シローがラウラ、鈴、セシリア、シャルロット、08小隊の面々と激戦を繰り広げている頃。
「目標視認!もうすぐだぞ!一夏!」
「ああ!」
箒の赤椿、一夏の白式が高速飛行をする福音に迫っていた。作戦はこうだ。箒が一夏を背中に乗せ、高速飛行、一夏の零落白夜で一刀のもと落とす。
「来るぞ!」
「おおおおお!」
雪片弍型を最大出力にし、構える。そして、一夏達と福音がすれ違う。結果は。
「外れた!?」
一夏は信じられなかった。ここまで完璧だった。なのになぜ外したか。
「はぁ、はぁ、はぁ」
箒が実戦慣れしていないせいでもあった。詰まる所、福音の気迫にびびったのだ。
『織斑、篠ノ之、作戦は失敗だ。今すぐに戻れ!』
「いえ!やれます!」
箒は赤椿の武装、雨月、空裂を構える。
「おい!箒!」
『篠ノ之!戻れと言っている!』
「やれる、やれるんだ!この赤椿なら!」
箒はそのまま福音に向かっていく。
「くっ!?」
一夏もスラスターを吹かし、箒を追いかけた。
「おおおおお!」
シローは五対一で、大立ち回りをしていた。
「この!」
「そこっ!」
「はぁ!」
「落ちな!」
連射モードの衝撃砲、レーザーライフル、ショットガンとサブマシンガン、マシンガンとバルカンによる、面による弾幕攻撃が展開される。
「おおおお!」
その弾幕に対し、足から飛び蹴りをするように突っ込む。選択肢は他になかった。ならば受ける面積をできるだけ小さくする。それがシローの対処法だった。
「あまい!」
ラウラが狙いをつけ、レールカノンで砲撃を開始する。
「ちっ!」
体を無理やり捻りレールカノンを回避する。
「止まったぞ!てぇ!」
中型艦から、迫撃砲が発射される。もちろん射手はシュレディンガー。迫撃、爆撃の天才である。それに合わせてラウラも砲撃を続行する。シローはヘッドパーツの下で苦い顔をしながら爆撃を回避して行く。
(くっ!?流石はシュレディンガーだ。嫌なところに爆撃してくれる!)
「はぁ!」
鈴が再び青龍刀で斬りつけにかかる。先ほどのような大振りではなく、細かく、隙の小さい斬撃を繰り出している。
「はぁ!」
「ふん!」
ヒートナイフで青龍刀を受け、蹴りで無理やり距離を話す。
「そこっ!」
「くらいな!」
カレンとセシリアで即席の弾幕をはる。シローはそれを回避しながら、シールドで受ける。
「ちぃ!」
後付装備のグレネードランチャーをコール。カレンとセシリアに一発ずつ撃ち込み、それを鈴に向かって投げ捨てる。
「なによ!こんなもん!」
すぐさま投げつけられたそれを、青龍刀で斬り捨てる。だが、シローはなにも"撃ち尽くしたグレネードランチャー"を捨てたわけでは無い。従って。
「きゃあ!」
グレネードランチャーの弾倉に残っていた残りの弾が誘爆。そのまま鈴を爆炎に巻き込む。
「鈴さん!」
「厄介だねぇ!」
「二人とも下がって!」
「おことわりします!」
「軍人が下がったら面目立たないだろ!」
三人がそれぞれの射撃武器を構える。そこにラウラも合流する。パンツァ・カノーニアのレールカノンをパージしたようだ。どうやら弾切れらしい。
(合流されたか、仕方が無い。あれを使う!)
シローは拡張領域からあるものを取り出す。見た目は手榴弾のようだ。実はこれ、爆薬は一切入っておらず、爆発部には、大量のIS用のベアリング弾が入っている。それを。
「ふん!」
ためらいなくそれを四人の中心地点に投げる。
「「っ!?」」
ラウラとカレンが、すぐさまその場から離れる。
(ちぃ、まさか、あんなもん使って来るとはね!)
(なんだかよくわからんが、あれはやばい!)
「この程度のもの!」
セシリアがレーザーライフルを向けた瞬間。それからけたたましいモーター音がなり、大量のIS用のベアリング弾が二人にばらまかれる。
「うわぁぁぁ!?」
「きゃあぁぁぁ!?」
「なんだあれは!?」
「"ケイオス爆雷"さ。」
「ケイオス爆雷!?」
ケイオス爆雷、実はこれ、元はと言えば対人兵器である。小隊から大隊まで使用可能で、投げた方向にベアリング弾を撒き散らし、面攻撃で攻撃する兵器である。
「そんなものを…………」
「中身は全部対IS用のベアリング弾に入れ替えてあるらしいね。喰らったら専用機って言っても被害は避けられないだろうね」
カレンがマシンガンの弾倉を交換しながら言う。シローは新たにケイオス爆雷を二つ取り出す。
「く………うう…………」
「っ…………!パッケージも持ちそうに無いや」
煙の中から、ボロボロのシャルロットとセシリアが現れる。二枚のシールドはボロボロ、もはや防御機能は期待出来ない。セシリアもレーザーライフルを破壊され、推進力に回していたビットは全て破壊されていた。つまり、実質武装は近接用のナイフのみ。近接がからっきしのセシリアは戦闘力は無いも同然だった。
「どぉぉぉりゃぁぁ!」
爆煙の中から連結された青龍刀が回転しながら飛んでくる。シローはそれを爆煙の中に蹴り返す、そして、おまけと言わんばかりにケイオス爆雷を投げ込む。
「えっ!?ちょ!?なにこれ!?」
ちなみに投げたのは普通のケイオス爆雷ではなく、機能阻害付きのケイオス爆雷。つまり、
「えっ!?なんで!?動いてよ!甲龍!」
当然こうなる。何にせよこれで一人減った。つまり三対一。
「仕方が無いねぇ、眼帯ウサギの隊長さん、あたしとあんたで前衛、そっちのあんたは、後衛だよ。もうそれも役に立たないだろう?」
「悔しいけどね」
歯噛みするようにカレンに答える。二枚のシールドをパージして、マシンガン〈ラピッド・ラビット〉ショットガン〈レイン・オブ・サタディ〉を展開、ラウラもプラズマ手刀を構え、カレンもビームサーベルを抜く。
『マスター!グランドマスターからの通信です!』
「あぁ、戦闘をしながら聞く!」
『繋ぎます!』
通信が繋がれると、束の声が聞こえる。
『もすもすひなますー?そっちはどう?』
「今戦闘中だ!」
迫って来たラウラとカレンをショートビームサーベルで相手をする。
『まぁ、別段どっちでも良いんだけどねぇー。それよりもぉ、もう戻ってもいいよー?』
「なに?」
通信に答えながら、ラウラに蹴りを浴びせ、カレンはビームサーベルの持ち手の底で、額部を殴打する。
『うん、しっくんのはここでおしまい。適当にあしらったら、先に戻っててもいいよぉ〜』
「まて!篠ノ之束!お前に聞きた」
そう言いかけた瞬間に通信が切れる。
「クソッ!」
悪態をつくシロー。よほど聞きたいことだったのであろう。わずかにその動きが止まる。
「止まったね。んじゃ、ポチッと」
迫撃砲が火を吹く。流石のシローも聞き慣れた轟音を聴き取り、回避行動を取る。
「んー、甘いねぇ。隊長風に言うなら"面での同時爆撃ほど怖いものは無い"だっけかなぁ」
シュレディンガーの予想は正しかった。シローはシュレディンガーに巧みに誘い込まれる。いや、誘い込まれるしかなかった。
「副隊長、きたよ?」
「後で、好きなもんおごってやる」
カレンがシローと同じ180ミリキャノン砲を展開し、シローに突きつける。同時に。
『マスター!一夏様と箒様が!』
「なんだと!?くっ!?座標と方角を!」
シローも180ミリキャノン砲を展開する。だが向けたのは明後日の方向。
「間に合え!」
「よそ見してんじゃ無いよ!」
二連で轟音が鳴り響く。一発はシローの砲弾、方向は福音と戦闘中であろう一夏達のいる方向。もう一発は、カレンの砲弾。それはシローの頭部へ。
『っ!!マスター!』
「しまった!?ぐぁ!?」
砲弾がヘッドパーツに直撃し、爆煙を上げる。ヘッドパーツは破損、頭部は流血し、顔の右半分ほどが露出している。
『マスター!?』
「ここまでだな…………!」
右腕で、露出した部分をかくし、左に、あるものを取り出し、露出した歯でピンを抜き、投げつける。そして、投げつけられたそれは、激しい閃光と音を発した。俗に言うスタングレネードだ。
「くっ!?」
「古臭い手を!」
光が収まり、ハイパーセンサーが復旧。視界がクリアになった時は、もうシローの姿はなかった。
「なっ!?エネルギー切れ…………!こんな時に!?」
「っ!!箒!逃げろ!」
「っ!?しまっ!?」
作戦が失敗、帰投命令を無視し、一対二で福音撃墜に当たっていた一夏と箒。最初こそ順調に攻めていたものの、福音のウィングスラスターと片翼18門、計36門の砲門の前に苦戦を強いられ、ついに箒が具現化維持限界までエネルギーを使い果たし、落とされようとしていた。
「箒ぃぃぃ!」
一夏がスラスターを吹かすが、すでに福音は砲門を開こうとしている。万事休すかと思われた。が。
『っ!?』
一発の砲弾が、福音に直撃。その福音の体制が大きく崩れる。
「今のうちに!引くぞ!今度は嫌とは言わせねぇからなぁ!」
「あ、あぁ」
二人は退却を開始する。福音も少なからずダメージを受けていたため、一夏とは別の方向に飛んで行った。
「はぁ…………はぁ…………」
『マスター…………」
シローは五キロほど離れた森に、退避していた。頭部の流血はある程度収まっている。
「ははっ、本当に…………俺には敵が多すぎる。」
『…………。』
コア人格は歯噛みした。たとえ嫌われても、拒絶されてもいい。同じ姿で、一緒にいたい。それゆえ、この体が非常にもどかしい。
『…………マスターぁ…………!』
「はぁ…………はぁ…………、まだ立ち止まれない。立ち止まるわけには…………!」
シローはもう戻れない位置まで着ていた。もう彼に立ち止まることも戻ることも許されない。進むしかない。邪魔をするなら倒すしか無い。それがたとえ誰であっても。