今回はガラッゾ無双です。異論は認めません
アメリカのラスベガス、否、ラスベガスだったと言えるだろう。そこはたった今戦場になったのだから。
「いたぞ!隊長!奴を"ガラッゾ"を発見しました!」
「いいぞ!いいか、フォーメーションで仕留める!」
「「「了解!」」」
四機のラファールがグレーの色のガラッゾに向かって行く。ガラッゾはラファールの方を向くと、
『…………』
左手を突き出して半身になり、指を曲げて挑発する。ラファールの小隊は、ガラッゾを囲む様にフォーメーションをとる。
『全員!はなてぇ!』
全員がマシンガン『ラピッド・ラビット』、アサルトライフル『レッド・バレット』、ショットガン『レイン・オブ・サタディ』などをガラッゾにむけ、一斉に放った。四方向からばら撒かれる弾丸がガラッゾを襲う。小隊も良く訓練されているのか、フレンドリーファイアが一切ない。
「このっ!このっ!」
「オチロオチロオチロオチロ!」
それぞれが必死に反撃の隙を与えまいと引き金を引く。そして、うち一人が。
「これでぇ!」
シールドの装備されている右腕を大きく引く。シールドが炸薬でパージされるとそこにはパイルバンカーがあった。第二世代屈指の威力を誇る69口径パイルバンカー『灰色の鱗殻(グレー・スケール)』通称"盾殺し"(シールドピアース)。それが容赦無くガラッゾに叩き込まれる。だが、
ーーーガクンっーーー
その瞬間、灰色の鱗殻を叩き込んだパイロットの機体が大きく揺れる。敵の状況は着弾の煙で見えない。小隊の不安を他所に煙が晴れると。
『……………』
「…………えっ?」
「そんな…………」
「馬鹿な……………パイルバンカーが…………」
「あり得ないわよ!?こんなの!」
本当に通常の機体ではあり得なかった。ガラッゾは"灰色の鱗殻"の杭が打ち出される前にその杭を掴み、固定したのだ。そうすればどうなるか、杭ではなく、機体が動く。機体が大きく揺れたのは、反動ではなく炸薬で自信が動かされただけ。
だが、それだけじゃ無い。あれだけの弾丸を食らって起きながら、ガラッゾの装甲には傷ひとつついていないのだ。
「馬鹿な……………無傷、だと……………!?」
「あれだけ撃って…………、そんな…………」
「くっそぉおおおお!」
一人がアサルトカノン『ガルム』を向け発砲する。するとガラッゾの手と足の装甲がスライドする。そして、ガルムから放たれた、その弾丸は、スライドした装甲から覗く紅い部分から発生する、紅い光を発する粒子の膜の様なものに遮られた。
「まさか…………今ので……………」
小隊の一人は、隊長らしき人物は察した。間違った方向に。確かに全ての弾丸をあの膜で防御したのだろう、だがあの特殊な膜で防御する必要があるほど、あの機体の防御力は低い、そう考えた、考えてしまった。
「………………いや、いける!私たちで隙をつく…………る?」
小隊の隊長の顔がやけに明るく照らされる。その胸には光の刃が後ろから貫通する様に刺さっていた。
「………………あぁあああああああ!」
「「「隊長!?」」」
「嫌だぁぁぁ!助けて!死にたくないぃぃ!あづい!あづぃぃぃぃぃ!」
貫かれた胸に手を当てるがその手がビーム刃で蒸発する。
「ああああああ!手が、手がぁぁぁぁぁ…………」
小隊の隊長は手が蒸発したことにもがくが、すぐにうなだれる。
一方ガラッゾはゆっくりと死ぬ様に指から生えるビームサーベルの出力を調整していた。無人機で有るにもかかわらずだ。
「お前ぇ!隊長を離せぇぇぇ!」
一人がもう一度、"灰色の鱗殻"をたたき込もうと突撃する。
『……………』
ガラッゾは反対の手の五指からビームサーベルを展開し、その一人に向かって薙ぎ払う。そして、隊員の腕が縦に灰色の鱗殻ごと五等分される。
「あぁぁぁあああああ!?」
一人の腕が縦に、チーズの如く切り裂かれる。腕から夥しいほどの血液が溢れ出す。ガラッゾは重要な血管を傷つけない様に切り裂いていた。わざと、まだ戦闘不能にために。
そして、ガラッゾのハイパーセンサーから生体反応が一つ消えた。ガラッゾはつまらなそうに一瞥すると、突き刺していたビーム刃を消し、物言わぬ遺体となったそれを建物の外壁に叩きつけた。
「よくもぉぉぉぉ!」
「こんのぉぉぉ!」
二人同時に、ガラッゾに踊りかかる。ガラッゾは両手の甲に装備されている、打突用のスパイクを構え、それに薄くあのフィールドをはり、二人の溝に打ち込む。
「あぐぁ!?」
「ぐぼぉ!?」
絶対防御を貫通して、拳が二人の溝に入る。スパイクは当然突き刺さっており、腹からは血が流れている。
「ひぃ!?」
突き刺さっているスパイクを引き抜き、両の手の指先からビームサーベルを展開し、それを二人に向けて網目状になる様に振るった。文字通りの微塵切りである。
「あ、ああ、ああああああ」
『弱い』
最後の隊員は理解できていなかった。誰が喋ったのかすらも。
『貴様ら、揃いも揃って弱すぎる。姉上や妹達が不憫だ』
そう、話していたのはガラッゾ。正確にはガラッゾのコア人格。
『じゃあな、人間。お前達抜きでも私たちは空へ行ける。』
ガラッゾはその手を振り下ろした。
瓦礫の山と化したラスベガス。その中で腕組みで浮かんでいる機体が一機。先ほどのガラッゾだ。
「いたなぁ!」
一機の打鉄がビルの屋上から斬りかかる。それをガラッゾは振り向きもせず受け止める。
「はぁ!」
足で蹴りを放つ。それをスパイクで殴り返す。
「おい!やめろ!お前だけで勝てる相手では」
「うるさい!」
仲間の注意も聞かずに、再びガラッゾに突撃する。すると、ガラッゾは組んでいた腕をとき、右腕を軽く曲げて、ビームサーベルを展開。突撃して来た打鉄の心臓のど真ん中に突き刺す。
「………………は?………ぐぼ、」
吐血しながら、自分の状況を確認する。ガラッゾのビームサーベルが心臓に突き刺さっている。
「あぁ!?」
「新入り………馬鹿が………!」
ガラッゾが右腕を振るい、まるで邪魔なものを払うように、打鉄を振るい落とす。
「新入り!新入り!」
「ダメだ、もう死んでる………」
打鉄の小隊は、新入りの隊員の死をいたみ、ガラッゾを見上げる。ガラッゾは首だけを前後に動かしながらこちらを見ている。まるであざ笑うかのように。
「くそったれ!こうなったら!」
「あれをやる!」
「ここで無様におちろ!」
『『『EXAMシステム、スタンバイ』』』
ガラッゾのコア人格は内心ケタケタと笑っていた。
『人間って…………弱えなぁ』
打鉄はEXAMシステムを起動した後、ガラッゾに踊りかかる。
「ここで仕留める!」
「捕獲なんざ糞食らえ!」
「しねぇ!」
だが、三人は見た。ガラッゾが紅く輝いた後に、消えたのを。
「何!?」
「何処に!?」
「………あそこか!」
ガラッゾは三人より少し離れた場所にいた。そして、打鉄三機が再び踊りかかろうとした時、三人の目線が急に下がる。それは止まることなく落ちていく。三人が最後に見たのは、宙に浮かんだままの自分の下半身だった。