ホロウの中でも技名を叫んでから殴る。 作:斗流の教えはどうなってんだ!?
町中に突然現れるブラックホールのようなドーム状の空間。
その中に繋がっているのは、謎のエネルギーエーテルが蔓延する異世界、ホロウに繋がっている。エーテル適性が低いと即座にエーテリアスと言う化け物に変化する。
そんなホロウの中を駆け抜ける二人組が居た……方や無線の流線形のフォルムが特徴的なヘッドフォンを掛けた一人の褐色肌の青年。髪は水色の髪でつんつんとはねていた……ジャンパーを羽織っただけの装いで、ホロウに入るにしては明らかな軽装だ。
そしてもう一人は、一見人間とは見えないような姿をしていた。杖をつきながらボロボロの布切れを羽織り、猪の頭骨を被っている。
二人は、エーテリアスをその手に握った
「クソジジイ!ボロ雑巾!寝ぼけた人間をホロウに放り込むんじゃねぇ!死ぬだろうが!」
青年の名はセイヴ。姓は無し、ただのセイヴだ。
今にも閉じそうな瞼を必死でこじあけながら怒鳴り散らかすセイヴを、その杖をついた老人はダミ声過ぎて聞き取りづらい声を発しながら答える。
「この程度で死ぬのなら貴様はそこまでの男だと言う事だ。腐り果てても
このご老人の名は裸獣汁外衛賤厳。セイヴの師匠である……寝ている人間を問答無用で危険なホロウの中に落とすようなド畜生だ。
……因みに、現在のセイヴの状況がそれである。
セイヴは血でできた太刀を用いて、近づくエーテリアスをバッタバッタと薙ぎ倒していく……寝起きで集中力も続かぬだろうに、大した腕前だ。
そんなセイヴは、目の前を駆け抜ける師匠を見失わないように追いかける。セイヴが師匠追いかける理由は唯一つ……ここでおいておいて怒られるとホロウからでられなくなる可能性が高いからだ。
普通のホロウに潜る人間ならば、キャロットと言うホロウの地図のような物を持っていたり、プロキシと言う所謂ガイド役を持っていたりする。
セイヴにとっては、目の前の師匠がプロキシ役と言う訳だ。……勝手に人間をホロウの中に突き落とすプロキシ役があってたまるかという話ではあるが。
そめそも何故ホロウ内の出口を把握しているのかもセイヴにはわからない。だが一つ言えるのは、師匠たる裸獣汁外衛賤厳は、ホロウに迷ったりしたことは無いということ。それは、今も生きている彼らと言う存在が証明している。
「……愚弟子よ。貴様の技術など放屁にも足らぬ。もしも斗流をこれからも名乗るつもりならば、己の技を何処までも深く何よりも鋭くせよ。貴様の敢え無き一生などそれで終わる。」
「セッキョーならせめて止まってからやってくれない!?」
師匠は、セイヴを罵倒し説教する合間にもさらに先へ進んでいく。そのスピードたるや凄まじくセイヴはそれに追いつくので精一杯だ。
そして、ある程度行けばエーテリアスが少なくなってくる……周りには弾痕や切り跡が残っており、そう遠くない時間に戦闘がここで起こったのだとうかがえる。セイヴは血の節約の為に血の太刀を戻して辺りを見回す。
「戦闘があったのか……?
「うむ……時に貴様、如何程の血を消費した?」
「あぁ?……もう結構使ったぜ。」
「良かろう。」
そう言ってセイヴの師匠は駅のホームの様な場所へと足を踏み入れた……そこにいたのは、他のエーテリアスよりも一回り大きいエーテリアス。
デュラハンと呼ばれる個体のエーテリアスだ。その足元には何故だか真新しい金庫が置かれている。
「んげっデュラハン!?運がねぇ……いや!?ボロ雑巾テメェ測ったな!?」
しかし、セイヴが目の前のデュラハンに視線を移した隙に裸獣汁外衛賤厳は、その場から忽然と姿を消していた。
恐らく、この邂逅はあの師匠が仕組んだ……と言うよりも測ったことだ。
何故ここにデュラハンが居るのかあの師匠に解ったのかは定かではないが……デュラハン程度なら小指の先で対処できる師匠が居なくなったということは、ここでセイヴに撃退させようという魂胆なのだろう。
セイヴとしては少々きつい……セイヴの武器は血を大きく消費する。特にここまで結構多くのエーテリアスを寝起きで屠ったせいで体力も少しきつい。昨日はあまり寝れていないのだ。
そもそも、その理由だって昨日ホロウで体をぐるぐる巻きにされて武器が使えない状態で、エーテリアスから逃げるなんて修行に見せかけた処刑を師匠から受けたせいなわけで……閑話休題。
その状態でデュラハンは、セイヴもキツイ物があった。しかし、ここで逃げたらどのみちあの師匠――デス仙人に殺されるのはわかる。
……もはや、選択肢はセイヴには無くなっていた。
「チッ……覚えてやがれあのデス仙人!」
セイヴは、大きな舌打ちをしながらも懐から一つのジッポライターを取り出す。
セイヴがそのジッポライターを握ると、その手からは多量の出血が起こり……次の瞬間、流れ出たその血は一本の太刀を形成した。
「斗流血法 刃身ノ壱 焔丸…………推して参るッ!」
その言葉に呼応する様に、目の前のデュラハンと呼ばれるエーテリアスは、雄叫びのような声にならぬ声を上げて、セイヴへと切りかかってきた。