「••きて」
「んん•••あともうちょっとだけ•••ダメ?」
「ダメもうついたよ。」
「フエッ!?」
目を覚ましてみるともうセーフハウスについていた。
日永さんが私の顔を覗き込む。
「いやーさっきの寝言は録音しておけばよかったなあ。もう一回言ってくれない?」
ニヤニヤしながら日永さんが聞いてくる。上手く再現できるかわからないけどやってみよう。
「『んん•••あともうちょっとだけ•••ダメ?』」
「今の流れで言うことある!?」
綾乃さんがびっくりして言う。
いやまあ、寝言の一つや二つは大丈夫ですけれども。
「よし、録音できた。」
日永さんが少し悪い顔をしている。
「和田、そういうのはあんまり言わない方がいい。」
カンナさんに呆れ半分、真面目半分で言われる。
「カンナさん、大丈夫ですよ。言ったからって皆さんが何かされるわけではないでしょう?」
えっと、そんなにいけなかった……ですか?
「まあ、確かにお前に何かするわけではねぇが私たちの心臓に悪い。」
カンナさんはウンウンと首を縦に振っている。
「ええ•••。」
相葉さんは顔を見る限り本気で言っているようだ。
「わかりました。あんまり言わないことにします。」
なんでだろう?別にどうってことはないと思うんだけれども。
「皆さん、早く中にお入りください。」
声をした方を見ると愛莉さんが立っていた。
「わかった。みんな行こうか。」
日永さんに従って私たちはまたあの円卓がある部屋に集まる。
「じゃあ、座ろうか。」
綾乃さんが促す。
「あのー皆さんお飲み物とかは?」
少し気を利かしてみる。
「ではB&Bを一杯。」
愛莉さんはスッと手をあげ、真顔で言う。
「いや愛莉さん未成年ですよね!?ダメですよ。というかよくご存知で。」
いきなりカクテルの名前が出てくるとは思わなかった。
「あれ、作れないっていうツッコミはないの?」
綾乃さんが聞いてくる。
「あ、いや、作れることは作れますよ。よく研究所の皆さんに振る舞っていたんで。」
「作れるんかい!」
日永さんがすかさずツッコんでくる。
まあ、味は勿論わかりませんけれども。
「うーん、落ち着いたら何か作ってもらおうかな?」
綾乃さんの目がキラリと光る。
「もちろん。とびきりのノンアルコールのカクテルをご馳走しますよ。」
その時日永さんがキリッとした顔になる。
「研究所•••ああそうだ、とりあえず話をしなきゃ。和田くん。とりあえず人数分の水をお願い。」
「わかりました。」
台所に行き、人数分のグラスとコースターをお盆に乗せて持っていく。
「お待たせしました。」
素早く、けれども忙しなさを感じさせないように配り、席に着く。
「和田くんありがとう。さあ、ここからは隠し事はなしにして、話をしよう。まず和田くんからでいいかな?」
「ええ、では、まず初めに皆さんの疑問に答えましょう。何かある人。」
まず初めに綾乃さんが「ハイッ!」と勢いよく手を挙げる。
「では綾乃さん。」
「もう一回自己紹介してください!」
落ち込んでいたから元気が良くて助かる。
「わかりました。名前は和田 佐和。外の世界ではルクティア•霧宮理工研究所の特別上級研究員をしていて、姉を探すために今は休職•••というかなんというかお休みしてこっちに来ています。」
「なるほど。ところで、上級研究員ってまあまあ偉いって聞いたんだけど。どうなの?」
日永さんが聞いてくる。
「私がいたところは研究室のトップっていう感じなんですけど•••。」
「けど?」
「まあ、私だけじゃなくて、私たちのグループも立ち位置が特殊なんですよね。」
「ん?どうして。」
日永さんが聞いてくる。
「私たちは『わけがわからないものをどうにか理解して使う。』ことをやっていました。もっと言うと『超常現象やオーパーツの解明と利用。』ですね。」
「えっと、ここでも超常現象が起こったり、オーパーツが発掘されることはあるけど•••利用って?」
日永さんが首を傾げる。私も最初そうだったなあ。
「では、順を追って話しますね。まず、私がいた世界ではつい数年前まで超常現象というのは自然発生するもので、オーパーツはとうの昔に作られたと考えられてきました。まあ、不思議なことがいっぱいある世界でしたし、誰も気にしていなかったんです。」
「あれ、違ったの?」
日永さんがまたもや首を傾げる。
「まあ、大抵はそうだったんですけれども。大体3年前から異常現象の発生件数が異常に増え始めて・・・よく調べるとそのうちのいくつかは研究所やその他の機関に協力によってある一つの団体によって引き起こされ、作られていることが判明したんです。」
「名前は?」
日永さんの疑問に答える前に、一呼吸置く。
「『忘れ去られた劇団』という名前で、そしてこの団体のトップがあの場所で出会った男です。」
「そうだ!あの思い出すだけで吐き気がするあいつは一体なんなんだ?」
綾乃さんが怒気をはらんだ声で言う。
「出身地不明、年齢不明、経歴不明。何が真実で何が嘘なのか分からない男。一応。私たちは彼のことをベックスと呼んでいました。はっきりしているのは彼は劇場型犯罪を好み、私が二年前この手で殺したと言うこと。」
自分の手のひらを見て思い出す。
あの時は雨だった。彼は研究所の実働部隊によってもう息も絶え絶えだった。そこで私は彼と一騎討ちをして、争い、最後に私が彼の胸に刀を突き立てて殺した。
「もしかして和田のトラウマにもやつが関係しているのか?」
今度はカンナさんが聞いてくる。
「ええ。私は彼に騙され、悪魔の巣窟のような場所に放り込まれたんです。あそこは酷かったな~。人間の欲という欲が集まって•••倫理観というものはゴミ箱に捨てられているようなところでした。朝一緒にご飯を食べた仲間が夕方にはいないことなんて普通で、今度は自分か自分かと、仲間同士憎しみあい、その中でも追い詰められた人は他の人を殺し、その様子さえ……。」
「そんな•••。」
日永さんは絶句する。
お願いだから空気重くならないで……みんなの曇った顔は見たくないんだ。
「……なるほどね。じゃあ、次は私たちの過去についての話そうか。」
会長の日永さんが姿勢を直し、静かに口を開く。
うーん。まあ、確かに隠し事はしなかったし良いや。言葉足らずになっちゃったけど。
「まず、綾乃、私、真谷さん。そして市川さんとのヴァルキューレでの立ち位置は他とは違っていてトロイ機関っていう秘匿組織にいたんだ。
“部”でも“委員会”でもない“機関”にね。組織があることを知っているのは上層部の人間だけ、もちろんヴァルキューレとは公には関係がないって言われて、まあ、いろいろと任務をこなしていた。」
日永さんはそこで一息つく。
「あの頃はいろいろと無茶をしたなあ。ゲヘナの風紀委員会の情報部やミレニアムのC&Cと情報の取引をしたことだってあるし、時にはぶつかることだってあった。」
「まっ、私も協力してたんだ。そんなこんなで粛々と任務をこなしていたある日、新しい指令が入ったんだ。トリニティにあるテロ組織を監視しろってな。」
相葉さんがぶっきらぼうに言う。
「それはアリウスのことでしょうか?」
愛梨さんが綾乃さんに質問する。
「いいや、違う。あれよりタチの悪いものだ。その組織はなんでもキヴォトスの人間を攫って外の世界に売っているらしくて、私たちはその組織を調べ始めた。」
机の上にある綾乃さんの手がわなわなと震えている。
「それからだった。私たちの仲間が一人、また一人と消え始めたんだ。」
「まあ、これも追っていた組織の仕業だったらしい。」
綾乃さんが話したことに、日永さんが付け加える。
「そして私たちは誰かが仕組んだ罠に嵌められた。当然組織は解体。市川さんも私も住むところがなくなった。」
日永さんはその時何を感じたんだろう?
自分たちを都合よく利用して切り捨てたヴァルキューレへの恨みかな、それとも•••。
「あの時は助けられず本当に申し訳なかった。」
カンナさんが深々と頭を下げる。
「いいんだ。さすがにカンナまでに迷惑をかけるわけにはいけなかったし。今、こうして協力してくれているだけでも嬉しいよ。」
日永さんのいう通りだと思う。これを知られたらカンナさんは死ぬかもしれないのに。
「で、追い出された後、私たちを拾ってくれたのが君の姉、和田 美希だった。」
「ちなみにですが、何年前の話ですか?」
私はふと聞いてみる。
「二年前、だね。」
日永さんの言葉に絶句する。
「日永さんは初めて会った時、こう仰ったのではないですか?
『三年前から君のお姉さんだけではなく、卒業生含めて次々にこの学校の関係者が失踪している』と。」
なぜこの人は嘘をついた?
「そうだね。あの時私は君に嘘をついた。」
日永さんはまっすぐに私を見た後、深々と頭を下げた。
「本当に申し訳ない。」
「いいんです。それに、私に事実を隠すようにしたのは姉ですよね。」
姉は他の人のことは気にするのに自分のことは気にしない人だ。
「•••君には驚かされてばかりだよ。」
日永さんがどこか悟ったような表情をする。
「そう。彼女は君を巻き込まないようにって、自分のことを失踪したことにしたんだ。」
ああ、私が頼りになる存在だったらもっと頼ってくれたのだろうか?
あれをもっと早く手に入れることができていたら?
恐怖症になっていなかったら?
いじめられたくらいで病んでいなかったら?
身長が低くなかったら?
もっと頼り甲斐のある顔だったなら?
どうしたら頼ってくれたんだ?
「和田くん。どうか自分をそんなに責めないでくれ。」
綾乃さん?
「美希は君のことを信頼していたよ。」
そんなはずがない。引きこもっている私を一番多く見たのは私の姉だ。
「あなたは違うって顔をしているけど、ホントです。
あの人はいつもあなたのことを信頼していました。
『私ができないことは彼には絶対できる。』って。」
瀬名さんが付け加えてくれる。
なんてことを言うんだあの人は。自分自身が成し遂げてきたものが私なんかに劣ると?
ありえない、自分のことを過小評価しすぎている。
「あっ、そういえば、私はあまり自分のことを話していませんよね」
瀬名さんがいう。
「瀬名さんってどこの出身なんですか?」
思わず聞いてしまう。
「この際ですから正直に申し上げますと、どこの出身でもありません。」
そうなのか。となると、愛莉さん同様に拾われたのか。
「簡単に話すと、やんちゃしていたから私がフルボッコにして無理やり雇った。」
綾乃さぁん!?
「まあ、そういうわけでございます。」
今の瀬名さんからは想像もできない。
「では、真谷さんは?」
平静を装って聞いてみる。
「簡単です。セミナーが研究費を出してくれなかったので辞めました。」
なるほどね。気持ちはよくわかる
「さっ、これにて一旦話題を変えよう。」
となると、
「『シャーレへの潜入をどうするか。』ですよね。」
相葉さんが言う。
「その通り。」
一気に会議室の空気がさらに重くなる。
「まず、今のシャーレの警備状況はどうなっているかだよね。」
綾乃さんが顎に手を当てながら言う。
「それについて少しよろしいでしょうか?」
カンナさんから何かあるみたいだ。
「今のシャーレの警備状況について、少しあの二人に聞いてみたのですが、わからないらしいです。」
なんだか嫌な予感がしてしまう。ヴァルキューレに情報が伝えられてないということは・・・。
「やっぱり完全にヴァルキューレは信用されていないね。」
日永さんが言う。
「その通りです。スパイ疑惑は勿論、ヴァルキューレの管轄内で先生が襲撃されたので信用は完全になくなりました。」
さあ、どうしたものかな。
「なら、シャーレの監視カメラをハッキングすると言うのはどうでしょうか?」
思い切って提案してみる。
「襲撃以来、各学園がシャーレの警備増強に協力しています。その一環でサイバー攻撃に対しミレニアムがなんらかの防衛策を用意していると考えられるので、難しいかと。」
カンナさんの言葉に頭を悩ませてしまう。
「となると、ぶっつけ本番でやるしかないですね。」
瀬名さんが言う。
「その通りだとは思う。じゃあ、だれが、どうやって侵入するかだよね。」
「それは私と和田でやろう。」
日永さんの言葉に綾乃さんが素早く反応する。
「いいね、それ。」
日永さんは乗り気のようだ。
「じゃあ、私と綾乃で入る。これに異論は?」
私を含め、反論する人はいない。
「じゃあ、次にどうやって入るかだけど。」
じゃあ。と、思い切って手を挙げてみる。
「和田くん、何か意見が?」
「はい。ズバリ他の学校の生徒として入るんです。」
「ふーん。詳しく。」
「はい。」
よかった。少なくとも日永さんは乗り気だ。
「まず、入り込むために本当はいない生徒になります。」
「続けて。」
綾乃さんが言う。
「そのために他の学園のサーバーをハッキングし、生徒データベースを書き換え、偽の生徒情報を登録し、私たちはそれになりすまして侵入します。」
「なるほど、しかしバレたら•••。」
「元を辿られて会長と綾乃さんが棺桶の中に入ることになるどころか、このセーフハウスも発信元をたどられて使い物にならなくなる。」
日永さんと相葉さんが答える。
「それについてなのですが。」
愛莉さんがぼそっと言う。
「昔私ひとりでゲヘナのサーバーに入ったことがあったのですが、情報部に追いかけ回されるまでに3日間の猶予がありましたから。和田くんがいる今、不可能ではないですね。」
「ふーん。ゲヘナでその程度なら大丈夫そうですね。」
瀬名さんが相槌を打つ。
「じゃあ、私と真谷は会長たちの正体がばれたときのバックアップ要員、愛梨と和田は通信の保持やハッキング。瀬名はドローンで周囲の偵察。これで大丈夫ですかね。」
相葉さんが話を続ける。
「そうだね、じゃあさっそく愛梨、和田くん。やってくれるかい。」
「わかりました。」
「承知。」
愛理さんと私はパソコンを開き、お互いのパソコンをつなげる。
「さて、どこの学園の生徒になりすますか、ですが。」
「ミレニアムにしましょう。」
「ちょ、ちょっと待たないかい?」
愛理さんの言葉に日永さんが慌てる。
「さすがにミレニアムはちょっとハードルが高すぎない?」
「気持ちはわかります。ですが、だからこそ裏を突くのです。」
・・・この人・・・。
「わかった。二人ともやってくれ。」
その言葉を聞いた瞬間、愛理さんはキーボードをたたき始める。
「・・・いま、ミレニアムと取引している企業に成りすましてウイルス付きのメールを送りました。」
ちょっと時間がたち、「成功しました。」と愛梨さんが言い、ほっとしたような顔をしたかと思えば、焦った顔になる。
「すっかり油断していました。逆探知が開始され、あと3分21秒で逆探知がされます。」
「大丈夫です。今、『ロワ』を起動しました。二分でアクセス権限を奪取して、書き換えに15秒。遮断は一瞬でできますから1分6秒の猶予があります。」
とは言ったものの内心不安でしかない。『ロワ』はどんなにセキュリティが硬くてもハッキングするのにせいぜい1分もかからないはずなのに。
落ち着け、私まで慌てだしたら終わりだ。
「よし、できた。」
アクセス権限を奪取した瞬間、『ロワ』に表示されていた逆探知されるまでの予想時間が20秒と表示される。
「まずいまずいまずい・・・。」
自分でも血の気が引いていくのがわかる。
「データファイル、見つけた!」
愛理さんの言葉にハッとする。
「書き換えて!」
無我夢中で愛梨さんに言う。
「・・・完了!」
「遮断!」
愛理さんの報告を受けて私はすぐに接続を切り、ふ~と息を吐く。
「逆探知まであと0.021秒、グッジョブ二人とも。」
日永さんがねぎらってくれる。
「ありがとうございます、愛梨さん。」
「こちらこそ、和田くん。ありがとう。」
そういう彼女の顔は心なしか嬉しそうだ。
・・・杞憂かな?
「いや~もし逆探知されていたらやばいところだった。」
「まあ、5分後にはC&Cが来ていただろうね。」
日永さんと綾野さんがさらにほっとした顔になる。
「あの・・・C&Cって何ですか?」
昨日聞いた名前だが、どういう組織なのかは知らない。
「ああ、ミレニアムが誇るエージェントたちのことだよ。そしてそのめちゃくちゃつよ~い人たちの中でも頭一つとびぬけて強いのが、昨日瀬名が言った美甘 ネル。」
美甘・・ネル・・
「コールサイン"00".エージェントとしての成功率は100パーセント。まあ、ギヴォトスにいるなかでも最強っていっても過言じゃない。」
日永さんが明るく言う。
大丈夫なのかな・・・
「和田君。ちょっといい?」
ふいに綾乃さんから声を掛けられる。
「はい、なんでしょう?」
「ええっとね・・・車、運転できる?」
「まあ、できることにはできます。」
しどろもどろになりながら答える。
「よかった、来てくれない?」
綾乃さんの後をついていくとそこにはいつの間にか移動していた瀬名さんがある一台の車の前に立っている。
「これは・・・?」
「V型8気筒ツインターボエンジン搭載の超高馬力の車、乗りこなせそう?」
「ええっと、昔これと似たのに乗らさせてもらっていたので、できることにはできますが・・・。」
突然のことで少し脳がフリーズしてしまう。
急に車を運転しろなんて言われるとは思わなかった。
「わかった。座席の高さとかはこっちで調整しとく。」
瀬名さんがそう言って車を改造し始める。
「和田君、君には追っ手を撒くためのおとりになってほしいんだ。」
私は綾野さんのその一言で合点がいく。
「なるほど、そういうことでしたか。お任せください。」
深く頭を下げる。確かに、戦闘では役に立たない私が一番輝けることは、これしかない。
「すぐに任務を受け入れたのは、自分が一番いなくなってもチームが困らないと判断したからかい?」
綾乃さんがビシッという。
「いいえ、必ず任務を達成し、生きて帰ってきます。」
まっすぐに綾乃さんを見つめ、言う。
死んでしまってはやるべきこともやれなくなってしまうから。
「うん、頼んだよ。じゃあ、私は先にシャワーに入って寝るよ。」
そう言い残して、綾乃さんはどこかに行ってしまう。
「和田君。休みなよ。」
瀬名さんがやさしく言ってくれる。
「瀬名さん、おひとりで大丈夫ですか?」
「大丈夫。ほら、休んだ休んだ。」
「わかりました。」
その言葉に甘え、ひとまずキッチンでなにか飲もうと、その場を後にした。
キッチンに行ってみると日永さんが水を飲んでいた。その表情は固い。
「日永さん、大丈夫ですか?」
「ああ・・・和田君か、大丈夫だよ。」
どう考えても大丈夫じゃない笑顔を浮かべ、日永さんはそう答える。
「大丈夫、じゃないですよね。」
その次の瞬間、めまいがして、倒れそうになる。
机の端に手をかけ、急いでコップに水を汲み、スーツの内側にとっておいた薬を口に流し込む。
「・・・君もね。」
「お見苦しいところを見せて申し訳ございません。」
深々と日永さんに頭を下げる。
「いいんだよ。ねえ・・・ちょっと私の話を聞いてくれないかい?」
「もちろん、いいですよ。」
私たちはその場にあったカウンターチェアに腰をかける。
「不安なんだ。」
日永さんはポツリという。
「私はさ、侵入とか変装とか、そういうことは得意なんだけどさ、その・・・やっぱりトロイにいたころでも感じていたんだけどさ、戦うことについては一歩遅れていると思うんだ。」
あれで?と思ってしまう。
「その・・・なんか、こう、足りないんだ。何かが。」
そう言い、日永さんはうつむく。
「・・・私もです。研究所の人たちといると日永さんと同じことを感じるんです。」
あの人は私がわからない数学の証明を1日で終わらせた。
あの人はあり得ないほどコードを1日に書く。
そして、あの人は人知を超えた能力を持っていた。
そこである時、とある人に相談したんです『私には何が足りないんですか。』って。」
「で、なんて言われたんだい?」
日永さんはちらりと私を見る。
「たった一言でしたよ。『そういえるようになっていなさい。』でした。その時は分かりませんでしたが、たぶん『そう言い続けられるように努力をして、できないことを見つけなさい。』って意味だったんだと思います。
こっからは私の持論なんですが、人というのはできないことをなくすことは不可能だと思います。だから私たちは社会を作り上げることを選んだんだ、と。」
……だめだ、うまく話をまとめられない。けど、そんな私に日永さんはふっと微笑んでくる。
「なるほどね、要するに、何かできないからといって必ずしも自分を責める必要はない。チームで手分けすればいいと。」
そう、そういうことです。
「はい、とりわけ今回の作戦では戦うことは必要ではないと思うので。」
「・・・わかった。」
日永さんはフッと笑う。
「ありがとう。少し楽になったよ。」
「大丈夫ですよ。また何か悩み事があったら言ってくださいね。」
「日永~。」
ふいにシャワールームから綾乃さんが日永さんを呼ぶ。
「どうしたの?」
「ちょっと着替え持ってきてくれない?忘れちゃって。」
「は~い。じゃあね、和田くん。」
「ええ、また。」
そういうと日永さんは走って去ってしまった。
「さてと・・・」
そのあと、もろもろの準備を終え、布団にはいった。
「おやすみなさい。」
隣に相葉さんもいないのにそう言ってしまう。
・・・やっぱり寂しいなあ。
そう思いながら眠りについた。
原作キャラの口調は合っていると思いますか?
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とても合っている
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まあまあ合っている
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普通に合っている
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あまり合っていない
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絶望的に合っていない