小金?大金や 作:FXは怖いよ
俺の名前は
「ね、ねえ福男?お金を家に入れてほしいの…ほ、ほら智子の教育費が」
「…この間も入れた金が引き出されたけど」
「えっと…」
「愛人に貢いだ。違う?」
「ち、違うわよ!ただその、そうよ私も投資をね」
「…そう。どっちにしても生活費を投資に注ぎ込む人には渡せないな」
「ッなによ!あんたの貯金、お父さんより持ってるじゃない!!」
「そうだよ。俺の金だ、どう使うのかも俺の自由だ」
逆切れする母に呆れながら、どうやってこの女から逃げようか考えている日々である…昔は父と仲良かったのになぁ…。
転生とは実際に起こった時は驚くものだ。異世界、ファンタジー、そういった世界に前世の記憶を持って強くてニューゲーム。実に素晴らしい、俺は現実世界にタイムスリップ転生という意味わからん状況である。
前世は事務仕事を数年、その後は投資で暮らす人生を過ごしていた男だった。普段通りの生活をして起きたら、赤ん坊になっていた。意味が分からん転生である。まあ、若返ったと考え、今世の父母と程々の距離を保ちつつ過ごしていた。大人びた子供だったのもあり、子育てが楽と考えたのか妹の
…その頃からだったか、母が愛人を作ってフラフラと外に出かける様になった。そして、父とも夫婦仲が冷めてきている。智子の世話も俺や父がやるようになり、朝帰りも稀にするようになった。
父は知っている。だが言葉にしない…いや、智子の為に表立って指摘しない。俺は父から秘密裏に離婚の話を聞いている。つまり、家庭崩壊待ったなし。俺は勿論、父について行く…だが問題が智子だ。親権問題で母が妹を持つ可能性が高い…いやまあ、顔形が俺や父と違う妹。愛人の血を引く可能性が高いためだ。ぶっちゃけ俺はいいのだ、自立できるだけの資金は用意してある。バイト資金で投資は当初効率を考え少し萎えたが、相場がある程度予想可能ならすぐに増やせた。流石にFXリスクを考え、ブル・ベアを中心に徐々にFXだったが地味な作業だったよ。久しぶりの個別株とか、リターン少なくてワロタ状態。たかが数百円、数千円…数千万動かしてると感覚がマヒするよね。
「ただいま…どうしたの」
「ッいいえ智子何でもないの、料理の献立を考えていただけよ」
智子が来たら母の顔…俺の前では鬼の顔。さっきのやり取り無かった事にして台所に行く・・・あーヤダヤダ、俺は一応息子ですがATM扱いですか。やっぱ世の中、金ですわ。金は裏切らないから最高のパートナーやで。
「兄さん、どっか行くの」
「どうしてそう思う」
「…気づかないと思う」
妹は賢い。成績優秀で5教科満点に近く、理系の鏡みたいな性格である。それに母に似て美人に育つだろう容姿…兄としての視点抜きでも凄い妹だ。俺は高卒してデイトレーダー擬きになって過ごす予定なので、凄い妹だ…。もう社会の波に溺れるのはこりごりや。前世込みの知識のワイより賢い妹を持って、お兄ちゃんの威厳が資金を持ってる事実だけでストップ安になっとる。やっぱり金だ、金は全てを解決する!
「離婚するんでしょ?兄さんが繋ぎ止めてただけで、父さん…あの人も限界なのよね」
「…お前はどうしたい」
「私に聞いてどうするの、親権問題は子供がどうこう言って聞いてもらえる?確かに一定の判断基準になると思うけど、結局法によって定められた基準で決まるじゃない。それぐらい知ってるでしょ…それに、生活費の問題だってある。兄さんみたいに自立できる年齢にも満たしてない私が言える立場じゃない・・・あの人も私なんかいない方がいいでしょ」
オウフ。相変わらず正論パンチ好きね…。中学生の娘が、今まで育てられていた父親をあの人呼びできますか?俺には無理や。論理的と言えばそれまでだが、妹は頭が良すぎて感情抑制と言葉使いが少し問題なんだよね。別ベクトルのコミュ症だ、正論厨なのである。
「もっと正直に言ってくれ。俺や父と過ごしたくないか」
「・・・母さんはどうなるの。愛人の人と一緒?あんなホスト擬きみたいな奴と一緒になればどうなるかわかるでしょ」
「だからこそだ」
「ッ兄さんはいつもそう!家族でも他人みたいにしか見てない!」
「…俺は」
「っ…部屋に行くから」
「ああ」
はぁ…正論を吐くのに家族の事になると感情で動く。論理的に行動できるのに自分の事柄を後回しにする。隠しているようだが、学校でいじめを受けているのは知っている。学校でも正論で論破してるらしく敵を作っている。妹の通う中学に兄弟を持つ男友達から様子を少し聞いた。家族には隠してるしよ~お兄ちゃん悲しい。俺の学生生活は基本『そうだよ(便乗)』『そうだよな(便乗)』で我を出さずに過ごす日々である。精神がおっさん…成熟してるだけだよ。人と話すだけで面倒とか思ってないよ?
このまま時を待てば妹の言った通りになるだろう…父は妹を大事に思っているが、思う事があるのは事実だ。親権を上手く得られても親としての顔を続けられるかは不明だ。ストレスとは日々の生活からの蓄積、離婚そして・・・その相手に、しかもNTRした相手の血を持ってる子…人間の限界は案外脆い。俺は大丈夫だと思うが、絶対とは言い切れないのが現実だ…妹は賢すぎる、損する性格と言えばいいか、愛想笑い一つするのも技術だと思うが妹はプライドが高い。駄目な事はダメ、ルールを守れと…ある意味社会的だが、まだ早い成熟し過ぎや。前世の俺なら下ネタでゲラゲラしてた馬鹿だったぞ。
「…ご飯できたから智子を呼んで来て」
「わかった」
ホスト狂い。やっぱり顔が良くて口が上手い男は凄いな、一家が壊れる~…前世込みだから俺はこの程度で済ませてるけど、智子にとっては人生を左右される分岐点だ。実は今回に限らず、何度かチラチラ遠回しに伝えたりしてる。まあ、結局お母さんを大事に思ってしまうのだ妹は…打算込みなら俺や父一択だろうに、損切りできない奴は不利益を被ると理解しながら母を取るなら仕方ない。
「俺のやり方を伝授するとしようか」
ならせめて、自立した時の資金源を用意しておくまでよ。株価の流れが大体わかるってチート過ぎるぜ。リーマンショックとかもノートに書いとくか、丁度妹が自立できる歳が近い時期だし可愛い妹の為や。銀行口座に証券口座も妹名義で渡せるように祖母に預ければ問題ないやろ。離婚後だと名義問題が出てくるし…。お兄ちゃんができる事はやっぱ金や、金しか勝たん。俺の愛情は金だ。物理的に残せる愛情が必ずお前の未来に必要だとわかってくれると信じる。
「私から300万円の融資を受けてその金で買う」
「・・・・・なに言ってんの借りるわけないじゃん」
「…だよね。私は借りて増やしたけど」
「融資を受けたの!」
「兄さんからね。良くも悪くも色々と教えてくれたわ。返さなくていいとか言ってたけど、信用取引は返すモノよって返済したけどね」
「え、お兄さんいたんだ」
「まあ、ね。癪だけど投資に関しては私より上よ。…まるで未来でも見て来たかのように当てるの」
「だったら相場の予測を知りたいな!」
「聞けば教えてくれるかもね。でもデイトレだから、くるみのやり方と合わないと思うけど」
「うへー本場のデイトレさんだったか、私もなりたいよ」
「…あれレベルを基準にしちゃ駄目だと思うけどね」
私には兄がいる。名義上は他人なので兄がいたとなる。変人であり、論理的で、まるで機械みたいに冷たい…でも…金を、資金を増やす事に関しては天才的な才がある。
父と母は離婚した。知っていた、知っていた…けど、悲しかった。兄が私に隠れて父と母をどうにか関係改善に動いていたのを知っていた。裁判沙汰にしようと動いていたのも…今も、昔も、兄は大人びた存在だった。…いいえ、人生を損得で動いていた。私にとってその姿は理想的だったのだろう。日々の生活をトレードするかのように過ごす、そんな過ごし方・・・正しい事をしていればきっと良い事が起こる。漠然とした考え、教科書・テキストという限られた情報から答えを出す日々の中、自然と身に付いた歪んだ道徳性。家族も…兄さんも、もっと見てくれる…正しい事は良い事だ。そう思っていた…。
『こんな事をしても、大事になれば進学に響くわよ』
『うるさい!あんたはいつもそうやって!』
正論とはコミュニケーションにとってマイナスな動きをする事の方が多い…そんな事も私は判断できなかった。物理的に被害を受けたことは無い、相手はそこまで短期的な思考にならなかった。地味な嫌がらせ、物を隠す・言葉による暴力、長期的思考による行動。私が中学を卒業するまで行われた。
その過程で離婚…愛人の男からの指示を受ける母。父と兄が家からいなくなり、私はどれだけ無力かを知った。違う…知っていたけど、知らないフリをしていた。母ならきっと気づいてくれる・・・そんな期待を持ちながら・・・私は大損したのだ。
祖母の家に行くのは必然だった…。母が帰って来ず、一日経っても戻らない日もあった。そんな生活を続け・・・私の中で大損という失敗を身に染みて理解した。同時に兄の合理的で、機械的で、それでいて…
【きっと祖母の家に来るとわかっていた。これを見ているなら、俺の投資方法を学べ。お前ならすぐに物にできるだろう】
金への信頼
【×××がお前の証券口座のパスだ。資金は俺が入れてある、全額注ぎ込むのは注意しろよ】
ねえ兄さん
【ドルに関して儲けられる時期がある。このノートに記録した時期から言えば未来についてだ、俺独自の調べで2008年に起こるであろう株価の変動が激しくなるが恐れるな---】
私を見てくれないの
兄の贈り物は役に立った・・・最初は疑問を持ちながら、でも当たるのだ。異常だ、書かれた事柄通りの大きな変動が株価を襲う。特に驚いたのは2008年の9月に起こったリーマンショック、なぜ9月15日と的確に的中できる。正直いって恐怖を感じた事は一度ではない…だが、兄だからと無理やり納得した。
高認に合格して大学も特待生で入れた。歳を重ねるにつれ…兄の意思を理解できてきた。金だ、金があれば何でもできる。そして、金に困る者達は哀れで惨めだ。母も愛人に貢いでああなった、でも極論として貢いでも問題ない資金があれば解決した面も多い。だからだろうか…。
(豪ドル…買うわね、くくく)
私の目の前に大学の知り合い、
小金萌智子
総資産 3億
(この視点で見る世界…やっぱりいいわ)
兄はこの視点を私に贈りたかったのだろう。私が愛情なんて金にもならない損益を抱える様を哀れに思っていたに違いない。ああ、今になってわかる。この愛情を…。
「え、マジで買ったの?」
「えっ」
資金を得るのに感情を持つなんて馬鹿らしい。相場は正しい動きしかしない、上がるか・下がるかその二択。数多の思惑を重ねて、その動きに人生を左右された者達…フフフ
「いや…いいと思うよ?たぶん上がる!」
苦しむ姿を見せてね?くるみ