「この大馬鹿者どもがぁぁぁぁぁ!」
基地の訓練場にしわがれた怒声が響く。放った本人は今、ものすごく咳き込んでいる。
「貴様らのせいで、わしは本部にものすごく怒られたのだぞ!」
老人は、紙の束を持ちながら、怒声を浴びせている。全部隊全員が罰の悪そうな顔や、苦笑いを浮かべている。
「ちなみにこれは、本部から提出された私等の報告書じゃ、が………」
老人は笑みを浮かべ、ライターを取り出し、
「こんなもん、糞食らえじゃ。」
紙の束を燃やす。そして、大声で宣言した。
「やりたいこととやるべきことは好きなだけやれ!自分の好きなようにな!それが私等、極東前線基地。通称"自由の大隊"じゃ!」
「「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」
「はは、流石は基地指令だねぇ。」
「あの人だからこそみんなをまとめられるんだろうな」
「しかし、俺たちに休みはありませんね。隊長。」
シロー達は基地司令に呼び出されていた。
「08小隊、シロー・アマダ、カレン・ジョシュア、テリー・サンダース三名入ります。」
「きおったな?」
そこには先ほどの老人が座っていた。この人がこの基地の総司令官。マカロフ。生粋の軍人である。
「で、お話とは?基地司令?」
「お前達、IS(あのクソみたいな兵器)の初の男性操縦者が出たのは知っているな?」
「まあ、一応端末では」
シローは口調を変え、たんたんと答える。
「で?あのガラクタの男性操縦者がどうしたってんだい?もしかして、他の奴もいるかもだから適性検査受けろって?この基地の誰もやりはしないよ?」
「それが、日本のクソど………お偉いさんがどうしてもやれって聞かなくてのぉ、腹いせに会議室の扉を殴り飛ばして帰ったやったがの」
「「「うわぁ…………」」」
三人ともドン引きである。特に幼い頃からマカロフに鍛えられている三人はその拳の恐ろしさを身を持って体験している。何せ、反政府ゲリラ組織をゲンコツだけで壊滅させたのだ。
「それで、国としてはなんと?」
「拉致があかんと、国際IS委員会(クソ野郎どもの集団)が直接介入してきおった。本当にスマン。お前達の精神的外傷を抉る結果になってしまった。ワシの責任じゃ」
悔しそうな表情を滲み出させるマカロフ。
「で?もしですけど、適正者がいた場合は?」
「おそらく、国としてはIS学園(あの掃き溜めみたいなところ)にぶち込む気じゃろう。」
三人が顔をしかめる。IS嫌いなこの基地内の人間にとって、IS学園という掃き溜めに好き好んでいくものなど塵一つとしていないだろう。現にこの基地にISコアは配備されていない。基地司令を含め全員が首を横に振ったのだ。
「それで?用はいても黙ってりゃ良い。しかも、要件はそれだけじゃ無いんだろ?ジジイ」
「まあ、お前ら。というよりはシロー、お前さん個人に客じゃ」
すると、司令室に一人の人物が入ってくる。それは以前模擬戦をした人物だった。
「名乗り遅れた、ドイツ軍特殊部隊シュヴァルツァハーゼ(黒兎部隊)隊長。ラウラ・ボーデヴィッヒ、階級は少佐だ。」
「日本軍極東基地所属、第八多目的特殊遊撃部隊、通称"08小隊"隊長シロー・アマダであります!階級は少尉!」
「同じく、日本軍極東基地所属、第八多目的特殊遊撃部隊、08小隊所属、副隊長、カレン・ジョシュアだ。階級は軍曹」
「同じく、日本軍極東基地所属、第八多目的特殊遊撃部隊、08小隊所属、テリー・サンダース。階級は同じく軍曹」
互いに挨拶を交わす。だが、カレンとテリーの視線は明らかに敵意を向けている。
「流石は、日本最強の部隊。噂は本当だった、というわけか」
「噂?」
「知らないのか?貴様らは、累計のIS撃破数がどの部隊よりも多いのだろう?裏ではアンチ・IS部隊か?とまで言われている。大抵の軍人が、移動するならここがいいといっているほどだぞ?」
ちなみに08小隊。稀に紛争鎮圧などに駆り出されているが、シローが隊長に就任してから犠牲者が殆ど出てない。
「私も有意義な模擬戦が出来た。まさかあんな戦い方があるなんてな。自分を見直す良いきっかけになった。礼を言う。」
そして、ラウラが手を差し出してくる。正直三人はかなり戸惑っていた。今まで様々な部隊と模擬戦し、大抵は突っぱねられていたのだ。
「あ、ああ。」
戸惑いつつも、なんとかその手に応じるシロー。正直殆どそういった経験が無いのかなにも言うことはない。
「ふむ、今度はうちの服官も連れてくるか。非常に素晴らしい」
「こ、光栄です」
三人がラウラに抱いた感想は。「「「つくづく変わったやつだ」」」だった。
うって変わって次の日。基地内の全員が殺気立ち、同時にノイローゼになっていた。中にはブツブツとうわ言をつぶやいていたり、嘔吐抑止剤を飲んだり、はたまた青酸カリやトリカブトで自殺を図るもの、はたまた自室でリストカットをするものまで出てきた。彼らがそこまでの反応を示すものそれは…………
「次の人!さっさとして!」
そう、国が総力を挙げてやっているISの適性検査である。
ちなみにカレン、その他女性隊員はパスである。
「ゴメン、あの時初めて女でよかったって思ってるよ」
のちのカレンはこう言ったという。
「はあ、なんでこんな事に…………」
「嘆いていても仕方ないさ、テリー。一瞬触るだけだそれくらいなら耐えれるだろう?」
かと言うシローも手は爪が食い込むほど握り締められている。すると検査員の女性が
「しばらく用事で離れるから、進めておいて」
そして、検査員の女が離れる。
「ほら、さっさと済ませようぜ?こんなもんの前にいるだけでも吐き気がしやがる。」
「おお、そうだな。おっと、触った手はちゃんと洗えよ?」
「だな。」
次々と触り、さっさと基地内に入っていく。ちなみに今のところ結果はゼロ。
「さて、残りは俺たちだけか」
「早く済ませてしまいましょう。」
テリーとシローが鎮座しているIS、ラファール・リヴァイヴに触れる。テリーにはなんの反応もなく、そのまま手を離す。だが、シローの方に異変が起こった。
「ぐっ………!?」
「隊長!?」
シローの頭を激しい頭痛が襲う。そして、頭の中に声が響く。
『この人だ、この人が私のマスターだ!』
「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁ!」
「隊長!?くっ!?」
テリーが急いでシローをラファールから引き離す。だが、シローはそのまま気を失っていた。
「隊長!」
08小隊の面々が、外に出てくる。
「お前達!慌てんじゃないよ!さっさと隊長を医務室に運ぶよ!」
『マスター…………、早く貴方のために…………」
「へぇ?おかしいね〜。でも面白い反応。」
あるラファールの異変を見ていた一人の人物。その人物の頭には未知への好奇心しかない。
「まさか"コア人格が人間に恋をする"なんてね。しかも、完璧な一目惚れ。」
フフフ、と笑いながらその人物は続ける。頭のうさ耳を揺らしながら。
「これだから、アンノウンは面白い」