「はぁ、はぁ、なんなのよ…………あいつ…………」
「手も足も出なかった…………とは…………」
教師部隊は、情けなく機体ごと海に海藻のごとく浮かんでいた。シローとの戦闘は、もはや蹂躙のレベルだった。あらゆる火器を駆使され一人、また一人と落ちて行った。ちなみに、八人合わせて四分半で終わっている。一人三十秒ほどしが保たなかった計算になる。
「…………あれが戦神ってわけ?戦神なんてものじゃ無いわ」
「やはり、織斑先生に頼るしか無いのか…………」
教師陣は、自分の弱さと情けなさに歯噛みしていた。
(間に合え!間に合え!)
シローはEz8のスラスターをふかし、全速力である場所に向かっていた。
「ちぃ!出力が足りない!高速移動用パッケージ、ハイモビリティ、インストール!」
『イエス・ユア・ハイネス!』
Ez8にパッケージが追加される。背部に大出力ブースターユニットが追加され、胸の装甲も追加される。
「おおおお!」
先ほどとは、うってかわって倍近いスピードを出す。起動性能を徹底的に上げる、Ez8専用パッケージ、ハイモビリティ。
『マスター!目標地点まで、3、2、1!』
「減速開始!」
足底部のスラスターと大出力ブースターをふかし減速する。
「5、4、3、2、1、減速終了!パッケージ、ヘビーアームドをインストール!」
そして、またパッケージを換装する。両腰部に大型のビームキャノン。バックパックに大型のジェネレーター。膝部には地上での固定用のアンカー。殲滅砲撃専用パッケージ、ヘビーアームドである。
「カレンたちの位置は!?」
『すでに捕捉!全員無事です、現在三時方向に全員を確認!』
「ならいい!そこ以外に撃てばいいだけだぁ!」
腰部の大型のビームキャノンを戦場に向け、チャージし引き金を引く。
「ああぁぁぁ!」
砲身の冷却が済み次第撃ち続ける。下手な巡洋艦艦隊程度なら、三十分足らずで壊滅できるほどの大火力である。目の前の戦闘なぞあっという間だろう。
「おおおお!」
砲身の向きを変えて、再び引き金を引く。主力戦車やヘリなどから潰して行く。
「銃身が焼きつくまで撃ち続けてやる!」
のちの兵士の一人は、青い顔で「俺たちは二度と戦場には出ねぇ」と証言する。08小隊の面々がその蹂躙砲撃に只々唖然としていた。
IS学園の寮のある一室。
「これ…………」
一人の女子生徒がある映像を見ている。それはクラス対抗戦の時の映像。視線の先には、くすんだ白の全身装甲の機体。
「戦神…………」
彼女は見惚れていた。そして、同時に憧れを抱いた。自分もこんな風に慣れたら、そう思いながら見ていた。
「…………」
戦神に会ってみたい、彼女はそう思った。
「かんちゃーーん、お昼だよ〜?」
「…………今行く」
彼女は親友兼専属メイドと学園の食堂に向かうのだった。
「はぁ…………はぁ…………はぁ…………」
またシローの右腕を一定間隔で激痛が襲っている。あの日から毎日寝る前になるとこうなる。しかも、日毎に痛みは少しずつ、和らいだり、激しくなったりと不定期なのだ。
「ぐあっ、あぁぁぁぁぁぁ!?」
右腕を黒い粒子が集まろうとしては霧散し、また集まろうとする。
「うぐっ!?ぐっ、ぁぁぁぁぁぁ!」
激しく霧散しては集まる黒い粒子。それは着実に形になろうとしている。
「ぐぅ!?…………はぁ、はぁ、はぁ、」
日に日に痛みが激しくなる。そして、間隔が短くなる。
(こいつは…………マズイな。早くなんとか…………)
そう、部分的なセカンドシフト、それによりかなり不味いことになっている。まず一つはますます深くに一部分が食い込んでいること。もう一つは、シローの体力である。痛みに耐え続けているため、少しずつシローの体力は落ちているのだ。
『はぁ、はぁ、はぁ、』
コアネットワークのEz8の領域では、こちらも苦しんでいる。少女の右手にはあのナックル状のパーツ、『アームドアーマーVN』それが消えては現れ、また消えて行く。
『はぁ、はぁ、』
少女は黒いものを見つめる。それを仕切りに見つめては、また右腕に集中する。
『私は…………!』
少女は、目を閉じてさらに右腕に集中する。そして、はっきりとアームドアーマーVNが現れる。そして、二度と黒い粒子となり霧散することはなかった。
『マスターの道を阻むなら、たとえお姉様達でも!』
そして、右腕を思い切り振るかぶると、周囲の青い目が一掃された。
『私はEz8…………Ez8・アナイアレイト!』
コアは先に進んだ。全てを破壊する一歩先へと。
「しっくーーーん!お仕事の時間だよ〜〜?」
「…………言われなくても聞こえている、そんなでかい声でもな」
シローは悪い顔色を隠しながら、束に答える。
「さて、今回も、ゴーレムの護衛だよん♪」
「改良型のデータ取りか…………。いいだろう。しかし、護衛?」
「亡国いるでしょ?あれが来るかもしんないから、束さんとおんなじ方法でハックして暴走させるなんて簡単だからねぇ、コアネットワーク使えば」
「なるほど、暴走した場合の後始末、と言うわけか」
「そっのとっおり〜、頭が良く回るねぇ」
「早く済ませたい、さっさと行くぞ」
「まあ、早くしたいよね?よね?んじゃ、ちょっとまっ……ん?」
すると束の顔が険しくなる。
「…………どうした?」
シローが何かを察したのか、束の方を振り向く。
「…………落ち着いて聞いて。駆逐艦の艦隊が出撃してる」
すると、シローが目の色を変えて、束に迫る。
「何!?駆逐艦隊!?何処に!?」
「今の所はわかんないけど…………、このまま行った場合に行きつくのは、ココ。」
束が示した座標そこは、
「…………まさか…………」
日本軍極東基地、シローが元いた基地であった。