暗殺教室 自己証明   作:烏鷺

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13時間目 第二の刃の時間

「さらに頑張って増えてみました。さぁ、授業開始です」

 

理事長先生がE組を訪れた翌日、殺せんせーは昨日よりも分身を増やし教室を埋めつくしていた。

昨日は生徒1人につき分身1人だったが今日は生徒1人につき分身4体で授業をしている。

 

「頑張るね、殺せんせー」

 

「当然です」

 

「君が賭けに勝てるように」

 

「全力で教えます」

 

「他の皆さんの成績も上げてみせます!!」

 

風影、雷影、土影、水影の衣装を着た殺せんせーはそう応えるとすぐに教科書をめくって問題を解くように勧めてくる。

 

しかし、随分と無茶をしている。問題を解く傍ら周りを見てみれば分身が雑になり別のキャラクターになってしまっているのが見える。実際、俺の担当の分身もたまに五影の衣装からハイキューやBLEACHの衣装に変化している。

 

「終わりましたか結城君?」

 

「えぇ、終わりました。次やりましょう」

 

その事を伝える余裕もなく俺は殺せんせーに急かされて問題を解き続ける。にしても、1時間1教科で勉強しているが熱が入り過ぎて時間の後半には高校の範囲をやってる。

 

「殺せんせー、少し飛ばしすぎじゃない?」

 

「そんな事ありません!君は既に各教科とも完璧に仕上がっています。このまま進めましょう!!」

 

熱が入り過ぎて少し心配になるが殺せんせーはそれを気にしている様子はない。だが、この調子で最後まで持つのだろうか、少し心配だ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

6時間目が終わると殺せんせーは案の定、疲労困憊で座り込んだ。急に増えた分身の事もあり全員が困惑した顔をしている。

 

「…さすがに相当疲れたみたいだな」

 

「今なら殺れるかな?」

 

座り込む殺せんせーに前原や中村がそう言うが今殺りにいっても避けられるのがオチだ。

 

「なんでこんなに一生懸命先生するのかね〜」

 

すると、息を切らす先生に岡島が呆れた様子で話しかけた。

 

「ヌルフフフ…全ては君達のテストの点を上げるためです。そうすれば皆さんから尊敬されて暗殺の危険も少なくなる上にあわよくば、近所の巨乳女子大生からも教えて欲しいとせがまれるかもしれませんからねぇ…ヌルフフフッ…」

 

「殺せんせーは国家機密だから俺達以外にモノ教えるのは防衛省が許さないと思うよ」

 

何やらピンク色の妄想を膨らませているようだが現実的に考えてありえない。俺は殺せんせーに近づいてそう言う。

 

「なっ、なら、巨乳女子大生は…?」

 

「3月までお目にかかる事はない」

 

俺のセリフにガーンと言う音が聞こえてきそうな程わかりやすい顔で殺せんせーは絶望して泣き始めた。

 

「しくしくしく…ですが良いのです。巨乳女子大生にせがまれることがなくとも皆さんの成績が上がってくれれば…」

 

「本音は?」

 

「巨乳女子大生には是が非でも会いたい!!」

 

泣き顔から一変して力強く即答する先生に笑いが起こった。顔色までピンクにして…本当に煩悩まみれの先生だよな。

 

「…でも、勉強の方はそれなりでいいよな」

 

そう思いながら呆れていると三村がそう言ってきた。

 

「…うん、なんたって暗殺すれば賞金100億だし」

 

「100億あれば成績悪くても人生バラ色だしさ」

 

そして、その言葉が伝播したように矢田と中村もそう言い出す。

 

「はぁ………」

 

思わずため息が出た。改めてここが『エンドのE組』なのだと理解させられる。

 

「にゅやっ!そ、そう言う考えをしますか!?」

 

殺せんせーも恐らく俺と似たような事を思ったのだろう驚いた様子でそう言う。

 

「俺達『エンドのE組』だぜ?殺せんせー」

 

「テストなんかより…暗殺の方がよほど身近なチャンスなんだよ」

 

しかし、岡島と三村がそう言うと真顔になった。何時も俺達に見せる白色の薄い真顔ではなく口角が下がった『本当の真顔』だ。

 

「…………………なるほど、よくわかりました」

 

声も明らかに何時と違う。低く、深く、よく通る声だ。声色から不機嫌だとよくわかる。

 

「な、何が?」

 

「今の君たちには…『暗殺者』の資格がありませんねぇ。全員、校庭へ出なさい。烏間先生とイリーナ先生にも声をかけて」

 

急変した殺せんせーの態度に全員困惑しているが殺せんせーはそう言い残して校庭へ行ってしまった。

 

「何?急に??」

 

「さぁ…いきなり不機嫌になったよね?」

 

「とりあえず、行ってみようぜ」

 

殺せんせーの態度に戸惑いながらもみんな教室から出ていく。しかし、俺は出ていくクラスメイトを後目に教室に残る。

 

「結城君は行かないの?」

 

「行く必要がない。殺せんせーが何を言いたいか…わかってるからな」

 

残る俺に潮田が声をかけてくるが俺がそう言うと首を傾げて校庭へ向かっていった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

生徒達より一足先に校庭へ出た私は岡島君と三村君の言葉を思い出していた。

 

「俺達『エンドのE組』だぜ?」

 

「テストなんかより…暗殺の方がよほど身近なチャンスなんだよ」

 

悔しさが自分の中で募っているのがわかる。日々の暗殺と勉学を通して生徒達は気がついてくれていると思っていた。

 

結城君に言葉にされてから生活の中で理解してもらえるように努めていたつもりだった。

 

しかし、ダメだったのだ。

 

『はぁ…………』

 

結城君のため息がまだ耳に残っている。彼は良くも悪くも正直だ。このクラスの教師になるにあたって生徒の情報は事前に防衛省によって集められ、そこには生徒の性質なども記載されていた。

 

『自閉スペクトラム症』

 

ASDと呼ばれる発達障害の1種。人とのコミュニケーションが苦手な事や特定の物事に強いこだわりがあるといった特徴がでる性質。結城君は自閉スペクトラム症であり彼は『法人類学』と『事実を事実として受け止め、追求する』ということに強いこだわりを持ち特殊な学問を極める事を夢見ている。

 

時折でる他人の心情や空気を読まない発言もこの性質によるところがあるのだろう。

 

だが、結城君はその発言に有無を言わせないだけの実績を『勉学』で『暗殺』で積み上げている。この事実が彼に自信を与え結城君を結城君たらしめている。

 

彼はたった今、私がこの教室からいなくなったとしても自らの夢を叶えることができるだろう。

 

『夢』と『それを叶える為に納めてきた勉学』。暗殺がなくなっても身につけてきた第二の刃が彼が『先』へと進む『力』になる。

 

そんな結城君のあのため息は『失望』の意味が隠されることなく含まれていた。

 

そんなため息をつかせてしまった事に悔しくなる。

 

しかし

 

「…殺せんせー?」

 

今、私の前に集まった生徒達に私は自分の気持ちを後に回しても目の前に集まる生徒達に伝えなければならないのだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

私、矢田桃花は殺せんせーに言われるがまま校庭に出た。他のみんなも校庭に出てきてるけど訳がわからずサッカーゴールを片付ける殺せんせーを見つめる。

 

「…殺せんせー?」

 

磯貝君がクラスを代表するように声をかけるけど殺せんせーの反応はない。

 

「ちょっと何なのよ、いきなり!?」

 

「殺せんせーがビッチ先生も連れて来いって!」

 

殺せんせーに呼ばれていたビッチ先生をメグちゃんが連れて来て、もう校庭に来てる烏間先生も含めて全員が揃った事になる。

 

「……あれ?」

 

そう思って辺りを見回した私はそう声を漏らしていた。

 

「結城は?」

 

「教室から出る時出る時声掛けたんだけど『言いたいことはわかるから』って言って教室に残ってるよ」

 

たまたま隣にいた渚君に教えてもらって教室の中を覗くと結城君はいつものように机に向かって勉強していた。

 

「イリーナ先生」

 

殺せんせーの話が始まる前に呼びに行こうとしたけどもう遅く話しは始まってしまった。

 

「な、何よ…」

 

「プロの殺し屋として伺います。あなたはいつも仕事をする時、用意するプランは1つですか?」

 

「いいえ、プランを1つしか用意しないなんてありえないわ。仕事では本命のプランなんて、上手くいかない時の方が多い。だからこそ、予備のプランをより綿密に練っておくのがプロの仕事よ」

 

「次に烏間先生。生徒にナイフ術を教える時、重要なのは第一撃だけですか?」

 

「いや、第一撃は勿論最重要だが強敵相手では第一撃は高確率で躱される。続く第二撃、第三撃をいかに高精度で繰り出すかが勝敗をわける」

 

殺せんせーの唐突な質問にビッチ先生も烏間先生も一瞬だけ戸惑っていたように見えたけどすぐに『プロの顔』になってそう応えた。

 

「結局、何が言いたいんだよ殺せんせー?」

 

殺せんせーが何を言いたいのかまだわからない。私だけじゃなくみんなそう思っていると思う。

 

「先生方のおっしゃるように、自信を持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる」

 

前原君のそう応えるように殺せんせーはそう言うとその場でクルクル回り始めた。

 

「対して君達はどうでしょう。『俺達には暗殺があるからそれでいいや』と勉強の目標を低くしている」

 

殺せんせーの回るスピードがどんどん早くなっていく。

 

「それは…劣等感の原因から目を背けているだけです。もし先生がこの教室から去ったら?もし、他の殺し屋が先に先生を殺したら??」

 

殺せんせーのスピードがどんどん上がって風の渦ができていく。

 

「暗殺という拠り所を失った君達には『E組の劣等感』しか残らない」

 

回りながらでもよく届く声、殺せんせーが何を言いたいのかわかった気がする。

 

「そんな危うい君達に先生からのアドバイスです」

 

 

『第二の刃を持たざる者に暗殺者を名乗る資格なし!!』

 

 

アドバイスと同時にいっきにスピードを上げた殺せんせーは竜巻を創り出した。

 

「きゃっ!!」

 

竜巻に声を上げながら頭を守りスカートの裾を抑える。竜巻は一瞬で無くなって辺りを見ると凄く綺麗になった校庭があった。

 

「校庭に雑草や凸凹が多かったのでね。少し手入れして起きました。先生は地球を滅ぼす超生物…この一帯を平にするなど、容易いことです」

 

呆気に取られる私達に殺せんせーは低い声でそう言ってくる。私を含めてみんなが怯えた表情になった。

 

「もし君達が自信の持てる『第二の刃』を示せなければ、相手に価する暗殺者はこの教室にはいないと見なし、校舎ごと平にして先生は去ります」

 

「第二の刃……いつまでに?」

 

「決まっています。明日です……明日の中間テストでクラス全員50位以内に入りなさい」

 

渚君に答えた殺せんせーのセリフにみんな驚いた。

 

「はぁ!?」

 

「そんなん出来るわけねぇって!!」

 

「いいえ、皆さんの第二の刃は先生が既に育てています。本校舎の教師達に劣るほど…先生はトロい教え方はしていません。自信を持って、その刃を振るって来なさい。ミッションを成功させ、恥じる事なく笑顔で胸を張るのです」

 

出来るわけない、と言う岡島君と三村君に殺せんせーは首を横に振ると私達にそう言う

 

「自分達が『暗殺者』であり、『E組』である事に!!」

 

そして、そう言うと殺せんせーは何処かへと飛んで行ってしまった。残された私達は突然告げられた重大ミッションに俯いてしまう。

 

「やるしか…ないんだよな…」

 

「そうだよ…やるしかないんだよ…」

 

すると、磯貝君とメグちゃんがポツリとそう言った。

 

「だよな…」

 

「やらないとダメなんだよね…」

 

2人の言葉に応えるように前原君とひなたちゃんがそう言う。

 

「やってやろうよ…殺せんせーが教えてくれたんだから」

 

「あぁ!」

 

「やってやろうぜ!!」

 

莉央ちゃんの言葉に岡島君と杉野君がそう応えた。磯貝君とメグちゃんから始まった『ヤル気』がどんどん伝播していってる。不思議と不安だった心も軽くなってやれるって気がしてくる。

 

「頑張ろう桃花ちゃん!」

 

「うん!頑張ろう!!」

 

笑顔でそう言う陽菜乃ちゃんに私も笑顔でそう応える。

 

「やってやろうぜみんな!!全員で殺せんせーのミッションをクリアするんだ!!」

 

『おう!!』

 

クラス委員長の磯貝君の言葉に皆で応えて私達は心を1つにした。

 

(明日頑張ろう!!クリアするんだ皆で!!)

 

私は心の中でもう一度意気込み陽菜乃ちゃん達と一緒にクラスへ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、この時は思ってなかった。まさか、あんな事になるなんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親や姉たちの人物紹介はあった方が良い?

  • 良い!!
  • なくても良い!!
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