IS 08小隊   作:elf5242

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第13話

「…………」

 

シローは物言わぬ死体となったオータムを無機質に見つめている。金色の牙からは血が滴り、シローの足元に血溜まりを作っている。そして、機体を金色の牙『アームドアーマーVN(ヴァイブレーションネイル)』で解体、コアを取り出し拡張領域に量子変換する。

 

「お前ぇぇぇぇぇぇ!」

 

シローのビーム拡散の恩恵で自由になって居た一夏は雪羅に零落白夜のエネルギークロウを展開、シローに向かって打ち出す。

 

「…………」

 

シローはそれを身を引いて避けた後に驚異的な反射神経で雪羅をアームドアーマーVNで横から掴む。そして、力を込めると雪羅がひしゃげる。

 

「嘘だろ!?」

 

「ふん…………」

 

そのまま先ほどのオータムと同じく、ワイヤーを引っ張り一夏を引き寄せ、そのまま踏みつける。

 

「かはっ…………!」

 

「しばらく眠れ」

 

シローは一夏にアームドアーマーVNを振り下ろした。だが、

 

「…………っ!」

 

それはあるものに防がれた。それは、水の塊。しかも相当の圧力がかけられている。

 

「…………」

 

だがその水の塊も、アームドアーマーVNが高周波振動を始めると、いともたやすく切り裂かれる。

 

「あら?そんなに手加減した覚えは無いんだけど?」

 

声が聞こえた方をゆっくりと振り向く。そこには一人の女性。ISを身に纏った状態だ。水色の髪に真紅の瞳。髪は外側に跳ねている。右手には巨大なランスを構えている。そして、周りには水色のクリスタル。それから水の膜のようなものが形成されている。

 

「…………」

 

「うーん、だんまりか。まあ聞きだし害があるからいいけど」

 

「た、楯無…………さん?」

 

IS学園生徒会長、更織楯無。彼女が学園内での一夏の護衛と指導を兼ねて居た。そして、今回の事は彼女が戦神、シローをおびき出すために利用したのだ。

 

「…………お前は?」

 

「名乗るなら自分からじゃ無い?」

 

「…………あいにく今の俺に名乗るべき名は無い。あえて言うなら…………化け物と言った方が正しいか。」

 

シローは、アームドアーマーVNの牙を収める。

 

「あら?どう言うつもりかしら?」

 

「どうもこうも無い。俺の目的は完遂した。帰る」

 

「あらそう?でも、こっちも建前上逃がすわけにはいかないのよねぇ。それにこの部屋暑くない?」

 

楯無が手で仰ぐ振りをする。シローは冷静にEz8からのオペレートを聞いていた。

 

『マスター、空気中にナノマシン反応。あと、この部屋の湿度が上がっています。』

 

「なるほど、耐え切れるか?」

 

『余裕のよっちゃんイカですね。』

 

「なら、爆風に紛れて逃げる。」

 

『イエス・ユア・マジェスティ!』

 

楯無は怪訝な顔をしながら、

 

「内緒話はいいけど、無視されるのはちょーっと嫌いかなあ〜?ねぇ?知ってる?人間の体感温度って「湿度に依存するのだろう?特に不快指数なんかはな」わかってるじゃない♪」

 

楯無が不意に指を鳴らす。シローは反射でナックル状態のアームドアーマーVNをシールドのように構える。その直後に爆発音が鳴り響いた。

 

「あらあら、」

 

シローはもうそこにはすでにいなかった。楯無がもの言わぬひき肉になったオータムを見つめる。あの牙は肉を裂き、骨を砕き、肺を貫き、心臓を両断し、おそらく牙の被害にあったのだろう、顔も復元不可能なほどにめちゃくちゃになっていた。

 

「…………っ!やっぱりひどいわね」

 

機体もめちゃくちゃ、搭乗者もめちゃくちゃ。コアも抜き取られていたとなれば、今回は戦神の、シローの一人勝ちだった。

 

「…………くそっ!」

 

一夏は、ひしゃげた雪羅を壁に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、まあ始末してくれたからイーブンかなぁ。」

 

束はラボ、"吾輩は猫である"(名前はまだない)でシローの映像を見ていた。束が見ていたのはあの金色の牙。

 

「でも、私はしっくんの機体にあんな武装は入れてない。考えられるのは…………。全く、どうして君はイレギュラーばっかりなんだろうねえ?」

 

そう言う束は、声は嬉しそうに、顔は好奇心と狂気に満ちた笑みを浮かべていた。

 

「まぁ、あの子のコアなら仕方ないか。だって束さんが最後に作ったコアだもん。一番大人で一番わがままなあのコアだもん」

 

束は椅子の上で軽く背伸びをする。

 

「さて、しっくんの機体のイレギュラーの正体は、まあ、これも束さんの予想に過ぎないけどね。多分、部分的で一時的なセカンドシフト。」

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、やはり戦神。しかしどうやってここへ?」

 

「それは今の所はわかりませんがおそらく光学迷彩でしょう?」

 

楯無と千冬が生徒会室で話している。一夏は今だショックから抜けられていない。

 

「しかし、何故?今までの情報から全て亡国機業が絡んでいるのは確実なんですが…………」

 

「亡国機業、やはりか。で?奴の目的とは?」

 

「現場から判断するに、おそらく亡国機業への復讐でしょうね。現に襲撃者がミンチになっていますし」

 

「そうか…………。一夏はどうだ?」

 

「やはりショックが大きいみたいですよ?」

 

「…………わかった。少し席を外す。」

 

千冬が生徒会室を出て行く。

 

「さて、戦神の正体、暴かせてもらうわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ…………はぁっ…………!」

 

シローはラボの自分に当てがれた部屋で、大量の冷や汗を流していた。

 

(やはりアレが原因なのか………!)

 

ベッドで右腕を抑えながら悶えている。見れば、白い手の甲を覆うガントレットが黒く変色し、装甲部分と生身部分の境目は血管が浮き出て、脈打つたびに奇妙に動く。

 

「…………っ!ぐぅ!…………はぁっ、はぁっ…………」

 

痛みが引くと一気に体力を失ったのがわかるのか、また大量の冷や汗を流す。服が汗で濡れ、肌に張り付く。

 

『マスター…………ごめんなさい…………』

 

「別に…………お前のせいでこうなったわけじゃ…………ぐぅ!」

 

またシローの右腕を強烈な痛みが襲う。まるで身体の、皮膚の下が食い荒らされているような痛み。

 

「ぐっ、うぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

『マスターぁ…………』

 

泣きそうな声でコア人格がシローに声をかける。痛みに耐えるのに必死なのか、シローには返す余裕がない。

 

「シロー様…………」

 

クロエがその様子を、ドアの影からそっと覗き込むように見ていた。だが、すぐに目を背ける。シローの耐える姿が、痛みに悶え苦しむ姿が見るに耐えず、背けてしまった。

 

「シロー様…………」

 

何かできることは、クロエは必死に考えるが、見つからない。結局、クロエには待つことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、」

 

朝になると右腕の痛みも治まった。一定感覚で痛みが襲ってくることもなくなった。

 

「…………、まずは…………この状態をどうにかしないとな。」

 

シローはまず、シャワー室に向かった。

 

「…………」

 

『マスター…………お身体は…………』

 

「問題ない」

 

シローは素っ気なく答える。そして、自分の右腕を見つめる。相も変わらず黒く染まったまま。だが痛みは引いている。

 

「…………気にしても仕方ないか…………」

 

シローは、この程度で立ち止まるわけにはいかなかった。もう彼は一線を越えてしまったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、」

 

コアネットワーク、Ez8の領域。コア人格の少女が黒いものの目の前に立っている。

 

「…………」

 

少女がそれに触れようとする。コアネットワークから他のコア人格の、やめろ、と言う制止の声が聞こえるが、少女は無視する。少女はくすんだ白の長袖のワンピースを着ていたが、今は右だけが真っ黒に染まっている。

 

「マスターのためなら…………。そうマスターが望むなら…………」

 

Ez8のコアは異例中の異例だった。まず普通のISコアは人間に一目惚れなどしない。ただただ自分達が強くなるために互いに利用し合うために和解するだけだ。そして、Ez8の特徴のもうひとつ、コアの中の自分の世界に、搭乗者の感情を溜め込むのだ。その感情の大きさにより、セカンドシフトの方向性が決まる。そして、第三の特徴が、コアネットワークの情報共有の対象外。正確には情報は吸収するが放出はしないと言う例外が起こっているのだ。

 

『マスター…………!』

 

また、少女は黒いものに向かい合う。

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