コア人格 アニュー・リターナーによる戦況報告。
現在のこちらの被害。
レグナント中破
以上。
撃破数、およびコア回収数。
462個
機体撃破数
459機
敵残存機体。
ミステリアス・レイディ 更識楯無
打鉄弐式 更識 簪
暮桜 織斑千冬
甲龍 鳳鈴音
紅椿 篠ノ之箒
アプサラスⅢ ラウラ・ボーデヴィッヒ
以上。
機密情報。
アプサラスについて。
アプサラス。ドイツ軍開発の超弩級殲滅型機体。武装は機体中央に超大型の出力可変型荷電粒子砲を一門装備。その見た目の通り、全世界の全機体の十倍の大きさを誇る。この機体にはコアが三つ使われている。
また、合計三つの超大型の球状PIC出力装置に加えて、内部に超大型のジェネレータを二つ装備。さらに機体下部にプロペラントタンクを搭載。マニピュレーターは装備されていない。だが、最大出力で荷電粒子砲を撃つ時は、大型の安定脚ユニットを展開して、機体をPICとともに支える。
安定脚ユニットはAICを常時放っている。そのため安定脚への実弾、及び実態攻撃は不可。
さらに機体表面に電磁フィールドが確認。恐らく、超長距離からの狙撃によるビーム射撃も不可。必然的に本体への実体格闘に有効になると思われる。
登場者は、ドイツ軍特殊部隊『シュヴァルツァ・ハーゼ』隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒと確認。
追記事項
最新情報更新。完成型ヴァルキリートレースシステムを搭載している可能性あり。注意されたし。
以上。
「始まったね……………」
『そうですね、シャル様。』
海辺でシャルロットとその隣にいる赤毛の男。コア人格、デヴァイン・ノヴァ。
「これで……………最後なんだよね?」
『多分そうだと思うよ、キキ?』
ある建物の中では、キキと、紫髪の中性的な顔の人物。コア人格、リヴァイヴ・リバイバル。
「やっとこれで……………終わるか。」
『そう……………ね。』
荒野では、カレンと金髪の中背の女の子。コア人格、ルイスハレヴィ。
『さて、マスターの最後だ。誰にも邪魔させるんじゃないよ!』
『わかっている。』
そして、密林の近くで、シローを見ている緑髪の女と、赤毛の男。コア人格、ヒリング・ケアとコア人格、ブリング・スタビティ。
「ふふふ、やっと始まったよ。ちーちゃん。」
「なんだ……………あれは……………?」
そして、激闘を繰り広げている織斑千冬と篠ノ之束。
ほぼ全員がシローの戦闘を見ていた。
「ちっ!」
『近づけませんねぇ……………』
シローとグリフィネスは冷や汗を流していた。
『アニューの情報だと、遠距離からの狙撃は無理っぽいですし、』
「かといって、これを使うのもな。どうぞ狙ってくださいと言っているようなものだ」
シローが背中のアームドアーマーDEに目をやる。
「それに、あれは有人機だ。しかも」
『マスターがあの時期に唯一心に残った人……………ですよね』
「……………ノーコメントだ。」
シローは真っ直ぐにアプサラスを見つめる。
「いくぞ!」
一気にスラスターを吹かして、肉薄する。
「ハァァァァァ!」
アームドアーマーVNをその巨体に向かって振るう。だが、中央部の砲門に光が収縮し始める。
「チッ!」
すぐさま、急上昇して、それの範囲外から逃げる。一拍遅れて、眼下の密林の木々が広範囲にわたり、消し飛ぶ。
『な、何て馬鹿げた……………』
「早めにケリをつけなければ……………!」
シローは再び上空から、落下するように、アプサラスに強襲する。
(真上からならば、対応は出来まい!)
アームドアーマーBSをバスターソードで展開して、振り上げる。
「……………」
そのバスターソードの切っ先は、アプサラスの装甲に、突き立てられる事はなかった。
『まさか!?』
「これは……………AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)!?」
『嘘っ!?アニューの報告書にそんなのなかっ……………!?マスター!』
「……………っ!しまった!」
正面を見れば、砲門にエネルギーが収束していた。
『Iフィールド、全開!』
収束された光がグリフィネスを包んだ。
「……………」
眼下の密林の木々がさらに広範囲にわたり消し飛んだ。煙があちこちから上がっている。
「はぁ、はぁ、はぁ……………」
『Iフィールド全開で……………これですか……………』
グリフィネスが煙から姿をあらわす。全身の装甲はボロボロになっている。アームドアーマーDEは片翼が失われ、頭部は半壊し、顔が見えている。
「だが、これで……………」
キィィィ、と甲高い音を立ててアームドアーマーVNが熊手状に展開する。
「終わりだ……………」
それを装甲に突き立てて、
「はぁ!」
一気に引き剥がす。そこには、
「少佐は……………返してもらう」
シローは、搭載されている3つのコアとともに、ラウラを引きずり出す。
『バーストモード……………!』
残った片翼のアームドアーマーDEと、アームドアーマーBSを展開し、エネルギーを集中させる。そして、楯無とぶつけ合った時の数倍の大きさとなる。
「これで……………本当に……………終わりだ……………」
ビームが球状に収束していく。
「『だぁぁぁぁぁぁぁ!』」
アプサラスその巨体が、光の球体により、消し飛んでいく。ボロボロの片翼のアームドアーマーDEを羽ばたかせ、ラウラを抱えて、飛んでいく。
『はは……………やっと終わった……………』
「これでようやく……………ぐっすり眠れるねぇ……………」
『あはは……………でも、少しばかり寝てもいいんじゃない?』
「ははっ、なら、少しだけ寝ることにするよ。また起こしてくれるかい?」
『いいとも』
カレンがルイスの目の前で目を閉じた。
「終わったんだね?隊長?」
『そう、やったんだよ。キキ。』
「あはは……………、安心したら……………眠くなっちゃった。」
『うん、存分に寝な?寝る子は育つってね』
「うん……………じゃあ……………ちょっとだけ……………おや……………すみ……………」
キキはリヴァイヴの膝の上で、その見えない目を閉じた。
「あはは、これで僕も、お役御免……………かな?」
『シャル様……………』
「残りの時間、一緒にいてくれる?デヴァイン?」
『はっ!』
シャルロットがデヴァインに見守られながら、デヴァインにその身を預ける。
『やっぱり、マスターは最高だな!』
『さあ、まだマスターの最後の命令が残っている』
『ああ、マスターがゆっくり眠れるように、な!』
二機のガラッゾは拳をうちつけあい、飛んでいく。
「うふふ、これで……………終わりだよ。」
「どういうこ……………束!!」
束が急に膝から崩れ落ちる。千冬がそれをギリギリで受け止める。
「あっはは……………私たちのこの機体の粒子は……………さ。人体にものすごく有害なんだよ。」
「そんなもの……………なんでお前が!」
「あはは、私に失うものなんて……………ほとんど無いからねぇ」
「それでも!お前ならなんとかな「もう遅いんだよ」なに!?」
「私たちは粒子を多く取り込みすぎた。もう手遅れ。」
束が指先から、灰色になっていく。石のように固く、冷たくなっていく。
「最後に……………ちーちゃん。ありがとね?こんな私の……………親友で……………いてくれて……………」
「馬鹿者!そんな事言われて!憎むものも憎めないだろう!」
「……………ほーきちゃんに、謝っておいて?こんなお姉ちゃんで、ごめんなさい……………って……………」
束は満面の笑みで、末期の言葉を放った。
「……………ん、んん……………」
ラウラが目を覚ます。そこは、瓦礫の山。だが。
「……………あそこか」
ラウラは周囲を見渡して違和感を覚える。様々な花びらが風に紛れているのだ。
「あれは……………!」
ある一点を見やると、そこには大量の花束。およそ200以上の花束。
そして、その前に佇む一人の人物。
「アマダ少尉?」
「お元気ですか?基地司令。約束通り、地獄に行く時間ですよ。」
シローは以前置いていった酒を一口飲む。
「最後の晩餐ですが……………まあ、いいですね。」
シローはさらに言葉を続ける。
「お叱りなら、あちらで受けますよ。ただ……………ただ……………俺は、あなた達と同じ場所で同じ時に死にたかった。」
シローは残りの酒を一気に飲み干す。
「だから……………また、叱ってください。」
シローはラウラの方を振り返る。
「お久しぶりです。ボーデヴィッヒ少佐。」
「やはり少尉が……………」
「もう、時間も残されてないらしいです。」
シローは右腕を見せる。その先はビキビキと石のようになっている。
「そうか……………」
「そうです」
ラウラはしばらくうつむいた後。
「少しだけ……………いいか?」
「なんでも」
そして、シローを屈ませる。
「目を閉じろ」
「いや、しかし……………」
「いいから、目を閉じろ」
結局シローが折れ、素直に目を閉じる。
「……………」
「……………んっ!!」
次の時には、シローとラウラの唇が触れ合っていた。
「……………ぷはっ、ふふ、私からの選別だ、これで私の初めては少尉のものだ。」
「……………ありがたく受け取っておきます。」
そして、石のようになる範囲が、首筋まで迫る。
「……………お別れですね」
「……………そうだな。」
ラウラはシローに花束を贈る。
「調べさせたのだ」
「……………ははっ、ありがとうございます。」
シローとラウラが最後の言葉を交わす。
「ではな、少尉。いずれ空で。」
「ええ、いずれまた、運が良ければ、空で。」
シローは、笑いながら、逝った。
こうして、復讐に身を捧げ、復讐しか残らず、復讐で死んでいった、一人の男の、幻獣と呼ばれた男の復讐は、こうして、幕を下ろした。
その後、ISは利用法が見直され、全てが宇宙開発に向け、開発されていった。束の助手、クロエは束からコアの製造を方法を託されたため、姿を隠しながら、世の中にコアを送り続けている。
もしかしたら、これが、本当に束が望んでいたことなのかもしれない。
そして、極東基地跡には、様々な花が咲き乱れる、名所になった。そこには、雄々しくそびえる、グリフォンの銅像がその場所を守るように立っていた。
『少し眠る……………付き合ってくれるか?』
『はい、マスター』
幻獣は静かに眠りについた。
終
愛読感謝