暗殺教室 自己証明   作:烏鷺

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16時間目 決行の時間

「にゅや?」

 

朝、いつものように学校へ到着した私は校庭に昨日まではなかったセットがあるのを見つけた。

 

(ヌルフフフっ、恐らく誰かが考案した暗殺の為のセットですねぇ…。あるのは格闘リングのように設置された分厚いアクリル板のみ。しかし、1枚1枚に四角く切り取られた部分が2つある………とても気になりますがここで全てを調べ尽くすのは無粋です。隠していないことから今日中に誰かが誘ってくるでしょう。それまで待つとしましょうかねぇ)

 

誰が仕掛けて来るのか、どんな作戦なのか、とても気になる。しかし、その気持ちをグッと抑え込んで私は校舎の中へと入った。

 

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「本当に完成してる……」

 

朝、登校した俺は校庭に作られたセットを見て言葉を漏らした。

 

「結城君」

 

「烏間先生、おはようございます」

 

「あぁ、おはよう。一応君の要望通りにセッティングさせてもらった。毒液を散布するための機器も用意してある。しかし、今からここに置いておいて良いのか?ヤツは既に出勤している。調べ尽くされているかもしてんぞ?」

 

登校してきた俺が見えたのだろう。俺の挨拶を返した烏間先生は挨拶もそこそこにそう言う。烏間先生の言いたい事も理解出来るが俺は心配はしていなかった。

 

「その可能性はないと思います。殺せんせーはどんな暗殺にも喜んで対応する。自分が殺されないと思っているからと言うのもあると思いますが、前回の暗殺の際に『嬉しい』と言っていた所から考えると俺達生徒の暗殺を『楽しんで』いる。だから、極力その楽しみを殺すような事はしないと思います」

 

「……………」

 

俺がそう言うと烏間先生は黙ってしまった。

 

「どうかしましたか?」

 

俺がその事に首を傾げて尋ねると烏間先生は「いや…」と前置きをして

 

「君は本当にヤツを殺したいのか?」

 

そう問いかけてきた。

 

「どう言う意味でしょうか?」

 

昨日の寺坂と同じ質問だが烏間先生は寺坂とは違う。何か思うことがあるからそう聞いてきたのだろう。

 

「君の先程のセリフにはヤツへの『信用と信頼』が感じられる。だが、君は俺に個人的に追加の訓練を頼むほど暗殺に積極的だ。『信用し信頼するモノを殺したい』俺にはそれが何処か矛盾した意志に感じられる」

 

(あぁ、やはり。烏間先生は『ちゃんとした人』だ。俺達の、俺の事を良く見てくれているからこその考えとセリフだ)

 

烏間先生のセリフに俺は笑みを浮かべながらも応える。

 

「確かに殺せんせーの事は信用しているし信頼しています。それにある種の尊敬の念も抱いています。ですが、殺せんせーは『地球を破壊する生物』です。殺さなければ来年はやってこない。殺せんせーを暗殺する。これは任務です。なのでそれを達成する為の刃が信頼や信用や尊敬でブレることはあってはならない事だと思います。それで暗殺を失敗するなんて合理的ではないし理性的ではない。なので、心配は要りません」

 

「………………そうか。君は強いな」

 

「??えぇ、烏間先生には劣りますがクラスで一番強いですよ」

 

「いや、そういう意味ではないよ」

 

「??」

 

「なんでもない。暗殺が成功することを祈っているぞ」

 

「はい、ありがとうございます。期待に添えるように頑張ります」

 

烏間先生の言った意味は理解できなかったが俺は烏間先生からの激励にそう応えた。烏間先生は「では、また」と言ってその場を去っていく。俺は烏間先生を見送るとその場に残って用意されたセットを眺めていた。

 

「おはよう」

 

すると、不意に後ろから声をかけたれた。振り返ると矢田が笑顔で立っていた。

 

「おはよう。今日は早いんだな」

 

「それは結城君もでしょ、一番乗りじゃん」

 

俺のセリフに矢田は変わらず笑いながらそう応える。また、何処か懐かしさが蘇るがそれを言葉にはしない。

 

「セットがどうなってるか確認したくてな。何時もより早く目が覚めた」

 

「そうなんだ。私も今日は何時もより早く目が覚めちゃったの。緊張なのかな?」

 

「どうだろうな?案外『ワクワク』とか『興味』とかかもしれないぞ」

 

「結城君はそうなの?」

 

「あぁ、この作戦が成功するのか。それに成功するとしてどういう流れで成功するのかそれが楽しみで仕方ない」

 

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「殺せんせー」

 

昨日の放課後の作戦会議から時間が過ぎ昼食を食べている殺せんせーに俺は声をかけた。

 

「おや、どうしましたか結城君?」

 

「実は今日の放課後に殺せんせーを殺したいんだ」

 

「ほほぅ……」

 

昼食のケーキを食べる手を止めて殺せんせーはそう呟く。

 

「作戦は俺が考えた。やるのはクラス全員と烏間先生とビッチ先生。今日の放課後校庭に来てください」

 

「ヌルフフフっ、良いでしょう!君の挑戦を受けます!!ただしっ、前回は先生も痛い目を見ましたからねぇ…。一切の油断なく臨ませていただきます!」

 

俺のセリフに不敵な笑い声と強い意志がこもったセリフで殺せんせーは応えてくれた。これで作戦を決行する事が出来る。

 

「楽しみにしておいて下さい」

 

俺はその事に喜びながら悟られないようにいつもの口調でそう返した。

 

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殺せんせーに暗殺を予告してから時間は過ぎ、5時間目、6時間目の授業を終えた俺達は烏間先生が、いや、烏間先生を含む防衛省の方々が用意してくれた暗殺セットに殺せんせーを呼び出した。

 

「ヌルフフフッ、朝から気がついていましたがやはり暗殺のセットでしたか。それで?一体全体どのような作戦でくるのですか?」

 

校庭に取り付けられたアクリル板のリングの真ん中でニヤニヤと笑いながら殺せんせーは俺に話しかけてくる。

 

「そんなに急がなくても大丈ですよ。すぐに始めますから」

 

ニヤニヤ顔の殺せんせーを落ち着かせるようにそう言うと俺は磯貝にアイコンタクトを送る。アイコンタクトを受け取った磯貝は頷くと声を上げる。

 

「全員、準備開始!」

 

磯貝の掛け声に全員が動き始める。昨日、振り分けた通りに弾幕担当と毒液散布担当がそれぞれ四角く切り取られた小窓にライフルと専用のシャワーヘッドを取り付けていく。

 

「結城!セット完了だ!!」

 

そして、とうとう時間が来た。

 

「了解」

 

俺は磯貝にそう応えるとアクリル板の向うへ移動し銃を構え

 

「作戦…開始!!」

 

そう宣言した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

結城君が考えた作戦、私は油断する事なく直ぐに動けるように身構えた。

 

しかし

 

「作戦…開始!!」

 

それが良くなかった。

 

ガコンッ

 

結城君の掛け声と共にそんな音が地面から響いた。

 

「しまった!!」

 

音と共に無くなった地面の感覚にそう叫んだ。

 

設置された銃を見て合図と共に全員の銃撃が始まると思っていた。身構えて硬直した身体を襲う浮遊感。落とし穴に落とされたのだ。

 

パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパッ

 

ザバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ

 

そして落とし穴にハマった私に銃撃と雨が襲う。

 

落し穴の底には対先生弾、そして『私を囲うようにばら撒かれた弾丸』と『地面に触れた瞬間に地面を溶かした液体』。スローになった視界の中でそれを見た私は焦った。

左、右、上を弾幕に囲まれ上から毒液が降ってきている。地面が無くなり直ぐに飛ぶ事が出来ない私は落し穴の縁を掴まなくてはならない。しかし、それは弾幕と毒液によって出来ない。対先生弾は言わずもがなだが液体がまずい。毒は中から来ようが外から来ようが平気だが液体がまずい!触手がふやけて動きが鈍る!!それに身動きが取れないようにバラ撒かれている対先生弾がアクリル板で跳弾して次々と穴に落ちてきている。

既に、暗殺が始まって9秒が経っているが私の身体は幾つもの対先生弾が擦り傷が造られている。速く動く事の出来ない穴と状況、毒液の雨で服が溶かされそこに弾が擦りどんどん傷が増えていく。

 

まずい、まずい、まずい、まずい!!

 

後1、2秒で底に足が着く。そうなれば足が溶かされそのままタコジュースになってしまう。

 

ヤダ!それだけは絶対ヤダ!!

 

しかし

 

グシャッ!!!!

 

無常にも考えている間に足が地面に着き私の足がタコジュースになる。だが、私はここで死ぬ訳にはいかない。まだまだ彼らの成長を見なくてはならない。教えなくてはならない。

0.1秒、覚悟を決めた私は対先生弾で破壊される触手お構い無しに脱皮し服を千切る。脱いだ皮で毒液を、破った服で対先生弾を防ぐ。服が溶かされる一瞬で上まで飛ぶ。上手く飛ぶことの出来ない状況だ思ったほど速度はでない。だが、ダメージ覚悟で飛ぶならすぐに脱出できる。

 

バンッ!!

 

触手をボロボロにされ足を、服を溶かされ今までにないダメージを負ったが私は落し穴から脱出する事がで来た。

 

「や、やったぁー!!」

 

困難を乗り越えた。その喜びで声を上げる。しかし

 

ヒュンッ

 

そんな私の眼前に黒い物体が、いや、手榴弾が投げ込まれた。

 

完璧なタイミング、脱出し気が抜けた私への強襲。

 

「しまっ」

 

私の声は爆音に飲み込まれた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

殺せんせーが穴に落ちてから約10秒、未だに俺たちは銃撃を続けていた。少しでも手を止めれば殺せんせーは脱出してしまう。休まずに作戦を実行しつづける。ここで、殺したい。成功してくれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな思いも虚しく殺せんせーは持ち前の超スピードで落し穴から出てきてしまった。作戦に参加しているみんなの顔が曇る。だが、これで終わりではない。

 

理想は確実に落とし穴で仕留めることだがそれが失敗した時の作戦も考えてある。誰しもパニックから抜けることができれば気が抜ける。パニックになるのが早い殺せんせーでも同じなはず。それを前提にした上での作戦。

 

伝えていたのは烏丸先生だけ。ビッチ先生や他の全員には銃撃に全力を注いでもらう為に隠した。烏丸先生には遠隔での落とし穴の起動を頼んだが烏丸先生をそれだけに使うなんてあり得ない。セカンドプランの実行役をお願いしてある。

 

「全員、伏せろ!!」

 

そして、俺は殺せんせーの眼前に投げ込まれた手榴弾を見てそう叫んだ。

 

ドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!

 

直後、爆音が轟いた。完璧なタイミングだ。飛び散る対先生弾がアクリル板に当たる音を聞きながらそう思った。

 

しかし

 

「ふぅー、危なかった危なかった。危うく先生殺される所でした」

 

そんなセリフが耳に届き作戦が失敗したのだと教えられた。

 

「失敗……か………」

 

そう呟いて立ち上がり声がした方を振り向くと殺せんせーが立っていた。しかし、顔が損壊し服はボロボロ、触手も足もほとんどなくなっている。まず間違いなく過去最高最大のダメージを殺せんせーに与えている。しかし、失敗は失敗。俺は悔しさを吐き出すように息を吐いて

 

「失敗したか…」

 

もう一度そう呟いた。

 

だが

 

「失敗などでは決してありませんよ結城君」

 

殺せんせーはそう言って俺の頭を撫でた。

 

「せんせーをもう一度よく見てください。大ダメージです。君の立てた作戦という事で警戒していたせんせーに君はここまでのダメージを与えました。これは誇るべき事です。世界中の軍隊を持ってしてもここまでせんせーを追い詰める事は出来ませんでした。正直に言いましょう後少し手榴弾の爆発が早ければせんせーは殺されていました。君が立てた作戦はそれほどまでにせんせーを追い詰めました。磯貝君達も見事でした。弾幕、毒液散布、全て完璧なタイミングでした。だからこそ、せんせーにここまでのダメージを与える事が出来たのです。君の作戦に比べれば軍隊が実行してきた作戦はクソです。それにひきかえ君はその年で軍隊を超える作戦を立て実行することができる有能な生徒でアサシンだ。自分を誇ってください結城君」

 

「はい、ありがとうございます。でも次は殺します」

 

「ヌルフフフっそれで良し!その殺る気こそ暗殺教室の生徒です。次も期待していますよ」

 

殺せんせーそう言うと破壊された触手を再生させて飛んで行ってしまった。

 

「惜しかったね」

 

殺せんせーを見送ると後ろから不意に声をかけられた。振り返れば矢田と作戦に参加してくれた全員がいた。

 

「皆、参加してくれてありがとう。全員が参加してくれた事で今回の結果になった。次も頼む」

 

「あぁ、お前の作戦なら喜んで協力するよ。なぁ、みんな!」

 

「あぁ!もちろんだぜ!!」

 

「うん、結城君の頼みなら喜んでやるよ!」

 

全員に頭を下げてそう言うと磯貝がそう言い前原と矢田がそう言ってくれた。言葉はないが他の皆も頷いてくれている。

 

人の意思を動かすにはいくつか必要な事がある。数ある必要事項の中で1、2位を争うほどに大切なのは『実績』だ。前回と今回、クラスの全員が「また、参加する」と言ってくるだけの『実績』を俺は作ることが出来た。殺せんせーの言う通り自分を誇っても良いのかもしれない。

 

「ありがとう」

 

そう思いながら俺はそう言った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ガリガリガリカリカリカリカリカリカリッ

 

放課後の教室、沈みかける太陽が淡く照らす教室に文字を書く音が響いている。暗殺が終わり皆は下校し外では今日の暗殺で使ったセットの撤去が行われており落とし穴を作る為に開けた穴が重機によって塞がれている。

 

カリカリカリカリカリカリカリカリカリ…………。

 

重機が響かせる重い音を聴きながら今日の作戦の振り返りをまとめていた俺は手を止め身体から力を抜いた。

 

「ふぅー」

 

背もたれに身体を預け力を抜く。天井を見ながらぼーとしているとふわりと髪が揺れた。

 

「残って勉強ですか結城君?」

 

顔を傾ければそこには殺せんせーがおりそう言ってくる。

 

「違います。今日の暗殺の振り返りをしてたんです」

 

「勉強だけでなく暗殺まで振り返りを行うとは君は油断なりませんねぇ」

 

殺せんせーにそう言いながらノートを閉じると殺せんせーは何時もとは違う穏やかな表情でそう言ってきた。

 

「殺せんせーは今帰ってきたんですよね?何処に言ってたんです?」

 

「今日の暗殺で服がボロボロになりましたからね。仕立て直していたんですよ」

 

「『直していた』ってその服手作りだったんですね。どうりで家庭科の裁縫まで完璧に教えられるはずですね」

 

「会話の要所からそこまで思考しますか……。やはり君は油断ならない」

 

俺のセリフに口角を釣り上げてそう言う殺せんせーは先程とは打って変わって楽しそうな表情になった。しかし、すぐに真面目の表情になると

 

「結城君、君は何故そこまで頑張るのです?」

 

唐突にそう言ってきた。

 

「どう言う意味です?」

 

言葉の意図がわからずにそう聞き返すと殺せんせーはカルマの席の椅子に座り答えた。

 

「君は、並の中学生のレベルを遥かに超えています。元々の才能等もあるのでしょうがそれを差し引いても君は少し『異常』です。普通の15歳なら前原君や磯貝君、片岡さんや岡野さん達のように勉強、部活、遊び等を上手いバランスで保ちながら生活しますか。ですが、君は違う。遊びと好きな事と勉強が密接に関わり過ぎて見誤りますが君は『学ぶ』事しかしていない。普通の15歳の『部活』の部分も必要事項として身体を鍛える事で成り立たせていますね。げに恐ろしいのはこれだけの事を日常的にこなしながら君が壊れていないことです。君やこの教室の皆さんは普通に捉えていますがこれは『異常』と言って差支えがない。…………君は何故そこまで頑張るのですか?」

 

「………………」

 

殺せんせーの言っている事が理解出来なかった。殺せんせーが『異常』というソレは俺に取ってと『普通』だ。他人の『普通』は俺には関係がない。でも、その答えは殺せんせーの求める答えではないような気がする。どう答えれば良いんだろうか……。

 

「他人の普通はわからないし関係ないと思いますが恐らく『知恵こそが最大の富』だと思っているからだと思います」

 

そして、色々と考えた末に俺は答えた。

 

「俺は昔から変わった子だと言われてきました。人類学に興味を持ち好きになりこれが俺の道だと確信したのが5歳の時です。だから、周りから変な目で見られても気にならなかったし俺の事を父達は否定しなかった。でも、俺を否定してきた人間の理屈はどれもこれも合理性のない事ばかりで幼心に俺はそれがたまらなく嫌だった。だから俺は『学ぶ』事を止めないんだと思います。『学び』は確かな『知恵』を産み『知恵』は『合理性』の基礎になる。そしてそれら全てが俺を形作るものです。だから、俺は学ぶのをやめられない」

 

「そうですか……」

 

俺の答えを聞いた殺せんせーは短くそう呟いた。

 

「すみません結城君。せんせーはまだまだ君達の事を知らなさすぎる。だから、ついつい深い部分にまで触手を伸ばしてしまいました。ですが、答えてくれて嬉しかったです。ありがとう。ですが結城君。そろそろ日が落ちます。休息はパフォーマンスを維持する上でとても重要な要素です。今日は暗殺で体力も気力も消耗している。今日は家に帰ってちゃんと休んでください」

 

そてし、柔らかい声と表情でそう言うと俺の頭を触手で撫でた。

 

「確かにそうですね。殺せんせーの言う通りだ。今日は帰ります」

 

「そうしてください」

 

俺は殺せんせーにそう応えて下校の準備をし教室を出た「また明日元気に登校してください」と言って触手を振るせんせーに俺も手を振り山道を下る。

 

誰かに昔のことを話したのは初めてだ。誰も俺の昔の事は聞いてこなかったし俺もペラペラ自分の事を話す性格じゃない。それに

 

「そうか…中学に入るまでは矢田が一緒にいたからそんな必要がなかったんだ」

 

そうだ。中学に入るまでは昔から俺を知っている矢田が一緒にいた。だから、新しく自分の理解者を作る必要がなかったのだ。

 

だが

 

「そう言えばいつから一緒にいなくなったんだ………?」

 

中学の何処かのタイミングで一緒にいる事が減りそしてなくなった。何時からそうなったのか思い出せず1人で声に出し何かが引っかかる感覚を覚えながら俺は山を降りた。

修学旅行で矢田との距離を近づけるのに賛成な人

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