「キキ、本当なんだね?あの日の帰り際、篠ノ之 束が織斑千冬と話して居たってのは。」
「うん、遠目で大体の口の動きしかわからなかったけど」
「あぁ、これで少しは…………」
「希望が見えて来たってもんだな…………」
「良しっと!なら、もう少し頑張りますか!」
「「「「「「「おお!」」」」」」」
08小隊の面々が密かに行動している頃。所変わってIS学園では、文化祭が行われていた。外部からも人間が来る大型の文化祭である。
「…………」
シローもこの中にいた。本来は彼が来ることなどなかったのだが、ある情報が入ったためにここに来たのだ。もちろん、光学迷彩でだが。
(さぁ、織斑一夏を張っていれば必ず出て来るはず。早く来い!)
そして、一夏とその手を握り、何処かへ入って行く金髪の女性。
(来たか!)
シローは、彼ら二人の後をつけるように移動した。
「ええ、この機会に白式をいただこうかと思いまして」
女、巻髪礼子はそう言うと背中から装甲脚を出現させる。反射で一夏も、白式を展開する。
「なんなんだよ!あんた!」
「うるせぇ!おとなしくしやがれ!ガキ!」
オータムと名乗った女は、アメリカの第二世代、アラクネを駆り、一夏を強襲する。
「このっ!」
アラクネの射撃をよけ、雪羅を有線で撃ち出す。
「あめぇんだよ!」
撃ち出されたそれを避け、ワイヤーを手で掴み一夏を引き寄せる。
「うわぁ!?」
「オラァ!」
装甲脚で思い切り、一夏を殴りつける。思い切り壁まで吹き飛ばされ、さらにエネルギーワイヤーで捕縛される。
「さてって、後はこいつを」
オータムが懐から何かを取り出す。円柱状の何か。先に蜘蛛のようにアームがついている。
「なんだよ…………それ」
「ああ?こいつか?こいつぁ剥離剤(リムーバー)つってな。こいつが起動すると操縦者とISが強制的に剥離されちまうんだよ」
オータムが剥離剤を一夏に近づけたその時。剥離剤がビームによって撃ち抜かれる。
「何!?」
「……誰だ?」
このタイミングでのビーム兵器。オータムが後ろを振り向くと、
「亡国機業のエージェント、オータムだな?」
「んだよ?」
「戦神…………」
一夏はほうけ、オータムは突然現れた戦神、シローに怪訝な顔をする。
「お前に一つ聞きたいことがある。」
「んの前によぉ、よくも良いところを邪魔してくれやがったな?てめぇで憂さ晴らししてやる!」
オータムはシローに向けて装甲脚の銃口を向ける。そこから弾丸が吐き出される。シローもバルカンと胸部機銃でその弾丸を撃ち落として行く。
「ちっ!ならこれだぁ!」
オータムが両腕にカタールを展開。装甲脚も交えて攻撃を加えて行く。
「ふん!」
シローもビームサーベルを両大腿部から抜き放ち、カタールと装甲脚をいなして行く。
(ちっ!厄介だ、あの出力と熱量じゃあ、アラクネのエネルギーワイヤーもすぐ切られちまう)
「オラァ!」
「おおお!」
装甲脚をオータムが突き出す。それをアクロバットな軌道でかわしつつ、その突き出された装甲脚を斬り飛ばす。
「ちっ!てんめぇ!調子にのんなぁ!」
先ほどよりも攻撃が激しくなる。シローもビームサーベルで対応して行くが、取りこぼすことが多くなり、徐々に攻撃を受けて行く。
「…………」
シローは不利と判断。一瞬の隙にオータムを蹴り飛ばし、距離を取らせる。さらにガトリングシールドを展開。続けざまにオータムに撃ち込んでいく。
「ちっ!オラァ!」
オータムも両手にマシンガンを展開、シローに向かって連射していく。シローも空いた片手にマシンガンを展開、壮絶な射撃の応酬が繰り返される。
「…………」
不意にシローがマシンガンを投げ捨てビームライフルを展開。さらにガトリングシールドのガトリングをパージ、ビームサーベルを抜き打ち回転させながら投げつける。
「あぁ!?今更こんなもんに当たるかよ!」
投げつけたビームサーベルは当然のごとく避けられる。当たり前だが投擲武器にFCSによる補助はきかない。別にシローは、当てようと思って投げたわけでは無い。真の目的は他にあった。
「もらったぜ!」
オータムがシローに突撃して行く。シローは冷静にビームライフルを構える。狙いはオータムではなく、今だ回転しているビームサーベル。
「ビームのエネルギーは?」
『余裕です!マイマスター!』
その言葉を聞くとシローは躊躇なく引き金を引いた。それはオータムのアラクネの側頭部をかすめてビームサーベルに当たる。そして、回転しているビームサーベルにより、ビームライフルが反射、拡散して、オータムを背後から襲った。
「な、なにぃ!?」
拡散されたビームにより、スラスターと装甲脚の何本かが使い物にならなくなる。
「はぁ!」
オータムが唖然としている間にさらに残りのビームサーベルで、残りの装甲脚をお釈迦にして行く。
「く、そぉ!」
オータムが苦し紛れにカタールを振るう。その腕をシローは容赦無く、一片の悔いなく斬り飛ばす。
「が、あああああ!」
「お前に聞きたいことがある」
シローはアラクネの顔全体を覆うメット上のパーツを掴む。そして、アラクネに画像が送られてくる。
「この家族、特にこの女の子を知っているか!?」
ヘッドパーツのしたで憤怒の表情を浮かべているシロー。束の情報に間違いがなければ、キキの家族を殺したのはオータムなのだ。
「このガキッ…………!あぁ、なるほどなぁ!敵討ちって訳か!いやぁ、良い声で無いてくれたぜ?あのクソガキの家族はよぉ!『助けて、助けて』ってよぉ!それもぉよぉ、あのクソガキの目の前で殺してやったんだよ!このアラクネでよぉ!あはは!久々に濡れちまったぜ!ぎゃはははは!」
一夏も唖然として居た。今目の前にいるオータムは、何の罪も無い普通の人間をISで嬲りごろしにしたのだ。
「そうか…………」
シローは答える。ひどく冷静で、ひどく冷淡な声で。
「貴様には生きている資格も無いとは俺には言えん。かと言って貴様は通常の法では捌けない…………だから、俺が裁く!」
シローが右腕を振り上げる。なぜそうしたかはわからないだが、唐突に右腕を振り上げた。すると、右腕に黒い粒子が集まる。武器を展開する時のミントグリーンの粒子ではなく、どこまでも黒い、闇色の粒子。
『マスター…………』
そして、コアネットワークのEz8コア人格の領域、少女が黒いものの前に立っている。
『私も…………戦います!』
少女はその黒いものに右腕を突き入れた。
「なんだよ…………あれ……」
黒い粒子が晴れるとそこには白い装甲には否応でも目立つ、右腕の三分の一ほどを覆うほどの大きさの黒いナックル上のパーツ。
「…………貴様の悪運もここまでだ、お前に悔い改める時間は…………やらない」
そして、ナックル上のパーツが、展開する。それは口を広げた獣。開かれたナックルの内側は金色の牙状の刃が、まるで、本当に口を広げた獣のようである。そして、それが超高周波振動し、獲物を喰らうため咆哮を上げる。
「何する気だ!」
一夏は叫ぶ。オータムは口を開け棒然としている。シローは一夏に、ひどく冷たい声で
「いいか、よく見ておけ」
シローはその咆哮を上げる牙を、振り上げ、
「やめろ…………」
「これが力と快楽のみを求めた者の」
オータムを真紅のツインアイで捉え、その下では冷たく睨みつけ、
「やめろぉぉぉぉぉ!」
「末路だ」
思い切り、その牙を振り下ろした。