一夏達は食い入るように映像を見ている。もちろんこれはリアルタイム。つまりこの状況は現在進行形で起きている。
「千冬姉!早くいかねえと!」
「生き急ぐな馬鹿者!今行ってお前になにができる!」
「あの人を助けることぐらいは!」
「もう無理だ………。」
ラウラがポツリとつぶやく。
「…………ラウラ、どう言うことだよ?」
「これを見ろ」
一夏は映像を見る。それはアメリカのファングクエイクの頭部がアームドアーマーVNに砕かれる瞬間だった。
「…………ぁあ…………!」
一夏の表情が絶望的になる。また間に合わなかったと、自責の念で一杯になる。
「…………行きましょう…………織斑先生。姉さんに頼んで全員のリミッターを解除してもらえば」
「外さないよ?」
突然の声に全員が振り向く。視線の先には束が会議室の窓に座っていた。
「姉さん!?」
「束…………なんのようだ?」
「うーん?いやぁ、愛しい親友、それに愛する妹に少しだけ、ね。」
束はポンと降りると、思い切り両手を広げて言い放った。
「ちーちゃん、私はちーちゃんに前聞いたよね?この世界は楽しいか、って。」
「ああ、そしてお前はつまらないと答えたな?」
「うん、けどね、束さん思ったんだ〜。嫌いなら自分の好きなようにまた作り変えればいいじゃない、って」
「ね、姉さん………?」
「束さん………………なにする気だよ…………?」
「んー、ちょっと黙っててくれないかな?対した反応も示さない、下賤のクズ。」
「なっ!?」
「束………………?」
束は満面の笑みを浮かべると、こう宣言した。
「箒ちゃん、ちーちゃん。私はね?………全世界に宣戦布告することにしたよ。世界が変わらないなら、作り変えちゃえばいいんだから。クーちゃん?」
束は指を鳴らす。そして、後ろから現れたのはクロエ・クロニクル。
「すみません、箒様と一夏様以外は、現の夢を。目が覚めた時には、全て終わっておりますゆえ」
「…………」
またぐしゃり、と嫌な音が響き、肉塊がうまれる。血黙りと肉塊の中には一機の黒い機体。
「…………何の用だ?」
『箒ちゃん、否、ダメな妹とクズがそっちに向かったからさ。教育よろしく。現実を叩き込んであげてよ?』
「どこまでやっていい?」
『うーん?まあ、ダメージレベルEぐらいまでなら痛めつけてもいいよぉ〜』
「了解した」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
束との通信を切った瞬間に、一人の少年兵が飛び出してくる。
「…………あの時の…………俺と同じか…………」
シローは少年兵の頭を掴むと、
「俺みたいなのは、俺一人で十分だ。生まれる時代を間違えたな。」
そのままアームドアーマーVNで切り裂いた。
「命日には………俺が花束を送ってやる。すまないが、それで許してくれ」
そして、シローの背後から音がする。振り向くと、そこには白と赤。
「来たか…………」
シローは、二人を見据える。
「お前は…………!絶対逃がさない………!」
「ここで、落とす!お前は…………危険すぎる!」
一夏と箒がそれぞれ刀を向ける。
「…………」
シローは無機質に二人を見つめると、右腕のアームドアーマーVNをナックル状態でダラリと下げる。そして、左手で挑発する。
「…………ぉおおおおおおおお!」
一夏が瞬間加速で、一気に距離を詰めにかかる。そして、零落白夜を展開した雪片で斬りかかる。
(いける!)
そして、
「…………え?」
「……………なん…………だと?」
次の瞬間にはなにが起こったか二人は理解出来なかった。いつの間にか一夏は壁に叩きつけられていたのだ。零落白夜も解除され、絶対防御も発動している。
「……………この程度か?」
右腕を振り、余裕を見せる。そして、一夏は自分の頬に痛みが戻ってくるのを感じる。そして、一夏は理解した。自分は、あのナックルで殴り飛ばされたのだと。
アームドアーマーVNには二つの意味がある。まず一つは展開した状態の牙『ヴァイブレーションネイル』そして、もう一つは、このナックル状態で殴り、共鳴振動により外部内部両方を破壊する『ヴァイブレーションノックナックル』である。
「…………さっさと起きろ、これは俺の持論だが、兵士を育てるには躾ではなく調教が一番だと俺は思う。さあ、こい。存分に、好きなだけ、殴り飛ばしてやる」
「…………うぉおおおおお!」
「ふん!」
瞬間加速を使い、距離を詰めるも、また殴り飛ばされる。そして、壁に叩きつけられている。
「どうした?こないのか?」
「なめんなぁぁぁぁ!」
一夏はまたシローに向かっていく。そして、またゴム毬の様に殴り飛ばされ、壁に激突する。
「はぁ、はぁ、はぁ…………うぉおおおお!」
「歯ぁ食いしばれぇ!」
またアームドアーマーVNで一夏の頬を思い切り殴り抜ける。そしてゴム毬の様に派手にバウンドして壁に激突する。
「はぁっ、はぁっ、まだまだぁ!」
「とぉりゃあ!」
また同じことを繰り返す。殴り飛ばされる度に絶対防御が発動する。
「ぜりゃぁぁぁぁ!」
「むん!」
また殴り飛ばされ壁に叩きつけられる。それでも諦めずにシローに突っ込んで行く。
「だぁぁぁぁぁぁ!!!」
「この馬鹿野郎がぁ!」
またもや、殴り飛ばされる。スラスターもエネルギーもボロボロである。
「はぁ……………はぁ…………」
「どうした?終わりか?」
一夏が来ないのを確認するとシローは今度は自分から近づく。
「ふん!」
「ぐあっ!?」
一夏の側頭部を踏みつけ、踏みにじる。
「一夏!?貴様ぁぁぁぁ!」
箒が激昂し、シローに二本の刀を構え、突撃する。
「…………ふん!」
振り下ろされたその二本の刀は、シローの左手の人差し指、中指、薬指の三本指で白刃取りのように止められた。
「何!?」
「…………こんなものか…………ふん!」
そこにアームドアーマーVNを振り下ろす。枯れた枝の様に軽い音を立てて、二本の刀が真っ二つに折れる。
「なっ…………!?」
「お前は邪魔だ…………」
アームドアーマーVNで箒も殴りつけ、向かい側の壁に吹き飛ばす。
「10トントラックコンテナだぁ!」
近くにあったコンテナを蹴り飛ばし、箒にぶつける。
「少しばかり、痛い目を見ようか………」
そして、アームドアーマーBSを展開し、最低出力で撃ち込む。
「箒……………てめぇ…………!」
一夏はシローを睨みつける。シローはヘッドパーツの下で冷たく一夏を見つめている。
「ふん!」
「がぁ!?」
側頭部から足を離し、その足で一夏を蹴り飛ばす。
「さぁ、来い。お前の敵はここにいるぞ………!」
シローは両手を広げる。
「お前は!なんで理不尽に人を殺す!?」
「それ以外の何かを知らないからだ。」
「他の方法があっただろ!?」
「なかったからこうしている!」
「復讐なら殺さなくても痛めつけるだけでいいだろ!?殺す必要がどこにある!?」
「あいつらが浮かばれないからだ!お前も一度なくしてみればわかるっ!こんな具合にな!」
シローはもう一度アームドアーマーBSを箒が潰されているコンテナに向け、引き金を引く。
「てめぇ!」
零落白夜を発動し、そのビームを打ち消す。
「お前は間に合ったな?だが俺は間に合わなかった。あいつらが浮かばれるには血で血を洗うしかない!上から偉そうにものを言うなぁ!」
シローはアームドアーマーVNを展開して、一夏に襲いかかる。オータムを切り裂いた時とは違い、熊手の様な形状ではなく、獣のアギトの様に上下に展開したままで。
「あぐっ!?」
「いいか!所詮、この世は一枚のカードの裏表!光があるから影がある!貴様は所詮光しか見ていないガキだ!何の事は無い、突き詰めて行けば、今のこの戦闘もガキのお遊びさ!所詮貴様らがやっているのは戦争"ごっこ"!命を玩具にしているくだらないお遊びだ!本物の命のやり取りが、どれだけ辛いか、お前にわかるか!?毎日毎日、殺したやつの顔が夢に出て来る苦しさがわかるか!?だからお前はいつまで立ってもガキなんだ!」
「人が人を殺すのはいけないことだろ!なんでお前は敵としてしか見ないんだよ!?同じ人間だ、いつかは必ず分かり合えるはずだ!」
「またお前はぁ…………そんな綺麗事をいつまでもぉ!」
シローが一夏を蹴り飛ばすと、グリフィネスの姿が一変する。全身の装甲がスライドして行き、紫色の光を放つフレームが現れる。
「もういい!貴様がそう言うのなら!俺はもう手加減はしない!
俺と戦いたいんだろう?そうしないと進めないのだろう?進む術も知らんガキが、罪にとらわれるのが怖いから、人と違うものになるのが怖いから、疎まれるのが怖いから!………分かり合える?ふざけるな!ふざけているのは貴様だ!」
そして、最後にヘッドパーツが展開する。そして、Ez8の名残の紅いツインアイが特徴のヘッドパーツにかわる。そして、マルチブレードアンテナが展開する。
「貴様はガキだ!生まれてから何も成長せず、学ばず、変わっていない!弱っちいままのガキだ!さぁ、来い」
シローはアームドアーマーVNを展開し、構える。一夏はシローを激しく睨んでいる。
「クソガキ!」