「はぁ……………はぁ、やられたわ」
楯無は日本海近郊を、情けなく浮かんでいた。機体はエネルギーは持つが、いかんせん、体が言う事を聞かない。
「まさか、とったのが、装甲の一部分だけって……………」
楯無が手に握っていたのは、グリフィネスの全く取っても支障のない外部装甲だった。
「シャル!目を覚ましてくれよ!」
「私は正気だよ!一夏ァ!」
雪片弐型とビームサーベルがぶつかり合う。
「なんで!」
「もう私には、何もないからね!」
一夏を押し切り、ランチャーで殴りつける。
「ぐあ!?」
「言ったよね?私は投降しろって!」
ランチャーの引き金を引く。ガデッサのランチャーは通常は大型の3連装ビームライフルとして機能する。そして、砲身を展開することにより、チャージが可能なメガランチャーになる。だが、シャルロットのガデッサは違う。砲身が一本増えて、4連装になり、4連装ビームライフルとして、ビームガトリングとして、そして、砲身を展開してのメガランチャーとして、そして、もう一つ。
『シャル様、』
そこに巨大な白い機体が来る。あいも変わらず機体からは声が聞こえるが、一夏にはノイズしか聞こえない。
「デヴァイン?来なくても良かったのに」
『マスターには時間がありません故、マイスターから、"早めに織斑一夏を落とせ。"との事です。』
「ちぇっ、まあ、いいや。もう少しお話ししたかったけど。もうお別れだね、一夏?」
一夏は直感で、シャルロット、ではなく、白い巨大な機体、エンプラスと、そのコア人格"デヴァイン・ノヴァ"に斬りかかった。
「どりゃあ!」
『むっ、邪魔をするな!』
左右のクローから、ワイヤーを撃ち出す。
「んなもん!」
雪片でそのワイヤーを切り裂く。
「どけぇ!俺はシャルに用があんだ!」
『シャル様にお目通りしたくば、私を倒してからにするがいい!』
エンプラスのクローと白式の雪片がぶつかり合う。
「どけっ!」
エンプラスに雪羅の荷電粒子砲を向ける。エンプラスも自身の口のような部分を展開して、そこに粒子を収束させる。
「この!」
『落ちろ!』
荷電粒子砲とビーム砲が同時に火を噴く。
『ぐう!?』
「あう!?」
「デヴァイン!?」
シャルロットがデヴァインのエンプラスに駆け寄る。
「確かに時間はかけられないね。一気に行くよ!」
『御意!』
エンプラスが左右のクローを変形させ、シャルロットのガデッサの背中に接続する。シャルロットのランチャーが展開する。通常のメガランチャーのような、砲身がレール状に展開するのではなく、アンテナのように展開する。
『エネルギー、正常加圧中』
「OK、行くよ!」
4本の砲身に紅い雷が迸る。そして、砲身がヘリのローターのように回転を始める。
「ハイメガランチャー、ファイア!」
「クッソォ!」
紅い竜巻のようなビームが、一夏を飲み込んだ。
「あっはははは!楽しいねぇ!ちーちゃん!」
「くっ!?」
一方、IS学園アリーナでは、千冬と束がぶつかりあっていた。
「そらそら!後ろがお留守だよ!」
シールドから紅いフィンアーマーが切り離される。それが千冬を四方八方から襲い来る。
「この程度!」
暮桜の雪片を一閃、二閃、三閃と振るい、フィンアーマーを両断していく。
「束……………お前は何が望みなんだ!」
「言ったよ?ただ、こんな間違った世界を作り直すだけだって!」
ビームサーベルと雪片で撃ち合う。
「確かに、お前が作ったこれが間違った使い方をされているのは事実だ。だが、それほど急ぐことでもなかろう!」
「その必要があるからこうしてるんだよ!ちーちゃん!」
腕部に直結されたバスターライフルを撃つ。
「どういう事だ!?」
バスターライフルを避けながら、束に問いかける。
「もう私は死ぬほど待った。"いつか本当の使い方をしてくれる"そうなったらまた出て来てコアを作ろうと思ってた。でも、全然だった。兵器としての面しか見てない、こんな世界なんて大っ嫌い!だから私が正すんだ!この"リボーンズ"で!」
片手で大出力のビームサーベルを振るう。
「くう!?」
それを雪片で受け止める。だが、拮抗したのも一瞬。出力差により、押し負け始める。
(まさか……………束がこれほど強かったとは……………)
「この程度で驚かないでよ!とっておきのファング!」
背中の紅い砲身のような部分が分離して自在に飛行する。
「チッ!それもBITだったのか!」
放たれる砲撃レベルの射撃を、紙一重でかわしていく。
「確かに……………しっくんには時間がない。もう決めるよ、ちーちゃん。トランザム!」
束のリボーンズが赤く光った。そこから先は赤い閃光に包まれ、何もわからなかった。
「はぁ……………はぁ……………」
『マスター、お身体は……………』
「幾分時間がないな。だが、これで最後だ……………」
シローは既にボロボロの体を無理やり動かし、ある場所を飛行していた。
「ここで……………終わりだ……………」
シローの眼下に広がるのは、密林。その目の前。そこには。
「あれで……………終わりだ。」
ドイツの超弩級殲滅型機体"アプサラスⅢ"がいた。
「いくぞ……………」
『はい!マスター!』
シローの最後の戦闘が幕を開けた。幻獣の翼は最後になるであろう空を楽しむように、飛んだ。