マジでなろう系の主人公になりかけてたやつ。そういえば誰も書いてないな〜って思って書いた。悔いはない。モチベは評価次第…かも。
一度も失敗したことのない者は、何も新しいことに挑戦したことのないものである。
かの有名なアルバート・アインシュタインの名言である。
一つの成功を生むのに失敗はつきもの。であるならば、俺が捕まってしまったのもまた、成功に繋げるためのものであったのだろう。
そういえば、俺の弁護をした奴は何処かで見たことがあったような気がする…が、頭の中を探し回ってもそんな記憶は存在しなかった。全く持って不思議だが、まぁそんなことはどうでもいい。
恐らく…いや、ほぼ確定と言っていいだろう。俺の弁護人も最初から俺の敵だったのだ。
冷たい檻の中で、俺は彼奴等にどう復讐するかだけを考えていた。心の底から溢れ出てきそうになる殺意が、奴らの喉元に噛み付かんとするようにしていた。
暗く冷たい鉄の塊を見つめながら、俺は必ず脱獄し、奴らを殺すと誓う。
そう考えていても、結局それは机上の空論。どう頑張ったって、俺の個性じゃ脱獄は不可能。仮にできたとしても、ありふれたヒーローに捕まってしまいだ。
そんなことを考えながらふと、窓の外を流すように見る。窓から見える光が、いつもよりも暗く、淀んで見えた。今日は曇りか…そう考えていたが、どうもそのような気配は感じなかった。
だから俺は、咄嗟に身を深く伏せた。
不思議と行動に迷いはなかった。ここ最近は晴れ続きで、雨が降るような雰囲気はなかった。外の看守が話の間際、今日の天気は晴れだなどと言っていたような気もする。更には俺の個性も反応していたような気がする。だがしかし、これらは結局判断材料の一つに過ぎなかった。
俺は身体中を駆け巡る冷たい殺気を覚えたのだ。其処にいるだけで死に至る。そんな予感ははたして、命中していた。
俺が先程まで立っていた場所が抉れていたのだ。いや、あれはもはや場所なんてものではなく、空間が抉れていた。そう思えるほどに被害は甚大だった。
俺の牢と一緒に他の囚人を監視していた看守は、上半身がごっそりなくなっていた。
暇潰しにと隣の囚人と一緒になってしりとりをしていた囚人は、そいつごと足首から先を残して消えていた。
毎晩毎晩殺すと口にしていた俺の隣の囚人は、飛んできた瓦礫に押しつぶされて息絶えていた。
この世の地獄を再現したような景色に、俺は思わず心臓が止まりそうになっていた。確かに、俺はここを脱獄して復讐すると誓っていた。それは紛れもなく殺害を目的としたものであったが、目の前の光景に圧倒され、唯見ていることしかできない。
そんな鳩が豆鉄砲をくらったかのように佇む俺の背後から、声が聞こえてくる。
「あぁ…しまった。僕としたことが…加減を間違えてしまったよ。」
背中が凍るどころの話ではなかった。声を聞いた途端、背骨を抜き取られたような感覚に襲われた。違った。違ったんだ。俺の個性が少ししか反応しなかったんじゃない。反応が大きすぎて気付けなかった!
恐怖に顔を引き攣らせて背後を向けずにいた俺を気にせず、襲撃犯?の人物は独り言を続ける。
「久しぶりに外に出たからか、出力を間違えてしまった…いや、これは弔に個性を渡した影響かな?ふふふ、面白いなぁ」
個性を渡す?そんな個性が存在するのだろうか?いやまて、ならば後ろにいる存在は何だ?仮にそんな個性があったとして、更に個性を他の人物に渡していたとして、何故こんな破壊を可能としている?おかしいだろう!そんなの、個性を複数持ち合わせているとしか考えが…
「おや?君はどうやら生き残ったみたいだね。悪運が強いのか、はたまた探知系の個性を持っているのか…」
?!…っ!あぁ、最悪だ、気づかれてしまった。終わる。終わる。俺の人生が。勝てるわけがない、逃げられるわけがない。
後ろの存在を知っている訳ではない。しかし、どうしようもないという事だけが俺の頭の中で激しく反復していた。
「探知系の個性ならば貰っておこうかな?それはあるだけあって困ることはない」
俺はここで終わるのだろう。個性を貰う、と言っているが、恐らくそれもこの存在なら可能だ。個性を取られた俺はどうなる?周りの奴らみたいに原型がなくなる程壊される?死ぬ?死ぬのか?俺…?
「…いや、君はこのままにしておくほうが面白そうだ」
何がおかしいのか、俺の心情などいざ知らず、その存在はまるでパレードを見に来た子供のようなテンションで話す。
助かった助かった助かった!
今ほど神に感謝をしたことはないだろう。そう思いながら俺は地面に倒れ込む。なりふりを構っていられなかった。ただ、自分は生きているということを実感しながら自らの耳をその存在の話にかたむけてゆく。恐らくこの存在の話を聞かなければ、せっかく助かった命の灯火も、ここで儚く消えてしまうのだろうと解っていたから。
そんな俺のことなどお構いなく、ムショ全体に話しかける。声を大きくあげているわけではない。だがしかし、不思議とその声は酷く響いて聞こえた。
「君達はこれから自由だ。何をしたっていい。縛られることなんてない。今のヒーローは衰弱している。ここからは、君達の物語だ」
◇ ◇ ◇
「テレビ映んねぇなぁ!何処もやってねぇし!」
「…しょうがねぇだろ、大体何処の局員も避難してるだろうからな」
あんな恐ろしいことがあった後、俺は近くにいた囚人と一緒に脱獄し、田舎の片隅に住んでいた。とは言っても、この住居には不法侵入で住んでいるのだが。
どいつもこいつも馬鹿ばかりだ。女女とうるさいヤツ。人を殺したいとうるさいヤツ。金にうるさいヤツ。どれもこれもがせっかく脱獄できたと言うのに、ヒーローに喧嘩を売るようなことをし続けている。
失敗をすることが駄目なことではない。失敗から学ばないことこそが駄目なことだと、どっかの誰かも言っていた気がする。
「幸いここの水と電気は生きてる。流通は死んでるが最低限の基盤は整ってんだろ」
そうだ。また捕まるリスクを冒すなんて馬鹿のすることだ。ヒーローは確かに衰弱していた。だが、それが必ずしも捕まらないとは限らない。もしもエンデヴァーが偶然居合わせたら?もし他のプロヒーローが居合わせたら?
最悪を考える。それが、これからを生きていくうえで最も大切なことだ。
───ピシッ
「っ!…」
あぁ…最悪だ、最悪だ最悪だ!
なんでなんだ…なんでまた…!
この感覚、まるで僅かにしか反応しないように感じる俺の個性。この殺気!間違いない、こんな存在がこの世で二人といるわけがない!
「なんでなんでなんで!」
「あ?どうしたんだよ、そんな顔してよぉ!」
隣の女はこの殺気に気付けないのだろうか?それでも元囚人か?ああ、違う。こいつは俺の個性と違って戦闘向きなんだっけか?いや、今は隣の女なんてどうでもいい!どうする?どうすれば!
隠れる?逃げる?戦う?
無理だ
前はあいつの機嫌が良かったんだ。個性でわかる。だが今はどうだ?明らかに怒りの感情が溢れ出ていて、何か焦っている?。あいつにしてみれば、俺達はまるで道端の蟻ん子のような命なのだろう。焦っている人間が足元の蟻を気にしながら進むだろうか?いや、しない。きっと俺達はこのまま轢き殺されるだろう。もしくは俺達が目的か?なんのために?
まるで蛇に睨まれた蛙のように固まったまま壁のほうを向いている俺を、隣の女は不思議そうに問いかけてくる。
「…?体調ワリィのか?な───」
言い終わるまもなく、俺が見ていた壁が破壊される。壊れた壁からは、長く伸び切った白髪に大きく禍々しい翼。ところどころが現在進行系で破裂していて、ボロボロだった。姿は違えど確信できる。あいつだ。いや、しかしなにかが混じっているような気もする。
だがそんな事がわかったところでこの状況が変わるわけではない。ボロボロのそいつは何かを喋りながらゆったりとこちらに近づい───
「お前をこの個性の保管場所に!」
何かが抜けていくと同時に入ってくる。いや、これは…個性?慣れ親しんだ個性が抜け出ていくのがわかる。おそらくこれが個性の奪取というやつなのだろう。だが同時におかしな感覚が俺の体を蝕む。なんだ?何なんだ?何なんだ───
その時、俺の中の何かが動き出す。右手は戸惑いもなく倒れたコップから流れ、伝ってきた水に触れ、左手は懐のライターを点火する。
そういえば、この部屋の隣は風呂場だった。隣の女も入ろうとしていたのか、風呂はためたままだったな。
『
「あ?」
「『水は電気分解する!』」
あぁ、そうだ。中学1年でもわかるもんさ。水を電気分解すりゃ水素と酸素が生まれる。運が良い。おそらく風呂場にも水は伝わっていたんだろう。あそこの水も分解されてる。そこで火をつけたんだ。後は、流石
「『水素爆発ってやつさ』」
ドォン!
◇ ◇ ◇
「が、ァァァ」
何だ?何が起きた?あぁ、そうだ。たしか僕はスターの個性を奪った。だが奴が最後に残していった遺恨、それが僕の体を蝕み続けていた。
だから他のモブから個性を奪い、新秩序を与え保管所にしようとしたんだ。
…だが、それを見誤ってしまった。
あのモブは、あろう事か個性を与えた瞬間にその個性を使った。使い方もまるでわかっていたみたいに。そのせいでやつを逃がしてしまった。探知系の個性でも探し出すことができない。いや、まだやつはそう遠くには行ってない!まだ間に合う。
…いや、判断を見誤るな。今の僕の体は、Ms.スターの個性の影響でボロボロになっている。まだ、ヒーローは死にきっていない。もしもこの状態を見られでもしたら…
苦渋の決断をするしかないようだ。それ程までにあの個性は惜しい。幸いにも個性を与えたモブは少なくともヒーローではない。むしろこちら側の素質を持っているように見えた。チャンスは未だある。ここは一度引いて機をうかがうとしよう。だからこそ。
「次は必ず貰うよ」
◇ ◇ ◇
「──ッハァァア!ッハァァア!」
分からない。何が起きた?身体中が焼け付くように痛い。いや、実際に焼けている。俺はあの時何をしたんだ?いや、違う。わかる。俺はこの個性が。この力が。そうさせるためのこれまでの記憶が…
『どうやら、危機は逃れたようだね』
「っ!」
なんだ?頭の中で声が響く。頭が痛い。
あまりの頭の痛さに震え、思わず目を閉じる。すると、その声の人物が鮮明に浮かび上がってくる。幻なのだろうか?そんな俺の考えをよそに、その人物は告げる。
『
『それが、私の個性であり、貴方に継がれた個性さ』
カシ・カシコ 個性:感情
周囲の感情を読み取ることができる。
読み取る範囲は最大で10メートル
薄く色で見えるが、相手の感情が大きすぎる
場合は気付けないことがある。
殺気にも気づけるぞ!