「ああ!くそっ!なんでこうもウチの部下ばっか狙われてんだよ!?」
「落ち着きなさい。今あなたが喚いたところで何も変わらないわ。」
「けどよぉ!?」
「お願いだから落ち着いて。今はゆっくりと策を練りましょう?」
「…………ああ、悪かった。スコール。」
「良い子、それでこそ私の恋人よ、オータム」
「はい、これ。」
「…………なんだこれは?」
「見てわからない?」
「ああ。」
シローは束にあるものを渡された。メモリーカードの次はUSBメモリー。そして、
「っと、そうだ。先に報酬の前払いをしておくよ。仕事が少し先になりそうだからねぇ。」
束がシローの端末に送信したもの。そこにはキキの写真。そして、ある組織の情報。
「その子も厄介な組織にやられたもんだねぇ。」
シローは奥歯を噛み砕かんとするくらい、噛み締めた。キキの家族を皆殺しにした組織は、亡国機業だったからだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
一夏はアリーナでセカンドシフトした白式・雪羅を使い訓練を開始していた。
(あの時の砲弾。あれがなかったら俺たちは確実に落とされてた)
一夏は歯を食いしばり訓練を続ける、セカンドシフトした白式に新たに搭載された武装。多機能複合武装腕・雪羅。
荷電粒子砲とクローが複合され、さらに零落白夜のエネルギー刃までだせる。指の個別稼働のクローモードと手刀状態のブレードモード。さらには遠距離の荷電粒子砲『月穿』。さらにはエネルギー無効化膜『霞衣』を装備している。さらにこれは有線で打ち出せる仕様らしい。
「はぁ!」
出現したターゲットを月穿で撃ち抜く。さらに背後のターゲットを雪片で切り裂く。
「最後は…………あそこか!」
瞬時加速でターゲットの近くまで移動。実体クローでターゲットを打ち抜く。
「はぁ、はぁ、まだたりねぇ!」
福音と最初に交戦した時の、あの砲弾。あれを撃ったのがラウラ達の話で、戦神だとわかった。
(全部!俺が!今度こそ!)
一夏はその時歯噛みした。一度あった時は落とされ、そして、福音の時は助けられた。
(次あったら、容赦はしねぇ!)
一夏はこの時はっきりと"白い戦神"シローを敵として認識した。この後、日がくれるまでアリーナに居続けた一夏で有った。一方。
(戦神…………。しかし、あの砲弾は戦神が撃ったもの。)
箒は、剣道場で、しないを振り続けて居た。福音の時は、あの砲弾に助けられたが。
(何がしたいのかはわからん、が、次は!)
箒も一夏と同じく、シローを敵と認識した。箒はもう一本竹刀を持ち、赤椿に乗っている時と同じ感覚で振る。
(ならば!もっと!)
この後一夏と二人で門限を過ぎたため、千冬の説教を受けた。
「やはりか…………。それ以上の情報は?」
『意外に政府のファイヤーウォールが頑丈ですね。もう暫くかかるかと。』
「そうか、引き続き頼む。」
ラウラはそう言って通信を切る。
「ふむ…………」
(やはり、アマダ少尉の情報は殆どあの時で途絶えている。篠ノ之 束と行動している可能性が高いな。それに加えて一夏からの情報…………いよいよ、きな臭くなって来たな)
ラウラは、少し考える仕草をすると、何かを決心したかのように、部屋を出る。
「あちらが先の先ならば、此方は後の先に徹する、そんなものがこのラウラ・ボーデヴィッヒに二度も効くと思うなよ」
そう言うと、自前の仮装コンソールを展開する。
(どこまでやれるかはわからん。クラッキング類は苦手だからな。)
ラウラはひっそりと一人で行動を開始した。そして、行動を起こすもの達はもう起こして居た。
08小隊隊舎。そこでは朝からコンソールを叩く音、甲高い電子音しか響いていない。全員の目はコンソールとディスプレイに向けられて居た。そう、08小隊の殆どの人員でクラッキングを仕掛けている。相手は日本政府。
(隊長がどこにいるか!)
(全力で調べ上げてやる!)
主な戦力は、シノン、キキ、そして08小隊の電子戦の天才二人組。一人は高木藤丸。ハッキングに関しては束に引けを取らない。専用ハッキングプログラム『ファルコン・エシュロン』を使いあらゆる箇所をハックできる。もう一人は、刻・インベルク。中学生でFBIにハッキングして、誰にも気づかれずに侵入痕跡まで消してのけたハッキングの申し子。この二人と、多少経験のあるシノン。もともと素質のあるキキで、ほぼ8割がた情報を抜き出している。
「はい、っと。全部の監視衛星の映像横流し準備完了っと。」
「こっちも、ある程度抜き出したヨ。後ある情報は全部ブラフかトロイの木馬って考えた方が妥当でしょ?あっ、侵入痕跡の消去は俺でやるから」
刻がタバコをふかしながら言う。藤丸もファルコンのUSBを引き抜く。後は映像を監視するだけ。何故監視衛星か。篠ノ之 束は確実に、知られたく無い時だけ監視衛星をハッキングする。ならば、映像を見て違和感があった場所の監視衛星を特定した方が、シローの居場所がわかる。そう彼らは踏んだのだ。
「さて、あのクソうさぎに一泡吹かせてやろうじゃん♪」
「さて、やるか!」
動き出した針は止まることは無い。誰かが止めようとしない限りは。
『マスター…………』
コアネットワークの中、その中でもEz8の領域である。その場所は言うなれば、荒地。いつでも満月が映える。その月に向かって岩が橋のように伸びている。その先端に一人の少女。小柄で灰色の髪が月光に映え、その顔は妙に大人っぽい。
『これが…………マスターの…………』
彼女の前には、黒い大きな何か。少女の身長をゆうに二倍は超えている、球状の大きな何か。そこから、声が聞こえる。誘うような声が。
『まだ…………ダメ……。でも…………もしもの時は』