小金?大金や 作:FXは怖いよ
投資家の中で投資と言えば、信用取引が浮かぶ人がいるだろう。信用取引とは、金や株を担保に金を多く借りる事だ。また、信用取引で借りた金で株の取引きをする場合、差金決済取引にならないので株の実力者は、信用取引を大量にして利益を得る動きを基本とする。
差金決済取引とは、簡単に言えば同じ銘柄の株を買う→売る→買う→売るのような無限ループを禁止する法律だ。現物、自分の元々の資金(同じ銘柄で買う・売るで使用した代金を除く資金)が購入する株の値段より多く保持していれば再度購入も可能だが、100万の株を買いました→110万で売れました。また同じ株を買いたい→(最初の購入時で使用した100万は一日使用不可)のようになる。このように、株相場を操作されないような工夫が差金決済取引・・・なのだが、信用取引ではその縛りが無い。
100万円信用取引で株を買いました→110万で売りました。この場合、信用取引の100万は借りたモノ扱いで、差金決済取引(その株内での資金変動)に当たらないのだ。つまり、何度でも取引が行えるわけだ。そして、信用取引ではその差額、先ほどの例なら10万の儲けとなる。これを何度も繰り返すことで利益を得るのが、プロの株投資家となる。勿論借りたモノなので、損をすれば借金となるリスクがある故に相場を読み間違えれば命取りなのはリスクだ。
取引とは信用だ。この契約を基に絶対守れ・守るという双方の同意があって初めて成り立つ事柄だ。それは、どの投資方法でも変わらない・・・だがしかし、時に投資とは違うにも関わらず投資になってしまった投資という異例も存在する。
「えっと、これって投資なんですか?」
「正確には業者向けだった制度を利用して投資にしてしまった投資だな…ある意味君に向いてると思ってね」
「儲かるんですか!」
「…そうだね。ただし、少し時間がかかる」
俺はくるみさんのお母さんについて聞いた。そして、母親の日記も見せてくれた…
【儲かったお金で、家族みんなで旅行へ行く!】
【お父さんの預貯金を使ってしまった・・・大丈夫勝てば取り戻せる】
【負けた。でも明日は必ず負けた分を取り戻す!】
【今日も負けた…2000万なんてどうすれば】
【また投資にお金を入れた】
【負け負け負けまけマけ負けまけ】
【かてない】
…豪ドルは伸びしろと世間で言ってた時期はあった。それは確かだ、しかし一つの相場に固執するレベルでFXに手を出す時点で自業自得。家族を思い、資金を集める為にFXを始めたらしいが・・・はぁ…必ず儲かるなんてありえない、そんな当たり前を忘れる。投資の恐ろしいところは、失敗を失敗と思わなくなるところだ。FXのような多額の資金が絡むと人は冷静な判断を下せなくなる。くるみちゃんの母もその一人だった。
だが、自分の娘に呪いを与えて自殺を選ぶのは、投資が悪いではなく、親としての責任放棄とも俺は考えてしまった。
『自己満足だってわかってます!でも、私はお母さんを自殺に追いやったFX!それで2000万を稼ぎたいんです!』
俺は頭を抱えた。だってそうだろ?金を稼ぐ=復讐と考えてFXをしてるなんて…俺から見たら、母親の二の舞になるだけだ。何より、最低限の基礎勉強と相場の流れを読んで実績を重ね続けている現状がある意味マズい。この子は大きな損失を体験したことがないのだ。だからこそ、高レバに対し危機感が実らない。なまじ実力がある故に、それに智子の優しさ故に小さな失敗をフォローされている現状が、何となく安心という心理を生んでしまっている。
2000万…大学生で稼ぐには大金だ。正社員で手取り20万程として親の元で一緒に過ごし、金を効率よく溜めたとしても7年程かかる計算だ。投資は余剰資金でやるのが基本だ、少なからずバイト代で数十万溜めてFX全額投資をするのは正気ではない。この子に必要なのは余裕な視点だ、同時に冷静に観察する精神性…結局、くるみさんは安定した資金が精神の安定に繋がるタイプだから困るな。
・・・やっぱり投資か
『ちょっと変わった投資法を教えるよ』
思考を誘導するのも投資・・・この子の将来が不安だ。普通の投資方法、株などは効率が悪いとか言って続かないだろう。レバレッジが無い投資は嫌そうだし、なら高レバかつ投資で興味を引く事柄を教えてみるのも一つの手だ。FX並に稼げて、上手い事別分野に興味を引かせる投資方法…。
小豆相場
古き時代からある投資。インパクトは相応にあるだろう。少しでも興味を持ってくれたら、他のリスクが少ない投資方法の手段を選ぶ選択もしてくれるかもしれない。俺はFXに対する思いは否定しない、だが一投資家として、先輩として少しだけでも伝える。金はあくまで手段だ、人生を捧げる物ではない…それに気づけとな。
「そういえば小豆相場って聞いた事はあります。えっと、先物取引で買った、売ったをするとかなんとか」
「まあ、合ってるよ。基本は投資と同じ、安く買って高く売る。本来は業者が売買する制度だったらしいが、投資家、昔は賭博者か、利益が出ればどこへでも人は集まるってことさ」
小豆相場と呼ばれるが、先物取引は別に小豆だけじゃない。トウモロコシやジャガイモ、ゴムやアルミニウム、金、銀、現代において派生して多くの物が投資対象になっている。まあ、それでもメジャーではないので一部の証券会社でしか取り扱っておらず、市場は減っているが。
「この取引の見所は・・・高レバだ」
「レバを賭けれるんですか、どれぐらい!」
「先物買いの最高レバは確か…アルミニウムで1万倍だ。小豆は2,400キログラムの袋詰め80袋換算だから、80倍かな。10円刻みで相場が動いて上げ・下げで800円が動くよ。あとは掛け金によるがな。1万2千円付近から相場が始まり、月ごとに取引を行っていく。ちょっと独特な取引方法だ」
「い、一万倍!?」
「将来的な価値、需要との差額を予想して買う。そして、時期を見て売る。それにより利益を得る。チャートはFX同様にあるぞ、どっちかと言うと株みたいな感じだ。先物取引の利点は日本国内限定でFX以上の掛け金を行える、数万で数百万の取引を行う信用取引も行いながら、高レバも同時にできる。やるか?2000万なんてすぐ稼げるかもしれないぞ」
「あ・・・いえ、あの」
「どうした?君は高レバのリスクを知ってFXもやっているんだろ?普段やってるのが10倍かそこらか?たかがいつもの8倍じゃないか?持ってる数百万全てを担保に行えば…そうだな、今年仕込めば小豆なら…勝てば4000万は固いかな」
「よ、4000万!?」
「俺の予想だが…今年の小豆は需要が増えて高くなると思う。やり方がわからないんだろう?もし取引を行うなら…俺も手伝うよ…さあ、どうする?」
・・・ふむ、流石に恐れたか。ぶっちゃけ、高レバではあるのだが、ほぼ固定値で上げ下げがあるだけなので、相当金を借りたりしなければ問題ない。まあ、株の信用買い同様、損益を被れば借金だが。やるなら、今年度はマジで儲かる年だ・・・害虫による農業へのダメージに伴い、小豆の相場が上がる年だ。俺は知っている、そして今までの経験から必ず同じ歴史になる。
「・・・わざとですよね」
「何がだい」
「流石にわかります!私にFXを辞めてほしいから脅してるんですよね!復讐なんて馬鹿な…ことを…」
「君はきっと2000万を稼げても止まらない。そして破滅する」
「そんなの…」
「倍だ。今、俺と取引すれば目標の倍の利益を得られる…そうだな、この取引に限り元本保証してもいいよ?」
「…代わりにFXを辞めろってことですか」
「いいや、別に君が判断して決めてくれ」
「え・・・いいんですか?」
「俺からは何も言わない。だが、君のお父さんに伝えるんだ。FXで利益を得ていたと」
「それはだめ!」
「それは何で?」
「そ、それは…お父さんはFXを…」
「お母さんを奪ったFXを嫌った?それとも恐れたか?娘が母親と同じ道を知ったらどう思うか…考えた事はあるか?」
くるみさんは家族に恵まれている。今も俺の取引に迷いが出て、瞬時に判断できないのは本当の意味で復讐としてFXに、投資に囚われている証拠だ…。俺には投資を復讐対象にする精神性は理解できない。理由は納得できても、心からの共感は難しい、投資は自己責任だと自分自身で納得した上で俺は投資家をしているからだ。
「なに、今すぐ決断しろとは言わないさ。それに・・・小豆相場は今は動いてないしな」
「え、相場が動いてない?」
「そりゃそうだろ?小豆相場は農業関連だぞ、11月から4月の需給相場・5月から10月の天候相場の2種類だ。まだ去年の競り分をしている最中だ」
「・・・酷いですよ」
「連絡先を教えておくから、取引したいなら連絡をしてくれ」
少しはホッとしたようだな。だが恐怖には鮮度がある…悪いが、追撃させて頂く。
「ふむ、だがすぐ決断してくれなくて残念だ。俺は今回の取引に限り、元本保証してもいい。これは本当だ」
「・・・あの、本当に魅力的な提案ですけど…大丈夫なんですか?」
「問題ない。もっと言えば、例え今回で損益を被ろうと俺なら余裕で返済できる」
「やっぱりFXは儲かるんですね・・・」
ああ…儲かる。だが俺は投資家だからな。学生ではない。
「君はまだ子供だ」
「私はもう子供じゃありません!」
「なら言えるだろ?父親に」
「それは・・・その…」
「俺が何で頑なに言ってるかわかるかい?」
「それは復讐を止めさせたいから」
「違う。君に選択して欲しいからだ、投資家になるか、学生となるか」
「えっと…どういう意味ですか?」
「FXもそうだが、大金を動かす意味を君は理解していない。一人で社会に生きていく、その辛さ、資金のやりくり、人付き合い…その他諸々。投資に手を出す理由の大半は皆、金が欲しいからだ。だからこそ、貪欲に勉強も何もかもする。投資家というが、大本は博打をしている思考と同じだ。儲かりたい、金持ちになりたい、楽になりたい・・・君にはそれがない。その欲に蓋をしているように俺は見えた」
「・・・」
「つまりだ…今後も大金を動かすなら自立しろってことだ。復讐するのも構わない、損するのも、利益を得るのも、自分の責任とちゃんと認識しろってことだ。親に迷惑をかける事を考えている時点で、君は対策も何もしていない無鉄砲であると自覚してほしい。これではお父さんが可愛そうだ。だから言ったろ、二の舞になると」
「っ…ご、ごめんなさい…」
うっ…泣かれると精神的にくるからやめてくれ。でも、俺の信念として言わないと気がすまない。
謝る相手が違うだろ?
「言ってくれてありがとう。くるみ…でも頼む、もうFXは止めてくれ…私はもう…お前まで失いたくない!」
「・・・うん。ごめんなさい、お父さん」
福男さんに言われるまで、私はこんなにも無責任だったんだと自覚した。お父さんが泣いている…違う、私が泣かせたんだ。
「くるみ、今度の休日にでも旅行に行かないか?」
「え!お父さん大丈夫なの、会社が忙しいって」
「ははは、なに少し有給を消化してくれって逆に言われてね」
「もうお父さんたら、働き過ぎだよ…ありがとう、お父さん」
「…どうした、いきなり」
「私ってお父さんに甘えてたんだなって」
「子供なら甘えてもいいんだぞ?」
「うん…そうだね!楽しみだな~」
ありがとう福男さん。私にはこんなにも大事な家族がいるってわかったよ。
「・・・」
FXの証券口座…契約を・・・解…
本当にいいの?
「・・・あ、智子に連絡しないと!」
また今度でいいよね?
「は?くるみがFXを辞める?」
「…うん、家族に迷惑をかけたくないし」
「今まで勝ててたじゃない。それに・・・兄さんから何かテクでも聞いたんでしょ?」
「ははは・・・まあ、ね?」
「・・・なら何で辞めるのよ!」
「ひぇ!?そんなに怒る!?」
「ッ…ごめんなさいね、昨日イライラすることがあって」
大学の食堂でいつものように智子と一緒に食べて、私が決めた事を伝えた。・・・なんか、凄くイライラしてたからどうしたんだろう?と思いつつも、聞くなと顔に書いてあるので聞かない。
「ふぅ・・・そう、残念ね。でもその前にFXを始めたい後輩がいるの。くるみが代わりに教えてくれないかしら?」
「智子が教えればいいんじゃ…」
「私は少し用事があるのよ。いいでしょ、どうせ辞めるんだし…最後に儲けたい後輩に教えてあげてからでも…ね?」
「えっと…あ、おに」
「駄目よ。兄さんは大事な用事があるの」
私はなんか押しが強い、智子の圧に負けて受けてしまった・・・辞めようと思った最中に再度FXに戻るなんて・・・
「FX見習いの芽吹ちゃん」
「はじめまして!芽吹って呼んでください!」
「あ…どうも…」
「あっ話聞いてます!くるみ先輩ですよね!」
「3か月で30万を340万にしたFXの天才だって!」
「それは智子の助けがあったからで!」
…なんか智子から凄い誇張して聞かされていたが、私は芽吹ちゃんにFXを教えていく事になった。
私と同じ相場を選んで、同じ動きで売買をしてもらう・・・でも、私は買わない。儲けは芽吹ちゃんだけだ。
『やったー!ありがとうございます!』
・・・ずるい・・・
『12万も!凄いです、くるみさん!今夜は焼き肉だ!』
・・・本当は私が・・・
私は家族を選んだんだ
利益を得るだけじゃない?投資家を選べばいいんだよ?
黒い私が呟くんだ。甘い誘惑が、私を誘うんだ。
私は家族を選んだ!
はぁ…そうか、くるみさん。じゃあ取引しようか
原作は大きな損失の末に30万から210万。この作品では340万とする(定期的な助言を聞いている状態込み)。
最近始めた方なら一番理解できると思うが、下落時大きな損失を体験しないと危機感を感じなくなる。まるで麻薬みたいにね。コロナショック体験の事を思いだして、逃げれなかった損益を思い出すんだ。そして、くるみちゃんの本性…強欲の雌豚回を知りたい方は第9話を見るべし。
そして次回は少し、間があく可能性が出ました。ちょっと家族間で田舎へ行くので、少し早めに投稿しました。基本月・水固定でいいかな~でしたが申し訳ない。