テロリストの名を借りた、企業間の代理戦争はカイザーグループハイダ工廠粛清により、一つの転機を迎える
すなわち、ハイダ工廠と提携していた新興企業グループがこの粛清が企業に対する直接攻撃に当たると、難癖をつけカイザーグループに報復攻撃を行なったのだ
これまで
ともすればライバル企業同士が対学園という共通の目的のために結んだ脆弱な同盟を維持する上で、醜い共食いを回避すべく最低限の均衡は保たれ無ければならない...
その均衡をアビドスの傭兵は崩してしまったのだ
企業連合始まっていらいの企業間直接戦闘は、対立を深めつつあった他企業にも瞬時に拡大しキヴォトスは理念なき戦乱に突入していく
そしてこの戦乱からアビドスの傭兵は*1三大学園の*2特記戦力と同等の戦力として扱われることになる
梔子ユメは企業の戦乱に巻き込まれることを危惧していた、本心ではあの男に戦いを止めて欲しかったのだろう
私には到底理解できなかった...彼女の杞憂が現実のものとなるその日まで
後に企業解体戦争と呼ばれることになる争いは、新興企業グループとカイザーグループ、セイント・ネフティスに分れ当初は互いの軍事目標のみに狙いを絞った限定戦争であった。
学園の支配者たる連邦生徒会の介入を避けるため後方都市や生産施設への直接攻撃は行われず、企業は積極的に傭兵を雇い戦いは消耗線の様相を呈し始めていく。
アビドス砂漠で膠着する戦況に業を煮やしたカイザーグループは、遂に敵対企業グループの本社を襲撃するという賭けに出る。
成功すれば戦況は劇的に変化し仮に失敗しても敵の戦力を削ることができる、だからこそこの危険な役目をアビドスの傭兵に依頼したのだ。
こうして企業解体戦争、その最初の転機となる戦いが始まった。
『あなたの手で
これまで幾度となくレイヴンの実力を見てきた梔子ユメも、瓦礫の山とかした元企業本社を前に思わずそう漏らす。
企業の中枢たる本社は当然その防衛は生半可ではなくまさに鉄壁の布陣と言って良い、それをレイヴンがたった一人で正面から打ち倒す姿は強くユメの脳裏に焼きついていた。
『レイヴンさん、あなたは本当に凄い人なんですね...いつもダメな私とは大違い...』
『いつもホシノちゃんに助けてもらってた』
『ねえ、覚えてますか?私達が最初にあった頃を。ホシノちゃんと私とレイヴンさんと...つい最近の事なのにもうずっと昔のことみたいで懐かしいですね』
まだ平和だった時を思い出し、梔子ユメは寂しそうにそうレイヴンに語りかけるのであった...。
グループ本社への襲撃、
同盟企業を失い劣勢を余儀なくされた新興企業グループは、戦局を覆すべく極めて直接的でリスクの高い戦術をとったのだ
対神秘技術とアビドスの傭兵がもたらした新技術を用いた決戦兵器による、敵中枢の直接攻撃
新興企業グループは持てる全ての戦力と危険な対神秘兵器を投入し、予告なく大規模な奇襲攻撃を敢行する
それまでの軍事目標に対するものから、企業を支えるインフラと労働者その住居施設に対する直接攻撃によりあっけなく都市は消滅した
企業解体戦争によりもたらされた破壊は、キヴォトス中に無秩序に戦火が拡大
最初の奇襲により壊滅的な打撃を被ったカイザーグループは一方的な防戦に追い込まれ、そのカイザーとネフティスの切り札となったのがあの男だった
この戦争におけるアビドスの傭兵の存在はまさに圧倒的だった、時に味方である私でさえ不安と恐怖を抱くほどに...
後から考えれば企業は彼の脅威を一番に感じていたからこそ、あの結末が訪れたのかもしれない
新興企業グループのなりふり構わない攻撃により、企業傘下の都市のみならず無関係の学園自治区にも被害が出始めていく。
対神秘決戦兵器による汚染はアビドス砂漠や周辺自然環境をも冒しはじめており、事態を重く見た三大学園や連邦生徒会が争いに介入するのは時間の問題だと思われた。
戦争の当事者たるカイザーグループは戦力の過半を失い政治的にもそう時間を残されておらず、早期の戦争終結がならねばグループの存続すら危うい程追い詰められていく。
だからこそ誰もが今まで以上にアビドスの傭兵に頼るようになっていた、アビドスと企業そしてキヴォトスの運命はたった一人の傭兵にかかっていたのだ。
アビドスの傭兵レイヴンと彼の駆るACは正に鬼神の如き活躍によって次々と新興企業グループの決戦兵器を破壊し、対神秘強化された企業の最精鋭戦力さえ葬っていく。
戦況は瞬く間に覆され、遂には単独で新興企業グループを壊滅することに成功し、企業の勝手な理由により始まった最悪の戦争はこうして終結したのだ。
戦いの後には夥しい犠牲者と汚染が広がる大地だけが残り、アビドスの傭兵がいなければ戦いは続きキヴォトスは破滅していたかもしれない。
こうしてアビドスと
新興企業グループは倒れ、汚染と荒廃した世界だけが残った
生き残ったカイザーをはじめとする企業は立て直しに追われ、戦争をする余裕など何処にもないように見えた
連邦生徒会も事態を未然に防げなかったことでかえって各学園から非難が集中し、被災した地域の復興に追われ企業を追求する余裕も無かったのである。
アビドスは既に十分な報酬を得て学園と街を覆うドームも完成間近であり、梔子ユメがあの男の休息を求めた時、私は深く考えずそれを了承した
この時の私は復興を成し遂げたアビドスのこれからのことで頭がいっぱいであり、自分たちが他からどの様に見られていたかなど気づきもしなかったのだ
...甘かった、と言えばそれまでだ。都合の良い恐怖は世界の常であるというのに
『アビドスに接近中の所属不明機を確認しました』
『あれは...何?様子がおかしい...それにあの光は?まさか、来ちゃダメですレイヴンさん!』
戦争が終わり繁栄を謳歌するアビドス、しかしそれは極短期間の内に終わる。
突如として襲来したアビドスの傭兵が駆るACに酷似した人型兵器は、復興したアビドスの街の悉くを破壊した。
レイヴンが駆けつけた時、日が陰り暗がりに落ちゆくアビドスの街の彼方此方で黒煙が立ち昇りドームは崩れ汚染は広がり最早取り返ししようがない程全てが壊れていた。
限界をきたした体でそれでもレイヴンは戦い続けた、最早取り戻しようが無いと知っていてもただ命を救ってくれたユメの為に僅かに残った命の火を燃やし抗い続ける。
崩壊したアビドスの街で激しい戦いを繰り広げその末に共に膝をつくレイヴンのACと人型兵器、その姿はアビドスの墓標の様に見えた。
小鳥遊ホシノがアビドスで起こった事を知り戻って来た時には全てが終わった後であった...。
梔子ユメはあの男を連れ、アビドスを去った
私には彼女達を止める権利も、言葉もなかった
これ以上は止めておこう、それは私が語るべき物語ではない