暗殺教室 自己証明   作:烏鷺

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伊澄が少しやな奴になっているかもしれませんがご愛嬌という事でよろしくお願いいたします。


7時間目 カルマの時間 弐

「おはよう」

 

朝、校舎までの道を歩いていると前を歩く昔から見知った顔を見て俺は声をかけた。

 

「あ、おはよう、結城君」

 

「矢田、今日は早いんだな」

 

「私は何時もこのくらいだよ、この前が特別だっただけ」

 

「そうか」

 

「そう、結城君こそ今日は早いんだね」

 

「殺せんせーにもらった課題が終わったからな。見てもらいたくて早く登校した。それと、難しい部分もあったから教えてもらいたくてな」

 

「そうなんだ、どんな問題?」

 

「問題と言うより読解だな、英文の読解と先生からの質問に応える」

 

「へ〜、ちょっと見せてよ」

 

「見ても解らないぞ」

 

隣りを歩く矢田と他愛のない会話をしながら歩き矢田は俺が渡した英文が載った用紙を見ながら小難しい顔をして首を傾げている。

 

「これ、中学のレベルじゃなくない?」

 

「ああ、アメリカの学者が書いた論文だからな読解するには少なくとも高校卒業レベルの知識がないと読めない」

 

「そんなのわかるわけないじゃん!」

 

困り顔の矢田にそう言うと彼女はそう言って俺に用紙を押し付けた。

 

「はははっ」

 

「ちょっとなんで笑うの!」

 

それか何となく可笑しくて笑うと彼女はそう言って俺を叩くが全く痛くない力の弱い手に俺はふと懐かしさを覚えた。

 

「なんか懐かしいな。昔はこんな感じで何時も一緒にいたよな」

 

何となくそう口にすると矢田は立ち止まり目を見開いた。

 

「矢田?」

 

「なっ、なんでもないよ!…でも、うん、そうだね。小学生の時はこうやって何時も一緒にいたよね」

 

俺がそんな彼女を不思議に思い声をかけると矢田は慌てた様子でそう言ってきた。

 

「ああ、椚ヶ丘に入ってからはクラス被らないし1クラスあたりの人数が多いしであまり顔を合わせる機会が無くなったからそう言う時間なかったけど、この懐かしさは尊いものだな」

 

「そうだね、いい思い出だよね」

 

「ああ」

 

矢田にそう応えて俺は歩く、しかし、彼女はその後を着いてくるが何故か隣りを歩くことはなかった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

教室に着いて扉を開ける。しかし、俺は目の前にあるモノを見つけて目を細めた。

 

「結城君、どうしたの……ぁ」

 

そして、俺の後ろを歩いていた矢田も俺と同じ様にソレを見つけて小さく声を漏らした。

 

「おはよー、結城クン」

 

「…カルマ、この真蛸はお前か?」

 

「うん、そうだよ」

 

教壇の上にある頭をナイフで刺された真蛸を指差してそう言うとカルマはあっけらかんとした様子でそう応えた。

 

「悪いけど今日は俺、ずっと殺せんせーに暗殺を仕掛けるよ。コレはその手始めさ」

 

「お前、昨日俺が言った事聞こえてなかったのか?」

 

「聞こえてたよ〜、でも、そんなの俺には関係ない」

 

カルマの応えに俺は舌打ちすると席へと向かい机にカバンを置きカルマを見る

 

「お前、暗殺を仕掛けるのはいいが『何に』こだわってるんだ?」

 

「はぁ?」

 

「昨日のお前の発言…『もう誰もあんたを先生とは見てくれない』だったか?お前、殺せんせーを殺したいんじゃなくて『先生』を殺したいんだろ」

 

「何言ってんの、お前?」

 

カルマを見て俺はそう言うとカルマは真顔で目を見開いてそう言ってくる。

 

「昨日の発言から考えれば簡単に解ることだ。この教室にいる以上『殺せんせーを殺そうとする』のは当たり前だ。だけど、お前は触手を破壊して殺せんせーを煽り、殺せんせーのジェラートを盗って煽り、わざわざ殺せんせーに自分の立場を再確認される様な発言をしたり…。わざわざ殺せんせーが『そうなる』ように仕向けてる。これだけピースが揃えばお前が『殺せんせー』って言う生き物を殺したいんじゃなくて『先生』って生き物を殺したいんだと解る。そうだろ?」

 

「…………………………」

 

俺のセリフにカルマは何も言わずただ黙り込む。

 

「お前が『先生』を殺したい理由に興味はないが…『殺せんせー』を殺さないのならお前は今日一日を無駄にすることになる。まぁ、俺にやられた時から変化がないお前じゃあ『先生』を殺しに行っても失敗するのは目に見えてるがな」

 

「……………随分と人の事を解ったみたいに言うんだね。流石、椚ヶ丘学園史上最高の頭脳様だよ」

 

「ああ、確かに俺は頭が良い。そう言われるだけの実績を収めているからな。それに、さっきの俺のセリフはお前の発言を鑑みれば考えつく思考だ」

 

「チッ……………………………………結城クンがなんと言おうと俺は今日一日あの先生を殺しに行く。邪魔はしないでね」

 

「授業の邪魔にならない様にするなら考えるよ」

 

そう応えるとカルマは教室から出て行き俺は椅子に座ると1時間目の準備をして、手に殺せんせーからの課題を持って席を立った。

 

「結城君…」

 

すると、不安そうな表情で矢田が話しかけてきた。

 

「どうした?」

 

「どうしたじゃないよ!カルマ君と喧嘩になると思った…」

 

「アイツに負ける程弱くない」

 

「そう言う事じゃないよ…」

 

「どう言う事だ?」

 

「心配したって言ってるの!危ないよ!!」

 

「心配されなくても俺は3つの武道の有段者だ。負けないよ」

 

「全然わかってない!!」

 

俺のセリフにそう言う矢田に俺は首を傾げる。矢田は何故か不満そうな表情になるが俺は「心配ない」と言って殺せんせーが居るであろう教員室へ向かった。

 

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「おはようございます」

 

俺が課題を持っていった後、殺せんせーが朝のホームルームの為に教室へ入って来た。

 

「…ん?どうしましたか皆さん?」

 

しかし、教室の微妙な雰囲気と生徒達の曇った表情を見てそう言うと教卓の上に乗るモノを見つけ言葉を失った。

 

「あ、ごめーん!殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ。捨てとくから持ってきてよ」

 

すると、そんな殺せんせーにカルマが挑発的な顔でそう言う。

 

「わかりました」

 

殺せんせーはそう応え真蛸を触手で取ると突然触手をドリルに変化させた。

 

『!?』

 

触手の変化にカルマを含め俺たちが驚く中、殺せんせーは一瞬俺たちの前から姿を消すと何故かミサイルといくつかの材料を持って俺たちの前に現れた。

 

「たこ焼きか?」

 

「その通りです、結城君。そしてカルマ君。見せてあげましょう。このドリル触手の威力と自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を!!」

 

俺が材料を見て言ったセリフに殺せんせーは応えるとそう言って超高速で料理を始めた。

 

「ミサイルの火力で焦げないか?」

 

「ご心配ありません。既に作り終わりましたから」

 

「熱ッ!!」

 

俺のセリフに殺せんせーはそう言うとそれと同時にカルマがそう言って口に入れられたたこ焼きを吐き出した。

 

「その顔では、朝食を食べていないのでしょう。マッハでたこ焼きを作りました。これを食べれば健康優良児に近づけますね」

 

「はや…」

 

カルマにそう言いながらたこ焼きを勧める殺せんせーに俺はたこ焼きを完成させるまでが一瞬だった事にそう声を漏らす。

 

「先生はねカルマ君、手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を、今日一日、本気で殺しに来るがいい。その度に先生は君を手入れする。放課後までに君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう」

 

何時もより深く低い声でそう宣言する。カルマはそんな先生に警戒しつつも苛立った顔でその宣言を受け止めた。

 

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今日一日、俺は何度も暗殺を仕掛けた。1時間目には黒板に向かう先生を殺す為にエアガンを抜いたが引き金を引く前にエアガンは取り上げられエアガンを持っていた手はネイルアートが施されていた。

 

「カルマ君、銃を抜いて撃つまでが遅すぎます。暇だったのでネイルアート入れときました」

 

爪に施された無駄にレベルの高いネイルアートと先生のセリフがひたすらに神経を逆撫でた。

 

4時間目の技術家庭科の時間には不破さん達が作っていたスープを引っくり返して中身をぶちまけてそのスキに強襲したがダメだった。

 

「エプロンを忘れてますよカルマ君」

 

気づいた時には俺はハートマークが着いたエプロンを着せられていた。

 

「スープならご心配なく。全部空中でスポイトで吸っておきました。ついでに砂糖も加えてね」

 

「あ!!マイルドになってる!!」

 

「流石の早技だな。殺せんせー」

 

「ヌルフフフ、先生の超スピードはこういう時の為にあるんですよ」

 

タコと結城君達が楽しそうに会話してるのを聴きながらも俺の耳には寺坂達の俺を煽るようなセリフが入ってきて俺はみんなと楽しく会話して俺は眼中に無いと言う態度をとる先生の姿も相まって苛立ちを募らせた。

 

家庭科での出来事も相まって俺は5時間目にも暗殺を仕掛けた。国語の教科書に載る文章を読みながら近づいてきた先生の背中をナイフで刺す為にナイフを抜いた

 

ピタっ

 

だけど、抜いた瞬間に俺のおでこには触手が添えられ俺の動きは止められた。

 

『赤蛙はまた失敗して戻ってきた』

 

シュー、スッ

 

『私はそろそろ退屈し始めていた。私は道路からいくつかの石を拾ってきて──』

 

あまりの反応の速さに呆気にとられている俺に先生はヘアスプレーと櫛で俺の髪を整えなが俺を見つめて文章を読んだ。『赤蛙』『退屈』まるで俺を揶揄しているかのような文章と真顔の先生が俺を更に苛立たせた。

 

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放課後になるとカルマは直ぐに教室から出ていった。

 

「カルマ君大丈夫かな…」

 

潮田はカルマの様子が気になるようでそう言うと後を追うように教室から出ていった。俺はそれを見送りカバンを持って教室を出た

 

「結城君」

 

しかし、俺を呼び止める声に足を止め振り返った。

 

「どうかしましたか、殺せんせー?」

 

「渚君はカルマ君を追っていった様ですね。私も今から向かいます。君も一緒に行きませんか?」

 

殺せんせーは俺のセリフにキラッと星が煌めきそうな顔でそう言ってきた。しかし、俺は殺せんせーの申し出に首を横に振る。

 

「遠慮しておきます。カルマの暗殺が失敗した理由は明らかです。アイツはそれを自覚した上で暗殺を仕掛け失敗し今ああして教室を出ていった。俺がわざわざ行ってやる理由がありません」

 

「…………………」

 

「殺せんせーも理由は解ってますよね。だから、今日一日授業の邪魔であってもカルマの暗殺を受け続けた」

 

「えぇ、理由は解っています。そして、彼も解っている。それでも拘るのは彼の中にしこりがあるからです。私はそれを無くして私を殺しに来て欲しいのです。そして、そのしこりを取り除く場に君もいて欲しいのです」

 

「理由は?」

 

何時もと違う真面目な顔でそう言う殺せんせーに俺はそう尋ねる。カルマの暗殺失敗の理由は明らかだ。朝も言った様に『殺せんせー』を殺したいと言う欲求よりも『先生』を殺したいと言う欲求が強い事。これが理由だ。もう既にハッキリしている事に時間を使うのは合理的じゃない。それに俺はアイツに失敗すると伝え、アイツはそれでも暗殺を仕掛け失敗した。正直これ以上付き合う義理がない。それが俺の気持ちだった。

 

「朝の君とカルマ君の話しは聞こえていました。君は何時も正しい。相手の会話の内容を正確に理解し分析する頭を持ち自信に溢れている。そんな君に『人の変化』を見てもらいたいのです。君は今、自分の指摘を顧みず失敗した変化のないカルマ君に少なからず失望している。そんな君にしっかりと『人は変われる』という所を見てもらいたいのです」

 

「わかりました。確かに俺は変化のないアイツに失望しています。それでもカルマがこれから変化すると言うのならお供します」

 

殺せんせーの言葉に俺はそう言って頷くと殺せんせーは笑って「さぁ、行きましょう!」と言って歩いていった。俺はカバンを席に戻し妙にテンションの高い殺せんせーを不思議に思いながらもその後を歩いていった。

 

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くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそく

 

今日一日俺の暗殺は失敗した。いや、あれは暗殺と言えるのだろうか。撃つ前にエアガンは奪われ、ナイフでの強襲もスープの味を整えるついでに躱され、挙句の果てに攻撃前に抑えられた。何をやってもダメ。その都度苛立ちが募り爪を噛む。

 

『お前は今日一日無駄にする事になる』

 

朝、結城クンに言われた言葉が頭の中で響く。

 

「くそッ」

 

気づけば俺は言葉を口に出していた。

 

「…カルマ君。焦らないで皆と一緒に殺っていこうよ」

 

「……………………」

 

渚君が後ろからそう声をかけてきたが俺は応えられる精神状態じゃなかった。

 

「殺せんせーに個人マークされちゃったらどんな手を使っても1人じゃ殺せない。普通の先生とは違うんだから」

 

(先生、ねぇ)

 

「嫌だね。俺が殺りたいんだ。変な所で勝手に死なれるのが1番ムカつく」

 

(そう…アイツみたいに)

 

俺が正しいとか言ってた癖に、自分が傷付きそうになれば手のひらを返したあの教師みたいに。相手の全てに絶望すれば生きていても死んでしまう。アレは自分で勝手に死んだ。だからこそあの先生は俺の手で殺したい。

 

誰にも邪魔はさせない。絶対に

 

「さて、カルマ君。今日は沢山先生に手入れされましたね。まだまだ殺しに来ていいですよ。もっとピカピカに磨いてあげます」

 

すると、今日一日聞かされてきた俺を煽る様な先生の声が聞こえてきた。振り返れば緑の縞模様の顔面をした先生がいる。その後ろには結城クンまでいる。

 

「殺せんせー、結城君も…」

 

「確認なんだけど、殺せんせーって先生だよね?」

 

渚君が何か言ったようだけど今はそんなの関係ない。俺は崖に立ってそう尋ねた。1歩でも後ろに下がれば落ちる位置だ。

 

「はい」

 

「先生ってさ、命をかけて生徒を守ってくれるひと?」

 

「もちろん。先生ですから」

 

「そっか良かった。なら、殺せるよ」

 

殺せんせーの応えは俺の予想通りの応えだった。

 

「確実に」

 

その応えに笑うと俺はエアガンを構えて後ろに1歩下がり空中に身体を預けた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

カルマが落ちた。

 

「カルマ君っ!!」

 

「潮田止めろ。もう遅い」

 

「そんなっ」

 

落ちたカルマを助けようと前に出ようとする潮田を俺がそう言って止めると潮田は俺を批難するような目で見てくる。しかし

 

「俺達が行っても無駄だってだけだ。それに世界一速い生物がもう行った後だ」

 

俺がそう言うと潮田は殺せんせーがいた場所を見た。そこには土煙が上がっているだけで殺せんせーの姿はない。俺達が崖下を覗くとそこには蜘蛛の巣状に張られた殺せんせーの触手とそれに絡められたカルマがいた。

 

「良かった…」

 

何か話しているようだが俺達には聞こえない。潮田のセリフを聴きながらも俺は「流石、殺せんせー」と呟いた。

 

しばらくすると、殺せんせーはカルマを連れて崖上まで戻ってきた。

 

「また、失敗したな」

 

「うん…」

 

俺のセリフにカルマはそう応えると俯く。しかし、その表情は飛び降りる前とは違いどこか吹っ切れた表情だった。

 

「あーあ、俺が考えた中じゃコレが1番殺せると思ったのに…また一から作戦練らなきゃ」

 

「『先生』も殺そうとするから失敗するし作戦の幅も狭くなるんだ」

 

「そうだね。結城クンの言った通りだったよ。俺は『先生』を殺すのに拘りすぎた。殺せんせーは死なないし殺せない…少なくとも、今は」

 

「おやおや?もう終わりですか??報復用の手入れ道具はまだまだいっぱいありますよ。君も案外チョロイですねぇ?」

 

カルマが俺にそう応えると殺せんせーは色々なコスプレやら化粧品やらを持ってそう言ってきた。爽やかな顔をしていたカルマの顔に青筋が浮かんでいるがカルマはひとつ息を吐くと

 

「殺すよ、明日にでも」

 

立てた親指で首を切る様にしてそう答えた。殺せんせーはカルマの応えに〇を出すと頷く、しかし

 

「じゃあね、殺せんせー。渚君、結城クン、帰りなんか食ってこうぜ」

 

俺達にそう言って見せた財布を見ると表情を変えた。

 

「ちょ!それ先生のサイフじゃないですか!?」

 

「カルマ君…」

 

「あははっ、だから無防備に置いとくなって」

 

どうやらまた殺せんせーの者を盗ったらしい。殺せんせーは「返しなさい」と言ってカルマに詰め寄るとカルマは割とあっさり財布を投げて返した。しかし

 

「ちょ!中身なくなってるんですけど!?」

 

中を空けて絶望したような顔で叫ぶ。

 

「はした金だったから募金しちゃった」

 

「にゅや━━━━━━━━━!!!!!!!!!」

 

裏山に殺せんせーの絶叫が轟く。しかし、カルマはヘラヘラと笑って歩いていく。俺はそれを見送るとカバンを取りに教室へ戻った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「結城君」

 

教室に置いてきたカバンを手に取り教室から出ると俺の前に殺せんせーが現れた。

 

「急に出てこないで下さいよ、殺せんせー。カルマはもういいんですか?」

 

「はい、大丈夫です。お金よりもカルマ君が正しく変わってくれた事の方が大切ですから」

 

俺のセリフに殺せんせーはそう応えるとニッと笑う。

 

「それで、君の目から見てカルマ君はどうでしたか?」

 

すると、殺せんせーはまた真面目な声で俺にそう問いかけてきた。

 

「正直驚きました」

 

「ほぅ…」

 

「俺の言葉を認めず『邪魔をするな』と言ってきたカルマが崖の上に戻ってきた時には俺の言葉を認めて声に出した。頭で納得したふりをするのと言葉で認めるのは違う。アイツは言葉にして認めた。それはつまり『先生』を殺すのをやめたと言う事。あの一連の出来事の中でここまで変化するとは思いませんでした」

 

俺は先生に正直に答えた。カルマは変われないと思った。自分の間違いを理解しながらも認めない今日の朝の様子を見ていたから、でもカルマは変わった。それに俺は驚いていた。

 

「そうですかそうですか。君がちゃんと『見て』くれてとても嬉しいです。人は何時でも変わることができます。その要因は至る所にある。カルマ君は今日それを掴み取りました。そして、君はそれを見て理解してくれた。とても嬉しいですよ」

 

「人は何時でも…」

 

笑顔で頷きそう言う殺せんせーに俺はそう呟く。

 

「ええ、その通りです」

 

殺せんせーは頷いている。俺はそれを見て笑うと

 

「ありがとうございました。やっぱり殺せんせーは超一流の教師ですね」

 

そう言って帰路に着いた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

『超一流の教師ですね』

 

生徒からの1番嬉しい評価だ。

 

カルマ君の最後の暗殺を回避し彼に伝えるべきことを伝えた後、私は結城君からそう言われた。

 

結城伊澄

 

進学校である椚ヶ丘中学校の入試にオール満点で入学しそれ以来、学内のテストでも学外のテストでも満点を取り続ける天才。特に彼の夢である「法人類学者」に必要な知識は郡を抜き私と対等に会話が出来る程だ。既に中学生のレベルを超え大学のレベルの勉強をしている。私が個人的に渡している論文を読解し私のしつもんに正しく答える事が出来ている。これだけでも彼が如何に常識外れかわかると言うもの、おまけに磯貝君達との集団暗殺の際に見せた仕草と表情、暗殺の為に課題をダシにして近づいて来たようだが、私は彼のあまりに自然な演技に彼がナイフを抜くまで気づくことが出来なかった。

 

いや、彼の目的に暗殺も含まれているという事に『気づかせてもらえなかった』。

 

自身の本心を隠しきる演技力。これに本人が気づいている素振りがないのだから本当に恐ろしい。

 

そして、暗殺力もピカイチ。身体能力がかなり高いのだろう。私の触手を切り落とした動きを見てもわかる。現状この教室で1番私の命に近いのは彼だ。

 

そんな彼が演技では無いとわかる自然な笑顔でそう言ってくれた。私はその事がとても嬉しかった。

 

しかし

 

「何故、お母様や御姉妹の話しをされるのを嫌がるのか…気になりますねぇ」

 

そして、彼の性格も

 

私の声は誰もいない教員室に静かに消えていく。それを感じながら私は彼の事も『見て育てる』のだと決意しネクタイを締めた。

 

 

 

 

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