本ベル
パチリと目を開けて壁にかかっている時計を見てみる。
私が醜態を晒してから五時間は優に経っている。あの人たちが準備に夢中で気づかなかったのだろうか?そんなはずはない。きっと気を利かせて寝させてくれたのだろう。本当に申し訳ない気持ちになる。何をあの人たちに言えば良いのかわからない。
ベッドから這い上がってぼーっと考えていると公安局のカンナさんが入ってくる。
「起きたか?」
不安そうな表情で聞いてくる。
「おかげさまでバッチリ覚めました。すみません。」
「いいんだ。早速で悪いが、円卓のところに来てくれ。」
円卓のところに行くと全員が集まっていた。
「じゃあ、カンナと話し合って決めたこれからの動きを話すよ。」
日永さんが話し始める。
「まず、カンナと話し合った結果アビドス砂漠への調査を最優先にすることになった。」
やはりこうなるか。
「そして次にシャーレに忍び込む。」
「あの、ちょっとカンナさん?」
予想外の計画が飛び出てきて口を挟んでしまう。シャーレに忍び込むなど『どうぞ殺してください』と言っているようなものなのに。
「急になぜ•••。」
「つい最近先生補佐として入ってきたこの男の正体を探るためです。」
カンナさんはタブレットの写真を私に見せてくる。
よく見てみると二十代前半ぐらいで温和そうな男性が写っている。
「この男は名川先生と呼ばれている人で先生からの指名で連邦捜査部に入ってきました。」
急に現れた謎の男、怪しくないわけがない。なるほど、そういうことなら理解した。
「だろ、で、こっからが本題。愛莉、説明を頼む。」
そこで愛莉さんがスッと前に出る。
「はい。まず、これから説明させていただくのはアビドス砂漠で確認されているとある構造物です。」
愛莉さんはタブレットの画面を変えバンカーのようなものを映し出す。
「この構造物はつい最近発見されたもので、また、ここがあのメールの発信地でもあり、名川先生らしき人も確認されています。そしてこれを作ったのがこれまた•••。」
「私達の仕業だとされていると?」
「そういうことです。」
ここまでされるとあきれを通り越して感心してしまう。
「で、こっからこれに忍びこむプランを話すよ。まず僕と相葉、綾乃、カンナそして和田はこの構造物を直接見に行く。」
「私がですか!?。」
連れて行っても肉壁になるくらいにしか役に立てそうにないのだが。
いや、痩せ気味だから肉壁にもならないか。チビだし。
「で、愛理は通信網の保持、瀬名はドローンで周囲の状況監視。真谷は二人の護衛だよ。」
「わかりました。」
「うし、いっちょやってやるか。」
愛莉さんと瀬名さんが元気良く返事する。
「あの•••なぜ私を前線に?」
正気なのだろうか。
「ああ、まあ、なんか色々と知っていそうだし。」
理由がふわっとしすぎていませんか?
「まあ。身の安全については心配するな。三人とも全員強い。」
「•••分かりました。」
カンナさんがそこまでいうのなら大丈夫だろう。だが問題はそうじゃない。
「よし、じゃあ準備しようか、30分後に出発するよ。解散!」
とはいえ準備といっても何をしようか。ふとタブレットのことを思い出す。
自分の部屋に戻り、タブレットの電源を入れる。
『和田さん、こんばんは。』
メイさんが優しく言ってくれる。
「こんばんわ。」
『ところで今は何を?』
メイさんはキョトンとした顔で聞いてくる。
「今からアビドス砂漠に行くところです。」
『アビドス砂漠•••ああ、あそこですか。』
私が行き先を伝えるとメイさんは眉をひそめた。
「何かあるんですか?」
『まあ、曰く付きのところです。』
嫌な予感がプンプンする。
「•••生きて帰って来られるかなあ?」
『さあ、それはさておき、私も一緒につれていってくれませんか?』
「あなたを•••ですか?」
メイさんには申し訳ないが、余計なものを持ち歩いてしまうとみんなの迷惑になるのであまりやりたくないのだが。
『ええ、きっとご期待に答えられると思います。』
メイさんが眩しい笑顔をこちらに向けてくる。
こうなったら信用するしかない。
「そうなんですね。じゃあ、よろしくお願いします。」
『はい!あ、それとこれが置いてある机の一段目の引き出しを開けてみてください。』
言われた通りに引き出しを開けてみると白いカードが一枚入っている。
「これは?」
『今のところは切り札のようなものと考えていただければ幸いです。』
「•••なるほど。」
よくみてみるとカード会社も書いていない。全くもって謎が多いな。
「和田、ちょっといいか?」
「ひえっ、ど、どうされましたか?相葉さん?」
急に声をかけられてびっくりする。
後ろをみてみると腕組みをして壁に寄りかかっている副会長の相葉さんがいる。
カードとタブレットを咄嗟にスーツの内ポケットに入れ、向き合う。
「ちっとこい。」
「は•••はい。」
なんかデジャブだなあ。
相葉さんの後に続いて行くと「はい。」と一丁の銃を手渡される。
前に渡された拳銃とは違う。
「•••もしかしてショットガンですか?」
よく映画で見たことがある形だ。
「そう。口径は12ゲージ銃身は170mm。装弾方法はボルトアクションでスラグ弾もいけるやつだ。」
「あの•••これ反動でうまく扱える気がしないんですけれども。」
「大丈夫、そこは想定済みだ。そもそもお前を戦力として数えていない。」
現実を突きつけられて胸がキュッと苦しくなる。
そうだよな、私がいたところでと言う話だよな。
「お前が銃を使う時っていうのは、どうしようにもなくなった時しかない。だから、お前が使う中に必要なのはアサルトライフルとか、継戦能力が高いものじゃなくて、一発の火力が高いこれとかだ。だから、そん時は二発目なんか考えずにそれをぶちかませ。」
その時相葉さんがグッと顔をこっちに近づける。
「いいか、絶対に怯むな。最後まで戦え。もし煽られたりしたら言い返せ。外の世界からきたからって何もできないわけじゃねえって奴らに教えてやれ。」
「•••はい。」
さすがは元特殊部隊の人だ。死生観が違う。
「じゃあ、打ち方教えてやるからこっちこい。」
後ろをついていくと射撃訓練場のようなところにつく。
「んで、これが弾薬だ。」
相葉さんがヒョイっと渡されたショットガンの弾を見て驚く。
「これを相手に打ち込むんですか?」
想像よりも重い。これを自分に打ち込んだらと思うとゾッとする。
それなのにこれを相手に打ち込むと思うと•••。
「そうだ。で、」
相葉さんが丁寧に説明してくれたおかげで使い方はわかった。
「それじゃあ、あの的に撃ってみろ。」
「はい。」
銃を構え、深く息を吸い込み、狙いをつけて引き金を引く。
引いた直後、大きな音と硝煙の匂いがする。
「うん、まあいいんじゃないか?」
手から肩にかけてじんじんと痛む。
的を見ると中心から少し離れたところにいくつかの弾痕がついていた。
「ありがとうございます。」
相葉さんからまずまずの評価をもらう。
「あとこれも持っておけ。」
「これは?」
相葉さんから肩下げバックをもらう。中には何個かいろいろな機器が入っている。
「まあ、なんだ?スパイ道具みたいなものだ。お前が一番扱えそうだから渡しておく。」
私はぶっ壊すことぐれぇしかできないからな。と付け足しながら渡される。
「わかりました。」
カバンを大切に肩から下げる。
「相葉、和田。出発だ。」
下げるやいなやカンナさんが私たちを呼ぶ。
「今行く。」
「今行きます。」
相葉さんから渡されたものを持ち、二人揃ってカンナさんについていくと車が2台止まっていて、会長たちもいる。
「それじゃあ、和田くんたちはこっちの車。真谷たちはこっちの車ね。」
乗り込む車を見てみると装甲車であった。しかも上には機銃までついている。乗り込んでみると中は広々としていて快適だ。
「それじゃあ、相葉よろしく。」
「了解。」
車が動き倉庫から出る。
「和田くん。覚悟のほどは?」
「大丈夫です。」
もう覚悟は決まっているのだから怖いものはない•••はず。
「へっ、その意気込みがいつまで続くかな?」
「いつまでも続きます•••多分。」
「そうかいそうかい。」
相葉さんにからかわれる。はっきり言えない自分が不甲斐ない。
「和田くん。アビドス砂漠までまだまだ時間がかかるから寝ていていいよ。」
「お気遣いありがとうございます。けれども大丈夫です。」
さっきも寝て今度も寝るつもりはない。
車の中に静寂が訪れる。
「•••しかしまあ、こうしていると昔を思い出すね、相葉。」
日永さんが突然話し始める。
「ええ、あの頃が懐かしいです。」
相葉さんの表情がふっと柔らかくなる。
「本当にね、あの頃はさ、何かがあれば颯爽と現れ、お礼は受け取らないヒーローみたいな感じでさ、事件に巻き込まれた人を助け出して、陰でホッとしているところを見るのが本当に好きだった。」
「私たちの存在は公にされていませんでしたからね。
たとえ、作戦を成功させても表彰されたりすることはありませんでしたし。」
「あの、一体どういう•••。」
話に全くついていけない。
「ああ、大丈夫。またちゃんと話すから。」
「はあ。」
日永さんは窓の外を見る。
相葉さんから渡されたバッグに中身を確認しているとと時間が経つのは早いもので、すぐにアビドス砂漠にある怪しげな構造物の前にきた。
「よし、いくよ!」
「はいっ!」
元気よく返事をして車から降りると、目の前には大きな扉がある。
「さてと、この馬鹿でかい扉はどうしますかねえ?」
会長の日永さんが軽く言う。扉の隣にはカードリーダーがついているが当然使えない。
さあ、どうしようかな。
「吹き飛ばしましょう。」
相葉さんが勢いよく爆弾を両手にもって言う。いや爆弾はどこから出したんですか?
「え•••いやいやちょっと待ってくださいそんなことしたら中の人に気付かれますって。何かいい方法は•••。」
「あるのかい?」
「えーと、うーんと?」
必死に頭を動かす。だめだ、思いつかない。
「愛莉〜何かある?ハッキングとか。」
『流石にその装置に繋ぐこともできないのにハッキングも何もありません。』
そうですよね。
「やっぱり爆破こそ一番。」
「相葉さん待って。」
今にも爆弾を使いそうな相葉さんを制し、渡されたバッグの中からある装置と工具を取り出す。次にカードリーダーの外側を外し、中をこねくり回す。
「何しているの?」
会長が不思議そうに聞く。
「携帯とかってパスワードを何回か間違えるとロックされますよね?多分これにもそういう感じのがあると思うんでこれの電圧とか端子とかいじくりまわして、そう言うやつを無効化して、右手にもっているやつを使ってロックを解除します。」
「なるほど•••。けど、それの構造とかわかるの?」
「え•••あっはっはーワカリマスヨー。」
「絶対わかっていませんよね!?」
カンナさんが慌てているが問題はない。
「大丈夫です。同じ人間が作ったものなんですから•••考えることは一緒でしょう。はい、できた。」
言い終わると同時に作業が終わり、扉が開く。
「わーお、開いちゃったよ。」
「まあ、半分は勘でしたが。」
「勘なんですか!?」
「まあ、はい。」
わかるとか言っておきながらヒヤヒヤしていたのは心の中にしまっておこう。
「中に入りましょう。」
相葉さんが何事もなかったように平然と前を歩くが、さっきまで両手に持っていた爆弾はどこへいったのだろうか?
「全く貴様は••。」
カンナさんも呆れ顔である。何か昔あったのかな?
中に入っていくとどんどん怪しさを増していく。
内部はまるでハイテク工場の成れの果てのようで、前にいた研究所で見たような珍しい機械もあるのだが、それよりも気になるのはところどころに書かれた解読不明の文字群であり、それはラテン語に似ているが少し違う物だ。
……昔のトラウマが掘り返されるな。
「はあ、それにしてもなあ。カンナ、まさかあそこまで先生たちがカンカンだとは思わなかったね。」
「何があったんですか?」
「ん?ああ、別に宣戦布告されただけだよ。」
「どこから?」
あまりにも聞き慣れたことのない言葉に間抜け面を晒してしまいそうになる。
「え〜っと、ゲヘナでしょ、トリニティイでしょ、あとミレニアムと•••。」
「っていることは•••。」
「そうだよー。正実と風紀委員会とC&Cやらなんやらが正式に敵になったよ。」
これが夢だったら良いのだが、そうではないのは確実なので思わず気絶しそうになる。
「今日あった会議は大変だったらしいな。なんでも各校の代表者は気が凄まじく立っていたとか。」
「ええ、例の二人はその場にいるだけでやっとだったと言っていました。」
カンナさんが深いため息をつく。どれだけ大変だったのかがわかる。
「あのー、その話もし帰ったら•••。」
聞いていないのですごく気になる。
「もちろん話しましょう。」
カンナさんが快く返してくれる。
歩いて行くと広い広場のような場所に出る。
「それにしても「静かに。」」
日永さんが人差し指を口の前にかざす。
咄嗟に身を潜めると何やら機械音がする。
「和田くん、あれ、出しときな。」
小声でそう伝えられると例のショットガンを構える。
ひっそりと柱の側に息を潜めて音のなる方向を見てみると人型のロボットがこちらに向かってくる。
(大丈夫か?)
ロボットは次の瞬間こちらを向き、じろっと見つめる。
やるしかないのか。と覚悟を決めた次の瞬間何事もなかったようにロボットはどこかへいく。
「よかったね。」
隣にいた日永さんが言う。
「全く、人の気配がしないなと思っていたらロボットに警備をさせていたのか。先を急ごう。」
日永さんが歩き始め、その後についてゆく。
「それにしても、なんのためにここを作ったのでしょうか?」
「さあ?まあ、ろくでもない理由なのは確実だけれども。」
日永さんと綾乃さんが話しているとまたもや大きな扉に出くわす。
「デケェ扉だな。」
「入り口のところと同じようにやってみますね。」
またもやカバーを外そうとしたが、できない。
「うーん。外せませんね。」
「ちょっといい?」
「いいですよ。」
日永さんはカバーをガバッとつかみ、平然とバキッと言う音とともに外した。
「力•••強いんですね」
それしか言葉が出てこない。
「まあね〜。」
だがしかし、今度は基盤などではなく、何かをはめ込むような物が出てくる。
「えっと、これも外しちゃう?。」
「うーんとこれは•••。」
その時、持ってきたカードが目の前にあるそれにハメ込めそうなことに気づき、スーツの内ポケットから取り出し、割らないように慎重にはめ込む。
「これで何が起こるか•••。」
少し待つとゴゴゴ•••という重い音を立てながら扉が開き、カードが落ちる。
「和田くん。そのカードはどこから?」
「セーブハウスからです。」
「へー。そんなものがあったとはなあ。」
日永さんが不思議そうな顔をする。私もあの時同じ気持ちだったからわかる。
「とりあえず入りましょう。」
カンナさんに促されて入るとモニターが何台もある。
「一体なんの場所でしょうか?」
「……早く出ようぜ。」
確かにと思った。ふと気づくと後ろからギギィと言う音がして扉が閉まり、モニターにノイズが走る。
「あ?なんだぁ?」
「何が起こっているんだ?」
相葉さんと日永さんが驚く。私も驚き、ふとモニターをじっと見る。
しばらくするとよく見知った一人の人物が映る。
皆んなの視線がモニターに釘付けになる。
「うん?画面に映っている子って•••。」
ああ、嫌だ。ここに来てからこれを思い出すのは初めてだ。
そして、この瞬間、私たちをおとしめている人物が誰かもはっきりとわかった。
モニターでは昔の私がまるで操り人形のようになっている姿が映し出されている。ああ、これを見ていると、あの人のことを思い出してしまう。
「和田くん、これは•••。」
日永さんは唖然とし。
「今すぐモニターをぶっ壊してぇ、こんなん見ていられねぇよ。」
相葉さんは顔をしかめ。
「ごめん、皆んな。吐きそうなんだけれども。」
綾乃さんは今にも吐きそうな顔をする。
皆が目の前のモニターに映し出されているものに対して顔を背ける。
するとモニターの画面が変わり、とある人物が映し出される。
『おやおやこれはこれは。アントテクネのみーなさーん、こーんにちはー。おっ、僕の可愛い可愛い和田くぅんもいるじゃん!僕のこと覚えてくれていたー?。』
気持ちが悪くなるような甘い声。一体その声で信用させ、裏切り、何人の人生を破滅へと導いたのだろうか。
動揺を隠すようになるべく凛とした声で言う。
「これをやったのは貴方だと薄々勘づいていましたよ。こんな醜悪なことができるのは二人といませんから。」
モニターに映った人物は『うげっ』と言うような顔をする。
『嫌だなー、そんな嫌そうな顔をしないでよ。ほら、昔よく一緒にいたじゃん。あの時の君はすっごく人気者だったよねー。みんなが『可愛い、可愛い』って言っていたよね。おかげさまで助かったよ。メイリーちゃん?』
一気に昔のことを思い出す。けど、目の前にいる人物に弱いところを見せるわけにはいかない。
「一つ聞かせてください。あなたはここで何をしようとしているんですか?」
これは絶対に聞き出さなければならない。
『あれれー?二つじゃないのぉ?』
嫌味ったらしく聞いてくる。
「いいえ、一つです。」
はっきりと言い放つ。
『違うでしょ。こう言う時はまず『なんでお前が生きているんだよ。』って言うのが鉄板でしょ?』
「あなたが生きていることはなんとなく察していましたよ。あの後死体が無かったですから。」
すると『おや?』と言う顔をモニターに写っている人物はする。
『えー僕のことを殺した張本人がそれ言っちゃうの?』
一気にみんなの視点が自分に集まる。
「殺した…?」
日永さんがあり得ないと言った様子で聞いてくる。
だめだそれを言われたら私は
『二年前——————
誰が僕を殺したのか忘れちゃったのかな?』
ここにいられないのに。
記憶がフラッシュバックする。思い出さないように心の奥底にとどめていたものが湧き上がってくる。
『あーちゃんと覚えていたんだね。嬉しいなあ〜。そういやあの時の罪悪感?でぐちゃぐちゃになっていた君の顔はすごく良かったよ。あ、君のお母さんは元気にしているの?まあ、別にあんなの僕にとってはどうでもいいんだけれど、気になるから教えて欲しいな♡。』
彼はニコッと微笑みながら言う。なんとか気力を振り絞って答える。
「母は•••闘病の末、私がここに来る前に亡くなりました。あなたのせいでね。」
『おおっ!ちゃんと死んだの?やったあ!僕が予想していた時期に死んだ!やっぱ僕って天才科学者なのかな?』
「”ちゃんと”とはどういうことですか?」
何を言っているんだ彼は?
『ああ、実は君のお母さんを使って実験していてね。二年ぐらいで壊れると予想していたんだけど•••合っていたね!ラッキー!僕はやっぱり天才科学者なのかな?』
「冗談を•••貴方はただの疫病神でしょう。あの時、何をしたか忘れたとは言わせませんよ?」
もう耐えられそうにない。今にも膝から崩れ落ちてしまいそうだ。
すると『はて?』と言う顔を彼はする。
『えーっと。君がいた研究所を最高の”遊園地”にして、たくさんの僕のお友達を楽しませたこと?』
「”遊園地”?ご冗談を、あれはただの殺人ショーですよ。」
『おかしいなぁ?色々なアトラクションがあったじゃん。例えば•••そうだなあ、殺人ロボットから逃げ回ったり、爆弾解除ゲームとかあったじゃん。あ、そうだった。1番の目玉はあれだったよねー、江野•••だっけ?まあ、その人を助けるか、それともその人の家族を助けるか。って言うゲーム。あれ視聴率よかったんだよ。』
どうしても頭に血が昇ってしまう。
「もしよければそれ以上口を開かないでいただけますか?気分が悪くなります。」
少し口調が荒くなりそうだが必死に押さえ込む。
だめだ。この人のペースに巻き込まれちゃいけない。紳士になれ、私。
あの人のように。
『はーっ。なんでそんな怒った顔をしないでよ。せっかくいいニュースを聞かせてあげようと思ったのに。』
「は?」
何を言っているのだろうか。
『実は•••彼は生きていましたー!おめでとう!パチパチ〜。あ、今映すね。』
モニターに映し出されたのは。セーブハウスでみた写真の男。
「その人は!」
『あーこの人はみんなから名川先生って言われている人だけど、本当の正体は紛れもなく江野だよ。その証拠にマスクをとってあげると•••。』
彼が顔に手をやりビリビリと変装用のマスクを剥がすと、紛れもなく江野先生だ。あの人懐っこい笑顔を浮かべて、私を助けてくれたうちの一人。忘れるはずがない。
『こいつさー。僕の目を盗んでメールを送っていたんだよね。誰にかはわからないけれども。こんなことをされたら困るんだよねー。だから、こんな奴が二度と出ないように•••ちゃんと僕の部下を躾けないといけない。なのでー、殺しまーす♡』
「なっ。」
江野先生の額に拳銃が押し付けられる。
『いーち、にーの、』
「やめろ!」
『さーん!』
その声と同時に発砲音が聞こえ、江野先生はガクンと俯く。
目の前が真っ暗になる。守れなかった。その事実だけが突きつけられる。
『はーっ。なんだか面倒くさくなっちゃったからからあと一つだけ。君のお姉さんは殺すよ。あと、どうせ君たちは終わりだから。じゃあね。』
それだけを彼は言い残し、彼はモニターを消そうとする。
待って、姉を殺した、だって?
膝から崩れ落ちる。
『君は姉を探しにここへやってきたんだろう?残念♡む•だ•でしたーおめれとー。じゃ、早く君たちの劇をおしまいにしてよ。』
「おしまいになるのは貴様だ。」
『ほう?』
それまで黙っていた日永さんが口を開く。
「二年前、彼に何をしたのかは知らないが、私の大事な後輩に手を二度も出したやつを野放しにするなんてことはしない。必ずお前を探し出して全ての真実を暴いてやる。」
すると彼はにやっと笑う。
『なるほどなるほど、君たちは今この瞬間僕のことを殺したくて殺したくて仕方なぁ〜いんだね。じゃあ、和田くん。君に一つ手がかりを差し上げよう。』
「手がかり?」
『そう、君たちは不思議に思わなかったのかなあ?“なんで先生が生徒を殺そうとしているのかについて”』
「……聞かせてください。」
なんだか嫌な予感がするが聞くしかない。
『じゃあそこにいるショートボブの人に質問。デデン!“私は和田くんのお母さんでどんな実験をしていたでしょうか?”」
日永さんに彼は質問を投げかける。
「•••他人の死ぬ時を決められる毒薬か?」
『うーん。まあ、部分的には正解。』
どういうことだ。そんな毒薬が存在してたまるか。
『まあ、正解を話すと『人を操れるもの』だよ。』
「“もの”とはいったいなんなんですか?」
『まあ、『呪い』かな?簡単に例えるならば『マインドコントールができて好きな時に殺せるわら人形』を使ったって言った方がいいかな?』
「なんだと?」
世の理を大きく外れたものを聞かされ驚く。
『ま、そういうことはどうでもよくて、君はよくお母さんの病室にいっていたね。そこで君はよく『元気にしている?』だの『最近悪いことはない?』だの言っていたよね。その時に君が見せた幸せな顔は忘れられないなあ。
その後僕が君のお母さんを殺すことは知らずに。ああ、泣きじゃくるあの顔は忘れなかったなあ。』
もう何も言うことができない。
『で、今先生にも同じものをかけている。』
「じゃあ、てめぇは今すぐ先生を殺せるのかよ?」
相葉さんが今にもモニターに飛びかかりそうな勢いで聞く。
『ああ、いや無理。条件が揃わなくなっちゃったから。』
条件?
『いつでもやろうとすればできるはずだったんだけど…つい最近できなくなっちゃったんだよね。何か知らない?』
あっけらかんと聞いてくる。
「知るかそんなん。」
相葉さんが返答する。
『まあ、いいや。最後にこれを話そうか。さっき君のお姉さんは死んだって言ったけど、ちゃんと生きているよ。』
「は?」
『うん。で、ちなみに先生のことを助けるならお姉さんは君たちが殺さなきゃいけない。』
「は?」
なにがどうなっているんだ。
「•••一応聞きましょう。なぜ?」
『自分で考えなよ。科学者でしょ?』
まあ、そうか。
『しかし、まだ話せる気力が残っているとはねえ、さすが和田くんだね。君の母親の死に際の言葉が『生きて』だったからかな?』
へえ?
「何か勘違いしていませんか?」
『何をだい?』
なるほどね。
「私の母親の最後の言葉は“私はお前の母親だ。心配するな。あの世に逝っても守ってやる”でしたよ?もしかして、自分でもよくわからないものを使っているんですか?」
『まあ、そうだね。』
彼は少しムスッとした顔になる。
「じゃあ、私があなたよりも早くその構造を理解してみせる。」
私も科学者なのでね。
そう言うと彼は狂気的なあの笑顔を浮かべる。
『やっっぱり君はそう来るか!いいねえ、とっってもいい!ああ、そうだ。君だけじゃない、アントテクネの皆さま?どうか私のことを楽しませてくださいね?じゃあ、また生きていたら会いましょう。』
モニターにはもう彼の姿は映っておらず、代わりに『3:00:00』と表示される。言うまでもなく爆発までのカウントダウンだろう。
「和田くん、大丈夫か?」
カンナさんが心配そうに聞いてくる。
「大丈夫です。それよりも、一刻も早くここを出ましょう。」
痩せ我慢だ。全然大丈夫じゃない。でもそれはそれ、これはこれだ。まずはこの扉を突破する方法を考えるしかないのだが、方法はもう決まっている。
「相葉さん、お願いできますか?」
「当たりめぇだ。」
相葉さんはものの10秒ほどで爆弾を設置すると、起爆させ一瞬で扉を吹き飛ばす。
「みんないくよ!」
皆が一斉に走り出し、それに必死についていこうとするがどうしても遅れてしまう。
私はお荷物になってしまうのか?そんなのは嫌だ。
「よっ•••っと。肩に捕まっていなよ。」
どうにかしようと考えていると綾乃さんがが私を抱え上げる。しかも俗に言うお姫様抱っこと言うやつで。
しかも、私を抱えているにも関わらず綾乃さんはペースを落とさずに走っている。ああ、あまりにも不甲斐なくて泣きそうだ。
けど、なぜだろう異性に触れられているのに不快感がない。
「大丈夫。君はここまで来る時によく働いてくれた。こっからは私たちの得意分野だから任せて。」
そんな私を察してくれた綾乃さんは凛とした声で話しかけてくれる。けど、こんなんでいいのだろうか?
「和田くん、私たちはチームなんだ。人は得意不得意があって当たり前なんだ。まあ、だから、うまく適材適所でやっていこう、ね?」
同じように日永さんが優しく言う。
「はい•••。」
私はそう返すことしかできなかった。
「さてと。綾乃、その子を離しちゃだめだよ。」
前を見ると行きの時に見たロボットが群れをなして一斉にこちらに向かってくる。
「相葉。わかっているね?」
「ええ、もちろん。」
「じゃあ、やるよ。」
その瞬間二人が飛び出す。
「日永さん!」
「絶対に大丈夫ですから安心してください。」
カンナさんがはっきりとそう言うが、相手が数十台もいて、中には大型の物もいると言うのにそれは無茶なお願いだと言うものだ。
「それでも———『バギィ。』え?」
今、目の前で起こったことを受け入れられない自分がいた。
相葉さんは普通の何気ないパンチにもかかわらず数台まとめて吹っ飛ばしているし、日永さんに至っては音もなくロボットの背後をとり、バレリーナのように、息を呑むほど美しく破壊していく。
「あめぇんだよ!」
相葉さんが吠える。身長190cmぐらいあるであろうその体躯から発せられた言葉に私たちは安心し、感情を持っていないはずのロボットが驚いたようにも見えた。
「ほら、大丈夫そうでしょう。」
カンナさんの言った通り大丈夫そうだ。
「よし!あと少し!」
出口が見えてくる。扉は開いたままだ。
そのまま扉を通りすぎ、外に出た瞬間、爆発が起きる。
咄嗟に全員が伏せ、私は真谷さんに抱えられる。
「えーとみんな大丈夫?」
「ああ。」
「多分大丈夫です。」
カンナさんと相葉さんが答えるが、私と真谷さんはそんな余裕はなかった。
『皆さん、ご無事でしたか?』
「なんとかね。」
『それよりも早くそこから離脱してください。』
愛莉さんの声は切羽詰まっている。
「何があったんですか?」
『複数人を今、皆さんがいるところから100キロほどのところで発見しました。おそらくアビドスの人たちでしょう。』
それを聞いた日永さんは顔は青ざめていた。
「まずいね。早く逃げるよ。」
私たちはすぐに装甲車に乗り込み、その場を離れる。
「はあ、危なかった。」
日永さんが安心したような顔をする。
「なあ、和田。大丈夫か?」
相葉さんが心配してくれる。
「大丈夫ではないです。」
「まあ、そうだよな。」
車内は行きとは違い、気まずい雰囲気になる。
「和田くん。帰ったら少しお話をしないかい?」
「•••はい。」
これ以上隠し事はしたくない。それにもうきっちりと過去と決別したい。
「それは和田くんだけではなくて、私たちのこともですよね。」
相葉さんが丁寧に日永さんに尋ねる。
「そうだね、ちゃんと私たちがヴァルキューレから嫌われているのかについても話さなければいけない。」
車内はまた静かになる。
「そういえば私たちのチーム名を決めない?」
「•••え?」
急に日永さんが突拍子もないことを言い、戸惑う。
「確かに、決めた方がいいですね。」
「でしょ?決めておかないと名乗れないし。」
なんで皆さんすんなり賛成しているんですか。まあ名乗るかどうかは別として、確かに決めた方がいいとは思うけど•••
「じゃあ、意見ある人!」
「暗黒騎士団。」
「却下!さすがに厨二病が過ぎる!」
流石にそれはないですよ相葉さん。
「冤罪解決探偵団!」
「却下!かっこよくない!」
まあそうだけど•••
「じゃあ”レベラティオ諜報機関(RIA)”はどうですか?」
「それでいいや!」
ええ•••
「まあ、私もそれがいいと思います。」
「同じく。」
「それがいいかと。」
思いの外、みんなも賛成してくれる。
「じゃあみんな、少し休もうか。」
私は少し目を閉じてみる。するとそのまま眠ってしまった。
原作キャラの口調は合っていると思いますか?
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とても合っている
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まあまあ合っている
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普通に合っている
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あまり合っていない
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絶望的に合っていない