梔子ユメが彼の専属オペレーターとなりその後いくつもの依頼をこなすにつれ、「アビドスの傭兵」の名は瞬く間に企業に広く浸透する様になる。
傭兵の実力を本物だと認めた企業は、遂に学園との抗争に本格的に投入し始めた。
アビドスと同じく砂漠の学園マグリブ自由学園は、規模も小さく力も弱いながら解放戦線部を立ち上げ企業の支配に激しく抵抗していた。
特に解放戦線部部長*1蛮馬アマネの力は凄まじく、幾たびも企業軍の侵攻を単独で跳ね除け砂漠の狼として恐れられる同学園の英雄である。
企業はマグリブ制圧最大の障害として彼女の抹殺を計画し、その実行役に「アビドスの傭兵」を指名した。
ユメと
《その力で...お前は何を守る...》
激しい戦いが繰り広がられたすえヘイローを砕かれ砂漠に倒れた“英雄“、蛮馬アマネは最期にそう残して息絶える。
アビドスの傭兵はただ無言で、今や物言わぬ英雄の亡骸を見下ろす。
その様子をモニター越しに見ていた梔子ユメは、アマネの最期に身が詰まる思いであった。
彼女が所属するマグリブ自由学園と解放戦線部との関係は、自分達とアビドス学園の関係に余りに酷似していたのである。
砂漠の貧しく小さな学園を守るために企業の支配に抵抗し、他方その企業の走狗となって戦うアビドス。
ともすれば自分達が辿ったかもしれない末路に、自分達の選択が本当に正しかったのか思い悩む。
その答えが来る日は永遠にないのかも知れない、ただ今は強敵との死闘を終えた彼を労う事しかユメには出来なかった。
『お疲れ様ですレイヴン、さぁアビドスに帰りましょう』
反企業の象徴たる蛮馬アマネの撃破は、アビドスの傭兵の価値をこれまで以上に押し上げた
莫大な報酬が学園に舞い込み、荒廃するアビドスの街にも人が戻り始めてきた
絵空事でしかなかったアビドスの復興は、私の手腕により今や現実のものとして着実に成果を上げ始めていたのだ。
アビドスが単純な成功を享受する一方で私は気になる情報を掴んでいた、依頼主である*2
対神秘技術開発の主導権争い、アビドスの傭兵によって持ち込まれた新技術を解明し力をつける新興企業グループと従来の大兵力主義を推すカイザーグループとの争いは次第に他企業にまで波及し、結果として潜在的な対立の顕在化を招く
アビドスが完全に立ち直る為にはまだまだ資金が必要であり、依頼が増えることは歓迎すべき事だとこの時は楽観視していたのだ。
蛮馬アマネを撃破しマグリブを壊滅させたアビドスの傭兵は、今や企業にとって黄金にも等しい価値を帯び始めていた。
当初小鳥遊ホシノと共に学園が始めた新たな事業に否定的な人々も、依頼のたびに舞い込む巨額の報酬にやがて声を上げることも無くなっていた。
アビドス学園は今や傭兵業を中心に急速に息を吹き返しつつあり、音頭を取る神助エミコはネフティス社と共に新インフラ事業をスタートさせる。
頻発する砂嵐を避けるため巨大なドームを建築し、学園と街全体を覆うという壮大なプロジェクトはそれまで以上の資金を必要とした。
慎重に選ばれていた依頼はいつしか報酬の額で決定されるようになり、内容も武装集団や不良生徒ではなく敵対する企業への露骨な攻撃に使われるようになる。
それがどれ程危険な事か熱に浮かされる人々はこの時誰も理解していなかった、ただ一人小鳥遊ホシノは時折
ある時、企業連合の雄カイザーグループから傘下のハイダ工廠を襲撃するという奇妙な依頼がアビドスに届く。
しかもこれまでの報酬とは比べものにもならない額が提示され、アビドスは一も二もなくこれに飛びつき唯一不安を伝える梔子ユメの声は既に人々の耳に届かなくなっていた。
後輩の小鳥遊ホシノとも疎遠になり、ただ傭兵のオペレーターという仕事を淡々とこなす彼女は既にアビドスの生徒会長ですらなかったのだ。
こうして後に企業解体戦争と呼ばれる戦いの引き金をアビドスとその傭兵は弾くことになる。
蛮馬アマネ マグリブ自由学園三年生、解放戦線部部長にして同学園の精神的支柱であり英雄と呼ばれる。企業による学園支配に抵抗するもアビドスの傭兵に討ち取られる。
元ネタ AC4のアマジーグ先生
マグリブ自由学園 アビドス高等学校と同じ砂漠に存在した中小学園。企業に狙われ彼らの支配に対抗するため解放戦線部を組織するもアビドスの傭兵により次々と拠点や主要幹部を失い部は瓦解。残る生徒達は学園に立て篭もるもアビドスの傭兵によって壊滅させられ学園は消滅する。