とある海域の上空。周辺には装甲の破片であろう物体が大量に浮かんでいる。そして、海上にいる艦隊。その艦隊が爆炎を上げていた。
「ひ、ひぃ!?」
「た、すけ、て…………」
司令室で、命乞いをする男たち。目の前には黒い機体。機体は大剣のようなものがついた左手を向ける。
「…………」
大剣が上下に展開し、上部分が継ぎ目からスライドする。そこから覗くのは紫色に輝くフレーム。そして、そこから雷状にビームが放たれる。そう、これがグリフィネスの左腕部の『アームドアーマーBS(ビームスマートガン)』。
「ひぃ!?」
「も、もう嫌だぁ!」
幾つかの艦が踵を返し、撤退しようとする。だが、
「逃げ?」
「あひ?」
一隻の艦が、横から6頭分され、極太のビームで消し飛ぶ。
「ま、まさか!?」
「あのデータに乗っていない無人機だと!?」
「じゃ、じゃあ打鉄二機はもう、」
彼らの言う通り、ガラッゾが相手をした打鉄とそのパイロットは情けなく海に浮かんでいる。全身が切り刻まれ、貫かれ、血を流しながら。
「な、何故…………こんな事に…………」
「やはり決まっているだろう!奴の正体は…………」
その言葉は続くことはなかった。シローは背中のウイングのようなユニットを艦隊に向ける。そして、それの装甲も展開する。そして、グリフィネス最大の武装、『アームドアーマーDE(ディフェンシングエッジ)』
「…………消えろ…………。」
そして、そのユニットからガデッサにも引けを取らないほどの大きさと出力を備えたビームが撃たれる。
「…………害虫駆除…………完了」
ユニットをもとに戻し、キキの元へと飛んで行く。
「キキ…………大丈夫か?」
「隊長…………?もしかして本当に隊長が…………?」
「…………ああ、そうだ。もう俺は一生こいつと付き合っていかないといけないらしい。」
「そんな…………隊長が…………」
シローはキキの頬に触れる。
「カレンに言っておいてくれ。すまないって」
「隊長は…………、隊長はどうするの?」
「俺は…………奴らをこの世から消そうと思う」
シローは背部のアームドアーマーDEを展開すると白式すら凌駕するスピードで飛んで行く。ガラッゾとガッデスも、それに続いて飛んで行く。
「隊長…………」
光を失った目でキキはその飛んで行った方向を見ていた。
「日本の軍が…………、壊滅…………!?」
「ああ、しかもたった四機だ。」
IS学園では、会議室に、専用機持ち全員が集められていた。もちろん全員が、シローに、Ez8にあったことのある人物ばかりだ。
「四機?僚機がいるので?」
「ああ、その映像がこれだ。起こったのは昨日の昼頃だとは聞いているな?これは監視衛星から取られた映像だ」
千冬がスクリーンに映像を映す。そこには艦隊を蹂躙する黒い機体とそれについて行くように追従する三機の機体。
「なんなんだよ…………!?あっちはほぼ無抵抗じゃねえか!」
「これは戦闘では無い…………蹂躙だ…………」
「火力差がありすぎるわよ…………、第一なによあれ…………、装甲がスライドするなんて聞いたことない…………」
「あの紫色の光を放つ部分…………あれも今まで見たことすらありませんわ…………」
「あの三機も、あの黒いのに負けないくらいオーバースペックだね。特にあのグレーの奴。」
「あの他にも、グリーンや水色のやつも危険だ。特に水色のあの菱形はな。グリーンのチャージ時間も目を見張るが。」
「…………」
それぞれが自分の見解を答えて行く中、簪だけがなにも答えない。
「更織、お前はどう思う?」
「別に…………、むしろ当然だと思う。」
一同がその言葉に唖然する。そして、一夏が机を叩きながら簪に迫る。
「人が死んでるんだぞ!?お前はなんとも思わないのか!」
「それが?」
「それが、って…………」
「映像の最初、見なかった?…………煙を上げてたのは艦隊ではなく、………その向こう側の建物、場所からして基地、………そこから上がっていたはず。なら、これは逆に戦神の正体を知るためのキーとなる。」
千冬が簪の言葉に眉を上げる。
「何故そう思う?」
「あの被害なら………生きてる人員はまず、いない。なら、ここまでする必要があるのはあそこの基地内の人員だけ。それならかなりの数が絞れる。後は………消去法に頼るしか無い」
簪は、冷静に答える。一夏は簪にさらに迫る。
「そうじゃねぇ!なんで人が死んでんのに、んな言葉が吐けるかって聞いてんだよ!」
「死なない人間なんていない」
「あんな理不尽に死んでもか!?」
「是非もなし、死んだ人は生き返らない。それはあっちもこっちも同じ」
簪は踵を返すと会議室を出て行く。
「おい、更織、話は終わっておらん。」
「どうせ国からの無茶な要望。あのスペックなら数の理なんてあってないようなもの。下手したら全員死ぬ。」
「死ぬ………?なに言ってんの?ISには絶対防御が………」
「グレーの機体の手のスパイクに見えにくいけど紅いものが見える。多分、血痕。その事から全員が絶対防御を貫通してなお操縦者を殺しえる殺傷能力と出力を持った武装を所持していると言うこと。つまりは四対七でも、お姉ちゃんが入って四対八でも確実に死ぬ。教師部隊が死ななかったのが奇跡。」
「だから、俺たちがやるんだろ!これ以上死人が増えるのを防ぐために!そのために訓練だって!」
「殺しあったことも無い人が?死にかけたことすらない人が?」
「なに!?」
「戦闘で人を殺したことがある人と無い人では圧倒的にある人の方が有利。ある人は手加減をしなくていい。そのためにいつも通りの力が出せる。ないひとがそれを制圧するには相手の倍以上の経験値が必要。織斑君?あなたにそれがあるの?」
「だから!」
「少なくても相手は軍人。しかも少なくても人を一人二人は殺めてはず。しかも、相手はこっちを本気で殺しに来るかもしれない。しかもこちらの武装は全部、出力はあれのビームの10分の1以下にも満たない。それでいて、あっちにはこちらを上回る経験がある。ISが強いんじゃ無い。乗ってる人が強いだけ。さっきも行ったけど教師部隊が生きていたのは、本当に奇跡。奇跡はそう簡単に何度も起きない。」
「「「「「「………」」」」」」
「更織、それは私が入ってもか?」
千冬が挑戦するような目で簪を睨む。だが簪は割と冷静に。
「はい、おそらく一番最初に殺されるでしょう。おそらく全員が疲弊すれば殿役となるつもりなのでしょう。織斑君も見てるんでしょ?あの爪が絶対防御を貫通するのを。ならもうあの機体の前で絶対防御は紙屑同然。」
簪はドアノブに手を掛ける。そして、去り際に。
「まあ、あなた達がどうするのかは、見届けて上げる」
そう言って簪は、会議室を出て行く。
「…………っ!」
簪にろくに反論出来ずに、論破された一夏は会議室の壁を殴る。
「…………やはり私がいても…………か。」
「どうすんのよ………、この話本当なら………」
「…………一人や二人は…………死人が出るな」
「最悪…………全員が…………」
すると、一組の副担任、山田真耶が慌てた様子で入ってくる。
「お、織斑先生!これ!」
「どうした山田君…………、これは…………!?」
そこに映っていた映像は、日本の駆逐艦隊を壊滅に追い込んだあの黒い機体が、
『て、てめぇ…………一体………』
「名乗る必要も無いだろう?どうせ死ぬのだから。」
IS学園の地下で
『ぜ、全員急いで逃げ!?』
「もう遅い」
アメリカの"地図に無い基地"(イレイズト)の特殊部隊を、
「…………ふん、」
肉塊に変えた瞬間であった。