暗殺教室 自己証明   作:烏鷺

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1話目です。処女作なのでいろいろ大目に見てもらえるとありがたいです。

誤字、脱字には、注意して書いていますがあったら報告してくれると助かります。


1時間目 暗殺の時間

キーンコーンカーンコーンッ

 

今日も校舎にベルが鳴る。朝の始業のベルを聴きながら俺達は生唾を飲み込む。

 

ゴクリッ

 

教室の緊張感が高まっていく。そんな教室にガラガラと音を立てて扉が開き教師が中に入り教壇に立つ。そして

 

「ホームルームを始めます。日直の人は号令を」

 

担任がそう言うと

 

「き、起立!!」

ガチャガチャガチャッ!

 

日直の号令に合わせて俺たちは"銃"を構えて立ち上がった。

 

「気をつけ、礼!!」

ドパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ

 

そして、号令と共に"担任に向けて"引き金を引く。銃口から飛び出した無数の"BB弾"は容赦なく担任に襲いかかる。そのはずだった。

 

しかし

 

「おはようございます」

 

担任は何事も無いかのように"全弾躱しながら"出席簿を開きそう言う。

 

「発砲したままで結構ですので出欠をとります。磯貝君」

 

「……はい」

 

「すみませんが、銃声の中なのでもっと大きな声で」

 

「は、はい!!」

 

そしてそのまま出欠を取り始めた。そのまま、名前を呼ばれては返事をし、引き金を引き、無くなった弾を装填し、また引き金を引く。一心不乱にそれを繰り返す。しかし、担任には当たらない。しばらくすれば全員分の出欠が取り終わり俺達の射撃も終わる。

 

「遅刻なし…とっ、素晴らしい!先生とても嬉しいです!!」

 

数分間の全力のクラス一斉射撃。それを"全て躱した"担任は笑顔でそう言う。しかし、俺たちは疲れた様に俯く。

 

「残念ですねぇ、今日も命中弾ゼロです。数に頼る戦術は個々の思考を疎かにする。目線、銃口の向き、指の動き、一人一人が単純すぎます。もっと工夫しましょう。でないと、"最高時速マッハ20"の先生は殺せませんよ」

 

そんな、俺達に担任は"触手"をうねらせてそう言った。

 

そう、俺達の担任は普通ではない。人間ではない。

 

人外が俺達の担任

 

こうなった理由を説明するには、3年生の始めまで僅かながら時間を遡らなければならない。

 

3年の始め俺達は2つの事件に巻き込まれた。ひとつは、ある日突然月の7割が消滅し三日月になったこと

 

そして

 

「はじめまして、私が月を爆破した犯人です。来年には、地球も爆破する予定です。皆さんの担任になったのでどうぞよろしく」

 

突然こんなことを言って無数の触手を生やした黄色いタコの様な見た目をした謎の生物が担任になった事。意味のわからない状況はその生物と一緒にクラスに訪れた烏丸と言う人から説明された。

 

「防衛省の烏間と言うものだ。まずは、ここからの話しは国家機密だと理解頂きたい。単刀直入に言う。君達に、この生物を暗殺して欲しい!!」

 

全員の目が点になった。

 

「詳しい事は話せないが、こいつの言った事は真実だ。月を壊したこの生物は、来年の3月に地球をも破壊する。この事を知っているのは各国首脳だけ。世界がパニックになる前に…秘密裏にこいつを殺す努力をしている。つまり、"暗殺"だ」

 

俺達を放って話しを続ける烏間さんは突然に懐からナイフを取り出すとそう言ってナイフを振るった。しかし、全く当たらない。

 

「だが、コイツはとにかく速い!!殺すどころか眉毛の手入れをされている始末だ!!丁寧にな!!」

 

「満月を三日月に変える程のパワーを持つ超生物だ。最高時速は実にマッハ20!!つまり、コイツが本気で逃げれば我々は破滅の時まで手も足も出ない」

 

段々と整っていく烏間さんの眉を見ながら話しを聞く。しばらくすれば烏間さんの動きは止まりその生物はパチンと音を立てて鋏やピンセットが入った手入れキットを閉じると烏間さんの肩に手を置いて話し始めた。

 

「ま、それでは面白くないのでね。私から国に提案したのです。殺されるのはゴメンですが…。椚ヶ丘中学校3年E組の担任ならやってもいいと」

 

意味がわからない。また、俺達の目が点になる。

 

「コイツの狙いはわからん。だが、政府はやむなく承諾した。君達生徒には絶対に危害を加えない事を条件だ。理由は2つ。教師として毎日教室に来るのなら監視ができるし何よりも30人もの人間が至近距離からコイツを殺すチャンスを得る!!」

 

いや、意味がわからない。ここまで、話しを聞いてもみんなは理解出来ないと言った様子だった。俺は提案を受けた理由は理解出来たがこの生物を理解出来なかった。

 

(地球を救う為の判断としては合理的だ。だがそれより…。どう見ても、軟体生物だ。関節もなく、指と思われる部位も2本しかない。俺らで言う掌に当たる部位も大菱形骨や舟状骨と言った骨があるとは思えない…。全身が筋肉、そしてあのスピード。生物として成立してないだろ…。なのに、存在している。意味がわからないな)

 

「暗殺の成功報酬は100億円!」

 

「「「「「「!!??」」」」」」

 

考えこんでいると烏間さんの一言で俺の意識は現実に引き戻された。それはクラスのみんなも同じようで混乱していた表情や何か言いたそうにしていた顔が驚きで一新された。

 

「当然の額だ。暗殺の成功は冗談抜きで地球を救う事なのだから」

 

そんな、みんなの気持ちを見透かすように烏間さんはそう言う。

 

「幸いな事にコイツは君達をナメ切っている。見ろ、緑のシマシマになっている時はナメている顔だ」

 

暗殺成功の金額に驚く俺達をスルーして烏間さんはそう言う。烏間さんの言葉につられて俺達がその生物を見れば本当に顔に緑の縞模様が浮かび上がっていた。

 

(本当にタコのようだ…)

 

そんな生物にそんな事を思いながら俺は烏間さんに提示された金額について考えていた。

 

(100億円…。それだけの金額があればどんな大学にでも行ける。それこそ海外の大学だって…)

 

「そのスキをついて君達にはコイツを暗殺して欲しい。君達には、無害でコイツだけに効く弾とナイフを支給する」

 

物思いにふけっている内に話しが進んだのか烏間さんと同じような格好をした人達から銃とナイフが配られた。

 

「君達の家族や友人には絶対に秘密だ。とにかく時間がない。地球が消えれば逃げる場所などどこにもない!」

 

(そうだ。地球が消えれば大学も何も無い…。だが、それは困る。絶対にダメだ)

 

烏間さんの言葉に俺は息を呑みながら覚悟を決めた。

 

(卒業までに絶対に殺す)

 

「そう言う事です。さぁ、皆さん。残された1年を有意義に過ごしましょう」

 

そんな、俺の顔やみんなの顔を見回してその生物はそう言った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

俺達生徒は暗殺者。ターゲットは先生。

 

そんな歪な関係が始まってから早くも数日。先程の一斉射撃をはじめとした暗殺を何人かが仕掛けたが誰一人として超生物にダメージを入れた者はいない。銃撃、ナイフによる強襲、俺自身も何度か挑んだがダメだった。最高時速マッハ20だと先生や烏間さんは言ったがこの狭い教室でその速度は絶対に出せない。それなのにダメージを与えられない。

 

単純な実力不足。

 

それが俺の…、俺達の課題。このままでは殺せない。今だって…。

 

「中村さん!暗殺は勉強の妨げにならない時にと言ったはずです!!罰として後ろで立って受講しなさい!!」

 

授業中に中村が放った弾丸をチョークで挟んで止めて先生はそう言う。あっさりと神がかった事をやる。ダメだ。冗談抜きでアレを殺せる未来が想像出来ない。

 

その事に焦りながらも諦めることは一切無く虎視眈々と狙う。みんなも何時でも仕掛けられるように机にナイフと銃を仕込み。ライフルを手の届く位置に置いている。

 

いつまた仕掛けようか、そんな事を考えているとチャイムがなって午前最後の授業が終わる。

 

「昼休みですねぇ。先生ちょっと中国まで麻婆豆腐を食べに行ってきますね。ああ、もし暗殺希望者がいれば連絡してください」

 

そう言って開けた窓からコンビニに行くような気軽さで飛んでいく先生を呆然と俺達は見送った。

 

「マッハ20だから麻婆の本番四川省まで10分くらい…」

 

「確かにあんなのミサイルでも落とせんわな」

 

「しかもあのタコ音速飛行中にテストの採点までしてるんだぜ。この前、イラスト付きで褒められた」

 

「てかあいつ何気に教えるの上手くない?」

 

「わかる〜、私放課後に暗殺行った時ついでに数学教わってさぁ。次のテストの点良かったもん」

 

和気あいあいと先生についてそう話す一同だったが

 

「…ま、でもさ。所詮俺ら『エンドのE組』だしな。頑張っても仕方ないよな」

 

そう言うと途端に暗い表情になった。

 

そう、ここ3年E組は進学校である椚ヶ丘中学校のレベルについていけなくなった生徒や素行の悪い生徒が落とされる脱落組。『エンドのE組』は、そんな俺達のクラスの蔑称。山の上の校舎に隔離され環境が悪く他の生徒からの扱いも悪い。一応の救済処置もあるがそれが今まで使われたと言う話は少ない。そんな状況が劣等感を意識させている。そして、それを知っている他の生徒達は『そうはなるまい』と一心不乱に勉学に励む。それが、この学校の仕組みだ。

 

ちなみに言うと俺は2年の終わりに起こした暴力沙汰でE組になった。

 

(まぁ、正直言って本校舎の無神経な連中よりここにいる奴らの方がいい)

 

そんな事を思いつつ弁当を食べてるとクラスの端では

 

「おい渚、ちょっと来いよ。暗殺の計画進めようぜ」

 

そう声をかけられた潮田が寺坂、吉田、村松に外に連れ出されていた。

 

(何をするか知らないが、寺坂が考える計画でやられるとは思えない。無駄に終わるな)

 

そんな事を考えながら連れていかれる潮田を見送って俺は箸を進めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「お題にそって短歌を作ってみましょう。ラスト7文字を『触手なりけり』で締めてください。例文はこうです。『花さそふ、嵐の庭の、雪ならで、はえゆくものは、触手なりけり』…書けた人は先生の所に持ってきなさい。チェックするのは文法の正しさと触手を美しく表現できたか、出来た者から今日は帰ってよし!」

 

(鮮やかに映え、力強く生きてゆく生命とは、庭の桜を散らす花吹雪などではなく、触手だったのだなぁ…って状況が意味不明だ)

 

例文の内容に首を傾げながらペンをとって課題に向き合う。

 

(こうかな…)

 

思いついた短歌を書いていく。すると

 

「先生しつもーん」

 

茅野が元気よく手を挙げてそう言った。

 

「ん?どうかしましたか、茅野さん」

 

「今更だけどさ、先生の名前ってなんて言うの?他の先生と区別する時不便よ」

 

「名前ですか…。名乗るような名前はありませんねぇ。なんなら皆さんでつけて下さい。今は課題に集中ですよ」

 

茅野の質問にそう答えると先生はくつろぐように椅子の背もたれにもたれかかった。俺は書き上げた短歌を確認して頷く。

 

『白染まる、舞い散る雪の、古山に、秀麗でなるは、触手なりけり』

 

割と上手く出来ただろう。短歌の出来に納得して頷き立ち上がると、渚も同時に立ち上がった。

 

「おや、もう出来たのですか。渚君、結城君」

 

「はい、縛りがトリッキーすぎて悩みましたけど…」

 

「うんうん、悩んでもちゃんと書き上げるのは素晴らしいです。それで?どちらから見ましょうか」

 

同時に立ち上がった俺達を見てそう言う先生を一瞥して俺は席が近い潮田に先を譲るようにジェスチャーをした。

 

「ありがとう、結城君」

 

潮田はそう言って前に出ると薄ピンク色に顔色が変わった先生に短歌を持っていく。

 

「!」

 

しかし、その手には隠すようにナイフが握られていた。暗殺を仕掛ける気だ。俺が気づいたように前に進むにつれて他のみんなもナイフに気づく。一応、サポート出来るように俺は銃に手を伸ばす。

 

「それでは渚君。見せてください」

 

先生の前に着いた潮田はそう言われると有無を言わずナイフを突き刺した。しかし、そのナイフは腕ごと捕まれ止められる。いつものように暗殺が失敗する。

 

「言ったでしょう…。もっと工夫をと」

 

先生はいつものように暗殺後に潮田にアドバイスとしてそう言う。

 

しかし

 

先生の言葉を聞いた潮田は優しい笑みを浮かべて先生の首に手を回した。その時だ

 

潮田と先生を閃光が包み同時に派手な爆発音が教室に響いた。

 

(何が起こった?)

 

突然の事態に思考が鈍る。何が起きたか、簡単だ。潮田が先生を巻き込んで自爆した。爆発の煙が立ち込める中、歓声を上げて前に出てくる連中がいた。

 

「よっしゃー!!」

 

「100億ゲット!!」

 

寺坂達だ。ドタドタと騒ぎながら前に出てきた寺坂達は幼稚園児のようにはしゃぐ

 

「ちょっと!渚に何持たせたのよっ!?」

 

はしゃぎまくる寺坂達に茅野が声を荒らげてそう言う。その表情は心配と怒りが現れているのがよくわかる。しかし、寺坂達はそんな茅野に悪びれもせず答えた。

 

「オモチャの手榴弾だよ。ただし、火薬を使って威力を上げてある。300発の対先生弾がすげぇ速さで飛び散るようにな」

 

「なっ…」

 

「人間が死ぬような威力じゃねーよ。俺の100億で治療費ぐらい払ってやらァ」

 

周囲から向けられる非難や抗議の視線に鬱陶しそうな表情を浮かべて寺坂はそう言う。爆発の煙を手で払いながらニヤニヤと笑みを浮かべ寺坂は先生の死を確認するために近づいていく。

 

「なんだコレ…?」

 

しかし、黒くなった先生の死骸に近づくと余裕そうだった顔色が変わり困惑した表情になった。寺坂の手には半透明のビニールシートのようなモノが握られているおり先生の死骸に繋がっているように見えっ

 

「実は先生、月に1度程脱皮をします。脱いだ皮を爆弾に被せて威力を殺しました。つまりは、月イチで使える奥の手です」

 

「!!」

 

突然聞こえた先生の声に驚き俺は声がした天井を見上げる。天井には、触手を広げ張り付いた先生がいた。しかし、先生の顔はいつもの黄色ではなく真っ黒、ド怒りだった。

 

「寺坂、吉田、村松、首謀者は君らだな…っ!!」

 

「えっ、い、いや…渚が勝手に!」

 

教室にいる俺達全員が震える程の低く力強い怒りが顕になった声に寺坂達は涙目になっている。しかし、その寺坂の言葉を聞いた先生は超スピードで教室から飛び出すと一瞬で俺達の前に戻ってきた。腕の中に無数の表札を抱えて

 

ゴトッ、ゴトッ、ゴトッ

 

「お、俺らん家の表札…っ」

 

そして、音を立てて表札が落ちるとそこには寺坂達の名前があった。それを見た寺坂達は本格的に泣きそうになりながら尻もちをつく

 

「政府との契約ですから、先生は決して君達には危害は加えないが家族や友人…いや、君達以外を地球ごと消しますかねぇ」

 

そんな寺坂に先生はガパァと口を開けてそう言う。「何時でも家族を消してやれる」そう言われた俺たちはものの数秒で再確認した。いや、させられた。

 

『地球の何処にも逃げられない』

 

その事実を文字通り一瞬で突きつけられた俺達は息を呑む。

 

「な、何なんだよテメェ…、迷惑なんだよ!!いきなり来て地球爆破とか、暗殺しろとか…!!迷惑なやつに迷惑な殺し方して何が悪いんだよ!!」

 

見ていた俺達より直接的に事実を突きつけられた寺坂は泣きながらそう叫ぶ。完全に腰が引けド怒りの先生から必死に後ずさりながらそう言う寺坂に先生は

 

「迷惑?とんでもない。君達のアイディア自体はすごく良かった」

 

顔に️〇を浮かべて嬉しそうにそう言った。

 

「特に渚君。君の肉迫までの自然な体運びは100点です。先生は、見事に隙を疲れました」

 

そして、潮田の頭をそのうねる触手で撫でた。

 

「ただし!寺坂君達は渚君を渚君は自分を大切にしなかった。そんな生徒に暗殺する資格はありません!」

 

頭を撫でながら顔に‪✕‬を浮かべて潮田と寺坂達にそう言う先生は続いて俺達に視線を向け

 

「人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。君達全員それが出来る力を秘めた有能な暗殺者だ。暗殺対象である先生からのアドバイスです」

 

諭すようにそう言った。受け取り方は人それぞれ。怯えた様子の寺坂達、まじまじと先生を見つめる潮田、困惑した様子のクラスのみんな、そして俺は先生を訝しげに見つめる。そんなクラスの面々を見回した先生はニヤリと笑うと潮田に視線を合わせて話しかけた。

 

「…さて、問題です渚君。先生は殺される気など微塵もない。皆さんと3月までエンジョイしてから地球を爆破です。それが嫌なら君たちはどうしますか?」

 

「…その前に、先生を殺します」

 

先生の問に潮田はしっかりとそう答える。潮田の答えを聞いた先生は満足そうに頷くと顔に緑の縞模様を浮かべてニヤリと笑う。

 

「ヌルフフフッならば今殺ってみなさい。殺せた者から今日は帰ってよし!!」

 

そしてそう言うと椅子に座り表札の手入れをし始めた。すると、それを見ていた茅野が思いついたように話し始めた

 

「殺せない…先生…。あ、名前、『殺せんせー』は?」

 

「殺せんせー?」

 

茅野から提案されたのは先生の名前、語呂がよく覚えやすい。少し安直だとも思うが名付けられた本人も満足そうなので良いのだろう。そんな風に考えていると俺は自分が短歌の提出途中だった事を思い出した。

 

「あ、先生。自爆特攻があって忘れていたけど、俺の短歌も確認してください」

 

「ああ、そうでした、そうでした。結城君の短歌はまだ、確認していませんでしたね。どれどれ…」

 

まだ、手の中にあった紙を先生に出すと先生はそう言って短歌を確認してくれる。少しするとシュバッと音が聞こえ俺の前にタコの二重丸が書かれた紙が帰ってきていた。

 

「素晴らしい短歌です。結城君。古くからある山を染め上げる美しい雪の表現と『秀麗』と言う言葉で触手がその雪よりも美しいのだと表現している。なかなか選択出来る言葉ではありません。短時間でよく作り上げましたねぇ」

 

「ありがとうございます」

 

俺は先生の褒め言葉と紙を受け取り席に戻る。そして、鞄を取ると

 

「殺せんせー、俺もう帰りますね」

 

そう言って席を立った。

 

「にゅや!?どうしてですか、結城君!」

 

「だって俺、先生が『殺せた者から今日は帰って良し』って言う前に短歌を作って見せに行ってました。という事はつまり『短歌が出来た者から今日は帰って良し』って言っていた時のルールが適応されるはずです。先生に見てもらって評価も貰った。だから、帰ってもいいですよね?」

 

「そんな事言わずに!もっと先生を殺しに来て下さいよ!!」

 

「ひとりで先生を殺れるわけないじゃないですか、他のみんなも課題が終わってないみたいだし。援護も期待できないこの状況でダラダラと時間を無駄にするのは合理的じゃないので」

 

なんとは俺を引き留めようとする先生に俺はそう言うと教室から出ていった。

 

「にゅやぁ…」

 

俺を見送った先生はそんな声を上げているが策がない状況でやるつもりは無い。俺はさっさと靴を履き替え校舎から出ていった。

 

「明日の朝一番にお願いして見るかな」

 

そんな一言を零して。

 

 

 

 

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