太る訳ないだろ? ヨシミ」
「いや、だいぶ丸くなったわよ、ナツ」
カズサが告げる。ナツはフフンとカズサを見る。
「丸くなったのはどっちかな? キャスパリーぐえぇつ!?」
「あんた、それ次に言ったら殴るって言ったでしょ!」
「ナツ! 大丈夫!?」
幸せな重みが胸にのしかかる。下腹部がキュンとする。ああぁ、ナツを全身で受け止めているんだ! ナツだぁあああ! ナツが来たぁあああ!
「はい、アキナ。鼻血出してるわよ」
「あ、ありがと。ヨシミ」
ティッシュを借りた。
「それよりナツの体重よ。あんた、体重計、最近乗った?」
「……確認はしていない。だが、大丈夫だろう。なんせ、アキナが何も言ってこないからね」
「え? ナツは太ったよ?」
「……え」
何を当たり前のことを言っているのだ。あれだけ食べれば誰だって太る。ナツだから可愛くぷくちゃんになっているだけだ。バンドのために毎日ランニングするようになったとはいえ、こればっかりは仕方ない。
「もうね、どんどんと重くっているよ。ずっしりと。その重みとお腹のぷにぷにが凄くタンマラなく心地よくて、あぁ、ナツを膝に乗せてるんだって実感がフツフツと湧くんだ。これが幸せなんだね、って思っていたよ」
「……つまり、黙っていた、ということかい?」
「そうだね!」
ナツが急いで私の膝から下りた。ナツの心地よい温もりが消えた。ちょっと残念。ヨシミとカズサが笑うのを必死で堪えている。
ナツが二人を睨む。
「ヨシミ、カズサ、二人とも、そう言えば以前よりふくよかになってないかい?」
「は、はぁ!? そんなことあるわけないでしょ!」
「そうよ。ナツと違って、アキナから餌付けされてないからね」
「ぐ、ぐぬぅ」
「じゃ、じゃあさ、みんなで体重計にのろ? あ、アイリもそれでいい?」
「……え! う、うん、それでいいよ?」
全員保健室に行って、体重計に乗った。ナツだけ、微増だった。
~~~~~
「うぉおおおおおお!?」
ナツが激しくドラムを叩く。真剣だ。凛々しい。そして、可愛い!
「ナツぅ! 可愛いよぉ! 凛々しいよぉ!」
「……アキナはちょっと黙っててくれる?」
ナツがスティックを止める。
あ、怒ってる。怒ってる顔もちゅき。
「その顔はなんだい? まったくもって反省している顔じゃないね」
「はい! まったく反省していない哀れな下僕に、お叱りを!」
まったくもって、軽蔑した顔で見られた。たまらん。
「……まぁ、こんなことで怒るのはロックじゃないから、怒ってはいない。……あぁ、怒っていないとも」
「え。怒ってないの? 怒っていいんだよ? 私はナツを太らせた原因なんだから」
「……自己管理ができていなかった私が悪い。アキナのせいじゃないよ」
菩薩のような目をしたナツ。達観とも言う。ああ、尊い。
「って、アキナは練習してんの?」
「え、何の?」
「……はぁ、リードギターするって決めたよね?」
カズサの呆れ。そうなのだ。先生からバンドとは? と訊かれ、ギターと答えたから、そうなった。
私は頷く。
「するする」
「で、でも、アキナちゃんが練習しているとこ、見たことないよ?」
アイリが不安そうな、ちょっと焦っているような顔をしていた。
ハッとする。周りを見ると、カズサ、ヨシミ、ナツも訝しげな顔をしていた。
冷静になれ、ふざけすぎていた。えっと、メインストーリーの時系列は正直あやふやだが、イベントストーリーは覚えている。
今は、イベントストーリー『-ive aLIVE』中。みんなが一丸となって、バンドに打ち込む青春の物語。ここで不純物が混ざって良い訳がない。
しかし、ナツと一緒にいたいという欲望を振り切ること能わず。
それなら放課後スイーツ部に貢献しないといけない。それが柚鳥ナツガチ恋勢である私のするべきことだろう。原作を汚すのは、ナツを汚すのと同義。反省しかない。
…………それに……悩むアイリを放って置くこともできない。たとえそれが、解決することだとしても。自分には何もできないとわかっていても。見守ることしかできないといえども。
私は咳払いをする。
「ま、まぁ、見ときなって」
部屋の片隅に置いたギターケースからギターを取り出す。ちょっと年季が入ったエレキギター。他のみんなの楽器は新品だ。それもそうだ。最近買ったやつなのだから。私のこれは、小学時代から所持している。
慣れた手つきで、ストラップを首に通し、チューナーを付けて、アンプにシールドを刺し、チューニング。
おぉっ、とみんなが見守る。ちょっと緊張。いや、心配することはない。練習してきたのだ。前世から、こっそりと。一人でないと練習できないのは今世の悩みだが、それでも前世で培ってきたものは忘れない。
……けっしてぼっちだった訳じゃない。そうだ。友達っぽいなにかはいたのだから。
「そ、それじゃ、弾きます」
ピックで弦を弾いた。
弾くのはこの世界での流行り曲。前世の有名曲と比べるとそこまで感動するものでもない。『愛しのレイラ』とか『青春コンプレックス』とかの神曲がこっちの世界にはない。……まぁ、『Layla』は難しすぎるので、完コピできなかったが。
それでも、キヴォトス中を探して、乗れる曲を選んで、今世でも練習してきた。これは今回のためでもあったが、何より前世からの唯一の自慢だったのだ。……まぁ、自慢する相手はいなかったが。
なんか色々な感情を詰め込んで、弾く。
ミスを恐れず、しかし完璧に熟す。みんなの前で練習していなかったのだ。ここで完璧かつ惹きつけるものが弾けなかったらハブられる。いや、そんな子達ではないと知っているが、それでも前世の経験上、怖い。
そして、何より、自分が許せないだろう。
ピックを掻き上げる。弾き終わる。腕を下ろす。ちょっと息切れ。息を整えてから、ドヤ顔。
「どや」
「「「「おぉ~~」」」」
拍手が飛ぶ。4人だけだが、4人もいる観衆。よくよく考えると、前世含めて人前で弾くのは初めてという。あっ、目から汗が……。
「すごいじゃない! 正直アキナだから、ナツ以外に趣味がないと思っていたけど」
「アキナのことだから、下手くそなのを想像してたけど、予想以上に上手かったわね」
「これは認めざるを得ない。アキナが一番ロックだ」
「アキナちゃん、すごい! …………それにくらべ……」
ちょっとハイライト消えてますよ、アイリさん。
アイリの最後の言葉が聞き取れなかったが、ちょっと落ちこんでいる様子。イベントストーリーを知っているだけに、どう声かけていいのかわからない。
いや、ここは私一人が出しゃばるより、みんなで出しゃばった方がよい。うん。たぶん。
「どこで練習したのよ? アキナの寮って防音完備?」
「いや、土日でスタジオ借りて」
「そういや、ここもアキナの紹介だったわね。一人で練習してたの?」
「うん」
「どうして私達と練習しなかったのよ?」
「ナツに夢中になりすぎて練習にならない」
「……それでどうバンドを組めと?」
……たしかに。
「じゃあ、アキナはまず、
「むr……いえ、なんでもないです。わかりました。一緒に練習します。だから、そんな目で見ないでください。正直興奮します」
「……これがなければ、ね」
「そうね。これがなければ」
「という訳でアイリ。アキナも今日から練習に加わるよ」
「……」
「アイリ?」
ナツの小首傾げ。ハッとするアイリ。
「う、うん。それでいいよ。じゃ、じゃあ、練習再開しよっか」
みんな不思議そうにアイリを見る。私はハラハラする。みんなは気づいていないのだ。アイリの異変に。いや、アイリの悩みに。解決する、とは言ったが、それは原作での話。ここでは私がいるため差異が生じるだろう。正直怖い。
原作壊してないよね? アイリを苦しめて……しまうのは仕方ないとしても、アイリがちゃんと前を向いて歩けるよね? 原作通りとまではいかないまでも、ちゃんとアイリが顔を上げて進めるよね?
そこで、あれ? と思う。
私はなんでここまでアイリの心配をしているのだろうか? 前世も含めてナツくらいにしか興味がなかったのに、何故ナツ以外の他人を気遣っているのだろうか?
ナツ以外は眼中にないという姿勢こそ、ナツへの愛を語れる。ギターは表現方法であり、私の愛のパトスを発散するための手段に過ぎなかった。
だけど、今の私はどうだ? アイリだけでなく、カズサやヨシミとわいわい楽しく語らう。これはナツに一途である
ちょっともやっとした。
~~~~~
練習をめいっぱい頑張った後、疲れを残さないためにそれぞれ帰宅する。その前に、私達はスタジオの掃除をする。ナツが掃除当番もといロック担当なので、ナツが掃除道具を持ってきている。
みんな黙々と掃除。私はちょっとなんか悩んでいた。
『一途』
一つの事に集中して打ち込むこと、ひたすら、ひたむきな状態を指す言葉。また、恋愛において、一人の人をひたすらに愛する様子を表す。
混じりっ気のない、純粋で、それだけで完結する、そうパフェのように完璧な〈好き〉。〈好き〉とは、どういうことを言うのだろうか?
ナツではないが、ちょっとばかし哲学的なことを考えてしまう。
私はナツが〈好き〉だ。これは絶対的で普遍の事実である。私がナツを嫌いになるということは、それすなわち、死を意味する。ナツちゅき
その〈好き〉は、ナツだけに注がれるべきもの。ナツから私にどのようなベクトルが向かっていようとも、私はナツを信奉する以外に道はない。これはまさしく感情的なものだが、完璧に〈好き〉ということだ。
しかし、私はアイリが『好き』だ。ヨシミが『好き』だ。カズサが『好き』だ。そして、放課後スイーツ部という部活動が『好き』だ。
その『好き』は、〈好き〉に不純物を混じらせはしないだろうか? 他の『好き』でナツへの〈好き〉を穢しはしないだろうか? 少なくとも、ナツだけに注ぐ〈好き〉は【一途な好意】とは違うものになるはずだ。そう思う。
そう、「好き」という言葉が〈ナツへの愛を囁く言葉〉ではなくなる。他の意味を孕んだ「好き」があって、それゆえに〈好き〉のベクトルが分散する。「好き」という言葉がナツだけのものにならない。それすなわち「好き」という言葉に不純物が含まれていると言ってよいのではないだろうか? 重みがなくなる。
言い換えるなら、浮気、だろうか?
「? アキナ、どうかした?」
「……ナツ、好き」
「……なんだ、いつも通りか」
私は慌てる。
「いや、そのちょっとばかし、悩みというか……」
「え。アキナでも悩むことあるんだ?」
「ヨシミ、それはどういうことかな?」
「え、そのままの意味だけど」
悪びれる様子なくさらりと言ってのけるヨシミ。潔さに感服。
そうだ。『不純』といえば、私自身が不純物だ。このキヴォトスで私だけが〈原作〉を知っている。それは、未来に進む生徒達の中で、異質。
「私って不純だなぁ」
「「「え」」」
「……え、って何?」
ヨシミが、いやだって、と頬を掻く。
「あんたほど、純粋なやつ、あんまり見ない気がするけど」
「そうそう。ナツに対しては、脇目振らずって感じよね」
「私に向けられる感情はこそばゆいものがあるが、それでも嫌いじゃあない。まるで、イチゴジェラートを食べているような気分だ」
「え、それって、相思相愛ってこと?」
「……」
「これさえなければね」
「これさえなければよ」
解せぬ。
ちらりとアイリを見る。アイリは少し上の空。掃除の手も止まっている。
「アイリ、大丈夫?」
「え?」
私は声をかけていた。
「えっと、その……」
ここで、混乱する。なぜ話しかけたのか? それはアイリが心配だから。なぜ、心配なのか? それは好きだからだ。仲間だからだ。友達だからだ。
ナツへ向ける愛情ではない、〈好き〉。やはり、思うのは、ナツへの〈好き〉を不純にさせないか、という迷い。所謂、浮気。【浮気】ってどこまでが〈浮気〉なのだろうか?
結局、言葉は続かなかった。カズサが息を吐いた気がする。
「とりあえず、掃除はこんなもんでいいでしょ」
「そうだね。掃除も完璧に熟す。まさしくロック」
「はいはい、ロックロック」
そうして解散した。
~~~~~
バス停で空を見上げる。もうすでに夜更け。早く帰らないと、明日も学校だ。学生の朝は早いのだ。
切り替えようと、すでに終わった宿題を反芻する。しかし、胸と頭のもやもやは晴れない。逆に強さを増す。
スマホを取り出す。モモトークを見る。放課後スイーツ部のチャットを眺め、ナツが素敵な言葉を言い、カズサとヨシミがあしらったり無視したりしている。
ちょっと前なら、「ナツのありがたい言葉を無視してっ!」と怒鳴っていただろうが、そんなアホな怒りは現在湧かない。ナツ教はいつでもだれでも歓迎する。そんな感じだったのが、放課後スイーツ部の面々と過ごす内に、「これもまぁ、いっか」と思うようになった。
変化。
モモトークのチャットをスクロールし、時間潰し。そこで、先生のチャットが目に入る。
「……」
結構前に相談した内容が個通に書かれている。正直思い出したくもないが、それでも先生がすごく頼りになる存在だと認識した出来事。今は関係ないが、つい身を寄せたくなる。そんな存在。
『先生、相談のってくれますか?』
文面だけ起こしたが、送信できない。なんか負けた気がする。ナツの想い人に相談するなんて、嫌だ。
先生は外の人間だ。しかし、おそらく原作を知らない。知っていたら、もっと上手くやれていただろうと思う。しらんけど。
だから、外の人という共通点はあれど、同じではない。共感できないだろう。この私の感情を。
だから、私は文面を消そうとバツ印のアイコンを押そうとした。
「〝あれ? アキナ?〟」
「ひゃぃっ!?」
ぴろりん
振り向くと先生がいた。
「いや、先生、なんでこんな所に??」
「〝ちょっとトリニティに用事があってね〟」
なるほど、それなら仕方ない。先生は東奔西走キヴォトス駆け回る存在。そういうこともあるだろう。
それより、とスマホを確認する先生。私は首を傾げる。
「〝相談って何?〟」
「………………あ」
まじで最悪。バスが来た。
~~~~~
バスに揺られて、先生と座っている。どうもアキナです。
「先生、……どうしてこのバスに? 反対側ですよね?」
「〝なんとなく、かな?〟」
「そ、そうですか……」
ところで、と先生。
「〝相談って?〟」
「やっぱりそこになりますよね!? わかっていましたとも!?」
先生が微笑む。
「〝アキナはいつも元気だね〟」
「……そりゃ、ナツがこの世に存在している限り、私は元気ですよ」
「〝あははは……それでこそ、アキナだね〟」
先生のスーパーミラクルハイパーエキセントリックなめっちゃよい空気感が、私を苦しめる。
この空気感。嫌いじゃない。どちらかというと『好き』な部類だ。もちろん、恋愛的な意味ではない。
そして、悩みというのは、そこに行き着く。
「先生……〈好き〉ってなんでしょうね?」
「〝?〟」
「私は本当の〈好き〉というものは、純粋であればあるほど、完璧だと思っていました」
「〝一途ってこと?〟」
「はい、……なので、私はナツが〈好き〉なので、ナツに全身全霊を向けて〈好き〉を表現していました」
「〝うん。そうだね〟」
「でも、最近、思うんです。……アイリやカズサやヨシミ、……いえ、放課後スイーツ部という部活。そもそもこのトリニティ総合学園やこの世界キヴォトスが、結構〈好き〉なんだなって」
「〝ちょっと最後は壮大だけど、いいことだね〟」
「……いいことでしょうか?」
「〝いいことだよ〟」
「でも、一途こそ、大事だと思います。浮気は駄目です。絶対に」
「〝浮気……なのかな?〟」
「浮気です。私が思えば、誰が否定しようとも、浮気は浮気です」
そっか、と先生。ここまで言って、私は溜息を吐く。結局相談してしまった。ナツの想い人にこんなこと言うのは、くっそ悔しい。けど、晴れ晴れとした気持ちにもなる。やはり内に溜め込むのはよくない。外に発信しないといけない。
「〝アキナはそれで苦しくない?〟」
絶賛苦しんでおりますとも。でも、流石にそこまで言わない。黙る。
先生はどう思っているのか、続ける。
「〝アキナは頭がいいから、余計なことを考えがちだけど……〟」
先生は優しく言う。
「〝最初の気持ちを忘れてほしくはないかな〟」
「最初の気持ち……。それはつまり、当初の目的、ということですか?」
目的。はて? 私の目的とは?
「〝ちょっと違うけど……そうだな。一途というのは、アキナにとって何かな? ……今すぐ答えを出さなくてもいいけど、考えてみる価値はあると思うんだ〟」
「……はい」
バスが停まった。私は降りた。先生はそのまま行ってしまった。
~~~~~
「つまり、アイリはセムラがどうしても食べたかった!」
ヨシミの断言。ナツは頷く。
「Q.E.D.証明完了、だね」
「いやいやいや、ちょっとアキナもなんか言いなさいよ!」
「ナツのドヤ顔が好き過ぎて心臓が止まりかけた」
「そういうことを言ってほしかったんじゃない」
そういう流れで、セムラを盗りに行く運びとなった。その後は、原作通りの話。特に語ることもないだろう。青春の物語に、私という不純物が混ざっただけのハッピーエンド。
「私の目的ってなんだろう……」
イベントが終わって改めて、私の悩みを思い出す。
目的を見失っているのは事実だ。当初は、ナツとお付き合いしたいという願望があったが、それも目的ではなく、どちらかというと手段だと思う。
なら、目的とは?
逆に考えよう。どうして、それを手段としたのか?
私はナツが〈好き〉だからだ。その愛情を精一杯に表現するために……するために……するために!?
「そっか、表現したかったのか……え? 逆に、それ手段じゃね?」
頭が痛くなってきた。愛情を伝えるために、愛情を表現するのであって、愛情表現が手段ということになるが、しかし愛情表現が目的で、しかし愛情を伝えるのが目的かと思えば、どうして愛情を伝えようと思ったのかを考えないといけないのであって、それは相思相愛になりたいということだが、私はナツから愛情を貰わずとも、ナツを愛し続けることを誓っていて、それで一途という言葉になるのだが……ああああああああああ
もう煙が頭から出る気がする。いや、出ている。
答えは出ている。しかし、それでいいのか? と思ってしまう。
結論、当初の気持ちは、『ナツへ愛情表現をしたかった』。これに尽きる。
しかし、どうして愛情表現をしたかったのか考えないといけない。なぜなら、表現とは手段である。え? 違う? でも、心の内を表現する、とか言うよね? たとえば、恋愛なら付き合いたいからとか、結婚したいからとか。泣くということは、悲しみの表現だし、悲しみを伝えたいがための手段だし。怒鳴るのもそうだ。怒りを表明する手段でしかない。警告だ。
あれ? 感情を表現するのが、感情を伝えるためだとすると、感情を伝える目的ってなんだろ?
自分のことを知ってほしい? それならそれの目的は? 自分のことを知ってもらって、どうしてほしいんだ?
いやいや、それだと永遠に思考が止まらなくなる。
第一、もし私が当初、自分のことを知ってほしい、と無意識に思っていたとしても、すでにそれは達成できている気がする。流石にあそこまで過激に激烈に表現していれば、周りもナツも認識せざるを得ないだろう。つまり、自分のことを知ってほしい、は私の目的ではない。
なら、感情を伝えるため? それはなぜ? ……わかんない。
そういえば、ツムギはヘビメタを演奏していたが、あれはどうして表現しようとしたのだろうか? やはり鬱屈したものを表現して、誰かに共感して欲しい?
しかし、私は、共感してほしいのか? 違う。共感して欲しいなら、もっと言葉を尽くすだろう。しかし私に限ってはそんなことはない。
もう答えは出ているのだ。それに素直に従うのも、自分自身に対する礼儀ではないだろうか?
うん、それが一番しっくり来る。難しく考えすぎていたようだ。
スマホを開く。先生にメッセージを送る。そして、スマホをポケットに入れる。
つまり、『私という人間は、愛情表現がしたいだけのただの転生者』ということだ。
本日は謝肉祭の振替休日。それでも部活動はしてよく、私は部室に来ていた。
扉を開けると、ナツがいた。
「やあやあ、アキナ。私のステージにようこそ」
「え」
ナツがバンドの格好で、ドラムを設置して椅子の上に立っていた。
「えっと……学園祭、終わったよね?」
「いや、終わっていない。……そう! 私達が忘れない限り、ロックは不滅、なのだよ」
「まーた始まった」
後ろからカズサが入ってくる。ヨシミも呆れて溜息。アイリも困ったような顔。放課後スイーツ部勢揃い。
「いや、なんで全員バンド服なの??」
「いや、そういうアキナこそでしょ?」
ハッとする。自分の服装を見て、特徴的な猫がこちらを睨んでいた。
「あははは……ついこの服着てきちゃったね」
アイリが困ったような、それでも嬉しそうな愛おしむような表情で言う。ナツがふむふむと頷く。可愛い。
「おあつらえむきに、みんな楽器も持ってきている。……せっかくだし、セッションでもしてみる?」
みんなで笑いながら、楽器の準備をするのであった。スイーツを添えて。
以下長文駄文につき、読み飛ばすことを推奨
お久しぶりです
閲覧、しおり、お気に入り、感想、誤字報告、ここすき、などなどありがとうございます
この間、ふと見ると、捜索掲示板で拙作が取り上げられていたので、びっくり
それはそれとして
ナツ(バンド)
多くは語るまい
みんなわかっている
全員引けたはずだ
え? 石が足りない? シュポガキに使った? ナグサやニヤに使った? セイアちゃんに使ったじゃんね?
……
仕方ない。というか羨ましい
私はナツを推しにしているが、それでもナツ以外が嫌いという訳ではない。どちらかというと好きだ。
しかし、優先順位的にナツが目の前に迫っているのに、他にうつつをぬかすなど……と思って、
「そういや、〈好き〉ってなんだろ?」
と思ってしまった次第でございます。
〈完璧な好き〉じゃなくていいんだよ、って話。ちゃんと伝えられているか不安ですが、そういうことです
まぁ、最悪〈大人のカード〉があるので、問題なーし
湿っぽい話は終わりだ! ナツ愛を語ろうぞ!
バンドナツ
私はね、やっぱりノーマルエンドのナツが好きですね。頬赤らめて興奮した様子でアイリのスマホを見ているスチル
やっぱり、ナツも花の女子高校生で、青春を謳歌する一員なんだなぁって
詳細はブルアカインストール
1年前から言われてましたが、一人だけハブられていたのは、可哀想だと思いつつ、ハブられるならナツだろうな、って感じがしてました
noteとかでとある方がおっしゃっていましたが、その通りだと思いました。気になる人はぐぐってね
そのため、運営に対する不平不満はなく、それでこそ、柚鳥ナツ、なのだと、愛が炸裂
1年くらい待てらぁ、と心に火を宿しました
絆ストーリーも見ました
あぁ、恋心を自覚したナツ……
私はブルアカユーザーで、ゲームもしています。所謂、『先生』、です
しかし、原作の〈先生〉ではない。よって、フラレた気分です。本作アキナの気持ちがわかるというね。……そもそも勝負にすらなっていないという
とはいえ、ナツの新たな一面を見れたので、よきよき
フラレてもナツが好きなのは事実。それなら、ナツと先生が結ばれるまでブルアカをプレイし続けます!
錯乱中? いいえ、ナツちゅき中です
この話を書くにあたって、拙作を読み直してきました
……これって、ナツのエミュぼろぼろじゃね? って思いましたね
妄想が先に来て、暴走していました。申し訳ない
「今後は妄想を抑えつつ、エミュに徹しよう!」
そう思いましたね
……まぁ、思っただけで、妄想が止まりませんが
リスペクトが足りない! ナツはこんな感じじゃない! もっとロマンあふれる子なんですぅ!
だけど、自分が楽しめないのも、なんか違う。私もアキナと同じ、〈愛情表現をしたいだけの人間〉なのですよ
という訳で、自省は終わり
左袖にあるナツの洗濯バサミみたいな髪留めになりたい人生だった
いつもは右サイドテールに留められてんだぜ。まじで尊敬するわ。私なら一瞬で蒸発しちまう
ナツのASMR出ないかなぁ~
最近、長縄まりあさんのASMRを聴いて、ナツを想像しております。やっぱり喋り方ちげぇわ
ASMRと言えば、
今回は「完璧ぃ~」という言葉がよく頭の中を流れました
パフェっていいねぇ。好きだよ。ナツの次ぐらいに
ここまでほとんど無意識でしたが、お菓子関係で絡めてきていました、拙作
今後も、また遅れます
それと、時系列むちゃくちゃです。思いついた順です。ご承知ください
内容も矛盾しています。お目汚しでなければいいのですが……
長文駄文、お付き合いありがとうございます
最後駆け足でしたが、伝えたいことは伝えたので、
それでは、次も書く約束をして、お開きとします
はい、解散解散~